土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号: 土木学会論文集
79 巻, 25 号
特集号(環境工学)
選択された号の論文の53件中1~50を表示しています
特集号(環境工学)論文
  • 羅 子彬, 林 嵐, 李 玉友
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25001
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
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     近年,部分的硝酸還元(Partial Denitrification, PD)反応とアナモックス(Anammox)反応を組み合わせた新しい脱窒方法である部分脱窒-アナモックス(Partial Denitrification-Anammox, PDA)プロセスが注目を集めている.本研究では,アナモックス汚泥にも脱窒細菌が存在することに着目して,アナモックス汚泥を種汚泥としてPDAプロセスをスタートアップさせる可能性を検討したとともに,PDAプロセスの処理効果とグラニュール汚泥の微生物構成を分析した.その結果,COD/NO3-N比率を制御することでEGSB型連続流PDAプロセスを迅速にスタートアップさせることに成功した.PDAプロセスでは99%の高い窒素除去率を実現した.また,反応活性と微生物の群集構造の変化について解析を行った結果,アナモックスグラニュール汚泥における優占種はアナモックス菌と脱窒菌からアナモックス菌とPD細菌に変化し,PDA プロセスのスタートアップができたことが示唆された.

  • 清水 聡行, 神子 直之, 奥田 康洋, 藤原 柊斗
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25003
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     本研究では初期濃度が3mg/Lおよび6mg/Lの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)溶液を対象に,222nm紫外線ランプと8~100mg/Lの範囲の過酸化水素(H2O2)を用いた紫外線-促進酸化法(UV-AOP)による分解実験を行った.特に,本研究では表面紫外線エネルギーではなく物質毎の吸収紫外線エネルギーに着目し,実験結果を分析した.LAS吸収紫外線エネルギーあたりでみると,LAS分解量は初期H2O2濃度が高いほど大きくなったが,初期LAS濃度の影響は見られなかった.H2O2吸収紫外線エネルギーとLAS濃度残存率との関係は,一次反応式で示され,初期H2O2濃度の影響を受けずにLAS分解を推定できるため,有用な指標であると考えられた.

  • 二宮 侑基, 西村 文武, 高部 祐剛, 日高 平, 津野 洋
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25004
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     下水処理水の間接的飲用再利用を目的として,オゾン-土壌浸透処理の各段階における有機物濃度変化,消毒副生成物生成能(DBPsFP)低減効果を調査した.A2O型MBR法(A2O-MBR)および標準活性汚泥法(CAS)の処理水を対象とし,有機分は樹脂分画を行い,各画分の変化特性並びにDBPsFPの挙動を調査した.A2O-MBR処理水およびCAS処理水はいずれも,疎水性中性(HoN),疎水性酸(HoA)および親水性中性(HiN)の画分において高いトリハロメタン(THM)生成能およびハロ酢酸(HAA)生成能を示したが,約0.5~0.8mgO3/mgC0までのオゾン処理で急激にDBPsFPが低減された.両処理水ともオゾン処理により,HoNおよびHoA画分からの生成能が低減され,結果として両処理水のDBPsFPが低減された.

     オゾン処理後に土壌処理を行うと,生物学的分解作用により,DBPsFPがさらに低減された.THM生成能は1.65mgO3/mgC0のオゾン処理量のA2O-MBR処理水で最も低減が大きく,7日間の土壌処理において80μg/Lから25μg/Lまで低減され,水道水質基準値以下の水質が得られうることを示した.

  • 浅田 安廣, 神里 良太, 三好 太郎, 秋葉 道宏
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25005
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     粉末活性炭処理で2-MIB除去を低下させる天然由来有機物の中に藻類由来有機物(AOM)が含まれているが,AOM自体の吸着競合影響については十分検討されていない.本研究では,非平衡条件下での粉末活性炭による2-MIB除去に対するAOMが及ぼす吸着競合影響を理解するために,Microcystis aeruginosaを対象として,同種の産生有機物が及ぼす競合影響評価ならびに吸着競合成分の推定を試みた.M. aeruginosa産生有機物の中には,粉末活性炭による2-MIB除去に対して吸着競合影響を引き起こす有機物が含まれていることが示され,吸着競合物質としてトリプトファン様蛍光物質,フルボ酸様蛍光物質の可能性が考えられた.また本研究で用いたM. aeruginosaの全ての株(NIES-87, 102, 604, 1053株)で吸着競合影響が確認され,同種の産生有機物の中には株間に関わらず,吸着競合物質が含まれていることを示した.

  • 國實 誉治, 荒井 康裕, 小泉 明
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25006
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     本論文では,東京都水道局が実施した外面腐食調査で実測された管外面の孔食深さに着目し,材質や埋設環境が管体劣化に及ぼす影響について生存時間解析を行った.具体的には,近年,医学・薬学分野で多用されている「カプラン・マイヤー法」および「Cox回帰分析」を適用した管路劣化の分析を試みた.調査データよりポリエチレンスリーブ(PS)が被覆された管体においても,孔食が確認される事例も存在することから,PS被覆の有無がそれぞれ生存曲線に与える影響について調べた.分析の結果,PS無しの場合は布設年数が約40年から生存率の低下が始まり,約70年で0.7まで低下することが確認された.一方,PS有りでは腐食性の強い地盤においてもイベント(残存管厚1.0mmに達する状態)の発生率増加に寄与しないことが示された.

  • 水落 望乃香, 山本 祐士朗, 小野 順也, 羽深 昭, 木村 克輝
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25007
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     膜ろ過を用いた浄水処理・下水処理において,高分子量親水性有機物であるバイオポリマー画分が膜ファウリングの発生に強く関与することが示されている.これまでに浄水処理と下水処理におけるバイオポリマーの詳細な比較は行われておらず,その違いはほとんど明らかになっていない.本研究では異なる時期に水道原水とMBR槽内水からバイオポリマーを回収・精製し,それぞれのバイオポリマー試料の膜ファウリングポテンシャルと物理・化学的特性の差異を検討した.MBR槽内水から回収したバイオポリマーの膜ファウリングポテンシャルは明らかに水道原水中バイオポリマーのそれよりも高かった.QCM分析によるバイオポリマー試料と膜材質との親和性評価結果は膜ファウリングポテンシャルの大小と非常によく一致し,膜ファウリングポテンシャルが膜材質との親和性に大きく影響されることが示された.LC-OCD/UVD/OND分析とFT-IR分析により,本研究で検討した二種類のバイオポリマーには明確な差異があることが明らかになった.MBR槽内水中バイオポリマーにはアミノ糖やリポ多糖様成分が含まれており,このことが膜ファウリングポテンシャルの上昇に関係していた可能性がある.

