土木学会論文集F
Online ISSN : 1880-6074
ISSN-L : 1880-6074
64 巻, 3 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
和文報告
  • 森崎 泰隆, 御手洗 良夫, 蒋 宇静
    2008 年 64 巻 3 号 p. 227-236
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル フリー
     山岳トンネル工法を都市部で適用する場合,地表面沈下を抑制するためにインバートに吹付けコンクリートや鋼製支保工を施工して,トンネル断面を早期に閉合する事例が見られる.本論文は比較的土被りの小さいトンネルを対象に,三次元数値解析手法によって一次インバートの閉合距離が地表面沈下に与える影響について検討を行った.その結果,軟岩の中でも軟弱な地山の場合,一次インバートの閉合距離が地表面沈下の抑制に与える影響が大きくなり,軟岩の中でも比較的安定した地山では,上半切羽より20m以内で効果が大きいことを示した.また,一次インバートによる早期閉合を適用した2現場の計測結果より,解析の妥当性を検証し,インバート部の早期閉合による地表面沈下の抑制効果を確認した.
  • 石井 裕泰, 檜垣 貫司, 川井 俊介, 三和 信二, 小泉 亮之祐, 小山 忠雄
    2008 年 64 巻 3 号 p. 272-282
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル フリー
     本報告の対象とする地盤改良工法は,直線,曲線制御が可能な自在ボーリングを併用して,既設構造物直下の任意の地点での浸透注入を可能とするものである.曲線追随性を確保するために細めの削孔管が用いられることから,用いられる薬液注入管は,従来の直線ボーリングによる方法と比較して,極力小型であることが望ましい.本報告では,このような施工上の課題を考慮の上,実用化した2つの注入方式と,それらを使用した実証試験結果をとりまとめる.自在ボーリング後に実施した浸透注入による改良状況を直接確認するとともに,採取された改良体サンプルに対する強度試験を通して,その改良効果を定量的に確認した.
  • 芥川 真一, 太田 道宏, 安原 幸二, 松岡 敬
    2008 年 64 巻 3 号 p. 327-339
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/22
    ジャーナル フリー
     山岳工法トンネルの施工および供用中の各段階において,トンネル構造物のより正確で合理的な現状把握と安全性確認の技術体系を構築することが求められている.本論文は支保構造を形成する重要な構成要素である鋼製支保工に注目し,施工の各段階においてその力学的状態を磁歪法を用いて合理的に把握することを目的として実施した検討結果の第2報である.第1報では,トンネルに建込まれる前の段階における鋼製支保工の応力状態を把握し,荷重がゼロの状態でも無視できない程度の残留応力が存在することなどが分かった.本報では,実際のトンネルに建込まれた後の鋼製支保工の応力状態を計測し,磁歪法を用いた応力計測によって現場で簡易にトンネル構造物の安全性確認に益する情報を入手できることが分かった.
  • 川端 康夫, 中村 信男, 請関 誠, 三木 茂, 河野 興, 中川 浩二
    2008 年 64 巻 3 号 p. 340-352
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/22
    ジャーナル フリー
     本研究では,双設トンネルの2期線新設工事に伴う1期線覆工での発破振動管理に関し,現場実情に即した新たな手法を提案した.供用中の1期線の発破振動管理を行う場合,一定距離毎に計測器を移設しながら振動速度を測定するため,常時2期線の切羽近傍に振動速度の計測装置を設置し続けることは難しく,発破位置最近傍での振動速度が測定できない.実際の施工管理では,振動速度の測定位置が切羽から離れていても,その際の発破振動の安全性を確認する必要がある.ここでは,測定した振動速度と,切羽と計測器の離隔距離との関係より,近似曲線を算出,この結果より新たに管理曲線を作成し,発破振動を管理する手法を考案した.さらに振動速度に与える各種要因を検討し,管理曲線の実用性,活用方法を検討した.
和文論文
  • 進士 正人, 小原 勝巳, 若狭 紘也, 青木 宏一, 中川 浩二
    2008 年 64 巻 3 号 p. 218-226
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル フリー
     めがねトンネルは,都市部のような地表条件の厳しい道路新設工事に適用される例が多く,全掘削幅が大きいため広範囲に掘削の影響が及びやすい.このため,精度の高い地表面沈下の予測が要求される.また,その施工中,トンネルの切羽が同一断面を複数回にわたり通過するため,掘削段階ごとに増加する地表面沈下に対する計測管理が極めて重要である.しかしながら,FEM解析等による沈下予測解析では,その有効性に問題がある場合もあり,実務上の課題となっている.
     本研究では,著者らが過去のめがねトンネルの施工・計測結果を収集したデータベースを活用し,めがねトンネルの掘削段階(先進坑,後進坑)ごとに発生する地表面沈下の増加に着目し,その増分比から設計段階および施工段階における最終沈下量を予測する簡易手法を提案する.
