土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号: 土木学会論文集
79 巻, 21 号
特集号(舗装工学)
選択された号の論文の34件中1~34を表示しています
特集号(舗装工学)論文
  • 中村 博康, 亀山 修一, 佐々木 厳, 増戸 洋幸, 滝沢 真吾, 富山 和也
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21001
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
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     北海道の寒さが厳しい地域ではアスファルト舗装に低温ひび割れが発生しており,救急搬送の速度低下や振動加速度の増加をもたらす.本研究では,低温ひび割れによる舗装内部の損傷状態を明らかにするために,道内の低温ひび割れが多く発生しているアスファルト舗装において,詳細な調査を行った.FWD測定の結果,ひび割れ近傍のアスファルト混合物層の支持力は健全部の20%程度であった.開削調査の結果,ひび割れはアスファルト混合物層を貫通し,アスファルト混合物層の下部が崩壊していた.また,ひび割れの真下の路盤表面に土砂化したアスファルト混合物が堆積していた.コア採取の結果,路面のひび割れが進行するほど,アスファルト混合物層の損傷はより深部に進行し,アスファルト安定処理層の土砂化をもたらすことを明らかにした.

  • 野本 陽, 高橋 修
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21002
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     現在使用されているアスファルト発生材(以下,発生材)は繰返しの再生により劣化が進んでいることが懸念されており取扱いに留意が必要であるが,発生材の評価指標として用いられている針入度および圧裂係数は再生骨材としての使用可否の規格値が設けられているものの,発生材中に含まれる種類の異なるアスファルトの評価に適した指標ではない.本検討ではアスファルトの評価指標として引張仕事量であるタフネスおよびテナシティによる評価が有効と考えその指標の有効性を検討し,アスファルトの評価指標とアスファルト混合物(以下,混合物)の疲労破壊抵抗性との関係の検討を行った.その結果,新規のアスファルトを対象にして疲労破壊抵抗性に関わる指標である総散逸エネルギ1)とテナシティの間に良好な相関性を確認し,回収アスファルトを用いた検討により,テナシティは再生骨材の評価指標として有効であることが示唆された.

  • 大野 敦弘, 井原 務, 桑野 玲子
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21003
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     道路陥没の主要因は路面下に発生した空洞である.インフラ老朽化や近年の自然災害の激甚化・頻発化に伴い,路面下空洞の今後さらなる増加が予想され,対策の合理化が課題となっている.筆者らは陥没対策の一手法として空洞上部の路面補強工法についての共同研究を実施してきた.本論文では,これまでの検討結果に加え,繰返し載荷試験の実施による終局状態(補強シート下の舗装が崩落し,シート単体の状態)下の支持力,および実道における長期的な耐久性の確認結果に基づいて工法を評価した.空洞上部の路面に本工法を適用した箇所では,段差発生を抑制した舗装構造となることで補修までの安全性を高めることができ,工法の有効性が確認できた.

  • 中尾 信之, 田中 俊輔, 藪 雅行
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21004
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     アスファルト舗装の注意すべき損傷進行メカニズムとして,舗装内部への水の浸入による各部の損傷によって支持力低下が生じることが挙げられている.一方,舗装各部の損傷がどのように舗装構造の支持力に影響を及ぼすかについては不明な点が多い.そこで本研究では,舗装内部に浸入した水が舗装構造に与える影響を検証するために粒状路盤およびアスファルト安定処理混合物に着目した室内試験を行った.その結果,前者では細粒分の増加により粒度構成の変化や支持力が低下することを,後者ではアスファルト安定処理混合物が浸水によって強度が大きく低下することを把握した.さらに,試験結果を考慮した3次元有限要素法による解析を行い,理論的設計方法を用いて舗装内部への水の浸入が舗装構造へ与える影響を検証した.

  • 重廣 和輝, 中島 伸一郎
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21005
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     舗装においてポンピングにより発生する路盤材の動きを把握することを目的に,目地を設けた舗装版を有した小型模型(輪荷重周回型模型)を用いた路盤粒子可視化実験を行った.過去の研究から蛍光塗料を用いた染色粒子とブラックライトを用いることにより,路盤の挙動を粒子レベルで可視化できることが分かっている.本研究では染色粒子の配置方法を改良し過去の研究で確立した可視化手法を用いて路盤材の噴出過程を観察した.実験結果から染色粒子により載荷に伴う各舗装版下の粒子の挙動を把握することができた.また,ポンピングにより噴出する路盤材の供給源を把握することができた.載荷が進行することにより路盤は偏った浸食をする.その原因はリーブ版のたわみによる路盤材の噴出と復元による目地直下の洗堀によるものであることが分かった.