  • 高荒 智子, 鵜沼 大翔, 緑川 愛里, 西山 正晃, 渡部 徹
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25008
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     季節別に実施したベンチスケールの緩速ろ過実験で,光の有無がろ過水量へ与える影響を比較した.太陽光を照射した条件では,春季と冬季において藻類増殖によるろ過閉塞が発生した.太陽光を照射しても安定したろ過水量が得られた夏季と秋季では,共通して生物ろ過膜に糸状性の藻類であるMelosiraが優占していた.生物ろ過膜中の細菌類の多様性は,いずれもろ過水量との関連がなく,光条件や季節による差は観察されなかった.春季に太陽光に代えて青色LEDを照射した場合には,太陽光条件で見られたろ過閉塞を回避することができた.青色LEDは常時照射よりも12時間明暗で照射する条件で,より安定したろ過水量が得られた.このとき,ろ過膜ではMelosiraが卓越し,砂層上層の懸濁成分の濁質捕捉量は遮光条件よりも少ないことから,理想的な生物ろ過膜が形成されていた.

  • 坂巻 隆史, 畠山 勇二, 丸尾 知佳子, 齋藤 隆矢, 西村 修
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25009
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     火力発電所の冷却系水路の取排水路部より採取された海水中粒状有機物(POM)と付着生物の炭素・窒素安定同位体比分析を行った.6つの発電所に流入するPOMの炭素・窒素安定同位体比を比較したところ,日本海側の3施設では河川から流入するPOMが卓越するのに対して,太平洋側の3施設では海域で生産された植物プランクトン由来の有機物が卓越することが示された.一方,日本海側・太平洋側それぞれ1施設で水路に付着するカキ・イガイ・フジツボの炭素・窒素安定同位体比を測定したところ,いずれの施設においてもPOMの同位体比よりも値が高く,海域起原の有機物を選択的に同化していることが示された.取水海水のPOM濃度と無機態窒素濃度の間には正の関係がみられたことから,栄養塩削減がPOMとそれを摂餌する付着生物の削減につながることが期待されるが,効果の定量的予測・評価には,さらなる現場知見の集積と定量モデルの構築が必要である.

  • 有馬 悠祐, 藤林 恵, 岡本 蓮矢, 清野 聡子, 久場 隆広
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25010
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     生物生産性の高い干潟生態系の主要な生産者は珪藻であり,ケイ素を栄養塩として要求する.干潟の珪藻は河川から供給される溶存態ケイ素(DSi)を主な摂取源としていることから,DSi動態に関する知見の集積は重要である.本研究では中小河川の福岡県瑞梅寺川を対象に,河口域の今津干潟へのDSi供給量,ダム,下水処理場のDSi捕捉・付与量を算定するために,現地調査を行った.2022年12月について,10.4tonのDSiが干潟に供給され,ダムが0.57tonのDSiが捕捉していると試算された.ダム貯水池内の珪藻の増殖と沈降が主な要因と考えられた.また,下水処理水の放流により2.7tonのDSiが付与されていると試算された.ダムや下水処理場の,干潟に対するDSi供給への影響は無視できないことが示された.

  • 上杉 健史郎, 山口 慶, 畠山 勇二, 丸尾 知佳子, 西村 修, 坂巻 隆史
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25011
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     降雨・流出や下水・排水処理水の放出の時間変動パターンの変化は,それらから栄養塩を受ける沿岸海域の一次生産の量のみならず質にも影響すると考えられる.本研究では,珪藻種Skeletonema marinoi-dohrniiを対象に,同量の無機態窒素・リンを短期集中(pulse)的と低濃度・継続(press)的にそれぞれ供給する連続培養実験を行った.その結果,pulse系では,珪藻細胞の生産量が顕著に高く,同時に明確な生産・死滅サイクルがみられた.また,pulse系の珪藻は必須脂肪酸含有量が相対的に高かったのに対して,press系の珪藻は一部の飽和脂肪酸や単価不飽和脂肪酸の含有量が高く,貧栄養環境に適応した結果と考えられた.

  • 山口 武志, 山下 尚之, 田中 宏明
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25012
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     下水処理場の受水域である琵琶湖流出河川水の瀬田川での溶存態有機物(DOC)濃度,蛍光性溶存態有機物(FDOM)のうちタンパク質様成分FDOM-Pのスコア値,全蛍光成分FDOM-Tのスコア値(生物由来フミン様成分,陸域由来フミン様成分,FDOM-Pのスコア値の合計),FDOM-P/DOC,及びFDOM-T/DOCの経時変化を,下水処理場の簡易処理放流の発生前後で調査した.下水処理場からの簡易処理放流量と河川流量の比率(下水混入率)とこれら5つの溶存態有機物指標の絶対値や時間変化量の関係を整理し,溶存態有機物指標の閾値を設定することで,放流先河川地点で簡易処理放流の発生を検出するのにどれが有効なのかを,二値分類によるクラス分類である混同行列を用いて評価した.その結果,この河川地点での簡易処理放流発生の検出には,全蛍光成分FDOM-Tの絶対値の正解率,F値が5つの溶存態有機物指標の絶対値や時間変化量の中では最大であるため,最も有効であることが示された.

  • 福嶋 俊貴, 西村 文武
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25013
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     下水処理場の流入水NH4-Nの連続計測を3年間実施し,計測結果を使用した運転計画を立案して省エネ施策やN2O抑制施策,能動的管理を下水処理場シミュレータにより評価した.流入水NH4-Nの季節変動では,冬場のほうが高い傾向であり,最小値と最大値の幅も大きかった.日間変動では早朝に最小値となり,午前中に最大値となる典型的な変動パターンが年間を通じて見られ,最小値と最大値では2倍以上の差があり,運転管理上の考慮が必要と考えられた.シミュレーションを利用した運転計画として,省エネ施策で流入水窒素負荷の低い時間帯のDO設定値を下げると曝気風量が5.2%削減され,処理場全体GHG排出量は0.5%削減された.水処理N2O生成抑制施策として負荷の高い時間帯の汚泥返送率を2倍とすると,N2O排出量は12.0%抑制された.能動的管理では窒素供給量が5%の増加となり,電力消費CO2は58%の削減となっていた.流入水質を連続計測し運転計画を立案することにより,現状プロセスの運転管理の工夫でGHG排出量の削減が期待できることが確認できた.

