土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号: 土木学会論文集
79 巻, 24 号
特集号(安全問題)
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
特集号(安全問題)論文
  • ⼤⽯ 裕介, 広上 新, 新出 孝政, ⽥上 直樹, 古村 孝志, 今村 ⽂彦
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24001
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     津波避難時の車使用は原則禁止されているが,東日本大震災では車避難により助かった事例もあり検討課題となっている.本研究では車避難があった場合の被災状況予測と,減災に向けた交通制御の検討を,リアルタイムの交通状況を起点に行う手法を検討した.本手法では,商用車プローブデータと道路監視カメラからの断面交通量データにより交通状況をリアルタイムにシミュレーションする.再現された交通状況を初期値とした避難車両の動きの予測を,津波浸水予測と組合せることで,車両の被災地点と台数を算出する.名古屋市臨海部への想定南海トラフ巨大地震による津波に本手法を適用し,車避難台数の増加に対する被災台数の加速度的な増加傾向を確認し,湾岸部からの交通流を優先させる信号制御や津波浸水域外からの車避難抑制による減災効果を確認した.

  • 中村 栄治, 小池 則満
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24002
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     大規模地震が発生した場合,名古屋駅周辺地区において,対向人流の交錯による人流交通の閉塞を防ぐための対策として,主要な徒歩による帰宅経路となるすべての歩道を一方通行化することの有効性を,シミュレーションにより量的に評価した.地震による停電により交通信号は無灯火となり,横断歩道では車両より歩行者が優先して通行する条件でシミュレーションを行った.当該地区の都市再生安全確保計画で記された徒歩帰宅者数を基準値とした場合,基準値の 6 倍までの徒歩帰宅者数であれば,一方通行化した避難経路においては人流交通の閉塞を防ぐことができることが明らかになった.この上限値は,歩道上の花壇や建築物による歩道の狭窄,および人流の合流により決まることがわかった.

  • 高橋 明子, 三品 誠, 菅間 敦
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24003
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     本研究は,住宅建築現場で働く新人作業者に,360度映像を用いたハザード知覚訓練を実施することを想定し,メディア形態と提示装置の4つの組み合わせ(全天球静止画・ヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)条件,全天球動画・HMD条件,全天球静止画・PCモニタ条件,2D静止画・PCモニタ条件)の訓練効果と主観的負担を比較した.訓練効果について危険情報の内容の記憶課題はどの実験条件も成績が良かったが,ハザード位置の記憶課題は2D静止画・PCモニタ条件の成績が悪くメンタルワークロードも高かった.臨場感は実験条件により異なったが臨場感と危険感に有意相関はなかった.映像酔いはどの実験条件も評価値が低かった.以上から訓練状況別に360度映像を用いたハザード知覚訓練の効果的なメディア形態と提示装置の条件を提案した.

  • 原田 紹臣, 酒匂 一成, 水山 高久, 松井 保
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24004
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     近年,熱海の土石流災害を受けて新たに盛土規制法が施行され,今後,更なる盛土等に伴う災害の防止が求められている.その際,盛土の安全性確保においては,二次元分割法又は簡便法(円弧すべり)による検討を基本としている.しかしながら,今回示された二次元分割法による盛土への適用については更なる議論が必要である.そこで,本研究では,今後の盛土規制法における設計実務者に対して有益であると考えられる知見や,盛土規制法における課題やその対応について,常時及び地震時を対象に,ガイドラインにおいて示されている手法を用いた試算により考察した.さらに,実務の設計者が,現場において材料毎の概略的な盛土形状について簡易に評価できる関係性を新たに示した.なお,この二次元分割法を用いて,評価(任意点)位値の変化が安定度に与える影響について試算したところ,前提条件である作用する力のつり合いは認められず,任意点位値の変化に伴って安定度が顕著に異なることが確認された.

