土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号: 土木学会論文集
79 巻, 18 号
特集号(海洋開発)
選択された号の論文の157件中1~50を表示しています
特集号(海洋開発)論文
  • 篠永 龍毅, 安部 智久
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18002
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
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     津波発生時に船舶が港湾内で漂流した場合,他船舶との衝突や岸壁への乗り上げ等により港湾内での被害が増大する可能性がある.海・船の視点から見た港湾強靱化のため,緊急避難しやすい水域施設のあり方の検討が必要となっているが,そのためには実際の津波発生時の船舶の避難実態を踏まえることが重要である.本研究は,今後各地で実施される緊急避難円滑化のための取り組みの参考情報を提供することを目的に,東日本大震災時の津波から避難する際の地震発生から港外到達までの船舶挙動について,苫小牧港,鹿島港,川崎港のAISデータから分析した結果を提示するものである.

  • 中嶋 道雄, 田中 美帆, 髙見澤 拓哉, 松本 裕樹, 清水 利浩, 清水 美代, 宮崎 賢治, 東宮 真琴
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18003
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     近年港湾などの埋立護岸において背後に空洞が多数発見されており,空洞拡大により重大事故につながる可能性がある.このような空洞は護岸構造や使用材料,自然環境や施工履歴など様々な要因で発生する.現在広く実施されている地中レーダー調査やスコープ調査は,空洞の確認に専門的知識を必要とし,空洞発生要因の特定に寄与する空洞内の状況が十分に取得できない状態である.筆者らは小型のジンバル付きカメラとクラウドの3次元モデル作成システムを開発することによって,空洞内部の3次元形状や詳細な画像を取得できることを確認した.

  • 竹山 佳奈, 桑江 朝比呂, 中村 由行, 鈴木 伸也, 鳥羽 幸太郎, 田中 浩輝, 山本 晃久, 風呂田 利夫
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18004
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
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     橋梁工事に伴う干潟の保全措置・管理の効果を評価することを目的とした調査を実施した.橋脚工事の際に浚渫した干潟を工事後に埋戻し干潟を復元することを計画とし,干潟生態系の早期回復のため浚渫時に干潟表土を陸上保管し,復元する干潟表土材とした.また,浚渫による隣接干潟の侵食を抑制するため,浚渫境界部に仮設鋼矢板を打設した.さらに,順応的管理手法に基づき工事影響や想定外の事態への対応を検討し,必要に応じて措置の追加・改善を迅速かつ適切に工事に反映させた.その結果,鋼矢板は周辺干潟に対し一定の保護効果を示した.また,復元した干潟は周辺干潟と同様の生物群集で構成されていた.一方,工事中に大規模出水による周辺地形の変化も生じており,これらの影響も踏まえた長期的な調査を継続し,全体評価する必要がある.

  • 竹山 佳奈, 中村 由行, 桑江 朝比呂, 鈴木 伸也, 鳥羽 幸太郎, 田中 浩輝, 山本 晃久, 風呂田 利夫
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18005
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     河口域の橋梁工事に伴い実施した約4年間の定期環境調査を基に,河川内の橋脚築造のための浚渫工事が河口干潟の地形や底質環境等の物理環境や干潟生態系におよぼす影響と回復過程を明らかにした.また,工事期間中に発生した過去最大規模の出水とその影響についても評価した.その結果,浚渫前後で干潟の底質環境や底生生物群集は大きな影響を受けなかったと推測された.一方,過去最大規模の出水による地形や底質環境変動は大きく,直後から日和見種を主体とした底生生物群が早期に形成されていたことから,比較的早期に生物量は回復するものと推測された.しかしながら,出水以前と同様に二枚貝類等の大型種が安定して出現可能な環境が形成されるのか,長期的な底生生物群集の形成状況や底質や地形の変動を継続的に調査したうえで評価する必要がある.