  • 槇塚 仁志, Michael Joseph Rocco , 羽深 昭, 木村 克輝
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25014
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     高速膜分離活性汚泥法(高速MBR)は下水中有機物の分解を抑制して嫌気性消化で活用できる有機物量を増加させる(有機物回収率>80%)のと同時に,膜分離によって処理水質の高度化(有機物除去率>90%)を達成する処理技術である.高速MBRでは極短SRTを設定することに伴う深刻な膜の目詰まり(膜ファウリング)が問題となる.本研究では,高速MBRに担体による高強度物理洗浄と薬品添加逆洗(CEB)を適用し,担体の種類やCEB条件が膜ファウリング特性に与える影響を調査した.スポンジ担体は高い膜洗浄効果を発揮し,高速MBRは30日間に渡って安定した連続運転が可能であった.高頻度のCEBは膜ファウリングの発生を加速させる傾向が観察された.

  • 陳 玉潔, 郭 広澤, 李 玉友
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25015
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     アナモックス法は省エネ・低炭素型窒素除去プロセスとして応用拡大が求められているが,スタートアップが遅く,阻害発生や汚泥流失等による運転不安定が問題となっている.本研究は25℃でHAP(Hydroxyapatite)型一槽式部分亜硝酸化アナモックス(Partial Nitritation and Anammox, PNA)法の最適化を目指し,流入窒素濃度と水理学的滞留時間(Hydraulic Retention Time, HRT)を変化させた連続実験をそれぞれ行い,窒素とリンの除去効果を検討したとともに,形成されたHAP-PNA型グラニュールの特性を解析した.その結果,汚泥の沈殿性能が優れて高濃度に維持できたことで,非常に高い窒素除去速度(1200mg/L,HRT12時間で,2.0kg/m3/d; 500mg/L,HRT2時間で,4.8kg/m3/d)を実現できた.また,90%のリン除去率も得た.グラニュールの形成とリン除去に及ぼすカルシウム濃度の影響を把握し,リンと窒素の除去速度比率が0.02以上に維持することで優れたグラニュールを生成できる条件を明らかにした.

  • 牛島 健
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25017
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     地方部では人口減少に伴い小規模水道の再編検討が必要な状況にあるが,情報が極めて少ない地域自律管理型水道も検討対象に含まれるため,現状では,再編の効果を客観的に検討する手法がない.本研究では,地域の水道再編検討の最も基本となる運営コストに着目し,現状および再編時の運営コスト推計と比較を行う手法の開発を行った.独自に収集した地域自律管理型水道のデータから,地域自律管理型水道の運営コスト予測モデルを構築した.このモデルを用い,実在する16の地域自律管理型水道を対象に①地域自律管理型のまま,②簡易水道に統合する,の2つのシナリオについて運営コストを推計・比較した結果,この手法により,概算ではあるが各水道の特徴に応じて再編のメリットが期待できるものとそうでないものを定量的に比較できることが確認された.

  • 對馬 育夫, 末永 敦士, 山下 洋正
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25018
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     国内においてカビ臭発生が問題になっているダム貯水池において,カビ臭発生抑制のための知見獲得のため,次世代シーケンサーを用いた16S rRNA遺伝子及び18S rRNA遺伝子を対象とした微生物叢の把握を年間を通じて行った.その結果,光学顕微鏡を用いた検鏡と比べ,はるかに多くの微生物種を検出することができ,ダム貯水池内に生育するより詳細な微生物叢を把握することができた.また,従来の光学顕微鏡では検出しにくいカビ臭産生種や浄水場におけるろ過障害の原因種を幅広くモニタリングすることが可能であった.さらに,主座標分析によるサンプル間の微生物叢類似度比較から,調査したダム貯水池では,4月下旬から10月上旬にかけて,堰堤付近の底層の菌叢が,表層や湖心底層と大きく異なっていることが明らかとなった.このダム貯水池において,春季から秋季にかけて,堰堤底層付近の水はカビ臭産生種の相対存在率が小さく,移動性も小さかった.以上のことから,この期間に,曝気循環装置等で表層の水を堰堤底層付近に移送し,原因種の増殖を抑制させることが可能であれば,ダム貯水池内で発生するカビ臭を効果的に低減させることができる可能性が示唆された.

  • 有村 良一, 山中 理, 大西 祐太, 平野 雅己, 金谷 道昭
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25019
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     顕微鏡電気泳動法を応用し,原水の水質変動や凝集剤の過不足に伴うフロックの荷電状態の変化をリアルタイムで定量化(可視化)する画像処理型凝集センサと,本センサを用いた凝集剤注入率のフィードバック制御システムを開発している.本論文では,画像処理型凝集センサによるフィードバック制御を内部ループとし,極値探索制御を適用して内部ループの制御目標値(SV)であるフロックの荷電状態を表す移動速度の目標値を,自動で調整するカスケード構造を新たに考案し,ラボスケールの試験装置にて評価試験を行った.極値探索制御の適用により,沈澱池出口濁度の管理目標値が水質制約となる場合,総コストが極小値となるSVの最適点が存在する場合の両ケースにおいて,極値探索制御によるSVの自動調整が有効であることを確認した.

  • 佐藤 颯介, 村上 和仁, 大平 和成, 鮫島 正一, 稲森 隆平, 稲森 悠平
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25020
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     千葉県習志野市に位置するラムサール条約登録湿地である谷津干潟では,夏季に異常繁茂したアオサ(Ulva spp.)の腐敗により底泥が嫌気化し,干潟生態系における低次消費者として,また飛来する渡り鳥の餌資源として重要なマクロベントスに影響を及ぼしている.しかし,腐敗アオサからの溶出水および腐敗底泥の間隙水が干潟の生態系機能に及ぼす具体的な影響は未知数である.本研究では,模擬生態系であるマイクロコズムを用いたWET試験により腐敗アオサ溶出水および腐敗底泥間隙水の生態系影響および環境毒性のエコシステムレベルでの評価解析を行った結果,腐敗アオサ溶出水および腐敗底泥間隙水はいずれも5%以下の低濃度でも微生物生態系に負の影響を及ぼすことが示された.腐敗底泥間隙水(夏季)と底泥間隙水(冬季)の比較において,評価に差はみられなかった.

