土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号: 土木学会論文集
79 巻, 23 号
特集号(建設マネジメント)
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
特集号(建設マネジメント)論文
  • 大髙 正暉, 堀田 昌英
    2023 年 79 巻 23 号 論文ID: 23-23168
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル 認証あり

     地盤リスクの発現による建設コストの増加は依然として多発しており,地盤技術者による地盤リスクマネジメントの必要性が指摘されている一方,地盤技術者の技術力にはさらなる活用の余地が残されている.

     本研究では,協力ゲーム理論の一理論であるシャープレイ値により地盤リスクマネジメントの効果を定量化し,マネジメント効果が高い工事事例を分析することで,特に効果が高い工事として大規模地すべりリスクを有する工事が挙げられることを示した.さらに,欧米等で用いられる受発注者間の地盤リスク分担の手法であるGeotechnical Baseline Report(GBR)を契約理論により定式化することで,大規模地すべりリスクを有する工事での地盤リスク分担手法として,地すべりの前兆となる変状発生後のGBRの設定が有効である可能性を示した.

  • 保田 敬一, TAN YEN XIN
    2023 年 79 巻 23 号 論文ID: 23-23170
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル 認証あり

     トンネルの施工においてデジタル技術の活用は効率化やコスト削減に寄与するものとして期待が高い.DX先進国の欧米ではDX技術の中核をなすBIMを採用し,3Dモデル化だけでなく,情報取得,情報管理,運用プロセス改善,協働などを積極的に進めている.本論では,欧米における近年のいくつかのトンネルプロジェクトを対象にして,施工現場での課題に対してどのように対処しているかをBIMの適用状況とともにいくつか紹介する.トンネルは延長が長く,内部空間が地山・地層の状態に影響を受けること,トンネルに特化した統合的BIMソフトがないこと,機械電気配管といった土木以外の分野との協働が不可欠であることなどの特徴があり,BIMの将来性は有望であると認識されているものの,まだまだ課題も残されている.

  • 中村 和博, 川本 熙鷹, 小濱 健吾, 笹井 晃太郎, 貝戸 清之
    2023 年 79 巻 23 号 論文ID: 23-23171
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル 認証あり

     高速道路上の舗装補修工事は,路面性状調査の結果に基づき補修範囲が決定される.しかしながら,調査と工事発注の間隔は異なり,発注計画の策定にあたり直近の調査データが不足する問題が生じる.そこで,本研究では,統計的劣化予測手法を用いた舗装補修工事の発注計画を支援する方法を検討する.具体的には,高速道路舗装の劣化管理指標および補修目標値が連続値で管理されていることを踏まえ,連続量を用いた劣化ハザードモデルを推定する方法を採用する.この際,実務において使用されている膨大な路面性状調査データを用い,IRIとAs層厚の関係に着目した分析を行う.さらに,補修履歴の情報の欠損が,劣化パフォーマンスカーブの推定結果に与える影響を考察する.

  • 石橋 寛樹, 飯土井 剛, 石神 晴久, 森田 大樹, 岩城 一郎
    2023 年 79 巻 23 号 論文ID: 23-23172
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル 認証あり

     東北地方の橋梁における種々の橋梁・環境・気象データを活用し,LightGBMによる機械学習を行うことで,土砂化・アルカリ骨材反応・凍害の発生有無を判定する橋梁劣化発生予測モデルを構築する.各劣化種別における予測モデルの判定結果を大きく決定づける劣化因子をShapley値に基づいて同定するとともに,劣化メカニズムとの整合性から予測モデルの妥当性を検証する.さらに,構築される橋梁の劣化発生予測モデルに対して,2種の気候モデルによる気候変動予測データを入力することで,将来における橋梁の劣化発生推移を予測する.気候変動の有無をそれぞれ想定した予測結果を比較した結果,気候変動の影響により橋梁の劣化発生数が増減することが示唆された.また,将来新たに劣化が発生する橋梁は,現時点で劣化を有する橋梁の周辺に多く分布することが示された.

  • 中嶋 一雄, 五艘 隆志
    2023 年 79 巻 23 号 論文ID: 23-23173
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル 認証あり

     公共事業の設計業務は,発注形態の多様化や,i-Construction,BIM/CIMの導入等,測量,設計,施工技術が進歩している中,設計業務のプロセスや「土木設計業務等共通仕様書」の内容は従来から大きく変更がされていない.本研究では,まず現状の道路設計業務について,国土交通省,高速道路会社の設計プロセスや土木設計業務等共通仕様書を整理・確認した.その結果,国土交通省と高速道路会社の土木設計業務等共通仕様書において,設計のプロセスや実施内容が異なることと,米国の設計プロセスと異なることが確認された.更に道路設計実務者を対象に,土木設計業務等共通仕様書の理解度,設計業務のプロセスの課題点に関するアンケート調査を行った.その結果を踏まえ,道路設計のプロセスに対し,道路設計業務の効率化が図られる改善案を提示した.