  • 藤永 知弘, 宮坂 大裕, 加納 陽輔, 秋葉 正一
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21006
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
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     近年,高速道路等の修繕工事およびODA等の海外工事において,アスファルト舗装のひび割れやわだち掘れなどの破損形態と併せて潜在的な剥離の進行が顕在化しつつあり,舗装の構造的劣化を加速させる一因として剥離への対策が重要視されつつある.アスファルト混合物の剥離に関しては,主に水浸前後の強度比に着目した評価法が国内外で提案されている一方,素材の物理・化学的性状との因果関係をはじめ,強度低下のメカニズムに未解明な点を多く残している.本研究では,国内外12種類の骨材を対象に骨材・アスファルト界面に着目した物理・化学的性状を把握し,それらがアスファルト混合物の剥離に関連した各種力学的性状に及ぼす影響を評価した.

  • 神下 竜三, 道正 泰弘, 横田 慎也, 長谷川 剛一
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21007
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     コンクリート塊は主に舗装用として再生路盤材料に使用されているが,今後は再生路盤材料以外の活用方法についても幅広く求められる.本研究では,固化材も含めたすべての材料を副産物とした100%リサイクル安定処理路盤材,並びに100%リサイクルコンクリートについて,舗装材料への適用を目指して,実物大供試体を作製した.実物大供試体を作製した結果,各リサイクル材料は汎用的な施工方法で施工が可能であることが確認できた.さらに,実物大供試体を対象に輪荷重走行試験を実施した結果,100%リサイクル安定処理路盤材と100%リサイクルコンクリートが一般的なセメント安定処理路盤材を使用した舗装と同等の耐久性を有することが認められ,舗装材料として適用できることが確認できた.

  • 小林 靖明, 滝井 陵太, 東本 崇, 高橋 修
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21008
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,劣化程度の異なる再生骨材を使用した再生アスファルト混合物の物性を評価し,バインダとして有効に機能しない旧アスファルトの存在とその影響について検討した.さらに,新たな配合設計方法を導入し,バインダとして有効に機能しない旧アスファルトを補うため,新アスファルトを追加添加した場合の混合物性状を確認した.品質基準外の再生骨材を使用した再生アスファルト混合物は,バインダとして有効に機能しない旧アスファルトが一部存在し,その影響からひび割れ抵抗性の低下がみられた.一方で,新アスファルトを追加添加することで,アスファルト量が適正となり,ひび割れ抵抗性や耐水性の改善が認められた.本研究で得られた知見に基づき,基準外再生骨材の有効利用に向けた再生アスファルト混合物の配合設計の考え方を提案した.

  • 深谷 美優, 曲 慧, 永原 篤
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21009
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     「2050年カーボンニュートラル宣言」やアスファルト資源の有効活用への対応として,道路舗装分野における取組みの一つに再生加熱アスファルト混合物のさらなる利用促進がある.アスファルトの再資源化は,これまで高い水準を維持しているが,近年では再資源化が複数回繰返される事象もあり,アスファルトの質の低下が懸念される状況にある.著者らは,道路分野における低炭素への取組みとアスファルトの質の低下抑制の観点から,現位置で既設舗装路面に散布するだけで劣化したアスファルトを再生するエマルションを開発した.種々検討を行う中で,長期屋外曝露したアスファルト混合物の再生効果が示された.

  • 今井 宏樹, 高橋 修
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21010
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,アスファルト舗装の構造評価で行われる「FWDによるたわみ量測定」のデータから舗装体の散逸エネルギー(FWD散逸エネルギー)を求め,路面状態の目視点検で得られるひび割れ率との相関関係について検討した.その結果,両者の間には相関性が認められ,アスファルト舗装のダメージ状態が進展してひび割れ率が高いほど,その舗装体のFWD散逸エネルギーは大きいことが確認された.また,FWDの測定箇所で採取した切取コアに対して繰返し圧縮引張試験を実施し,切取コアから得た単位散逸エネルギーとFWD散逸エネルギーを比較した.その結果,両者の間には相関性があり,FWD散逸エネルギーによりアスコン層の疲労ダメージ状態を評価できることの可能性を見い出した.