  • 杉原 幸樹, 管原 庄吾
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25021
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     硫化水素を含む無酸素塩水の無害化対策研究のため,底層水を汲み上げる管路を造成した.管路は含有物質の欠損なく底層水を陸上に汲み上げられることを化学分析により確認した.溶存酸素供給装置を作成し,汲み上げ水に溶存酸素供給を行ったときの経時的な水質変化を機器計測および化学分析により追跡した.その結果,酸素供給により速やかに硫化水素が酸化され,単体硫黄として析出することが確認された.その後,無酸素化すると硫酸イオンの増加が確認された.溶存酸素を断続的に供給して好気条件を維持した場合には硫酸イオンに変化がみられなかったことから硫化水素の直接酸化による硫酸イオンへの変換は起こらないことが確認された.硫化水素を完全に酸化した後,嫌気化することで単体硫黄の酸化が確認された.

  • 畠山 勇二, 丸尾 知佳子, 西村 修, 坂巻 隆史
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25022
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     無給餌養殖における付着生物は,養殖種の生産効率の低下や環境負荷の増大を招く.本研究では,宮城県志津川湾にて,養殖種のカキと付着イガイ両者の摂餌・排泄特性を有機物の脂肪酸組成から量・質的に比較する目的で,実験を実施した.その結果,イガイはカキと比較し,餌料的価値の高いEPAやDHA等脂肪酸の摂餌速度が大きく,イガイとの競争によるカキの生育低下が示唆された.さらにイガイはPOCの排泄速度が大きい反面,イガイ排泄物のEPAやDHAの含有量は小さかった.イガイの除去により,養殖場内の沈降POMの分解性や酸素消費活性は増大するものの,沈降量は削減されると考えられた.これらの結果から,カキ養殖において,付着イガイの除去が餌料としての藻類起源POMのカキへの供給促進や底層への有機物負荷削減に寄与するものと考えられた.

  • 藤巻 花野子, 和田 光央, Qing Long Fu , 權 垠相, 藤井 学
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25023
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     陸域の各供給源から沿岸域へ輸送される溶存有機物質(DOM)は、炭素・栄養塩循環や微量金属輸送に重要である。本研究では多摩川流域を対象に、超高分解能質量分析により河川や沿岸域、下水処理水等のDOM組成を同定し、下水処理水を含む様々な供給源と河川流域におけるDOM組成変化の関連性を評価することを目的とした。その結果、上流河川水試料やリター(陸域植生)試料においてCHOの分子組成が多くみられた一方で、下水処理水や下流・沿岸域では、ヘテロ原子を含む分子組成の割合が大きかった。すべての観測地点で見られた共通分子組成は、各観測地点で比較的高い割合(33~58%)を占めていた。下水処理水から検出された分子組成のうちおよそ1/3程度が下流域では検出されなかったが、その多くはヘテロ原子を含む分子組成であり、流下過程で変換または分解、除去された可能性が示唆された。

  • 石井 淑大, 安倉 直希, 細田 耕, 生野 愛, 井澤 琢磨, 松橋 学, 重村 浩之
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25024
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,窒素の流入負荷が小さく,硝化促進運転を実施している下水処理場の4種類の処理系列において,一酸化二窒素(N2O)排出量の実態調査を行った.その結果,当該処理場のN2O排出量は,現行のN2O排出係数を用いて算出した結果と比較して約75%小さい値であると推定された.N2O排出量は冬期に高い傾向があり,1日の中では深夜24時ごろに高くなる傾向があった.いずれの系列においても,排出されたN2Oの大部分は,好気槽におけるアンモニア硝化の副生成物として生成されていると推定された.その他に,最終沈殿池における汚泥の沈殿中や汚泥の返送中に進行する脱窒反応の副反応としてもN2Oが生成されていることが明らかとなった.これらの調査結果をもとに,N2O排出係数の見直しや,N2O排出量を低減させる運転方式の開発を進める必要がある.

  • 菊地 良太, 大下 和徹, 高岡 昌輝
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25025
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     中規模都市として薩摩川内市の下水・し尿処理場,ごみ収集・都市ごみ焼却施設を対象に,ディスポーザー導入,混合メタン発酵,汚泥と都市ごみの混焼といった各施設の連携が,温室効果ガス排出量に与える影響を将来推計した.連携に加え,汚水処理普及率向上,廃プラスチックを中心としたごみ減量を想定し,更にパルプ工場へのごみ廃熱輸送を導入した結果,電力や熱のカーボンニュートラル(CN)化が進まない場合,2050年の排出量は2020年比で72%削減された.この要因は,エネルギー回収と廃プラスチック減量であったが,電力や熱のCN化が進むと,エネルギー回収による削減が期待できなくなるため,排出量は66%削減に留まり,廃プラスチック削減やバイオマスプラスチック導入などの上流側の対策がより一層重要になることが示唆された.

  • 増田 周平, 高階 史章, PHUNG Luc , 渡部 徹
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25026
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
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     下水処理水の水田灌漑は,CH4やN2OなどのGHG発生量に影響を及ぼす可能性がある.そこで本研究では,下水処理水の水田灌漑が溶存態を含むGHG発生量に与える影響を定量的に明らかにすることを目的とした.実水田に下水処理水を灌漑し,溶存態GHG分布の調査を行うとともに,土壌のCH4生成能評価および群集構造解析を行った.その結果,水田において溶存態N2Oが低減される可能性が示された一方で,CH4発生量は増加した.その要因は,前者は嫌気条件下における生物学的還元,後者は処理水中の有機物の流入によるCH4生成の促進と推察された.本研究では,現時点で有効な方策のない下水処理水中の溶存態N2Oの削減策としての水田灌漑の可能性と,CH4発生量低減への配慮の重要性が示された.

  • 小澤 諒三, 木村 大地, Luc Duc PHUNG , Putri A. P. PERTIWI , 浦川 修司, 松山 裕城, 渡部 徹
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25027
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
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     下水汚泥コンポストを用いて国内で飼料作物を生産することは,肥料と飼料をほとんど輸入に依存する我が国の食料安全保障の確保に大きく貢献できる.本研究では,汚泥コンポストを施用した畑で飼料用トウモロコシ(デントコーン)を栽培する際に発生する温室効果ガス排出を調査し,化学肥料や同じ有機質肥料である豚糞堆肥を施用する畑との比較を行った.その結果,肥料の種類に関わらず,デントコーン畑からはメタンはほとんど排出されなかった.亜酸化窒素は栽培の初期に排出され,その排出量は化学肥料を用いた場合に著しく多かった.両ガスの排出量を二酸化炭素に換算した上で合計した温室効果ガス総排出量は,有意差はなかったものの,化学肥料の代わりに汚泥コンポストや豚糞堆肥を施用することで平均値として33~55%低下した.

