土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号: 土木学会論文集
80 巻, 15 号
特集号(応用力学)
選択された号の論文の45件中1~45を表示しています
特集号(応用力学)論文
  • 田中 尊之, 車谷 麻緒
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15001
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    本論文では,非線形有限要素解析と応答曲面法を用いて,切欠はりの 3 点曲げ実験から,コンクリートの破壊力学パラメータを同定する方法を提案する.提案手法の特徴は,コンクリートの弾性係数・引張強度・破壊エネルギーの 3 つを同時に求められること,ASME V&V 10 に基づく検証と妥当性確認が行われた数値解析を用いていること,応答曲面法に基づく代替モデルを用いて短時間でパラメータ同定が行えること,の 3 点である.はじめに,提案手法の特徴である非線形有限要素解析の概要と,応答曲面法に基づく代替モデルの作成方法について述べる.次に,非線形有限要素解析の代わりとなる代替モデルの性能を確認した後,6 体の実験結果に対して提案手法を適用し,すべての実験結果を 5%未満の誤差で再現でき,パラメータ同定が行えることを示す.

  • 佐藤 伸, 原 朗, 森岩 寛稀, 伊藤 真一, 酒匂 一成
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15002
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    本研究は,原位置試験の再現解析を対象にした妥当性確認方法を提案したものである.原位置試験は熱・流体・力学連成(THM 連成)挙動を把握するためにスイスのモンテリ岩盤試験場で実施されている HE-E 試験を対象とした.THM 連成挙動のうち,相対湿度の再現性に着目し,その妥当性確認方法を検討した.不確実性の定量化については,解析は材料の不確実性に着目し,水分特性曲線のばらつきに着目した.水分特性曲線のばらつきについては,ベイズ推定手法の一つであるマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いて,保水性試験結果に対してばらつきを考慮する水分特性曲線のモデルパラメータの推定を行った.実験の不確実性は計測機器の精度に着目し定量化を行った.以上の方法で不確実性を定量化することにより ASME V&V 10.1 における妥当性確認方法の適用性について検討を行った.

  • 須田 陽平, 斉木 功
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15003
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    任意の断面に適用可能なねじりによる断面変形を持つ梁理論を提案する.この理論では,ねじり角とは独立したそりの大きさを導入し,そりによる断面変形をそりの大きさと断面内分布を表す断面変形モードの積で表す.断面変形モードは周期的な境界条件を持つ代表体積要素の有限要素解析により数値的に求める.この均質化過程により,提案手法は任意の断面に対して適用可能である.導出された支配方程式は,断面変形モードを断面積分した断面パラメタを含み,異種材料からなる非均質断面を持つ梁に対して提案手法を適用したところ,有限要素解析の結果と良い一致を示した.

  • 芦田 拓海, 車谷 麻緒
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15004
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    本論文では,簡易的な機械学習であるナイーブベイズフィルタを用いたコンクリート表面画像のひび割れ抽出法を提案する.ナイーブベイズフィルタでは,二値画像に現れる領域の大きさ,色,形状を特徴量として評価することで,ひび割れ領域とそれ以外の領域を簡単な計算のみで確率的に分類する.解析結果では,ナイーブベイズフィルタで算出されるひび割れ確率を可視化することで,ひび割れ領域を抽出できることを示す.さらに,ナイーブベイズフィルタを構築する特徴量の確率分布に対して,少量の学習データの傾向から確率密度関数を設定し,分類精度を高めるように理想化する方法によって,学習データの収集にかかるコスト削減の可能性を示す.

  • 吉岡 朋紀, 吉川 仁
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15005
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    トポロジー導関数を用いたクラック決定解析では, トポロジー導関数の分布からいくつかの候補クラックを見つけ出すことができる. 本研究では, トポロジー導関数の分布より選びだした候補クラックから正解クラックを決定する段階において, LASSO を用いて正解のクラック配置の決定解析を行う. 境界要素法を用いて 2 つのケースでスパースベクトルを求める代数方程式の影響係数を計算する. 数値例を解き, いずれの影響係数においても正解のクラックを推定することができた. また, 候補クラックの向きが酷似し, 間隔が非常に近い場合においては, 候補クラックが 1 つずつ存在していると仮定して影響係数を計算することで, 十分な精度でクラック決定ができた.

  • 塩井 瑛大, 大竹 雄, 吉田 郁政, 村松 正吾
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15006
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    本研究は, 地表面と工学的基盤において観測される地震動加速度記録の同時学習によるデータ駆動型地震応答解析手法の開発を目的とした基礎研究である. 地震応答解析においては, 入力地震動の非定常性と地盤材料の非線形性への対処が重要な課題となる. そこで, Koopman 作用素理論に基づき, 実空間で観測される時系列データに対して, 時間遅延埋め込みによる高次元化と動的モード分解による次元圧縮を融合した手法を適用し, 高次元空間において線形モデルによる時間発展表現を可能とする地震応答解析モデルの構築を試みた. 本研究では, 実地盤における観測記録に対して提案手法を適用し, 高精度に地震応答を再現する線形モデルの構築を実現させ, 外挿推定への有効性を示した.