  • 田中 陽二, Chathura MANAWASEKARA, 鈴山 勝之
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18006
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
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     本研究では,ERA5を用いて,世界および日本周辺における波高の長期変化特性について解析するものである.ERA5では全球範囲で1959年から現在までの長期的な波浪推算データが公開されている.日本周辺におけるERA5の推算精度を検証するとともに,全世界および日本周辺海域での確率波高の分布を算出した.また,年最大波高の経年的な変化傾向を把握した.

     ERA5は波高を過小評価する傾向が見られたが,全体的な推算精度は高く,実用的な波浪データベースであると判断された.推定された50年確率波高の世界および日本周辺での分布は,既往研究結果と概ね一致していた.年最大波高は,全世界的に増加傾向であり,日本周辺でも太平洋側と東シナ海側で増加傾向であった.

  • 小林 薫, 堀口 正隆, 本多 顕治郎, 宮﨑 航
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18007
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
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     液状化対策工の1つとして,過剰間隙水圧の上昇量抑制と消散速度を早めるため,透水性の高い砕石を用いたグラベルドレーン(GD)工法がある.GD杭は,間隙率が大きく,排水性能は高いものの液状化時に杭周辺の細粒な砂が砕石の間隙に混入し,過剰間隙水圧の消散速度等の低下により液状化被害の拡大が懸念される.その中で,扁平形状の貝殻で構築した貝殻層と砂層の2層地盤に振動を与えても,上層の細粒な砂が貝殻の間隙に混入し難いことが報告されている.液状化時の砂混入抑制効果が期待される貝殻を用いたドレーン(SD)杭について,相対密度と加速度の大きさを変化させた1G場小型振動台実験を行いGD杭と比較した.その結果,SD杭はGD杭に比較し液状化時の砂混入抑制に伴う排水性能(消散速度)の低下抑制効果があることを実験的に明らかにした.

  • 大嶋 真謙, 山本 剛一, 中岡 明, 横山 隆司, 久保 忠義, 吉田 司, 矢持 進
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18008
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
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     アカガイScapharca broughtoniiは, エッジレスガラス瓶カレット(クリスタルストーン・サンド;CSS)を基質とする垂下養殖カゴの中で良好に成長し(449日間で殻長が37.8mmから62.0-65.6mmまで増加), 市民生活から大量に発生するCSSが二枚貝などの増養殖基質として活用可能であることが本現場実験により明らかとなった. CSSとAnthraciteでの殻長を同じ水深で比較した場合, 両者において差が見られなかった.一方,同じ基質の場合,水深による殻長の違いがCSS区では認められなかったが,Anthraciteにおいては水深3m層のほうが1m層より成長が良好であった.富栄養な都市沿岸域における持続可能な二枚貝のカゴ養殖には海域環境,特に溶存酸素量のモニタリングが不可欠であると考えられた.

  • 宇多 高明, 大久保 克紀, 大木 康弘, 村田 昌樹
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18009
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     茨城県内有数の海水浴場として知られている阿字ヶ浦海岸では侵食が著しい.この海岸では,侵食対策としてサンドリサイクル手法が採用され,毎年1万m3の砂を北部から採取し,それを南部の侵食域へ運んで養浜する工事が行われてきたが,投入土砂は急速に運び去られて養浜効果が失われるという課題があった.そこで,本研究では新たに不透過離岸堤を設置して砂浜を復元する方法についてBGモデルを用いて検討した.この結果,海岸南端部に不透過離岸堤を新設した上で養浜を行えば,恒久的に安定な砂浜の復元が可能なことが分かった.

  • 山野 貴司, 古畑 亜佑美, 小塚 海奈里, 傳 亮司
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18010
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     着床式洋上風力発電のサクションバケット式基礎は,施工コスト低減が期待できる形式である.今後の洋上風力発電開発においてコストダウンが求められる一方で,大型風車の支持が可能な基礎の技術開発が急務となっている.大型風車に対しては多脚基礎により支持する構造形式も有効と考えられる.多脚基礎は脚同士が比較的近接するため,洗掘現象の相互干渉が懸念される.一方,洗掘防止工法として袋型根固め工法がよく知られている.本研究では,サクションバケット式をはじめ多種の基礎構造形式に対する洗掘現象の特性を把握した.また,サクションバケット式における洗堀防止工の効果を確認し,防止工設置数低減に伴うコスト削減が期待された.さらに,基礎周辺の底面流速を数値解析により求め,底面流速比から洗掘範囲を推定できる可能性が示唆された.