  • 山村 寛, 中野 晴喜, 山元 雄太
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25028
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
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     超高速スキャン蛍光分光光度計を用いたLC-EEMにより,少量試料数でフミン質構成成分をより詳細かつ簡単に明らかにする手法を検討した.Offline-EEM-PARAFACでは,EEM測定中にマイクロプレートウェル内での励起光照射位置を均一に保つことができず,フミン質構成成分の分離・分析に失敗した.一方で,超高速スキャン蛍光分光光度計を検出器とするInline-EEMでは,生成された3次元配列がTrilinearityを満たすことが判明した.11河川水試料から得られた275のEEMスペクトルをPARAFAC解析に供した結果,スペクトルは4種類の成分に分離され,挙動を把握することが困難とされるフルボ酸も含めたフミン質構成成分の増減を把握することができた.開発した手法を適用することで,浄水処理過程においてDBPs-FPを簡潔かつ高精度に予測できるようになると考えられる.

  • 丸尾 知佳子, 坂巻 隆史, 佐野 大輔, 西村 修
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25029
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
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     近年,海洋基礎生産量の減少が物質循環や生態系に与える影響が危惧されている.海洋基礎生産は植物プランクトンの光合成に依存しており,その動態について様々なモニタリングをもとにした予測モデルが構築されている.しかし,様々な環境要因に影響される海洋における植物プランクトンの動態を予測することは容易ではない.そこで,本研究では将来予測を得意とする機械学習を用いて基礎生産速度の予測モデルを構築するとともに,その性能評価を行なった.その結果,溶存鉄,光強度,PO4-P,NOx-Nを重要な変数とした決定係数0.75の予測モデルにて推定可能であることが示された.

  • 高橋 真司, 合屋 祐国, 阿部 信一郎, 竹門 康弘, 井口 恵一朗
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25030
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     亜熱帯性気候である奄美大島の河川において,流下微粒状有機物(SFPOM)の生産経路は未だ不明な点が多い.そこで本研究では,炭素・窒素安定同位体比を用いて河川内のSFPOMの起源と生産経路を推定することを目的とした.アマミノクロウサギの生息地域では,SFPOMに対する糞の寄与率が39%を示した.また,付着藻類量が多い地点でリュウキュウアユの個体数密度も高まったが,SFPOM中の藻類現存量は0.5mgL-1に留まり,リュウキュウアユの個体数密度とSFPOM中の藻類現存量との間には有意な相関関係が認められなかった.本研究の結果から,河川生態系内においてアマミノクロウサギは陸上有機物をSFPOM起源物質へ変換して供給する役割を担っていることが示唆された.また,リュウキュウアユは藻類由来SFPOMの生産に対する寄与が現状では低いことが示唆された.

  • 富澤 風汰, 畠山 勇二, 上杉 健史郎, 丸尾 知佳子, 西村 修, 坂巻 隆史
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25031
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
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     海洋生物の作用によって海中や底質中に吸収・隔離・貯留された炭素をブルーカーボンとも呼び,カーボンネガティブな場として,特に海草藻場がその役割を期待されている.本研究では,志津川湾内底質有機物についてδ13C分析を行い,海草・海藻由来有機物の貯留効果の評価への適用可能性を検討した.バルク有機物のδ13C・δ15N分析では河口付近底質は陸上植物由来の割合が大きいが,湾中央付近航路やワカメ養殖場の底質には海藻由来有機物も含まれていることが示唆された.底質試料より難分解性有機物であるセルロースを分離精製しδ13Cを測定したところ,湾内底質に陸上植物由来と海藻由来セルロースが含まれていることが示唆された.しかし長鎖脂肪酸のδ13Cはエンドメンバー間や底質中有機物間で差が小さく,貯留量評価に適さない可能性が示された.

  • 藤井 大地, 杉山 春弥, 齋藤 利晃
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25032
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
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     本研究では,硝化細菌による亜酸化窒素(N2O)生成を制御・抑制するべく,主たる生成源とされるアンモニア酸化細菌(AOB)による亜硝酸脱窒に関して,N2Oの前駆体かつAOBがエネルギーの獲得において利用する物質とされるNOに着目し,人工基質で培養した硝化細菌のNO及びN2O排出特性の相互関係を明らかにすることを目的とした実験的検証を行った.検証の結果,硝化細菌によるNO生成の消長はN2O生成の経時変化に対して時系列的に先行する変化を示すとともに,AOBに対する潤沢なNO供給はアンモニア酸化速度の増大とアンモニア酸化量あたりのN2O生成量の低減に関与する可能性が確認された.NOを新しい工学的指標として用いることで,硝化細菌によるN2O生成と硝化活性とを包括的に予測・制御し得る可能性が見出された.

  • 川端 涼太, 日高 平, 野村 洋平, 藤原 拓
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25033
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
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     廃水の肥料価値を高めるために,光合成細菌として知られる紅色非硫黄細菌(PNSB)の培養に着目した.人工培地および実廃水試料を用いた培養実験により,アンモニア性窒素濃度がPNSBの増殖および高付加価値物質生成に及ぼす影響を明らかにした.人工培地を用いた実験にてpufM遺伝子数の増加から算出した比増殖速度は,アンモニアによる増殖阻害が,阻害定数0.73~1.6gN/Lの範囲で表された.実廃水試料を用いた実験にて,PNSBの増殖に対応して,高付加価値物質であるカロテノイド濃度および5-アミノレブリン酸濃度の増加が確認された.A 町の規模を想定すると,嫌気性消化汚泥の脱離液での PNSB 培養により,年間2.3kgのカロテノイドおよび50kgの5-アミノレブリン酸が生産され,含まれるアンモニア性窒素は肥料として必要な窒素量の17%程度に相当すると試算された.これらの結果から,廃水を用いたPNSBの培養による高付加価値液肥の生産が可能であると考えられた.