  • 高木 柚子, 阿部 和久, 紅露 一寛
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15007
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    太陽の日周運動に伴う建物の日陰の移動が,ロングレールの中立温度 (レール軸ひずみ) の分布特性に及ぼす影響について検討した.まず,軌道のふく進に対し剛塑性と線形弾性の 2 つの簡易モデルを適用し,日陰移動に対する定常解を導出し,中立温度の基本的挙動について調べた.さらに,レール温度解析と軌道ふく進解析とを組み合わせた数値解法を用い,道床縦抵抗力の非弾性履歴特性やレールの熱方程式における非線形項,一年間にわたる日周運動などが中立温度やレール軸力分布に及ぼす影響などについて検討した.その結果,日陰移動が中立温度評価において重要であることがわかった.

  • 北原 優, 北原 武嗣, Michael BEER
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15008
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    階層ベイズ更新では,モデルパラメータ固有の変動を確率分布で表し,モデル応答と観測データの確率的な不一致を最小化するように超パラメータを更新する.著者らは階層ベイズ更新における主観的仮説を避けるため,広範な分布を離散的に近似可能である階段状確率分布の適用を検討してきた.本研究では,新たにパラメータ間の相関を考慮するため,コピュラと階段状確率分布による同時分布のモデル化を検討する.異なる相関構造を表す複数のコピュラから最適なコピュラを決定するため,ベイズモデル選択を援用する.提案手法は,簡単な 3 自由度のバネマスモデルを用いた数値例題により検証され,限られた事前情報と観測データから,パラメータの不確定性を相関構造まで含めて適切に定量化できることを示した.

  • 斉藤 大雅, 大竹 雄, Stephen WU, 高野 大樹, 杉山 友理, 吉田 郁政
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15009
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    本研究では, 日本の海上空港の軟弱基礎地盤の地盤物性値推定を事例に, 階層ベイズモデル(HBM)を用いて地盤パラメータの推定と土質特性の工学的解釈可能性を検討した.具体的には,世界の地盤調査データ(ジェネリックデータベース,GDB)を利用した単純な HBM と類似度に基づく GDB の絞り込みによる HBM との比較を行った.この検討の中で,地盤工学的知見を活用して土層別に類似度絞り込みを行った HBM は高い推定精度を示し,さらに地盤工学的分類などの力学的解釈性を深めることを確認した.ただし,推定精度は GDB の質に依存し,条件によっては推定精度が大きく低下する可能性を指摘した.今後はデータベースの拡充とともに,データベースのラベル付け管理の方法に地盤工学的知見を導入することが重要であることを確認した.

  • 畑井 向, 大竹 雄, 高野 大樹, 杉山 友理, 吉田 郁政
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15010
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    本研究は,海上空港の盛土構築時の地盤変状の実測記録を詳細に分析し,リアルタイムな将来予測やフィードバック制御の可能性を検討している.地盤変状の実記録には,計器の故障等に起因していると想定される観測誤差やバイアスなどの異質性,欠損が含まれている.従って,実観測記録の信号復元により,上記のような本質的ではない情報を除くことは,データ駆動型の予測や制御を実用化するための重要な観点となる.本論文では,実際の観測記録に対して,動的モード分解 (DMD) に基づいた信号復元手法と地盤変状予測モデルの開発可能性を考察している. 多重解像度表現を付与した mrDMD により,局所的に観測に含まれる異質性を簡易に分離できることを確認した.加えて,線形制御理論との親和性の高い DMD-C(時不変システム) により,地盤変状の将来予測モデルが構築できる可能性を示した.

  • 増田 大地, 北原 優, 薛 凱, 長山 智則, 蘇 迪
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15012
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    本研究では,車両の車体応答から軌道の動的変位を推定し浮きまくらぎを検出する手法を提案する.車体の上下動揺とピッチング回転を考慮するためハーフカーモデルを採用し,前後台車中心位置における軌道形状を状態量に含む拡張状態空間モデルを定義した.車体応答を観測量として状態推定を行うカルマンフィルタと RTS 平滑化に,状態量に関する制約条件を考慮してモデルパラメータを同定する遺伝的アルゴリズムを組み合わせた動的変位の推定手法を構築した.その上で,重量差のある車体応答から推定した動的変位の沈下量差に着目し,定量的に浮きまくらぎを検出するための統計的指標を提案した.提案手法はマルチボディ解析を用いて生成した車体応答を用いて検証され,その有効性が示された.

  • 手嶋 良祐, 別府 万寿博, 市野 宏嘉
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15013
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    落石対策構造物を構成するエネルギー吸収部材であるひし形金網は,製造時に塑性加工されるため部分的なひずみ硬化が生じるとともに,変形特性に関して異方性を示すことが知られている.将来,落石対策構造物の縮小模型実験を行うためには,このような特徴を有するひし形金網の力学的相似性を確認する必要がある.本研究は,基礎的な段階として,ひし形金網の基準寸法(実規模)および縮小模型試験体を作製して,ひし形金網の面内および面外方向に対する静的実験を行ったものである.また,実験結果に対する数値解析も行った.実験と解析の結果,各実験の荷重-変位関係および金網拘束部における荷重-張力関係などからひし形金網にはレプリカ則による力学的相似性が成立することを確認した.