  • 中村 友昭, 森 和大, 趙 容桓, 水谷 法美, 山野 貴司
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18011
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     3次元流体・構造連成解析による浮遊ケーソンの曳航・回頭時の作業限界の評価に向けた取り組みとして,本研究では,浮遊ケーソンを規則波下において直線的に曳航したときに生じるケーソンの動揺特性を流体・構造連成解析が可能な3次元数値計算モデルFS3Mにより考究した.その結果,HeaveとPitchの変動はケーソンから見た見かけの入射波周期(出会い波周期)で生じる傾向があること,Heaveの振幅は見かけの入射波周期がHeaveの固有周期と一致すると同調が生じて大きくなること,Pitchの固有周期は曳航索の影響を受け,見かけの入射波周期が曳航索も含めたPitchの固有周期と一致すると同調が生じてPitchの振幅が大きくなることを確認した.また,曳航索に作用する索張力の時間平均値は,波高の増加とともに大きくなること,HeaveやPitchの同調が生じるときに大きくなることを確認した.

  • 二木 敬右, 木場 正信, 由比 政年
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18012
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     浅水理論に基づく津波の有限差分シミュレーションを対象に,2種類の離散化手法と津波挙動の関係を分析した.波形に数値的な振動が含まれていることを判定する方法について検討し,非線形化による波の前傾化に起因して数値的な不安定が発生することや津波振幅に影響を及ぼす短周期振動が出現する条件を示した.また,後藤モデルでは方程式の離散化に伴う打ち切り誤差に起因する数値粘性の大きさが,一般的な非線形指標と強い相関をもつことを示した.さらに,効率的に振動を抑制するための局所的な粘性項の効果を検証した.

  • 河村 裕之, 大熊 康平, 松下 紘資, 平山 隆幸, 平石 哲也, 間瀬 肇
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18013
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,傾斜堤の性能維持手法として傾斜堤の前面に消波工を腹付した,複断面形状における波高伝達率を水理模型実験と数値計算で検討した.実験の結果,基本断面に対して傾斜堤の天端高がブロックの高さの1/3程度下がると波高伝達率は増加するが,腹付によって改善された.腹付は幅広く配置するよりも高く配置した方が効果的であり,ブロック2層厚を静水面付近の高さまで腹付することによって基本断面と同等の波高伝達率に保たれることがわかった.また,これらを数値計算で検討した結果,概ね実験結果を再現できることを確認した.さらに,天端高波高比Rc/HI>1の条件で場合分けすると実験結果に対するRMSEは減少し計算精度が向上した.

  • 坂井 友亮, 古川 大登, Kyeongmin KIM, 日比野 忠史
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18016
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     酸化還元電位(ORP)は溶液中で酸化還元反応により生成される物質のエネルギー準位を測定するため,生物活性の高い干潟での水質環境を定性的に評価する指標として用いることができる.ただし,従来ORPセンサーは繊細な膜を通過したイオンのみの活量を内装電極で測定するため,生物が生息する自然環境下での連続的なモニタリングはできていない.酸化還元反応を膜なしで直接測定するセンサーは,電極に付着・吸着する海水中のイオンや藻類,有機泥などの懸濁物質の酸化還元反応を捉えるため,比較的容易に連続測定できる可能性がある.本研究では干潟等の生物活性の高い場における水質環境を測定評価するためのセンサーを干潟に設置して,約1年間測定した電極の劣化は認められず,測定電位の変化は電極周辺で起こる酸化還元反応を捉えることを確認した.