  • 増永 裕太, 鈴木 貴大, 堀田 昌英
    2023 年 79 巻 23 号 論文ID: 23-23175
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル 認証あり

     近年,各地方公共団体が同一の会計方針を採用して財務書類を作成するようになり,統一的な基準によって財政状態を評価できるようになった.本研究では,関東地方の地方公共団体を対象に統一的な基準による財務書類から複式簿記の特性に基づくストック指標を7つ算定し,これらの指標から財政健全性を評価できることを示す.また,資産・負債の総体を反映するストック指標は決算情報から算定される財政健全化法に基づいたフロー指標と異なる性格を有していることを確認する.そして,ストック指標から判断された財政健全性に懸念のある地方公共団体を抽出し,クラスター分析を適用することで財政健全性を圧迫している原因を類型化する.

  • 堀江 進, 中前 茂之
    2023 年 79 巻 23 号 論文ID: 23-23177
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル 認証あり

     一般国道337号道央圏連絡道路(長沼町~江別間)の建設工事において,ピーク時には月間1,360台もの骨材運搬ダンプトラックが盛土材等の積込作業を行う.このため,砂利採取業者が営む骨材堆積場所でのダンプトラックの渋滞や,運搬経路上での滞留が発生することや,一般ドライバーや近隣住民からの苦情などが大きな課題であった.そこで,受注から骨材積込みまでの工程をクラウド上で管理するダンプトラック運行管理システム「MeDDel」を採用し,積込スケジュールの効率化を図った.また,カメラによるナンバー認識機能を導入し,ドライバーの注意喚起と運転マナー向上を図り,苦情を大きく改善した.さらに,ドライバーと骨材積込オペレータ間での情報共有不足に起因する積み込みトラブルも改善され,効率的な骨材積込作業が可能になった.

  • 増山 遼太, 小澤 一雅
    2023 年 79 巻 23 号 論文ID: 23-23179
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル 認証あり

     我が国において深刻化している人手不足対策の一つとして,外国人技能者受入れのための特定技能制度が2018年に創設された.建設分野においても,2021年度までに6,000人を超える外国人技能者が特定技能の在留資格を取得している一方で,そのほとんどが技能実習生からの移行と言われている.そこで,本研究では,建設分野における特定技能制度の持続的発展を主眼とし,外国人技能者受入れの実態を明らかにするとともに,外国人技能者受入れにおける好実践事例を抽出することを目的とした.外国人技能者を受け入れている企業へのインタビュー調査等の結果,リクルート,OJT,技能向上および日本語能力向上等における取組みを好実践事例として抽出できた.

  • 立花 潤三, 宮下 航, 三浦 輝久, 尾山 武史, 榊原 一紀
    2023 年 79 巻 23 号 論文ID: 23-23180
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル 認証あり

     わが国の橋梁の多くは高度経済成長期に建設されたものが多く,それらの老朽化にともなう補修・更新費用の増大が問題となっている。それらを維持管理する地方自治体では,景気低迷や急激な人口減少等により財政のひっ迫化や人材不足が深刻であり,将来的には橋梁の統廃合が避けられない状況にある。橋梁を削減する際の課題は住民合意である。住民合意形成をうまく進めていくためには,これまでのトップダウン的な説明ではなく地域住民の立場から見た影響評価が不可欠である。本研究では,マルチエージェントシミュレーション(MAS)を用い,地域住民の日常的移動をコンピュータ上で再現し,橋梁の統廃合によって住民が受ける不利益を定量化するモデルを開発した。開発したMASではエージェント(住民)に移動負担を表す関数を持たせることで住民の複雑な経路選択を表現することができ,住民視点から橋梁を評価することが可能となった。開発課題である計算負荷は,2層構造化した最適化アルゴリズムを開発し解決した。そして,富山市を対象として実証的検討を行い,住民視点からの橋梁の維持管理優先度を提示することができた。

  • 二宮 仁志, 福田 茉紘
    2023 年 79 巻 23 号 論文ID: 23-23182
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル 認証あり

     人口減少の進展,節水型社会への移行や産業構造の変化等により水需要は減少傾向にあるほか,老朽化施設の改築更新や耐震化による経費の増加等,水道事業の経営環境は厳しさを増している.今後,有収水量の増加が見込めない中,エンドユーザーの負担増を抑えサービスを継続するには,施設規模の適正化・縮小など固定費引き下げによる経営改善が期待される.本研究は,水需要に応じた水道管路のダウンサイジングによる事業費用縮減効果について定量的に分析するとともに,水道事業経営の改善方策について考察することを目的とする.実在する水道事業を参考に,事業リスクを考慮した仮想水道事業モデルを構築,管径縮小と給水エリア縮小の2つのダウンサイジング手法が事業経営に及ぼす影響について分析・コンセッション方式の導入効果も交え考察を試みた.