  • 増戸 洋幸, 中村 博康, 富山 和也, 櫻庭 晃, 亀山 修一
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21011
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     路面の縦断プロファイルは,供用条件のほか,舗装全体の支持力の影響により,経年的に変化していくものと考えられる.長期間にわたり路面を維持管理していくためには,縦断プロファイルと舗装の支持力との経年変化を踏まえた関係性を明らかにしていくことが重要である.本検討では,NPO法人舗装診断研究会での活動の一環として,2014年から2022年までの間で追跡取得した縦断プロファイルと,FWDたわみ量との関係について分析した.その結果,たわみ量D0およびD150と,プロファイル高さの差分には負の相関が認められ,特定の波長領域におけるプロファイル変化に対して影響度が大きいことを確認した.また,ある時点での舗装の支持力状態から,将来の縦断プロファイル変化を予測できる可能性が示された.

  • 齋藤 賢人, 山本 尚毅, 山中 光一, 川名 太, 竹内 康
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21012
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     路床のレジリエントモデュラス試験(以下𝑀𝑟試験)の結果は,米国の力学的・経験的舗装設計ガイドなどの舗装の理論的構造設計に用いられている.ただし,𝑀𝑟試験の実施には多くの時間と費用がかかることから,現場試験である小型FWD試験などを用いて,𝑀𝑟を推定することが望ましい.そこで,車道として供用されている舗装の路床において,小型FWD試験の計測結果と𝑀𝑟の関係を把握できれば,舗装の理論的構造設計の普及と高度化に貢献できると考えられる.本研究では,アスファルト舗装の路床を対象として,𝑀𝑟を入力パラメータとした多層弾性理論による小型FWD試験の順解析を行った.その結果,動的効果を考慮した順解析から得られる載荷中心のたわみは,小型FWDで計測されたたわみとよく一致することが明らかとなった.

  • 中村 和博, 林 詳悟, 風戸 崇之, 松本 大二郎, 小濱 健吾, 貝戸 清之
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21013
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     高速道路舗装では,舗装構造の深層部まで進展する損傷が確認されている.このような状況下において,安全で快適な高速道路舗装路面を持続的に提供するためには,舗装構造の健全度に関する情報を網羅的に把握し,マネジメントに反映していくことが重要である.本研究では,高速走行に対応した移動式たわみ測定装置の開発に向け,光切断法を用いた路面たわみ量測定手法を検討した.具体的には,FEM解析による予備検討を行い,荷重の載荷方法を単軸単輪方式に決定した.そして,車両制限令の一般的制限値を満足しつつ,軸重10tの載荷が可能で,車輪通過位置の路面形状を連続的に取得できる車両を試作した.実供用下の高速道路における試験測定を通して,FWD調査に近似する測定結果が得られることを確認した.

  • 坪井 貞洋, 加藤 亮
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21014
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     現在,日本の高速道路の主流となっているポーラスアスファルト舗装における特徴的な損傷として,表層から浸入する水の影響によって発生する局部沈下が挙げられる.既往の路面性状測定では,わだち掘れ,ひび割れ,平坦性の測定を実施しているが,これらの指標では局部沈下を適切に検出・評価することはできない.そこで,同測定時に記録される横断プロファイルデータを使用することで,局部沈下を検出・評価する新たな指標を作成した.本指標は,目視可能な変状が路面上に発生していない時点から,1~2年後の局部沈下発生を予測することや,100m単位での舗装補修実施判定が可能であり,路面管理・補修計画において活用が可能である.

  • 日原 弘貴, 浅田 拓海, 後藤 宏行, 亀山 修一
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21015
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     積雪寒冷地では,融雪期にポットホールが頻発するため,定期的な道路巡視や網羅的な路面状態把握に基づく計画的な補修が求められている.昨今,AI等の導入による道路巡視の効率化が注目されているが,融雪期の道路を考慮した手法は確立されていない.本研究では,画像認識AIと顕著性マップを用いて,ポットホール発生路面の損傷度を評価する手法を構築した.まず,冬期の路面画像を用いてAIの学習を行ったところ,ポットホールの検出率は85%以上となった.次に,顕著性マップとテクスチャ解析によって,ポットホール部の広がりや深さを考慮した路面損傷評価が可能になることを示した.最後に,定期的な道路巡視やネットワークレベル補修計画を試み,本手法を用いることで,冬期舗装維持管理の効率化および高度化に寄与できることを示した.