  • 近広 雄希, 大野 紅実, 市来 拓士, 豊田 政史
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24005
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     2019年10月6日に発生した台風19号により,信濃川水系千曲川流域では護岸被害に伴う橋梁被害が多数生じた.水害に対する橋梁被害の要因を明らかとすることで,その被災リスクを事前に予測して対策に繋げることができると期待される.一方,既往の研究の多くは洗掘被害に対する検討であり,護岸被害に着目した事例は少なかった.そこで本研究では,令和元年台風19号における橋梁被害の中でも被害の多かった上田市の武石川と佐久穂町の余地川に架かる30橋を対象に,その要因分析を行うとともに護岸被害を含む橋梁被害の有無を判別する上で有用なパラメータを線形判別分析から明らかとすることを目的とする.この結果,既往の研究と同様に架橋年や水深などのパラメータに対する影響が大きいことが分かったとともに,径間数や屈曲度,橋梁の健全度,河川の平面形状が橋梁被害にも影響すると明らかになった.

  • 二神 透
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24006
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     過去の都市火災・地震火災時によって,樹木の延焼遮断効果や延焼遅延効果が認められている.また,樹木の防火効果に関する研究では,樹木の枝葉の着き方,枝葉の部分とその下の幹の比率等を類型化して,樹木の空隙率を算定する研究が行われている.しかし,実際の市街地において,既存の樹木の防火力を風方向に対して総合的に評価した研究は見られない.著者は,樹木の防火効果を組み込んだ地震火災延焼シミュレーション・システムを用いて,松山市を対象に既存樹木の防火効果を総合的に評価した.具体的には,風速,風向,出火点を変化させ,樹木の防火効果(樹木がある場合とない場合の効果)を定量的に評価した.さらに,既存の緑地が避難に要する時間を大きく低減していることや,樹木整備による更なる防火効果を視覚的かつ定量的に示すことができた.

  • 扶川 巧真, 金井 純子, 白山 敦子, 小川 宏樹
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24007
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     過去の災害を経験した特別支援学校の事例調査の結果,特別支援学校には安否確認や避難所運営,学校再開等において特有の課題があることが分かった.また,避難所指定の有無に関わらず避難所としての役割を求められたケースもあった.このような点を踏まえて,徳島県内の特別支援学校を対象に,災害リスク分析と各校の学校防災計画を調査した結果,津波,洪水,土砂災害などのリスクがある場所に立地している学校の割合が全国平均よりも高いことや,指定避難所になっていても,配置計画が未作成の学校があることが明らかになった.今後予想される大規模災害では,過去の事例と同様の混乱が徳島県内の特別支援学校においても生じる可能性があると考えられる.本研究では,災害時の特別支援学校特有の課題を整理した上で,児童生徒の安全安心を優先した避難所運営を行うための配置計画を検討する.

  • 中野 晋, 西村 実穂
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24008
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     日本海から東北北部に伸びる停滞前線の影響による豪雨で2022年8月9日に青森県鯵ヶ沢町を流れる中村川が氾濫し,鰺ヶ沢町の市街地で1mを超える浸水被害が発生した.町中心部にある保育園は床上0.75mの浸水被害を受けたほか,在園中の園児47名はバスと徒歩で近くの小学校へ避難した.避難は避難指示が発令された直後の11時から約30分かけて行われた.被災当日にも代替保育施設の検討が行われ,休園することなく応急保育の後,公民館を利用して保育が継続された.保育園での聞き取りから,避難行動と保育継続の課題を整理した.さらに,保育園周辺の浸水痕跡調査と中村川の洪水氾濫解析から市街地の洪水進行過程を再現した上で,避難経路や避難行動は適切であったかについて検証した.

  • 坂田 朗夫, 川本 篤志, 井面 仁志, 白木 渡
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24009
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     基礎自治体では,毎年,自然災害に対しての防災訓練,避難所開設・運営訓練,情報伝達訓練などを繰り返しているが,これまで発生した熊本地震などの地震災害では,人員不足や災害対応の不手際など従来の訓練では対応が困難な点が課題として指摘されている.これらの課題解決の一助となるのが災害応援に派遣された行政職員の活動記録であるが,これらは文書記述による自由回答が多く,統計処理が難しく活用されていないケースが多い.本研究では,過去の大規模地震時における被災活動報告事例の文書記述に着目し,言語データ分析手法により,災害発生時の基礎自治体職員の課題解決能力を向上させるための対応策を提案する.具体的には,熊本地震時に派遣した地方公共団体職員などの対応事例や意見などをテキストマイニングによる言語データ分析し,レジリエンス4能力(対処,監視,学習,予見)を用いて整理する.そして今後発生する大規模地震に備えた基礎自治体職員の災害レジリエンス向上のために必要なレジリエンス4能力や課題について考察する.