  • 水谷 壮志, 石川 敏之
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15014
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    腐食した鋼管部材の補修方法の一つとして,炭素繊維強化樹脂(CFRP)を接着する補修方法が注目されている.鋼管の全周に溝状の断面欠損を補修する場合には,欠損部における鋼管と CFRP の分担断面力は完全合成断面とした計算値と比べ,補修効果が低下することが載荷試験により確認されている.これは,接着剤による力の伝達に起因すると考えられる.CFRP 接着接合では,接着剤の力を伝達が評価できるせん断遅れ理論が提案されているが,断面欠損を有する鋼管部材を対象とした理論解は与えられていない.本研究では断面欠損を有する鋼管に CFRP 接着補修した場合を対象として,せん断遅れ理論による分担断面力を導出した.導出した分担断面力の理論解は,有限要素解析による軸対称解析や載荷試験の結果とおおむね一致した.

  • 中嶋 貴将, 升井 尋斗, 車谷 麻緒
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15015
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    本論文では,重み付き離散ボロノイ分割法を用いたコンクリートの 3 次元メゾスケールモデルの作成方法を提案し,実物のコンクリート片との比較により,メゾスケールモデルの再現精度を定量的に示す.曲面を表せる重み付きボロノイ分割法を用いて,実物の粗骨材形状に近い 3 次元粗骨材モデルを大量生成し,粗骨材モデルのデータベースを作成する.作成した粗骨材データベースの統計量を実際のコンクリートに含まれる粗骨材の分布特性に修正した後,データベースの粗骨材モデルを 3 次元空間に充填させてメゾスケールモデルを作成する.実物のコンクリート片との比較により,提案手法を用いて作成した 3 次元メゾスケールモデルは,実際の粗骨材の粒度や形状を精度よく再現できることを示す.

  • 羽生 隼輝, 車谷 麻緒
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15016
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    本論文では,コンクリート構造物に対する非線形有限要素解析の V&V(Verification and Validation;検証と妥当性確認)に関する基礎的研究として,計算モデルの妥当性確認に必要となる Validation 実験を実施した.本実験の特徴は,同条件で一斉に作製した鉄筋コンクリートはりの載荷実験を同条件で同時期に実施することで,コンクリートの特徴である材料特性のばらつきに起因する不確かさを再現することである.具体的には,曲げ破壊型の鉄筋コンクリートはり 12 体を対象とし,4 点曲げ載荷実験を同条件で同時期に実施した際の実験結果に含まれる不確かさの定量化を目的とする.

  • 藤岡 秀二郎, 辻 勲平, 三目 直登, 浅井 光輝
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15017
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    SPH 法,MPS 法などの粒子法は,自由表面流れなどの形状変化が激しい問題に適している一方で,粒子配置の乱れによる近似精度の低下,海底面のような曲面を有する固体底面の取り扱いが問題となることがある.第 1 の課題に対しては,粒子配置に応じた補正を行い,2 次精度を担保する SPH(2)を提案することで克服した.本研究では,SPH(2)によって評価可能となった混合微分を含む 2 階微分を座標変換に適用することで,第 2 の課題として挙げた曲面を有する固体底面の取り扱いの高精度化を図った.この基礎理論は類似の MPS 法により確立されているが,微分作用素の近似精度の問題から望むような精度は得られなかった.そこで,SPH(2)を座標変換に適用し,静水圧問題やダムブレイク問題などの検証例題を通して,高精度近似モデル SPH(2)の可能性と座標変換の有用性について議論した.

  • 岡野 翔大, 森川 ダニエル, 大﨑 春輝, 浅井 光輝
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15018
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,斜面崩壊の発生規模のみならず被害規模の予測まで可能な数値解析技術を構築することを目指し,まずは崩壊後の地盤流動現象を再現するために,μ(I) レオロジーモデルで流動化地盤をモデル化し,これを SPH 法で高効率に解く技術を構築した.μ(I) レオロジーモデルではせん断速度が小さなときに非常に高い粘性値となり,速度に関して陽解法を使った数値解析手法を採用すると時間増分を非常に小さく設定することが要求される.そこで,完全陰解法型 ISPH 法を GPU 計算機上で実装し,ハードウェアによる高速化と適切な時間積分法によるソフト面での改善を併用することで計算コストを削減し,解析の安定化と効率化を図った.最後に,同手法を使い砂の流動の実験結果と数値解析結果との比較検証を通して,本手法の有用性を確認した.