  • 佐野 実可子, 亀山 修一, 松井 晋, 櫻庭 晃, 小野寺 晃
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21016
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,舗装の予防保全的な維持管理の実現を目指し,車両搭載型測量システム(MMS)で計測された点群データ(路面標高値)からポットホール(PH)の主な原因である路面のひび割れの進行度を推定する方法を考案した.路面標高値の歪度を基に抽出した局所的な凹型変状とひび割れの長さの関係を求めたところ,両者には強い相関が見られた.冬期前後のPHの面積変化(PH進行度)とPH発生箇所における路面水の累積流量との関係を明らかにし,これを冬期前の局所的凹型変状に適用することでひび割れの進行度を推定した.さらに,推定したひび割れ進行度と実測されたひび割れの進行度(冬期前と冬期後のひび割れ長さの差分)に相関があることを明らかにした.

  • 橘 奎伍, 明田 拓士, 髙橋 清, 富山 和也, 萩原 亨
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21017
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     自転車需要の拡大に伴い,走行快適性に関わる路面の評価,維持管理手法の確立は喫緊の課題である.そこで本研究では,MPMにて取得した実道プロファイルやアクションカメラの画像データを用い,自転車からみた路面評価指標であるBRIを算出し,路面性状とともに地図上に可視化させた.その結果,自転車からみた路面評価の可視化が可能となった.さらに,実道プロファイルから算出されるIRIBRIの評価特性の違いについて検討した結果,プロファイルの波長成分とIRIBRIの算出結果に整合性が確認された.以上の結果から,自動車と自転車の両者が快適に走行可能な車道の維持管理には,従来のIRIによる管理に加えBRIの評価特性を考慮した路面の維持管理手法が必要であることを明らかにした.

  • 西海 隼人, 富山 和也, 佐々木 賢一郎, 山口 雄希, 森石 一志
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21018
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     電動キックボードは近年世界各国で急速に普及が進んでいるマイクロモビリティである.日本では道路の在り方が車中心から人中心へ移ろうとしており,新たな道路環境整備が求められる.車道の管理指標は一般に国際ラフネス指数が用いられる事が多いが,電動キックボードに影響を与える路面波長は,ラフネス波長より短いテクスチャの影響を受けることが知られている.そのため,電動キックボードの乗り心地を評価するには新たな評価指標が必要である.本研究では,電動キックボードの振動モデル開発と新たな評価指標の構築を目的に走行実験を実施し,車両の振動応答計測と主観による乗り心地評価を行った.その結果,振動応答に基づく評価指標と主観評価には高い相関関係があり,マイクロモビリティを対象とした新たなる指標として有用であることを示した.

  • 稲木 万玲, 富山 和也, 伊藤 将光, 佐藤 正和
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21019
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     我が国の高速道路において,現行の管理基準以下で発生する局部的な路面変状が,車両乗員の快適性の低下につながるストレス要因となる一方で,その原因となる路面波長が既存の路面指標では過小評価されることが示唆されている.本研究は,ストレスに関連する路面波長の卓越度および変動特性を考慮し,ドライビングシミュレータによる走行試験を実施することで,車両乗員の生理反応である心拍変動および皮膚電気活動に基づく人間中心の路面変状評価について検討を行った.本研究成果として,局部変状に対応する一過性のストレスと関連した路面波長卓越度の範囲を明らかにし,新たに評価区間全体でのストレスと整合する累積値および一過性のストレスと整合する分散値を定義することで,生理反応に基づく合理的な人間中心の路面評価につながることを示した.

  • 山本 尚毅, 竹内 康, 若林 由弥, 渡邉 一弘
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21020
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     2016年に策定された「舗装点検要領」では,舗装の長寿命化やライフサイクルコストの削減に向けて,表層や基層の適時修繕により,路盤以下の層を保護することの重要性を示している.また,舗装の早期劣化区間では,詳細調査を実施することが示されており,主な詳細調査として,FWDたわみ量調査が広く活用されている.FWDたわみ量を用いた健全度評価手法は,D0たわみ量により舗装全体の支持力を評価する方法や,多層弾性理論に基づく逆解析により弾性係数を評価する方法が一般的である.本稿では,アメリカのNCHRP(全米共同道路研究プログラム)で報告されている粒状路盤層上面の圧縮ひずみの評価式に着目し,実道で取得したFWDデータを用いてアスファルト舗装の評価手法への適用に向けた検討を行ったので,その結果を報告する.

