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佐野 信夫, 伊藤 哲男, 馬場 弘二, 小島 芳之, 津野 究, 川島 義和, 松岡 茂
2006 年62 巻2 号 p.
194-202
発行日: 2006年
公開日: 2006/04/21
ジャーナル
フリー
トンネルの力学的な健全度を評価し,トンネル覆工の補修・補強のタイミングのあり方や対策方法の選定を効率的に実施するために,トンネル覆工の現状の残存耐力を予測する手法の確立を目指す必要がある.本研究では,トンネル覆工と周辺地盤の相互作用を反映できる三次元模型実験により,様々な外力の増加とひび割れ形態などの進展状況について,トンネル覆工の剛性変化を用いた関連付けを行い,日常的または定期的に実施されるトンネル点検結果に対し,幅広く活用が可能な,具体的で精度の高い健全度評価基準(補修・補強ランク)の構築を進めている.本論文では,鉛直圧ならびに水平圧に関する模型実験結果により,剛性変化に基づく健全度評価手法の構築について検討経緯を述べ,その一評価手法の提案を行う.
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深田 久, 大塚 誠, 田中 靖雄, 塩井 幸武
2006 年62 巻2 号 p.
203-212
発行日: 2006年
公開日: 2006/04/21
ジャーナル
フリー
回転貫入式砕石杭工法は,地震時に発生する過剰間隙水圧の消散により液状化防止を図る工法であり,構造物の耐震補強工法として広く用いられている.当工法では,施工時に発生する地盤変位を低減するためにケーシングパイプの外周にスクリューを装着して施工時に土を地表に排出する.この地表に排出される土の量(以下排土量と呼ぶ)は周辺地盤変位に大きく影響を与えることより,施工時に排土量を精度良く推定し,制御することは極めて重要である.
本論文では,砂地盤における回転貫入式砕石杭工法の排土機構を明らかにし,排土量の推定式を提案した.また,現場における実測排土量調査により,その適用性を確認した.
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太田 直之, 杉山 友康, 岡田 勝也, 鳥井原 誠, 山本 彰, 山田 祐樹
2006 年62 巻2 号 p.
213-225
発行日: 2006年
公開日: 2006/04/21
ジャーナル
フリー
材料の入手が容易なために,鉄道沿線の切土のり面の防護や盛土ののり尻に設けられることが多い石積壁は,開業当時に造られて,今も供用されている.このような石積壁は,通常標準図をもとにして造られることが多いが,昭和初期以前に造られたものについては,その構造が明らかでない.また,その構築方法は,専門職の技能と経験によって発達してきているため,特に,耐震性能については未解明な部分が多い.このような特徴を有する石積壁の実態調査を行い,鉄道沿線に現存する石積壁の標準的な構造を明らかにした.また,この標準的な石積壁を対象として模型振動台実験を行った.積み方(空積および練積),高さ,基礎に働く水平抵抗に着目し,地震時の挙動に及ぼす影響と変形発現のメカニズムを明らかにした.
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青木 一也, 山本 浩司, 小林 潔司
2006 年62 巻2 号 p.
240-257
発行日: 2006年
公開日: 2006/04/21
ジャーナル
フリー
本研究では,同一種類の多数の施設で構成されるシステムの最適点検・補修政策について考察する.その際,システムを構成する施設の健全度を複数レーティングで記述し,健全度間の推移確率が使用時間に依存する多段階ワイブルハザードモデルを用いて施設の劣化過程を表現する.さらに,多数の施設を定期的に一斉点検・補修するようなシステムの劣化・補修過程を推移確率が使用履歴に依存するような非斉次マルコフモデルとして記述する.その上で,所与の劣化リスク管理水準の下で,ライフサイクル費用を最小にするようなシステムの最適点検・補修間隔と,最適補修政策を同時に求める最適点検・補修モデルを定式化する.最後に,トンネル照明灯具システムをとりあげ,本研究で提案した方法論の有効性を実証的に検証する.
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宮野前 俊一, 森田 篤, 酒井 照夫, 松井 幹雄, 梨本 裕, 大久保 誠介
2006 年62 巻2 号 p.