  • 白 可, 三好 俊康, 吉田 誠, 三浦 成久, 松本 正一郎, 肥後 陽介, 澤村 康生, 音田 慎一郎
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18018
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     風車の大型化に加えて,日本では地震荷重の影響も考慮する必要があるため,洋上風車モノパイル式基礎(以下,MP)の外径は増大する傾向があり,SEP船での施工やハンマーでの打撃,工場製作などが課題になっている.そこで,本研究ではMPの周囲にひと回り大きな円筒形の水中制震版(以下,制震版)を一部水中に没水させて設置し,外力を受ける際に制震版がMPとともに水平方向に振動して制震版と水の相互作用により,MPの断面力を低減させる構造を提案する.提案する構造の地震時挙動を確認するために,地盤あり・なしの条件で水中振動台実験を実施した.実験の結果,提案する構造の耐震性能は,風車の2次モードに対して特に高いことがわかった.また,制震版内の液面変動によって,構造物に作用する水の抵抗力が大きくなることも示された.

  • 宇多 高明, 星上 幸良, 五十嵐 竜行, 芹沢 真澄
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18019
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     富士海岸に流入する沼川第二放水路において,フラッシュ放流時の流路の形成とその後の波による砂の再堆積機構をBGモデル(Bagnold概念に基づく3次元海浜変形予測モデル)を用いて再現した.2021年10月19日実施のフラッシュ放流による地形変化を対象として,計算では放水路の周辺地形を単純化・モデル化した上で,まずフラッシュ放流後の地形を計算し,これを初期地形として波を作用させ,波による前浜の復元計算を行った.作用波浪については,通常波浪のみならず,高波浪の作用についても検討した.計算結果は実測結果と対応を示した.

  • 宇多 高明, 住田 哲章, 内山 翔太, 居波 智也, 五十嵐 竜行, 伊達 文美
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18020
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     静岡海岸の北東側に隣接する清水海岸では,sand bodyの移動遅延が起きている.一方で清水海岸北部で砂礫を採取し,それを上手側に投入するサンドリサイクルが侵食対策として進められ,それによりようやく海浜が維持されている.しかし,本来的には,沿岸漂砂により安倍川起源の砂礫が自然に運ばれる姿を取り戻すことがsustainableな海岸保全を進める上で必要である.そこで,静岡・清水海岸の境界付近でのsand bodyの移動に伴う海浜地形変化について,既応深浅測量データの解析,衛星画像の比較,UAVによる地形測量,および現地調査により調べた.この結果sand bodyの移動遅延は離岸距離の短い離岸堤が設置されていることによることが分かった.

  • 大中 晋, 宇多 高明, 森 智弘, 宮川 晃希, 市川 真吾
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18021
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     Bali島南部に位置するBukit半島の東岸に沿っては,Nusa Dua~Tanjung Benoa海岸が広がる.これらの海岸では,北向きの沿岸漂砂バランスの崩れから侵食が進んできた.衛星画像の解析によれば,NusaDua海岸では,島背後の開口部を沿岸漂砂が通過する現象が起き,これに伴い島の南側海岸で著しい侵食が起きた.一方,北部のTanjung Benoa海岸では,北向きの沿岸漂砂が突堤により阻止されたことにより侵食が進んでいる.このような状況を調べるために,2021年3月24日にはUAV撮影を,また 2022年9月7日にはNusa Dua海岸の南端部とTanjung Benoa海岸で現地調査を行った.これらをもとに,Nusa Dua海岸とTanjung Benoa海岸での今後の海岸保全について検討し,対策は構造物対応ではなく,それぞれサンドバイパスとサンドリサイクルが望ましいことを明らかにした.