  • 福山 菜美, 佐々木 厳, 新田 弘之, 中村 博康
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21021
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     低温ひび割れ部の詳細調査として実施された白糠開削調査にて,損傷部の下層路盤表面が黒色に変化していることが確認された.これは,アスファルト混合物の一部が劣化により細粒化してその微粒分が路盤に移行,また水の作用で骨材からはく離したアスファルトが路盤に沈降したと考えられる.そこで本研究では下層路盤表面から試料を採取し,アスファルトの含有量の確認と性状試験を実施するとともに,含有するアスファルト量の面的分布や酸化劣化度を評価した.さらに,健全部のアスファルト混合物の性状および深さ方向での劣化進行度を把握し,下層路盤に沈降したアスファルトの性状と比較した.

  • 飯高 裕之, 髙内 大, 馬場 弘毅, 竹林 宏樹, 加藤 亮
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21022
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     高速道路の長寿命化に資する舗装の改良技術として,耐久性に優れた強化路盤を構築する工法を開発した.ただし,本工法により構築する高耐久再生路盤材は,既設路盤の含水比により性状が変化するため,現場適用に際しては,目標性能を確保できる設計含水比を決定し,既設路盤の含水比を設計含水比に調整する方法が必要であった.そこで,筆者らは,施工性や強度特性から既設路盤の設計含水比を決定し,多孔質なセラミックスの添加により,既設路盤を設計含水比に調整することで,高耐久再生路盤材の性能を確保する手法を見出した.さらに,高耐久再生路盤材の施工性を簡易に評価する方法についても検討を実施し,コーンペネトロメータを用いたコンシステンシーの評価方法および管理目標値を決定した.

  • 秋光 萌生, 佐藤 研一, 若林 祐一郎, 島崎 勝, 弘中 淳市, 磯部 有作
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21023
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,ジオシンセティックスを路盤補強材として使用することに着目し,アスファルト舗装を長寿命化させる新しい工法の開発を研究目的としている.本検討では,織布とジオグリッドの性状が異なる2種類のジオシンセティックスと路盤材料を用いて,小型土槽実験とFEM解析を行った.また,小型土槽実験においては,アスファルト層のひび割れからの雨水浸透を模擬した実験についても検討した.その結果,ジオシンセティックスを敷設することにより,路盤支持力の低下を抑制でき,路盤の変形を抑制できることが明らかになった.

  • 菅原 正則, 木幡 行宏, 松田 圭大, 川端 伸一郎, 菊池 優希
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21024
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     軟弱地盤上に構築された道路では,長期的な残留沈下が発生することがあり,その維持補修対策として下層路盤の軽量化は,この問題を解決するための代替手段である.本研究では,下水汚泥と膨張性頁岩を原料にした人工軽量盛土材の路盤材への適用性を検討するため,珪砂を混合し簡易的に粒度調整を行った3試料において,CBR試験,2種類の拘束圧及び繰返し載荷(1万回)の有無の条件で三軸試験を実施し強度・変形特性を検討した.試験結果より,混合率とCBRに一義的な傾向を示すことが明らかになった.また,繰返し載荷を与えることにより,初期剛性が増加することで最大荷重を発揮するまでの軸ひずみが小さくなり,変形係数が同程度から20%程度増加する傾向が得られた.これらの結果を踏まえ本研究では,剛性と軽量性を併せもつ適正な粒度を提案した.

  • 森田 雄大, 伊藤 始, 岡田 拓也, 参納 千夏男, 川添 亮太, 前川 功
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21025
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     温室効果ガス削減の取り組みの一環として,セメント系材料への二酸化炭素の固定化が検討されている.本研究では,道路路床に適用されているセメント系人工砕石を対象に,二酸化炭素の固定性能とそれによる力学性能の変化を明らかにすることを目的とした.研究では,人工砕石および柱状供試体に炭酸化養生を行い,炭酸化深さ測定と熱重量-示差熱分析,pH測定,圧縮強度試験を実施した.