  • 熊谷 樹一郎, 前田 壮亮
    2008 年 64 巻 3 号 p. 237-247
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル フリー
     本研究では,建設事業の事前評価などで実施される植生分布の現況調査に対して,空間的な連続性に基づいた広域的な視点からの新たな分析方法を開発した.広域の植生情報として地球観測衛星データから得られるNDVIに着目し,空間的自己相関分析法を応用した上で植生分布の連続性を表す正および負のSSC(Spatial Scale of Clumping)を提案するとともに,これらを地形データと仮定した水文解析により尾根線・谷線を抽出することで植生被覆量の多い箇所の集積し,かつ,SSCによって区分された郊外部と市街地部をつなぐ「植生分布変移軸」を定義した.「植生分布変移軸」の妥当性を検証した結果,これらの周辺では広域緑地計画などで指定された植生軸などよりもNDVIの高い値が集積している傾向が確認された.
  • 天明 敏行, 尾原 祐三, 堤 知明, 村上 祐治
    2008 年 64 巻 3 号 p. 248-260
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル フリー
     RCD工法では厚さ75cmまたは1mで敷均された超硬練りコンクリートを振動転圧で締固めるが,締固めされたリフト内の鉛直方向のコンクリート強度などの特性分布の偏りがしばしば課題とされる.本研究では,1mリフトのRCD工法の試験施工からコアを採取し,圧縮強度試験や超音波伝播速度の測定を行うとともに,X線CT法を適用してRCDコアの粗骨材率,空隙率,モルタル平均CT値の分布を評価した.この結果,粗骨材率はほぼ一様に分布していたが,モルタルの平均CT値や空隙率の分布はコアの上部と下部で異なる傾向が確認された.また,CT画像よりコアの上部では粗骨材周辺の空隙の存在が確認され,この空隙がリフト内の強度などの特性分布に大きな影響を与えると推論した.
  • 小島 尚人
    2008 年 64 巻 3 号 p. 261-271
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル フリー
     本研究は,斜面崩壊危険箇所評価図を比較・解釈する上での問題を指摘した上で,評価図に対する新たな評価指標を提案したものである.トレーニングデータ(教師データ:既崩壊地&未崩壊地)と評価図上の情報(崩壊可能性有・無)の組合せ事象を2×2分割表に整理した上で,条件付きエントロピーに基づいて「取得情報量」の定式化を試みた.種類の異なる評価モデルから作成される斜面崩壊危険箇所評価図に対する取得情報量を計算・比較した結果,一般に利用されている「的中率(対トレーニングデータ)」による精度評価の限界を補う新たな評価指標の一つとして,実務・研究開発両面において寄与することを示した.
  • 飯村 正一, 山口 宏樹
    2008 年 64 巻 3 号 p. 283-294
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/22
    ジャーナル フリー
     地盤沈下により埋設管路に発生した応力を低減させるために,管上の土を取り除き管を露出させ,沈下した部分を吊り上げて高さを調整した後埋め戻す,という工事が行われる.本研究では,沈下した状態で土圧を撤去したときの管路応力と,沈下した部分をワイヤーなどで吊り上げたときの管路応力および吊り上げ点荷重を簡易に算出する方法を提案し,モデル実験結果との比較から提案手法の妥当性を示した.
  • 山本 浩司, 青木 一也, 貝戸 清之, 小林 潔司
    2008 年 64 巻 3 号 p. 295-310
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/22
    ジャーナル フリー
     本研究では,社会基盤施設を支援する大規模情報システムのアセットマネジメントを目的として,システムのサービス停止がもたらす社会的影響を考慮した情報システムの動的故障解析モデルを提案した.その際,情報システムを構成する機器の劣化過程を,ランダム比例ワイブル劣化ハザードモデルにより記述する.さらに,機器の故障がシステムのサービス水準に及ぼす影響をフォールトツリーを用いて表現する.その上で,機器の故障率の変化が,情報システムの信頼性(故障の発生確率とその影響度)と期待ライフサイクル費用の時間的な推移過程に及ぼす影響を,モンテカルロ・シミュレーションにより分析する.さらに,本研究で提案した動的故障解析モデルを,高速道路の中央交通管制システムに適用し,モデルの有効性を実証的に検証する.
  • 真下 英人, 日下 敦, 砂金 伸治, 木谷 努, 海瀬 忍
    2008 年 64 巻 3 号 p. 311-326
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/22
    ジャーナル フリー
     トンネル覆工の破壊メカニズムおよび鋼繊維補強コンクリートや単鉄筋補強コンクリートがトンネル覆工の耐荷力に及ぼす効果の解明を目的として,実大規模の覆工供試体を用いた載荷実験を荷重条件および覆工の材料を変えて行った.その結果,トンネル覆工は,荷重条件によって3箇所の断面における曲げ圧縮またはひび割れの進展による断面破壊,1箇所の断面における圧縮によるせん断破壊のいずれかが発生することにより構造全体の破壊に至ることが明らかとなった.また,鋼繊維補強コンクリートおよび単鉄筋補強コンクリートの効果は破壊形態によって異なり,断面破壊に対する耐荷力のみ向上させる効果が現れる場合と覆工構造全体の耐荷力まで向上させる効果が現れる場合があることが確認された.
feedback
Top