土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号: 土木学会論文集
79 巻, 28 号
特集号(木材工学)
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集号(木材工学)論文
  • 加藤 英雄, 久保島 吉貴, 園田 里見, 原 忠
    2023 年 79 巻 28 号 論文ID: 22-28001
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

     木材のヤング係数は,木材が外力を受けたときの変形のしにくさを評価する指標であるとともに,木材の強度を非破壊的に精度良く区分できる.また,供用中の状態で木材や木質構造部材のヤング係数が測定できれば,躯体を解体したり部材を回収したりすることなく,外力を受けた時の変形量や耐力を推定できる可能性がある.しかし,実際に打設した木杭のヤング係数を片持ち梁条件で評価すると,理論値と実測値との差が顕著で,その測定方法も実際の現場に適用するには,簡素化と効率化が必要である.そこで,建設現場で打設した木杭のヤング係数を評価する技術を開発するため,既往の手法と比較して簡素化と効率化に資することを目的とし,土中に材長の一部を打設した状態の木杭のヤング係数を測定する方法を検討した結果,傾斜計の測定は既報の手法と同程度の精度を有しており有効であることが分かった.

  • 下妻 達也, 渡辺 浩, 大隣 昭作
    2023 年 79 巻 28 号 論文ID: 22-28002
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

     近年,道路橋床版にCLTを適用する事例が見られるが,多くの道路橋では鉄筋コンクリート製の床版が用いられる.現行の道路橋示方書のRC床版厚は旧基準よりも大きい傾向にあり,既設の床版取り替えにCLTを用いれば重量増加の防止が期待できる.一方,鋼桁橋にCLT床版を設置する場合は床版支持条件が設置箇所によって異なり,支持条件の違いによる最適な層構成の検証は十分行えていない.本研究では支持条件の異なるCLTの力学的特性を数値解析で検証し,最適な層構成を検討する.結果,平行層を外層に配置した方が変位を軽減でき,支持条件による変位や応力の違いは小さいことが明らかとなった.

  • 岡本 涼太郎, 佐々木 貴信, 澤田 圭, 大橋 義徳, 宮内 輝久, 加藤 貴博
    2023 年 79 巻 28 号 論文ID: 22-28003
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

     CLT(直交集成板)はその軽さの特徴から土木分野への利用も期待されている。例えば、既設橋梁の劣化したコンクリート床板を取替える際に、軽量なCLTで代替することができれば、コンクリート床板の増厚に伴う重量増加に対応するための鋼桁の補強が不要となり、安価に改修を行うことができる可能性がある。本研究では、床版取替の補修工事が計画されている北海道内の林道橋を対象に、CLT床版への取替えにの可能性について、有限要素法を用いた解析により検討した。

  • 加藤 真吾, 豊田 淳, 本田 秀行, 渡辺 浩
    2023 年 79 巻 28 号 論文ID: 22-28004
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

     歩道橋は歩行者が歩行中に支障を感じないように通過できる機能が必要である.この機能に対して,設計時においてはたわみ制限や振動数制限などで歩行者が振動を感じて不快にならない対策が必要である.また,供用中の維持管理に対しては実験や解析的な検討から振動使用性の実態を検証する必要がある.しかしながら,従来から鋼製やコンクリート製の歩道橋に対する多くの研究はあるが,木製歩道橋の振動使用性に関する研究は未だ少ないのが現状である.特に,経年による振動使用性の検討は皆無に近い.

     本研究では架設後17年が経過した木製アーチ歩道橋を対象に,実橋での振動実験を実施して振動使用性の実態を検討した.また,過去に3回の振動実験から経年による振動の変化から振動使用性に検討を加えた.さらに,経年による振動使用性と健全度の関係にも考察を加えた.

  • 加藤 真吾, 平沢 秀之, 菊池 幸恵, 戸沼 淳
    2023 年 79 巻 28 号 論文ID: 22-28005
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

     災害復旧用木製トラス橋を製作し,屋内及び屋外での架設実験を行った.この木製トラス橋には,北海道の道南地域で生産される「道南スギ」をトラス部材として使用している.支間長は9.90m,幅員は1.11mとする実物大の歩道橋として設計・製作したものである.トラス構造は,上弦材・下弦材・垂直材・斜材から成る格間長1.65mの1トラスパネルを6パネル連結して完成する.架設実験は,①トラスパネルを現地で連結し,橋梁本体を完成させる架設実験,②トラスパネルをあらかじめ蝶番で連結して折り畳んでおき,現地で,折り畳まれた橋を展開して完成させる架設実験,の2通りの方法を実施した.架設実験では,両方法とも電動工具などを使用せずスパナによる手作業で組み立てを行った.ただし,②の方法では,河川上に架設することを想定して,手作業の後にクレーンによる一括架設も行っている.実験の結果,両方法とも人力による作業性は特に問題はなく,架設時間は①の方法で3時間35分,②の方法で2時間30分となり,短時間で架設可能であることが判明した.

特集号(木材工学)報告
  • 渡辺 浩, 片桐 幸彦, 藤本 登留, 下妻 達也
    2023 年 79 巻 28 号 論文ID: 22-28006
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

     クリークと呼ばれる有明海沿岸地域の農業用水路は,古くから護岸がない素掘りで供用されてきたが,長年の供用により崩落が生じている.クリークはその延長が膨大であるため護岸の保全は自治体の大きな負担となっている.護岸工のうち,コンクリート製のものは高耐久であるが高コストであり,全てをこれで整備する予算はない.一方で木製のものは安価ではあるが,積極的な耐久性向上策は採られていない.逆に言えば,樹種を選び防腐処理を行い断面を大きくして工法を工夫すれば耐用年数の飛躍的な向上が図れる可能性がある.そこで,2014年に高耐久実証試験柵が設置された.これにあわせて,その後の耐久性を検証するための試験材が設置された.本文は,この柵を1セット引き抜き,劣化度の検討を行った結果を報告するものである.その結果,実証試験柵の7年後の機能は十分であることと,防腐処理をする,樹種を選ぶ,木取りのひとつでも工夫することで耐久性を向上させられることがわかった.

  • 野田 龍, 石川 信也
    2023 年 79 巻 28 号 論文ID: 22-28007
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

     コンクリート製や鋼製の治山ダムを設置する際,治山ダム底面の地盤支持力が不足することがある.この対策の一つとして,治山ダム基礎に木杭を打設し,地盤補強を図る方法がある.木杭の支持力を算定する算定式はマツを基に作られており,近年利用が検討されているスギ杭にこの算定式をそのまま当てはめて良いかは定かではない.そこで,治山ダム基礎に打設する木杭を従来のマツからスギに代えた場合の支持力を評価するため,スギおよびカラマツ製杭の鉛直載荷試験を行った.また,試験終了後に試験杭を回収し,縦圧縮試験を行った.

     その結果,スギ杭を用いる場合,従来の算定式を用いると危険側の設計になってしまい,従来の算定式に0.6~0.7を乗じた補正式を用いる必要があることが分かった.

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