     その結果,人工砕石を炭酸化させた場合,実製品を想定した粒径 50mm の人工砕石では,7日間の炭酸化養生で人工砕石の中心部まで炭酸化することが明らかとなった.また,炭酸化養生を行うと圧縮強度が低下するものの,炭酸化養生前の十分な水和促進により,圧縮強度の低下が抑制されることを確認した.

  • 好見 一馬, 横田 慎也, 綾部 孝之
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21026
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     コンクリート舗装の高耐久・長寿命化を実現するためには,適切な維持管理が必要である.本研究では,コンクリート舗装に発生した各種損傷に対して,具体的に補修材料・工法を提案し,室内試験では各種補修材の物理的性状,解析的検討では新しく提案した局部打換え工法の有効性,実大供試体の検討においては荷重車走行負荷による長期耐久性をそれぞれ検証した.その結果,本研究で検討したすべての補修材は,エポキシ系接着剤を使用して既存コンクリートとの一体性を確保することで,コンクリート舗装の補修材として十分に適用できることを確認した.また,新たに提案した局部打換え工法は,解析的検討により既存工法より鉛直変位量,ひずみ量ともに抑制できることを確認した.さらに,実大供試体実験によって49kN換算85万輪載荷後においてもおおむね良好な供用性状を維持していることを確認した.

  • 上城 良文, 堀内 達斗, 桐川 潔, 坪川 将丈, 福手 勤
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21027
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     空港や港湾のコンテナヤードおよび道路等で使用されるプレキャストPC版(以降,PPC版)舗装において,従来の継手構造では目地部のポンピング現象やPPC版舗装の破損発生が問題となることがあった.これらを解決するために,目地部のポンピング現象を防止することを目的に,くさび機構を採用して目地部に圧縮力を導入し,PPC版舗装の取替えが容易に行える継手構造の開発を行った.本研究では,継手構造の要求性能を確認するために,PPC版舗装の設計供用期間を想定した定点疲労載荷試験,継手単体のせん断耐力確認試験および取替え試験を実施した.その結果,従来継手と同等以上の荷重伝達性能を示し,ポンピング現象の発生防止が期待できる継手構造であり,部分的な取替えが可能であることを確認した.

  • 河村 隆, 高村 秀紀, 上原 謙吾, 菅原 豪, 丸山 功一, 瀧澤 正明, 奥田 浩二
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21028
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     無散水融雪舗装において,放熱管の熱を効率良く路面に伝達するために,コンクリート舗装に熱伝導率の高い人造黒鉛を添加することを提案した.まず,人造黒鉛を添加したコンクリートの曲げ試験,圧縮試験,ラベリング試験の結果から,人造黒鉛の添加による曲げ強度と圧縮強度への影響は大きくないものの,人造黒鉛を添加した場合には耐摩耗性は低下することを明らかにした.次に,人造黒鉛の置換率と放熱管の間隔を変えた大型実験を長野県内の豪雪地帯の屋外で実施した.人造黒鉛を添加した場合,放熱管の間隔15cm,30cmにおいて顕著な融雪効果が得られること,コンクリートの細骨材の10~20%を人造黒鉛に置換することにより,放熱管からコンクリート舗装に伝達する熱量を1.5~2.5倍に増加させることが可能であることを示した.

  • 中村 和博, 川本 熙鷹, 小濱 健吾, 笹井 晃太郎, 貝戸 清之
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21029
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
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     高速道路舗装において,舗装構造の深層部まで進展する損傷が確認されている.このような状況下において,安全で快適な高速道路舗装路面を持続的に提供するためには,舗装の劣化要因を的確に把握し,長寿命化施策へ反映することが必要である.本研究では,構造条件としてアスファルト混合物層の厚さを採用し,地域の環境・材料条件として降雨特性と骨材のはく離抵抗性を定量化したうえで,高速道路舗装の劣化速度に与える影響を分析した.その結果,アスファルト混合物層の厚さが薄い区間,降雨量が多い地域,はく離抵抗性が劣る骨材の採取地域において,舗装の劣化が速くなることを統計的に明らかにした.さらに,混合マルコフ劣化ハザードモデルの推定パラメータを用いて,地域の環境・材料条件を考慮した舗装構造設計を提案した.