258-267
発行日: 2006年
公開日: 2006/04/21
ジャーナル
フリー
NATM によるトンネル施工では,切羽前方地山の安定を確保することがトンネルを安全かつ安定に施工するために必要である.特に地山強度比が小さな押し出し性地山においては,切羽前方地山を補強するための対策工として,長尺鏡ボルト工が広く採用されている.
本論文では軸対称 FEM を用いて,長尺鏡ボルト工による効果を定量的に評価するための簡易モデルを提案し,内空変位と地表面沈下の計算結果を計測結果と比較することでその実用性を明らかにする.
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大谷 英夫, 上野 成三, 勝井 秀博, 小林 峯男, 後藤 仁志
2006 年62 巻2 号 p.
268-284
発行日: 2006年
公開日: 2006/04/21
ジャーナル
フリー
閉鎖性水域における水質浄化方法の一つとして「覆砂工法」があげられる.底泥からの溶出を抑え,底生生物,水生植物にとっても有用な工法である.底泥置換覆砂工法は,砂の持込を必要としない工法として開発された覆砂工法である.これは底泥下に埋もれた砂をジェット水流により揚砂し覆砂する工法である.本工法の開発にあたり室内実験および諏訪湖,宍道湖で現地試験工事を実施した.施工後の追跡環境調査の結果では,覆砂による水質環境の改善,底生生物の繁殖に効果があることが示された.また,本工法のコストに重要な影響を与える揚砂量について水理学的な見地から検討を行い揚砂フラックス量式を提案した.さらに,揚砂量予測手法の精度向上を目的に揚砂過程の再現を固液二相流型のMPS法で数値シミュレーションを行い,今後の可能性を確認した.
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剣持 三平, 竹津 英二, 青木 智幸, 森田 隆三郎, 白旗 秀紀
2006 年62 巻2 号 p.
312-325
発行日: 2006年
公開日: 2006/05/19
ジャーナル
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北陸新幹線飯山トンネルでは,著しい膨圧現象が発生したため支保工を二次,三次と分割して施工する多重支保工法を適用した.多重支保工法は,それぞれの支保工を適切に施工することにより掘削に伴う変位を管理し変形余裕量内に地山の変位を制御する工法である.施工ならびに計測結果を整理し三次元弾塑性解析を実施することにより,二次支保工の一次支保工に対する役割,また二次支保工の支保工全体に対する効果,および工法の特長が明らかになり,多重支保工法が膨圧性泥質岩地山掘削工法として極めて柔軟性に富み,安全で合理的であることを確認した.
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田附 伸一, 津吉 毅, 綱嶋 和彦, 石橋 忠良, 北村 敬, 安東 敏弘
2006 年62 巻2 号 p.
326-335
発行日: 2006年
公開日: 2006/05/19
ジャーナル
フリー
都市部の鉄道RCラーメン高架橋では,高架下が店舗や倉庫などで利用されている箇所が多い.このような箇所における高架橋柱の耐震補強工事では,重機を使用せずに施工できること,短期間に施工できること,施工に支障をきたす設備の撤去・復旧を最小限に止めることなどが求められる.著者らはこのような箇所でも容易に施工できる耐震補強工法の開発に取り組み,既設RC柱の外周に厚さ0.8mm以下の冷間圧延鋼板(以下,薄鋼板)を接着剤で貼り重ねる耐震補強工法を開発した.
本稿は,RC柱の外周に薄鋼板を貼り重ねる耐震補強工法の施工性確認試験およびRC模型試験体の交番載荷試験の結果について報告するものである.
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古市 耕輔, 日紫喜 剛啓, 吉田 健太郎, 本田 智昭, 山村 正人, 南 浩郎
2006 年62 巻2 号 p.
349-366
発行日: 2006年
公開日: 2006/06/20
ジャーナル
フリー
PC橋梁上部工で開発が活発に行われている複合構造橋梁の一形式として,上下床版にコンクリート,ウェブに鋼トラスを用いた複合トラス橋がある.複合トラス橋では,異種材料の部材間で力を伝達する接合部の構造性能が非常に重要である.これまでに著者らは,製作性・施工性に優れ,確実な断面力の伝達を可能とする新しい格点構造として鋼製ボックス式格点構造を考案して様々な実験や解析などの検討を行い,国内で最初の複合トラス橋となる木ノ川高架橋と山倉川橋の実現に反映させた.