  • 白井 航太, 小野 泰介, 平野 廣和, 佐藤 尚次
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15019
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    ステンレス製パネルタンクは,地震動による様々な種類の被害が報告されている.これらの原因の一つとして,タンク構造体の振動が主体となるバルジング振動に起因する被害が挙げられる.バルジング振動は,短周期の地震動によって構造と流体が相互作用する連成振動である.しかし,バルジング振動に関する設計基準は無く,これらの基準を確立する必要がある.本論文では,既存 SUS タンクにおけるバルジング固有振動数での正弦波による時刻歴応答解析を行う.この解析結果により von Mises 応力に関しては,長辺壁面の中央部や平板で構成される斜め補強材溶接部の隅角部で大きく応力集中が予想され,溶接部の剥離や斜め補強材の座屈の可能性があると考えられる.

  • 本西 亮太, 牛島 省
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15020
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    非圧縮性流体解析では,離散化された圧力ポアソン方程式の求解が全体の計算時間の大部分を占め,3 次元領域や密度流では負荷が特に大きくなる.一方で,前処理の利用により連立一次方程式の計算時間を短縮することができる.本論文では,3 次元キャビティ流れおよびダムブレイク問題をコロケート格子を用いてスレッド並列計算する際,圧力ポアソン方程式を解く Bi-CGSTAB 法に Multigrid 法前処理を適用し,その効果について検討した.なお,運動方程式に現れる移流項の計算には,TVD スキームおよび,高精度だが計算時間を要する QSI スキームを適用した.その結果,Multigrid 法前処理を用いた場合,圧力計算時間が短縮されることが確認され,格子数 1283,16 スレッド並列時に,圧力計算が最大で 15 倍高速化された.

  • 深澤 一志, 宮内 暖季, 樫山 和男, 吉川 仁
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15021
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    本論文は,任意形状への適用性に優れる有限要素法を用いたインパルス応答解析に基づく音場解析手法の構築を行ったものである.開境界処理には高精度な吸収が可能な PML 法を用いた.また,移動音源の考慮をした解析を行うため,時変畳み込み演算手法の適用を行った.数値解析例として工事騒音と道路交通騒音問題を取り上げ,各種の先端改良型の遮音壁形状を有する問題に適用し,その効果について定量的な比較を行った.また,VR 技術を用いて立体音響に基づく可聴化システムを構築し,VR 空間において計算結果通りの音場がほぼ再現されていることを確認した.

  • 棗田 智香子, 福谷 勇輝, 油川 英史, 谷田 紗音, 高橋 由佳, 増田 悠星, 松井 和己, 倉田 和幸, 三浦 孝広, 都筑 新, ...
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15022
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,ASME V&V-40 で提示されたシミュレーションモデルの信憑性評価の考え方にもとづいて,材料モデルと材料試験から同定した材料パラメータの信憑性を評価する信憑性要因を提案する.固体のシミュレーションにおいては,材料試験で得られた応答を再現するように材料パラメータを同定することが一般的であるため,この応答に対する再現能力だけではシミュレーションモデルの信憑性評価として不十分である.本研究では,パラメータ同定に使用していない応答に対する再現能力を確認することを,あらたな信憑性要因として提案し,これによる等級分類を作成する.樹脂材や木材に対する 4 点曲げ試験を例に挙げ,パラメータを同定しただけのもの,他の応答の再現性を確認したものそれぞれに対する信憑性評価の違いを示す.

  • 山栗 祐樹, 西岡 英俊, 平野 萌果, 佐々木 優奈, 小林 俊一
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15023
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    近年,集中豪雨や台風災害によって,河川橋脚基礎周囲の地盤が流出する洗掘被害が増加している.基礎の沈下や傾斜が生じる中規模程度の被害であれば,応急復旧により短期間で再供用することも可能である.今後の類似災害発生時に,再供用の可否判断をより迅速に行うためには,再供用に必要とされる基礎の残存支持力の発現メカニズムを解明することは重要である.本論文では,剛塑性有限要素法(RPFEM)を局所洗掘後の地盤の支持力問題に適用し,被災直後の地盤の支持特性を評価した.また,解析結果を考察するために,洗掘後地盤に対して Meyerhof の有効基礎幅の考え方を導入した.その結果,洗掘による極限支持力の低下は主に有効基礎幅の影響であり,副次的には洗掘による基礎近傍の斜面の影響であることを確認した.

  • 齋藤 渓太, 後藤 浩之
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15024
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    X-FEM による斜面内部のクラックの発生およびその進展について,静的及び準静的な状況下での検討事例はあるものの,地震時のような動的な岩盤斜面の破壊問題についての検討は見当たらない.本研究では,要素内で閉じる付加自由度表現を用いた拡張有限要素法による岩盤斜面の引張クラックの動的な発生とクラックの進展解析を試みた.岩盤斜面の動的解析例では,入力加速度の違いによるクラックの生成パターンに違いが認められ,これは振動モードの違いに起因するものと考えられる.従来の斜面の安定性評価では振動モードの違いを十分に考慮できないため,振動モードによる崩壊過程の違いを含めた定量的評価が実現できる可能性が示された.