  • 上村 光輝, 川上 周司, 押木 守, 青木 仁孝, 土田 勝範, 渡利 高大, 荒木 信夫
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25034
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     本研究では溶存酸素(Dissolved Oxygen: DO)濃度が好気性脱窒活性および脱窒細菌群集に与える影響について検討した. 従来用いられてきた振盪培養法ではDO濃度を一定に制御できないため, 本研究では曝気制御によりDO濃度を一定に保持する装置を構築し, 低DO(3±1mg/L), 中DO(5±1mg/L), 高DO(7±2 mg/L)条件で好気性脱窒試験を行った. いずれの好気条件下でもNH4+-N, CODCrと同時にNO3--N濃度が減少し, 硝化反応と同時に好気性脱窒反応が進行した. 16S rRNA遺伝子に基づいた原核生物群集構造解析では独立栄養性の好気性アンモニア酸化細菌/古細菌の存在が確認されず, 好気性脱窒細菌(従属栄養性細菌)によるアンモニア酸化反応が示唆された. 高DO条件ほど微生物群集構造は単純化し, 高DO, 低DO条件ではそれぞれParacoccus属, Pseudomonas属細菌が優占化した.

  • 柿木 明紘, 西村 修, 塩原 拓実, 山崎 宏史
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25035
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     浄化槽においては大腸菌群及び大腸菌が二次処理工程において除去されることが明らかとなっているが,小型浄化槽の二次処理工程では内部構造が大きく異なることから,構造別除去特性と生物膜との関係について詳細な解析を行った.その結果,大腸菌群数及び大腸菌数は二次処理好気部SSと相関があることが分かった.また,二次処理好気部ではSSならびに大腸菌群及び大腸菌の除去が同時並行的に行われていることが示唆された.また,二次処理固液分離部が生物濾過槽の場合,SSに吸着していない大腸菌群及び大腸菌が存在していると考えられた.なお,大腸菌群及び大腸菌除去には生物膜が大きな役割を持つが,生物膜内では大腸菌群及び大腸菌は保持されることから,生物膜及びSSを流出させないことが重要であることが明らかとなった.

  • 東條 安匡, 大久保 晴生, 黄 仁姫, 松尾 孝之
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25036
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     現在,除染廃棄物等の減容化熱処理が行われている.減容化熱処理では,セシウム(Cs)を揮発分離することからCsが濃縮した飛灰が発生する.塩化揮発により生成する飛灰中のCsは主に塩化物であるため易溶性である.最終処分に向けてCsは難溶性であることが望ましい.本研究では,アルカリ長石が加熱条件下でCsを難溶性態化する現象を用いて,回転式加熱炉により飛灰中Csの難溶性態化率向上が可能かを検討した.インド長石,焼却飛灰,CsClを混合し,回転式加熱炉で700℃で加熱した.回転数4rpm,700℃の条件で15時間加熱した結果,添加したCsの99%が難溶性態化した.インド長石の添加割合を飛灰1に対して0.8程度に減らしても加熱時間15時間で難溶性態化率96%を達成した.

  • 細谷 宥喜, 小笠原 慶乃, 山西 啓太, 石川 奈緒, 笹本 誠, 伊藤 歩
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25037
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     ヒ素汚染土壌・堆積物中の亜ヒ酸(As(III))の不溶化手法を開発するための基礎的知見を得るために,K2FeO4と浄水汚泥を併用する手法を検討した.水試料中のAs(III)をヒ酸(As(V))に酸化し,そのAs(V)を不溶化することで溶解性As濃度を水質環境基準値未満に低減できた.この不溶化処理後の水試料が弱酸性や弱塩基性に曝されても As の再溶解は抑制された.また,亜ジチオン酸塩により還元的雰囲気に曝した場合,K2FeO4単独の処理ではAsが再溶解したが,浄水汚泥との併用での処理ではAsの再溶解は抑制された.K2FeO4と浄水汚泥を併用する手法は,K2FeO4の使用量を低減でき,処理後の不溶化物が地中に埋設された後に弱酸性・弱塩基性や還元状態に曝されてもAsの再溶解を抑制できる可能性が示唆された.

  • 佐々木 海, 工藤 優稀人, 石川 奈緒, 袁 春紅, 笹本 誠, 伊藤 歩
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25038
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,土壌溶存有機物(DOM)によるバーミキュライトへのCs収着阻害とDOMへのCs収着から土壌中でのCsの易動性を評価した.土壌溶液と,DOMの影響を無視できる程度まで希釈した土壌溶液を用いて得たCsの収着等温線から,液相中Cs濃度が10-2mg/LのときDOMによってCsの収着量が39.0%阻害されたことが明らかとなった.また,DOMにCsが収着することによる土壌環境中でのCsの易動性を評価するために,DOMへのCsの収着性を三次元蛍光分析および陰イオン交換樹脂を用いた実験により定量的に評価した.液相中のCsの28.4%がDOMに収着されており,DOMと液相中とのCsの分配係数は3.08・104L/kgであった.これは共存元素であるCaやMgと比較して非常に大きいため,CsはDOMへの収着に対して選択性が高く,DOMへ収着した分は土壌中で容易に移動する可能性が示唆された.

  • 加藤 大道, Bei ZHANG , 藤井 学, 磯部 敏宏
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25039
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     ペルフルオロオクタン酸(PFOA)は、人体や生物にとって有害な有機物フッ化化合物の一種である。本研究では商業用活性炭の表面をカチオン性ポリマーであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PolyDADMAC)でコーティングし、陰イオン交換機能を担持させた。本アミン修飾炭素材はPFOAに対して優れた吸着容量を示し、PolyDADMAC添加率33%以上での吸着性能向上が確認された。吸着動態については、Freundlich式でよく記述でき、初期pH3-4の範囲で最大吸着量(365𝑚𝑔/𝑔)が得られ、環境水pH(6.5-8.5)においても安定な吸着能力を有していた。また、吸着は初期30分程度で速やかに進行し、約2時間で平衡状態に達した。本アミン修飾炭素材によりPFOAの効率的な吸着除去が期待でき、今後は耐久性や実環境(競合物存在下)での試験・評価が重要と考えられる。

  • 横山 佳裕, 藤井 暁彦, 望月 佑一
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25040
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     福岡市西部水処理センターでの下水処理の季節別管理運転時の放流水によるノリへの効果を把握するため,水質やノリの色調・成分を調査し,これらの関連性を解析して,放流水の効果を考察した.ノリの品質を指標するL*値は窒素・リン含有量と有意な相関があり,各含有量が5,0.2wt%-dry以上で,品質は上等と評価されると推定された.ノリに必要なPO4-Pの定量化に課題が残ったが,福岡県がノリの生育に必要としている0.0124mg/Lより低くても,ノリの生育や品質を保証できる濃度であることが示唆された.下水放流水によって放流口近傍の場所でノリの色落ち時期の遅延や品質低下の緩和が生じ,その効果は西側の漁場で生じやすいことがわかり,季節別管理運転によるPO4-P供給量増加がその一助となっていると推察された.