  • 佐々木 賢一郎, 富山 和也, 西海 隼人, 森石 一志, 山口 雄希
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21030
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     超高齢化社会であるわが国では,誰もが安心・快適に利用できる歩行空間整備への取り組みが重要になっている.本研究は,歩行空間を対象に,歩行負担評価指標の一つである筋活動電位と路面の物理性状として,プロファイル勾配および国際ラフネス指数(IRI)に着目した.そこで,人が舗装路面から受ける負担と舗装路面の物理性状の比較を行い,人から見た歩行路面の合理的な評価を行った.その結果,歩行者の筋活動量は国際ラフネス指数(IRI)との間に相関があることが示唆された.また,プロファイル勾配±2%程度は歩行者に影響を与える可能性が低いことを明らかにした.また,歩行者がつまずきやすいと感じる地点予測の可能性を見出した.

  • 上川 一真, 中島 伸一郎
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21031
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     側溝側面から粒状路盤に雨水を流入させて路盤内に一時貯留する側面流入型舗装は,洪水ピーク時にのみ舗装が雨水を受け入れることから,透水性舗装に比べて浸水にともなう舗装の力学耐久性の低下を抑え,確実な洪水ピークカットなどが期待される.本研究では,不透水な舗装の上載による路盤の気密化が側面流入型舗装の雨水流入特性に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,ガラスビーズを用いた水理模型実験を実施した.路盤上面を大気圧で開放したケースとアクリル板で密閉したケースで側溝部からの流入特性を比較した結果,上面密閉により路盤への流入速度が大きく低下することが明らかとなった.路盤への円滑な側方流入のためには排気が重要であり,排気口を高い位置にセットするなどの措置が必要である.

特集号(舗装工学)報告
  • 角 裕介, 齋藤 佑太, 森 重和, 杉山 貴教, 小坂 崇
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21032
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     阪神高速道路は路線全体の8割が高架橋であり,特に湾岸線では鋼床版が多く採用されている.鋼床版上舗装の基層には,たわみ追従性が高く,かつ流し込み施工が可能で,床版上の凹凸部へ容易に充填できるグースアスファルト混合物を従来から使用している.近年,道路舗装各社において,従来のグースアスファルト混合物と比較して高耐久で低臭気なグースアスファルト混合物が開発され,実用化に向けた取り組みがなされている.そこで,阪神高速道路における鋼床版上舗装の長寿命化を目指し,高耐久グースアスファルト混合物の適用を目的として,要求性能および性能照査試験結果により検討した品質規格値に基づき,製造から施工に関する規定の整理や試験施工の実施,ライフサイクルコストの整理を行った.本稿では一連の検討により得られた知見を報告する.

  • 川島 陽子, 百武 壮, 新田 弘之, 金澤 裕貴
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21033
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     中温化技術は,アスファルト混合物製造時の二酸化炭素排出量やアスファルトヒューム削減,施工性改善が期待されることから,再生加熱アスファルト混合物への適用拡大が期待されている.再生混合物の性状に対して,繰り返し再生回数や再生用添加剤の組成の影響が明らかになってきており,中温化技術を再生混合物に適用する場合についても,これらの影響を明らかにする必要がある.本研究では,繰り返し再生骨材とフォームドアスファルトにより作製した再生中温化混合物の性状を,通常の再生混合物と比較した.その結果,再生中温化混合物の方が高温カンタブロ損失率が高くなる傾向にあったが,芳香族分の多い再生用添加剤を用いることで,繰り返し再生に伴う高温時のひび割れ抵抗性の低下が抑制され,通常の再生混合物と同等の性状になることが分かった.

特集号(舗装工学)ノート
  • 佐々木 厳, 新田 弘之
    2023 年 79 巻 21 号 論文ID: 23-21034
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル 認証あり

     アスファルト舗装表層は,現場で締め固めることから締固め度が一定とは限らない.表層締固め度はコア密度等で管理されるものの,締固め不良個所を広範囲かつ面的に見つけるためのものではない.また,ひび割れ,施工継目,縁石境界等で不連続部が生じ,これらを経路として水や酸素等の劣化因子が舗装構造内に侵入する.表層不連続部は,舗設時に連続性を確保するとともに,クラックシール等を事後適用し封止するが,その水密性を実際に確認することは困難である.そのため,コンクリート構造物に用いられる表層透気試験を参考に,アスファルト舗装を想定したダブルチャンバ式の減圧透気試験器を試作し検証した.締固め度の相違や模擬ひび割れを設けた室内供試体,現場での締固め度の分布,施工継目やひび割れの密着性等を評価した.

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