  • 鶴田 若葉, 栁本 史教, 石橋 公也
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15025
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    壁面摩擦の作用によって,横方向加振時の粒状貨物から船舶の貨物倉が受ける荷重は液体動圧と異なる挙動をすると考えられる.本研究では,三次元個別要素法を用いて壁面摩擦係数が粒状貨物荷重に及ぼす影響を評価した.粒子を充填した擬似二次元矩形容器に対して横方向に加振した解析において,動圧は液体貨物とは異なる分布形状を示した.また,底板・側壁の摩擦力を考慮することによって,粒子が衝突する側壁での動圧が壁面摩擦係数の増加につれて減少すると示した.一方で,壁面摩擦が側壁動圧の低下に及ぼす影響は,現実的な摩擦係数の範囲において有意な差は生じなかった.これらの結果から,壁面と貨物間の摩擦による荷重の低減を考慮することで合理的な設計が可能であることが示唆された.

  • 麓 隆行, 前川 洸士朗, 菊池 慎太郎, 山田 雄太
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15026
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    腐食ひび割れ状況が RC 構造物のせん断耐力に影響を及ぼすことが指摘されている.その解明には腐食ひび割れ幅の 3 次元分布とその箇所の載荷時の応力伝達状況との関係の体系的な検討が必要である.そこで本研究では,モルタル中の腐食鉄筋近傍のひび割れ状況とせん断変形の可視化について,載荷状態で撮影可能な X 線 CT 装置の有効性を実験的に検討する.実験では,丸鋼に沿ったせん断面を有する試験体の電食試験と載荷試験で X 線 CT 画像を取得し,丸鋼の断面減少率の推移やひび割れ幅の進展,そして腐食有無による載荷時のせん断面での応力伝達機構の変化を検討した.その結果,X 線 CT 画像により,丸鋼の配置と断面減少率分布との関係の検討,3 次元の腐食ひび割れ幅分布の算出ができた.また,鉄筋腐食の有無による荷重-変位関係の変化から腐食ひび割れによる応力伝達機構の変化を明らかにできた.

  • 宮原 邑太, 堀口 俊行, 竹家 宏冶, 久米田 大樹, 萬徳 昌昭
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15027
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    近年,無流水渓流対策工としてケーブル式透過型砂防堰堤が提案されている.しかし,ケーブルで鋼製堰堤を支持する形式の砂防堰堤は存在せず,土石流の作用力に対する耐荷性能の検討が必要である.そこで本研究は,土石流対策としてのケーブル式透過型砂防堰堤の耐荷性能評価について検討したものである.まず,ケーブルの横衝撃応答を検討した結果,得られた最大張力は静的引張強度と概ね同様であることが示された.加えて,弾塑性解析を用いて,静的引張試験によるケーブルの諸元から実験の再現解析を行った.その後,本解析を用いてケーブル式透過型砂防堰堤の耐荷性能を評価したところ,現行設計荷重を満たすことが判明した.最後に,巨礫の衝突速度におけるエネルギー区分の考察を行い,主堰堤およびケーブルが受けるエネルギー配分を明らかにした.

  • 森田 花清, 毛利 雅志, フィンカト リカルド, 堤 成一郎
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15028
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    土木構造物では疲労損傷事例が数多く報告されており,溶接止端形状改善や圧縮残留応力導入による疲労寿命延伸技術が開発されている.しかし,これらの技術活用において,止端形状もしくは残留応力のどちらか一方の変化に留まらず,材料を含む他の因子も同時に変化するため個別因子を分離した評価は困難である.一方,著者らは巨視的弾性状態を含む繰返し弾塑性応答を高精度に再現可能な材料モデルを開発しており,局所的な弾塑性挙動を用いて疲労亀裂の発生から伝播を連続挙動として評価する手法を提案し,妥当性を示している.本研究では,形状因子と溶接残留応力が溶接継手の疲労寿命に与える影響を明らかにすることを目的として,非荷重伝達型十字溶接継手を対象に疲労寿命評価を行い,形状因子と溶接残留応力が疲労寿命に与える影響の考察を行った.

  • 高橋 利延, 堀口 俊行, 有田 毅
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15029
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    我が国は,都市計画の進展により交通需要が増加し,住宅地の開発に伴い交通網が拡大しているため,道路網は落石災害のリスクに晒されている.その対策の一つに落石防護柵が建設されているが,自然災害を外力とするため,実物大での落石防護柵の性能照査,つまり限界状態の評価が求められている.そこで本研究は,弾塑性解析を用いてワイヤ支持式落石防護柵における実物大衝突実験の再現シミュレーションを試みたものである.その結果,実物大実験における変形応答を概ね再現し,衝突点が中央付近で最大張力を再現することができた.さらに,実物大の再現解析におけるパラメータを使用して落石防護柵の衝突位置を変更したシミュレーションを行い,落石の捕捉時における弱点部分となり得る部材について整理した.