  • 角野 拓真, 長田 健吾, 三木 望, 溝口 敦子
    2023 年 79 巻 23 号 論文ID: 23-23185
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル 認証あり

     洪水時に橋脚周りの局所洗掘が進行することで,橋脚傾斜等の被災が多く発生している.このような被災を未然に防ぐためには,どの橋脚の洗掘危険度が高いかの判断を的確に実施できる仕組み作りが重要となる.従来の洗掘被災リスク評価は,橋脚周りの洗掘深調査の結果を用いて行われている.本研究では,洗掘被災リスク評価の効率化に向けた情報抽出を目的に,河川情報の中で砂州動態に着目し,橋脚周りの経年的な洗掘実態との関連を分析した.その結果,橋脚周りの局所洗掘の発達と河道内の砂州の経年的な移動および固定化には明確な関係性があることが明らかとなった.橋梁の適切な被災リスク管理に向けて,定期的な橋梁の点検業務に加えて,容易に取得可能な航空写真の経年変化から橋梁周辺の砂州動態を把握することで,被災リスク管理の効率化に繋がることを示した.

  • 笹井 晃太郎, 稲垣 博信, 四方 滉也, 貝戸 清之
    2023 年 79 巻 23 号 論文ID: 23-23187
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル 認証あり

     社会基盤施設の統計的劣化予測では,目視点検データを用いてマルコフ推移確率を推定し,マルコフ連鎖モデルにより劣化過程を記述する方法論が多く提案されているが,各種推定手法の有効性や適用可能性について実データを用いた比較事例は少ない.したがって,実務においてアセットマネジメントを実践する際に劣化予測手法の選択基準が明確であるとは言い難い.また,推定手法には,実務者が自ら適用するにあたって,数学的・技術的な障壁を有する手法が存在する.本研究では,各種推定手法の特長や制約条件について既往研究をもとに整理する.その上で,実点検データを用いて,想定される条件下においてマルコフ推移確率を推定し,各種手法が有効的に機能する条件や,適用が不適切になり得る状況を分析する.

  • 稲垣 博信, 笹井 晃太郎, 貝戸 清之, 山村 昂也
    2023 年 79 巻 23 号 論文ID: 23-23190
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル 認証あり

     老朽化が進む社会基盤施設を効率的に管理するための一方策として,複数分野の社会基盤施設を分野横断的に管理する手法がある.本研究では,社会基盤施設の分野横断的管理のメリット・デメリットを俯瞰的に言及する.また,分野横断的管理の実現を後押ししうる外部環境変化についても整理し,依然として各所管省庁の縦割り,用途変更に伴う補助金の返還義務など,制度的課題は残存しつつも,公会計の整備,PFI法改正,DXの発展などに伴い,その導入に向けた技術・制度の推進状況が向上していることを指摘する.さらに,分野横断的管理導入の効果を定量的に評価するための簡易シミュレーションを実施して,分野間の融通によるリスクファイナンスや,更新ピークの時間的分散効果による更新費の平準化の可能性を示す.

特集号(建設マネジメント)報告
  • 大西 正光, 鈴木 文彦, 長南 政宏, 坪井 薫正, 町田 裕彦, 北詰 恵一
    2023 年 79 巻 23 号 論文ID: 23-23188
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル 認証あり

     わが国の地方自治体では,さまざまな官民連携の取り組みが進められている.一口に官民連携といえども,地方自治体の規模や置かれている環境もさまざまであり,また対象事業も多様である.土木学会建設マネジメント委員会に設置されている「インフラ事業におけるPFI/PPP推進研究小委員会」では,官民連携事業に取り組む地方自治体担当者の生の声を聞くことにより,望ましい官民連携事業のあり方を検討するために踏まえておく現状と課題を整理した.その結果,地方自治体が官民連携事業を適用する際に,いわゆる狭義のVFMだけでは解釈できない,さまざまな動機が存在することが分かった.また,官民連携事業において,設計変更に伴う価格調整は議会の議決が必要であり,契約調整を柔軟に行うことができないとすること等が課題としてあげられた.

  • 福田 健, 小浪 尊宏, 大西 正光
    2023 年 79 巻 23 号 論文ID: 23-23189
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/09
    ジャーナル 認証あり

     建設関連企業は被災直後からインフラの早期回復に重要な役割を果たし,被災影響の最小化に貢献している.効果的な災害応急対策を実施するためには,被災状況に応じて利用可能な人的・物的資源を適切に割り当てるための調整が欠かせない.調整を効率的に行うためには,建設関連企業間で共有された関係性やルールが必要であり,これは建設関連の業協会を通じて行われることが多い.建設関連企業が災害対応の局面で直面する課題認識を広く共有することは,今後の災害レジリエンス方策の検討において重要である.本稿では,建設業の役割,制度改正の経緯を整理し,建設関連企業が置かれた社会システム環境を明らかにした上で,地元建設関連企業からのヒアリングを通じて明らかになった課題を報告する.

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