  • 宮本 豊尚, 中村 友二, 高岡 昌輝, 田中 しのぶ, 塩田 憲司, 大下 和徹, 伊藤 竜生, 谷藤 渓詩, 小林 俊樹, 宍田 健一, ...
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25041
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     下水汚泥と草木バイオマスの混焼時のリンとカリウムの形態変化を明らかにすることで,下水汚泥焼却灰の肥料としての利用可能性を評価することを目的に,実験炉において下水汚泥と刈草および剪定枝との混焼試験を行った.混焼試験で得られた焼却灰に対して各種分析や熱力学平衡計算を併用し,混焼にともなう組成変化の特性について整理を行った.さらに焼却灰の肥料としての特性を調査するため,溶出試験により評価した.草木バイオマスとの混焼により供給されたカリウムは汚泥中のアルミニウム化合物やケイ酸化合物と反応してアルミノケイ酸塩を生成し,その反応の過程でリンはカルシウム塩などの形態に移行することが予想された.植物が利用可能な形態であるク溶性のカリウムやリンが草木バイオマスとの混焼により増加し,肥料としての価値が向上した.

  • 片平 智仁, 潟 龍平, 志戸 遥風, 中川路 光庸, 上薗 一郎, 山田 真義, 黒田 恭平, 山口 隆司, 山内 正仁
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25042
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,下水汚泥と地域バイオマスから調製した新規下水汚泥肥料の茶栽培への施肥効果を明らかにするために,新規下水汚泥肥料の最適施肥量(割合),最適施肥時期および地下水への窒素溶脱量を検討した.その結果,新規下水汚泥肥料を施用した試験区は,対照区(菜種油粕施用)と同等の生葉収量・茶葉品質が得られ,新規下水汚泥肥料は菜種油粕の代替肥料として100%利用(最大年間施肥窒素量50kgNのうち24kgN/10a施肥)できることがわかった.また,新規下水汚泥肥料を春肥または秋春肥に施用することで,有機配合肥料と同等以上の生葉収量と荒茶品質が得られた.さらに,新規下水汚泥肥料は対照区(有機配合肥料)と比較して,浸透水の硝酸態窒素濃度が低かったことから(秋春肥区:15〜30mg/L,対照区:35〜100mg/L),環境負荷が小さいことが示唆された.

  • 鍜治 桃子, 江崎 聡, 岡崎 亮太郎, 山崎 智美, 荒木 唯, 原 宏江, 端 昭彦, 本多 了
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25043
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,下水サーベイランスによる新型コロナウイルス感染症流行把握の有用性を検証することを目的として,国内3都市において下水中の新型コロナウイルス遺伝子濃度のモニタリングを行い,各都市の新規感染者報告数の相関関係を検証した.その結果,第7波では小松市・太田市・船橋市の3都市すべてにおいて,下水中ウイルス濃度およびウイルス負荷量と,採水日直後の新規感染者報告数との間に有意な相関が見られ,下水ウイルス指標が市内の感染者の先行指標として有用なことが示された.また,ウイルス濃度に下水流量を乗じたウイルス負荷量についても,高い相関を得られた.相関が低かった太田市の第6波においては,スポーツイベント開催日に下水ウイルス濃度の急増がみられたことから,下水サーベイランスがイベント等による市外からの感染者の来訪を把握できることが示唆された.さらに,早期流行検知指標として,下水ウイルス負荷量(W)と医療サーベイランスによる新規感染者報告数(C)の比であるW/C比を用いることで,採水日直後の新規感染者報告数の増加確率のほか,医療サーベイランスによる流行把握の信頼性検証や地域外からの感染者の流入を把握できる可能性が示唆された.

  • 横山 律, 西山 正晃, 松山 裕城, 渡部 徹
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25044
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     抗菌薬使用の少ない同一の畜産施設で飼育されている親子の肥育牛を対象として,薬剤耐性大腸菌の発生動向を調査し,施設内での耐性菌の発生起源を解析した.調査は2022年1月から12月にかけて実施し,月1回の頻度で親子6ペアからふん便を採取した.親牛と子牛から合計384株の大腸菌株を単離し,薬剤感受性試験を実施したところ,子牛からのみ耐性菌が検出され,その割合(0.52%,2/384)は国内の報告事例と比較して極めて低かった.分離された2株の薬剤耐性大腸菌は,blaTEM保有アンピシリン(ABPC)耐性とtetB保有テトラサイクリン(TC)耐性の菌株であった.遺伝子解析の結果から,blaTEM保有ABPC耐性株は外から施設内に持ち込まれたこと,tetB保有TC耐性株は施設外からの持ち込み,あるいは体内で発生したいずれかの可能性が高いと考えられた.

  • 井口 晃徳, 五十嵐 光哉, 星野 琴音, 山本 凌太, 堀 沙織里, 山口 利男, 上村 繁樹, 大久保 努, 重松 亨
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25045
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     CARD-FISH法とFACSを併用した,プラスミドDNA由来の薬剤耐性遺伝子と細菌種を結びつける,培養非依存的な薬剤耐性菌の網羅的な解析技術の開発を試みた.大腸菌E. coli菌体とpCR2.1 TOPOプラスミドベクターを使用し,Class A βラクタマーゼTEM-1遺伝子を標的としたモデル実験を行った結果,TEM-1遺伝子を保有するE. coli菌体の蛍光検出が可能であった.活性汚泥試料に本手法を適用し,リアルタイムPCR法による遺伝子定量を行った結果,フローサイトメトリーによるソート前と比較してTEM-1遺伝子が6.2倍〜45.3倍に濃縮され,本手法の有効性が確認できた.さらに,ソート後のサンプルでは,Bacilli綱やNegativicutes綱,Othersなどの割合が増加していたことから,これらが活性汚泥における主要なTEM-1遺伝子保有耐性菌であることが示唆された.