  • 柴田 誉, 佐藤 啓介, フィンカト リカルド, 堤 成一郎
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15030
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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    近年の構造設計思想の変遷を背景に,発見された疲労亀裂に対して亀裂閉口現象を活用した疲労寿命延伸技術がこれまで数々提案されている.しかし,これら現象は,主に実験検討としての報告に留まり,詳細な数値解析によるメカニズム解明や設計支援ツールの確立はなされてない.本研究では,著者らが開発する弾塑性材料モデルおよびそれを用いた疲労亀裂伝播寿命評価手法により,腐食を活用した疲労寿命延伸技術(くさび効果)のメカニズム解明を可能とする新たな評価手法の確立を試みた.その結果,腐食を模擬した亀裂面要素の膨張解析により,亀裂面接触を早期に起こし,亀裂面閉口による寿命延伸効果を再現可能であることを示した.また,同解析条件の異なる試験条件に対する適用性を確認し,腐食によるくさび効果を統一的に再現可能であることが示唆された.

  • 中島 亮輔, 酒匂 一成, 伊藤 真一, 北村 良介
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15031
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    土の水分特性曲線は不飽和地盤の浸透挙動を把握するために重要なパラメータである.本研究では,粒度や間隙比を基に間隙径分布を算出し,水分特性曲線を推定する間隙モデルに着目している.本論文では,モデルの推定精度を向上させるために,24 試料の火山灰質砂質土に対してモデルパラメータである平行移動指数を算出し,粒度特性値との関係性について検討した.また,粒度特性値から平行移動指数を推定できる近似式を求めた.さらに,粒度の異なる火山灰質砂質土の保水性試験結果について,近似式を用いた水分特性曲線の推定精度について考察した.その結果,近似式を用いることで,粒度特性値から平行移動指数を算出でき,試験結果に近しい計算結果を算出することができる可能性が示唆された.

  • 菊池 綾嶺, 中村 亙, 山本 佳士
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15032
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    極大作用を受けるコンクリート構造物が破壊・崩壊する過程において,初期の要素ネットワークを超える大きなせん断すべり挙動や,破砕片同士が接触する挙動までを再現するために,著者らが提案している幾何学的非線形性を考慮した剛体バネモデル(RBSM)に,要素間のネットワークを更新する手法を導入した.具体的には,RBSM の多面体要素を複数の接触球で表現し,大変位・大回転挙動解析の過程で接触と判定された要素間に,新たに RBSM と等価な低減積分ティモシェンコ梁要素を配置することで,接触挙動を表現する手法を提案した.検証解析の結果,提案手法は,ひび割れが断面を貫通した後,部材の大回転挙動を経て,他の部材と接触し,新たな抵抗機構が形成される挙動までを再現できることが分かった.

  • 堤 成一郎, 小川 太希
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15033
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    応力集中は疲労性能に大きな影響を与えることが知られており,実測形状に対する FEM 解析により,任意形状の応力集中を評価可能であるが,相応の計算コストを要する.そこで,応力集中係数を簡易に推定可能な評価式が提案されている.しかし,入力情報となる形状パラメータの取得には,多くの労力を要すとともに,一意に決定可能な手法は提案されていない.本研究では,溶接継手の形状と応力集中係数を自動評価可能なシステムの確立を目的として,止端半径・フランク角・余盛高さ・余盛幅・角変形・目違い等の形状パラメータを一意に自動決定し,応力集中係数まで算出可能な手法を開発した.理想形状に対する検証により,予測精度が高いことを確認した.実継手に対する手動計測結果との比較では,止端半径をより小さめに,すなわち安全側に評価することを確認した.

  • 松丸 貴樹, 冨田 佳孝, 牛田 貴士
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15034
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    被圧帯水層を有する難透水性地盤で仮土留めを用いた掘削工事を行う際には盤ぶくれの検討が必要であり,土留め壁の根入れ長は盤ぶくれに対するつり合い安定検討の結果に依存することが多い.本研究では 2 次元土-水連成有限要素解析で得られた間隙水圧や有効応力の変化について考察を行い,解析で得られた難透水層地盤での応力挙動をもとに,盤ぶくれに対する安定検討手法としての活用の可能性を示した.また,有限要素解析に代わる応力挙動の予測手法として,古典土質力学に基づく地盤内応力算定手法を掘削底面地盤の応力予測に活用する手法について検討を行った.地盤内応力算定手法によって有限要素解析で得られた難透水性地盤での鉛直・有効応力を概ね評価できることが確認され,盤ぶくれ発生の予測手法としての適用が期待できることがわかった.

  • 田上 聖人, 中田 幸男, 梶山 慎太郎
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15037
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    大粒子と小粒子の 2 種類の粒子で構成される二種混合体には,大粒子含有率ごとに性質が変化する中間骨格構造が存在する.本研究では,形状の異なる大粒子の二種混合体に対して実施した安息角実験の再現解析を,DEM を用いて行い,可視化した強い接点ベクトル,接点の種類ごとの接点力,大粒子重心間の距離を分析した.その結果,強い接点ベクトルは,中間骨格構造が始まる大粒子含有率から現れ始め,大粒子が増加するにつれて,山の頂上方向に向けて,発達していくこと.大粒子と大粒子の接点力と,一部の大粒子と小粒子の接点力は,中間骨格構造において増加するが,小粒子と小粒子の接点力は減少すること.大粒子重心間の距離は,水平方向に比べて,鉛直方向の距離が短いことが明らかになった.