  • 西川 隼人, 池本 敏和, 宮島 昌克
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24010
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     本研究では地震時の受水槽のスロッシング被害を評価するために,関東地方を例に,受水槽の1次スロッシング固有周期に対応する固有周期1~5秒の擬似速度応答スペクトル予測式を構築した.予測式では,周期1~5秒のサイト特性を考慮するために,表層地盤だけでなく,工学的基盤以深の深部地盤構造を考慮した.擬似速度応答スペクトル予測式を二段階回帰分析によって求めた結果,精度良く観測値を評価することができた.また,得られた予測式を用い,想定地震に対して,擬似速度応答スペクトルと受水槽のスロッシング波高を求めるとともに,受水槽容器の破損の可能性を検討した.

  • 竹之内 健介, 谷田 翔平, 堀江 隆生, 石井 美帆, 浅見 ユリ子
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24011
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     本研究では,水害教育を実施している三重県内の小学校を対象に,アンケート調査を通じ,その教育効果がどの程度継続しているかという時間的持続性,そして,家庭など周囲にどの程度影響しているかという面的波及性の両面から水害教育の効果に関する分析を行った.つまり,水害教育の効果を児童個人に対する一時的な教育効果に加え,長期的・社会的効果について,その一端を調査したものである.結果,教育効果は自助意識として最も強く現れるとともに,時間的持続性として,2年後の比較調査から,教育効果の減衰の可能性が確認された.また面的波及性として,家庭への波及効果としては日常のやり取りが大きく影響するなどの特徴が確認された.本研究の結果から,水害教育の効果について,より多面的に議論する必要性が改めて確認された.

  • 永田 臨, 坂本 淳
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24012
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     自動車運送業は,2024年4月に予定されている時間外労働時間の上限規制の適用により運転者不足等の問題の深刻化が予測されており,その対応策として貨客混載が注目されている.本研究では,貨客混載に取り組む地域の拡大に資する知見を提供することを目的として,自治体の貨客混載に対する取り組み姿勢や実施している公共交通政策を把握するためにアンケート調査を実施した.調査結果を分析したところ,「自治体が貨客混載の検討を行うこと」「自治体の貨客混載に係る財源・専門知識・マンパワーを拡充すること」「自治体の公共交通政策担当者が貨客混載に関する理解を深めること」という施策が,貨客混載に取り組む地域の拡大に効果が見られることが明らかとなった.

  • 友時 照俊, 井面 仁志, 高橋 亨輔, 白木 渡
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24013
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     建設業では,工事の計画段階や作業手順書作成時にリスクアセスメントを実施している.それらは実施時期と実施者により内容に差があるが,作業に潜むリスクを予測し,労働災害を防止するために実施している.今世紀初頭,これまでの方法では把握できないリスクを明らかにし,災害を防止する手法としてFRAM(機能共鳴分析手法)が提唱された.現場を社会技術システムとして,現場で行われる活動を機能として捉え,結合・依存しあう機能の組み合わせにより出現する機能の共鳴により,リスクを明らかにする分析手法である.FRAMが定性的分析方法であることによる,実施者による分析結果の差を少なくするため,FRAMに半定量的方法を用いることで,より客観性の高い分析結果が得られ,隠れたリスクについての対処が可能になった.

  • 中根 良太, 平岡 伸隆, 中條 優樹, 吉川 直孝, 伊藤 和也
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24014
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     切土・盛土工事等の施工中に,斜面が崩壊し労働者が死傷する事故が発生しており,ICT技術を用いて斜面崩壊前に異常を検知する取り組みが進んでいる.著者らは,線形回帰モデルや勾配ブースティング木を用いて斜面計測データの異常検知を検討してきた.本研究では,異常検知の精度向上を目的にアンサンブル学習の中からスタッキング手法を用いて異常検知を試みた.検証データには,遠心場において斜面掘削実験を行い計測した表層ひずみの時系列データを用いて,斜面崩壊前の正常時のデータを学習させ,1時点先のデータを予測するモデルを作成した.検証期間の予測値と計測値の残差から異常度を定義し,斜面の異常を検知する手法について検証した.その結果,単一モデルと比較すると予測精度が向上し,異常検知の誤検知が減少することが確認された.