  • 川口 竜世, 赤尾 聡史
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25046
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     ポリ乳酸の原料となる乳酸は発酵により生産され,石灰を中和剤とする方法が一般的とされる.しかし,乳酸精製の段階で石膏が発生するため,その改善が可能となる中和剤が求められる.そこで,キトサンを中和剤とする乳酸発酵を提案したが,キトサンの乳酸生成菌に対する抗菌性への対処に課題があった.キトサンの抗菌性は分子量により変化するとされているため,本研究では,異なる分子量のキトサンを中和剤とする乳酸発酵を検討した.抗菌試験の結果,3,000~20,000 Daのキトサンは用いた乳酸生成菌に対して抗菌性を発揮しないことを確認した.乳酸発酵では,キトサンオリゴ糖を用い培養液pHを高く維持する培養によりキトサン乳酸塩の生成を確認した.また,同菌に対して抗菌性を示す高分子キトサンについては,菌体を包括固定化することで乳酸塩の生成を確認した.

  • 永禮 英明, 枡田 隆広, 石川 千遥
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25047
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     微細藻類Haematococcus lacustrisはストレス環境下でカロテノイドの一種・アスタキサンチンを生産する.また,H. lacustrisは環境条件に応じ大きく3つの形態(遊泳型,パルメロイド,シスト)に細胞を変化させる.アスタキサンチンを生産しながら栄養塩を除去・回収する資源回収型廃水処理プロセス実現のためにH. lacustris優占培養法を検討する中で,細胞形態を把握するための画像認識技術を検討した.OpenCVではパルメロイドとシストの球形細胞と遊泳型とを区別する分類器を作成し84%の正解率を得たものの,パルメロイドとシストを細胞色により分類する2段階での分類が必要であった.YOLOによる3種の細胞形態同時認識では,全ての形態で90%を超える高い正解率が得られた.画質が認識精度に及ぼす影響を検討したところ,学習時よりも認識時に低画質の画像を使用した場合,正解率が大きく低下した.

  • 玉井 昌宏
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25048
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     熊本県の大気環境測定車により阿蘇山火口原南側地域において観測された二酸化硫黄SO2の濃度データと種々の気象データを分析して,環境基準を超過する高濃度事象の発生と気象状況との関連性を検討した.加えて,高濃度事象発生日を対象とした数値計算を実施して,火口からの火口原南側地域底部に至るまでのSO2の移動過程を検討した.高濃度事象発生は一般風の風向に強く影響されることから,季節変動があり,当該地域では冬季に発生しやすいことがわかった.高濃度事象発生日の再現計算により,寒気流入時のおろし風,あるいは一般風が弱い場合の谷風循環が,火口から火口原南側底部へSO2を輸送することがわかった.

  • 田中 周平, 北地 優太, 李 文驕
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25049
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     2020年5月の中央環境審議会の答申において,PFOS, PFOAが公共用水域および地下水の要監視項目とされ暫定的な指針値が設定された.環境水中のPFASs濃度の報告例は多くあるが,土壌中のPFASs含有量や地下水中PFASs濃度との関係は明らかではない.本研究では沖縄県嘉手納町の土壌ボーリング試料(37試料)を対象に21種類のPFASs(13種類のPFCAs, 8種類のPFSAs)と14種類のPFASs前駆体を分析した.主な成果を以下に記す.1)35物質中20物質が定量下限値以上で検出された.2)深さ別の平均値はPFOSが最大であり2,620ng/kg-dry, 続いてPFHxAで2,280ng/kg-dry,3番目は8:2FTSであり360ng/kg-dry, 4番目は6:2FTSで222ng/kg-dryであった.3)表層土壌中のPFOS含有量は28,000ng/kg-dryであり,世界のバックグラウンドの中央値(Rankin et al., 2016)の180倍,U.S.EPAが指定している地下水保護のための指針値の74倍であった.4)周辺の地下水から最大1,530ng/LのPFOSが検出された.

  • 髙城 翔吾, 酒井 宏治, 柳原 正実
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25050
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     近年,粒径5mm以下のプラスチック粒子と定義されているマイクロプラスチック(以下,MPsとする)による水環境の汚染が報告されている.中でもタイヤ由来のMPsは一次MPs発生の28%を占めていることからタイヤ由来のMPsの発生状況を把握することは海洋流出抑制に寄与すると考えられる.本研究では,多摩市乞田と亀戸で道路粉塵のサンプリングを行い,FTIRを用いてタイヤ粉塵由来のMPsの同定を行った.乞田は直線2ヶ所,亀戸では交差点内4 か所とその手前の直線2か所でサンプリングを実施した.結果,両地点の直線で得られたMPsの比較をすると交通量の多い乞田の方が多くなった.また,交差点内の複数車線が交わる地点のMPs数はその他の地点に比べ2倍以上多くなったため,様々な方向から車両が通る地点やカーブが発生する地点でMPs数が増加する可能性が示唆された.

  • 渡邉 俊介, 菊池 岳郎, 末継 淳, 木口 倫
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25051
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     水域に流出した一部の農薬が非標的生物へ及ぼす悪影響が懸念されている. 本研究では主要な一次生産者である珪藻の走光性に着目し, ネオニコチノイド系殺虫剤の生態影響について検討した. ネオニコチノイド系殺虫剤は正の走光性を促進或いは阻害する効果があり, イミダクロプリドは本実験の最高濃度である160mgL-1においてもNitzschia sp.の走光性を促進させた. チアクロプリドについてはNitzschia sp. 及びMayamaea pseudoterrestrisの走光性をそれぞれ最大で29%及び70%減少させたが, 環境中濃度において直ちに走光性が低下する可能性は低かった. 本研究手法の細胞数の計測によって走光性に与える生態影響を評価することが可能であった. 走光性に着目することで, 光が不均一に照射される実環境中での増殖阻害評価への応用に期待できる.

  • 平山 奈央子, 清水 丞, 大住 英俊, 森永 晃司, 吉井 啓貴, 大村 達夫, 佐野 大輔
    2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25052
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/15
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     下水中に含まれる病原微生物をモニタリングすることによって集水エリア内における感染症の流行状況を把握することができ,この下水ウイルス情報の活用が検討されている.本研究は,仙台市民を対象にアンケート調査を実施し,下水ウイルス情報としての仙台市内での1週間あたりのCOVID-19予測感染者数の規模が人々の外出行動の変化に与える影響を明らかにすることを目的とした.分析の結果,罹患経験とワクチン接種回数は外出行動の変化と有意な関係がなく,影響を確認できなかった.予測感染者数として12,000人と1,200人を提示したところ,1,200人の場合において,感染リスク認知が高いほど,また,外出に対する不安が大きいほど新たに実施した感染対策の種類数が多く,変化の程度も大きいことが明らかになった.

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