  • 齋藤 和樹, 堀口 俊行
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15038
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    近年の異常気象の影響によって,大規模な土石流が発生し,鋼製透過型砂防堰堤が破損する事例が報告されている.特に,大武川第 5 堰堤では捕捉部分を満砂状態にした後,越流礫が下流部の部材を損傷させる事例が発生した.そこで本研究は,個別要素法を用いて越流礫によって被災した事例を参考に,実際の被災状況の損傷要因分析を行ったものである.具体的には,現地礫径調査から礫径を決定し,被災データを基に礫を流下させて部材の破損を検討した.その結果,礫径 5.0 m の巨礫が天端付近に停滞し,後方から流下してくる礫群によって押し込まれ,水平材を破損した後,巨礫が一気に斜材を後方の下流部に流下させていることが明らかになった.また,対策として既設の堰堤に対して接合部の越流部材を使用することが有効であることを示した.

  • 森 広毅, 別府 万寿博, 市野 宏嘉, 原田 耕司, 福井 秀平, 松澤 遼
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15039
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    飛来物の単一衝突を受ける RC 版の局部破壊評価や補強法に関する検討は行われてきたが,繰返し衝突を受ける RC 版の破壊挙動や補強法に関する検討はあまり行われていない.本研究は,飛来物の繰返し衝突を受ける RC 版の破壊挙動およびポリウレア樹脂を裏面に塗布した RC 版の耐衝撃性能に関して実験および数値解析的な検討を行ったものである.実験では,繰返し衝突による RC 版の破壊特性を調べたうえで,ポリウレア樹脂による補強や剥離片の飛散防止効果について分析した.数値解析的な検討では,飛翔体の運動,加速度特性およびポリウレア樹脂の塗布による破壊抑制効果について検討した.

  • 軸屋 雄太, 酒匂 一成, 伊藤 真一
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15040
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    降雨後の斜面安定性の評価において地盤内の水分変動を定量化するためには,地表面での水分流束の境界条件である蒸発量を把握することが重要となる.本論文では,蒸発量推定方法の一つであるバルク法に着目し,その未知パラメータである蒸発効率の算定方法について,自然対流の条件下を対象に検討した.はじめに,蒸発効率の算定に必要な交換速度を熱力学的観点から考察し,土と水の熱容量の違いを考慮した新たな交換速度の算定方法を提案した.次に,室内での蒸発実験から,提案法で得られた交換速度を用いて蒸発効率を算定し,その妥当性と適用性を評価した.その結果,提案法を用いると,蒸発効率が定義域を満たす 1 以下の値として算定できることを確認した.併せて,実験の初期条件による蒸発効率への影響を排除するためのデータ整理手法を示した.

  • 佐伯 昌之, 松井 真吾, 川又 忠司
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15043
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    F 型支柱で支持された道路情報板の異常を加速度計測により検知することを目的として,振動特性と損傷に対する感度を調べた.まず,土工部 3 箇所と橋梁部 3 箇所を選定し,供用中の情報板の加速度を計測した.そして,共通する 4 つの振動モードの存在を確認し,ERA 法により解析した場合の精度・検出率を定量化した.また,同じ構造形式であっても,設置環境により固有振動数が異なることも確認した.次に,土工部を想定して実規模の損傷実験を行い,損傷に伴う固有振動数の変化量を確認した.さらに,境界条件に回転バネを導入した数値モデルを構築し,橋梁部で発生する固有振動数の変化量を推定した.損傷に伴う固有振動数の変化量と計測精度を比較した結果,安定した環境条件のもとであれば,加速度計測により引張側アンカーボルトの軸力喪失を検知できる可能性が高いことを示した.

  • 平井 秀, 小野 泰介, 平野 廣和, 佐藤 尚次
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15044
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    震度 6 弱を超える地震が発生する度に,バルジングによる貯水槽の損傷被害が多数報告されている.バルジングは,地震動によって壁面構造物と流体が相互作用する連成振動であり,貯水槽の損傷を引き起こす.バルジングは 2022 年に新たな指針に規定されたばかりであるため,既存の貯水槽に関しては発生の有無を判断するための手法の構築が不可欠である.本研究では,バルジングの被害が発生するとされる 10Hz 以下の固有振動数を持つと考えられる実機 SUS パネルタンクを対象に,微動計観測と固有振動数解析を行い,固有振動数を推定した.その結果,両者から算出したバルジング固有振動数が一致し,対象の貯水槽でバルジングが発生する可能性が判明した.また,本微動計観測手法は 10Hz 以下の固有振動数を持つとされる SUS パネルタンクに特に有効であることが示された.