  • 湯浅 恭史, 宮地 武彦, 蒋 景彩, 上月 康則
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24015
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     人工透析治療は,水・電気といったライフラインに大きく依存した治療方法であり,定期的にかつ継続的に実施する必要がある.そのため災害時にライフラインの途絶があった場合には大きな影響を受けることとなり,それは透析患者の生命の危険につながることとなる.ライフライン事業者はもとより医療機関でもバックアップ等の災害対策が取られているが,災害時には行政やライフライン事業者との連絡調整など様々な対応が必要となる.

     そこで本研究では,災害による断水時の対応を透析医療機関等が迅速に対応するための教訓を抽出し,今後の事前対策に活かすことを目的に,令和4年台風15号での静岡県静岡市清水区での断水による透析医療機関や水道事業者等に対してインタビュー調査を実施し,実際の対応と影響について明らかにし,これらから災害時の課題を抽出した.また,今後取り組むべき事前対策等について考察を行った.

  • 柴田 達哉, 伊藤 和也, 吉川 直孝, 平岡 伸隆
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24016
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     急傾斜地崩壊防止工事において斜面ガイドラインを適用した事例とそこから抽出された地質や施工上の問題点を抽出した.そして,最上流側からリスクマネジメントを実施でき,機械分野の安全学で用いられるリスクマネジメント手法であるスリーステップメソッドを急傾斜地崩壊防止工事に適用して分析し,斜面ガイドラインの点検が持つ意味と必要情報の関係等について考察を行った.その結果,機械分野での安全設計の考え方は,リスクアセスメントから始まり,危険源との離隔がスタート地点であることから斜面掘削工事での安全設計に有益なものであることが分かった.

  • 大西 晶, 湯浅 恭史, 上月 康則, 中西 敬, 松重 摩耶
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24017
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     近年,日本各地において地震や豪雨災害などの大規模災害が発生した際,被災者支援の一環としてホテルや旅館など宿泊施設の活用が検討・実施されている.この方針は令和3年5月の中央防災会議において防災基本計画に盛り込まれたが,運用に際しては課題が残されている.そこで本研究では,地方公共団体と宿泊施設が属する団体の間で結ばれた支援協定を収集・分析し協定の内容を明らかにした.加えて,実際に被災者を受け入れた団体及び宿泊施設にヒアリングを行い,災害発生時において宿泊施設が発揮可能な支援機能と機能を発揮するための課題について考察した.その結果,災害発生時に被災者を受け入れるに当たって,地方公共団体,被災者,宿泊施設をつなぐ重要な役割を宿泊施設が属する団体が果たしていることが明らかになった.宿泊施設が有する潜在的支援機能がより有効に発揮されるためには,施設側が協定に関する理解を深めること,協定に沿って災害発生時を想定した独自のマニュアルを整備するなど,事前の準備,手順のシミュレーションが不可欠であることが改めて明らかになった.

  • 佐藤 史弥, 秦 康範, 本多 亮, 吉本 充宏
    2023 年79 巻24 号 論文ID: 23-24018
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル フリー

     2023年3月に富士山避難基本計画が公表された.この避難計画は,従来の避難計画を全面的に見直したものであり,富士山噴火時の避難の移動手段として徒歩を組み込んだ避難の考え方が示された.避難計画の見直しによって,富士山山麓周辺に居住する住民の富士山噴火時の避難の考え方が一変し,今後は地域ごとの富士山噴火時の避難態勢構築が求められる.本稿では,リスクコミュニケーション手法であるCAUSEモデルに基づき,富士山噴火に伴う溶岩流からの避難態勢構築ワークショップを設計し,富士北麓地域の住民を対象に実施した結果を報告した.さらに,本ワークショップの実施結果から,地域主体の火山避難態勢構築のための知見をまとめた.

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