本論文では,これまでに考案された種々の格点構造を概観して特徴を整理し,その結果を踏まえ,著者らが提案した格点構造の設計体系とその構築にあたって行った実験的・解析的検討結果について述べる.
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井本 治孝, 定木 啓, 服部 進
2006 年62 巻2 号 p.
367-376
発行日: 2006年
公開日: 2006/06/20
ジャーナル
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原子力施設の高放射線環境下で稼動中の機器の多くは定期的に交換される.機器は配管により相互接続されており,機器の交換の際には関連する配管も交換される.配管の交換においては,現地にて取り合い位置を高精度で計測し,現場調整が不要な配管を製作することが必要である.従来,専用の取り合い寸法計測装置を用いて計測を行っていたが,計測後の装置が大量の放射性廃棄物となる,作業員が被ばくする,工期が長いといった問題点があった.そこで今回,デジタルカメラを用いた三次元画像計測手法による遠隔保守システムを開発し,ガラス溶融炉の遠隔交換工事に適用した.その結果,前述の問題点が解決されるとともに,日本では初めてロボットを用いた完全遠隔操作による20tクラスの大型機器の交換に成功した.
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右城 猛, 楠本 雅博, 篠原 昌二, 木下 賢司
2006 年62 巻2 号 p.
377-386
発行日: 2006年
公開日: 2006/06/20
ジャーナル
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岩盤と崖錐からなる比高約45mの斜面から,岩塊および加速度計を埋め込んだコンクリート球と立方体を落下させ,それらの運動を観測した.その結果,1)落石の運動形態は跳躍と衝突が主体的であること,2)衝突時に地盤の破壊でエネルギーが消費されるため飛び出し速度は限界速度をもつこと,2)落石の質量が大きいほど速度が速くなること,3)緩斜部から飛び出すと跳躍時間が長くなり跳躍量と着地速度が大きくなること,4)衝突時の入射角が小さいと速度減衰が大きいこと,5)等価摩擦係数は落下に伴って変化すること,6)跳躍量は斜面の幾何学的形状に支配されること等を明らかにすることができた.
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星野 吉昇, 内田 善久, 渡辺 邦夫, 藤井 健知
2006 年62 巻2 号 p.
387-404
発行日: 2006年
公開日: 2006/06/20
ジャーナル
フリー
堤高の高いロックフィルダムでは,堤体の内部外部に多数の計測機器を埋設し,計測データと数値解析の結果を照査することによりその安全性を評価している.数値解析の最近の動向を見ると,土と水の連成を構成則に取り入れるなど手法は高度化している.しかし,モデル化する際の物性値設定の限界,複雑な材料特性などから,実測の挙動を解析で高精度に再現するには至っていない.このような状況に鑑み,筆者らは実測に即した予測を行うANNモデル等を用いた手法の実用化について研究してきた.本論文は,ANNモデルの学習に使われている逆誤差伝搬学習則を発展させた新たな振動・補完型の学習則を開発したものである.また開発した手法を通常のANNモデルでは学習効率が悪い実ダムのデータに適用して,その有効性を検証したものである.
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大津 宏康, 松山 裕幸, SUPAWIWAT Nutthapon, 高橋 健二
2006 年62 巻2 号 p.
405-418
発行日: 2006年
公開日: 2006/06/20
ジャーナル
フリー
本研究は,道路斜面での斜面対策工の性能低下に関する不確実性を考慮し,斜面アセットマネジメントでの判断指標となるライフサイクルコストを評価する手法について提案すると共に,その手法の適用性について検討を加えるものである.具体的には,斜面対策工としてグラウンドアンカーを取上げ,その計測結果に基づき算定される,経時的なグラウンドアンカーの性能低下を考慮する.そして,その性能低下過程に含まれる不確実性を,時間空間における離散的な確率量としてモデル化し,自然ハザードとして降雨を想定した場合の,斜面の破壊確率の増加をリスク算定結果に反映させる.また,本研究で提案する手法を実際の道路斜面に適用し,本手法の道路アセットマネジメントにおける有効性に関する検討を加えた.
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