  • 徳永 宗正
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15045
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    本論文では,従来未検討であった600km/hまでの超高速列車通過時における鉄道複線桁のねじり振動が,橋りょうの設計および維持管理に与える影響について概略検討した.はじめに,複線桁の標準的な断面モデルを設定して,ねじりモード/曲げモードの固有振動数は,開断面のコンクリートT桁の場合は1.2~1.3倍程度,閉断面のPC箱桁,合成箱型の場合は3~5倍となることを示した.理論検討および数値解析により,高速列車通過時のねじり振動応答を評価し,300km/h程度までの従来の速度領域においては,ねじりモードの顕著な共振発生しないが,超高速鉄道や将来的な速度向上を考えると,ねじりモードの1次共振の発生に留意する必要がある.また,ねじりを考慮しない従来の設計法は複線桁の応答変位を安全側に評価するが,ねじり共振に伴う顕著な加速度の発生により,版上設備の動的応答が増幅する可能性を示唆した.

  • 穴太 聖哉, 三津谷 維基, 小林 実央, 末冨 岩雄, 藤田 航平, 市村 強, 堀 宗朗
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15046
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    都市ガスの輸送ラインである高圧ガス導管の耐震設計は,過去の大地震の都度その妥当性が確認されている実績のある手法ではあるが,地域の断層や地盤情報,地震に関する最新知見などを考慮することができず,高度化の余地がある.本論では,いわゆるガス導管の耐震性評価における性能規定化を目指し,その具体的な手法を提案する.提案手法は,従来はその計算量の大きさから不可能であった,地盤の三次元非線形有限要素解析及び配管系解析を用いることで,時間領域で想定地震動に対して精緻に管ひずみを解析できる.これにより,地域特有の地震や地盤の情報,さらに当該設備の維持管理の最新情報を取り入れて耐震性を評価することができ,将来の維持管理や対策の最適化を実現することができる.

  • 服部 紘司, 松岡 弘大, 田中 博文
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15047
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    車上計測された軌道変位に基づく鉄道橋の桁たわみ推定法の開発が進められているが,在来線で多く利用される 2 台車検測車において物理的に混入する隣接橋りょうの桁たわみの影響は未解明であり,単一橋りょうを対象とした既存手法の適用が困難であった.本研究では,2 台車検測車の軌道変位を利用した桁たわみ推定法確立のための基礎的検討として,有限要素法による構造物の移動荷重解析と軌道検測における信号処理で構成される桁たわみ-軌道変位変換プログラムを構築した.解析結果として得られる 2 つの軌道変位から,形状成分が除去され,構造物の変形成分のみを動的軌道変位差分として出力できる.支間長 13m の桁が連続する区間を対象に試計算を実施し,隣接橋りょうの影響について考察した.

  • 髙瀬 忠郁, 松岡 弘大, 貝戸 清之
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15048
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    列車通過時の桁たわみ振動により鉄道橋桁端付近に建設された電柱が大きく振動し,電線などの線条類の破断に至る場合がある.電柱天端変位に関する目安値(両振幅 80mm)など基準類の整備が進めらているが,線条類の拘束による電柱の固有振動の変動など,電柱天端変位に依存した電柱振動の非線形性に関する分析事例はほとんどない.本研究では,桁変形が電柱への加振力となるよう再定式化した橋りょう上電柱振動用 Time-Varying Auto Regressive with eXogenous(TV-ARX)モデルを構築した.数値解析により検証したうえで,列車通過時における橋りょう上電柱の実測波形を分析した結果,目安値と同レベルの振動が生じた場合でも線条類の拘束が電柱振動の非線形挙動に及ぼす影響は小さいことを実証的に示した.

  • 萩原 大生, 島本 由麻, 鈴木 哲也
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15049
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    農業用鋼矢板護岸では,腐食による板厚の減少が顕在化している.これに伴い,鋼矢板護岸での孔食や座屈が散見される.本研究では,板厚に応じた鋼矢板の温度変動から,赤外線計測による板厚の非接触評価を試みる.解析的検討では,地表面の熱収支に関する理論を応用し,熱収支解析により鋼矢板の温度を気象データに基づいて計算し,表面温度を推定する.実験的検討では,鋼矢板供試体を気象条件下に設置し,熱収支解析による鋼矢板の温度変動と赤外線計測を組み合わせることで,板厚の非接触評価を行った.検討の結果,板厚に応じた温度の相違が顕著となる時間帯を対象に,標準化した温度と板厚の関係において,温度上昇過程では負の相関,温度低下過程では正の相関となることが検出された.

  • 北川 晴之, 徳永 宗正, 池田 学
    2024 年 80 巻 15 号 論文ID: 23-15050
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,列車のレール継目通過による橋りょうの動的応答の増加メカニズムの解明と定量化を目的として,継目の影響が特に大きいと考えられる在来線橋りょうを対象に数値解析に基づく検討を行った.その結果,継目通過による動的応答は,同一台車内の二軸の輪軸の通過に伴う加振振動数と橋りょうの固有振動数が一致するときに発生する共振により増幅することを示し,共振とレール継目の諸元との関係を明らかにした.また,共振時の継目による衝撃係数は,車両/橋りょうの動的相互作用の影響により低下することを明らかにした.さらに,橋りょうの固有振動数の低下やスパンの増加とともに共振時の継目による衝撃係数が低下することを示し,スパンが 30 m より長い場合はレール継目による衝撃係数は 0.05 以下になることを示した.

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