  • 黒坂 明善, 中野 雄貴, 小笠原 哲也, 道前 武尊
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18022
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     2孔式RI計器を用いたジャケット式洋上風力発電基礎の水中グラウト接合部の充填管理方法の開発を目指し,2段階の室内実験を実施し,2孔式RI計器の適用性と本手法の密度測定精度を検証した.その結果,ガンマ線源と検出器をそれぞれ挿入するガイドパイプの間隔を300~400mmに設定し,測定時間は3分以上とすることが良いことを確認した.また,水中のグラウト接合部に対しては,RI計器を鉛直下向きに150mm以上挿入する必要があることを確認した.ガンマ線源の壊変揺動による統計誤差とRI計器の水平変位による測定誤差を考慮した測定精度は±0.017t/m3となることを確認した.本技術を高度化することで,定量的な水中グラウト材の充填管理を実施できることを示した.

  • 鳥居 大和, 菊 雅美
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18023
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     水理模型実験により時々刻々と変化する礫浜の地形を計測するため,既存の3次元地形計測手法を改良した.既存の手法では,3次元モデルの再現性が低く,地形変化の検討に使用可能なデータが限られていた.撮影機器を変更して画像の処理速度を高めるとともに,礫浜表面に照明やレーザを照射させ,撮影状況を変えることで,3次元モデルの再現性に与える影響を検証した.また,3次元モデルの再現性を最も高める解析条件を検討した.その結果,造波前後における礫浜地形の計測精度が向上し,計測誤差をmm単位に抑えることができた.さらに,計測手法の改良によって,造波中における地形の発達過程を経時的に計測可能となった.

  • 三田 周平, 野志 保仁, 宇多 高明, 星上 幸良
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18024
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     筆者らは,大洗の南に位置する大貫海岸において,台風前後にUAVを用いた観測を行い,それらのデータに基づいて海浜形状と海ゴミの分布の同時観測法を提案した.本研究では,これに続いて新たに三重県の七里御浜海岸において海ゴミの漂着観測を行った.その上で,波の遡上を考慮して海岸における海ゴミの漂着分布の予測を行う手法を開発した.計算された海ゴミの漂着分布によれば,実測分布をうまく説明できた.

  • 野志 保仁, 宇多 高明, 中田 祐希, 伊達 文美
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18025
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     那覇の西約15kmに位置する細長い洲島(ナガンヌ島,aspect ratio: 9.3)の変形について衛星画像により調べるとともに,2021年10月31日には現地調査を行った.また,2022年8月28日には,UAVによりナガンヌ島の3次元海浜形状を測量した.その上で,NOWPHAS那覇港の波浪観測データと比較しつつ,洲島の変形機構について考察した.この島は細長い形状を有するため,島の中央やや東側では北側,南側からの波の入射に応じてそれぞれ南向き,北向きの越流が起きているが,全体としては砂州形状は動的平衡状態を保っていた.さらにこの洲島では,2021年8月13日における小笠原の海底火山噴火に伴う軽石の漂着も見られた.

  • 中田 祐希, 宇多 高明, 野志 保仁, 石井 優気, 三田 周平
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18026
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     千葉県富津市を流れて浦賀水道へ注ぐ湊川の河口を実例として,中導流堤の機能について現地データを基に考察した.湊川はその規模が大きくないため,河口では波による河口砂州の形成と洪水による砂州のフラッシュが繰り返され,河口地形は動的平衡状態を保っている.まず,衛星画像により河口砂州の変動状況を調べるとともに,2022年6月22日には河口部の現地調査を行い,河口砂州を横断する3測線に沿ってGPS-RTKを用いて砂州形状を測量した.これらを基に動的平衡状態にある河口砂州の変動特性について考察し,河口砂州が中導流堤まで伸び,その汀線が波の入射方向と直角となった場合,波による地形変化が停止し,砂州が安定することを明らかにした.

  • 宇多 高明, 原田 太輔, 伊藤 祐介, 八木 裕子
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18028
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     天竜川河口の右岸砂州の後退と連動した浜松五島海岸東端での侵食を防ぐために,河口右岸と浜松五島海岸の境界付近に2015年から突堤を建設中である.また突堤西側の砂浜幅が狭い場所において,2012~2020年には天竜川の河床堆積砂礫7.3万m3を用いた養浜も行われてきた.突堤は,現在では先端水深0.5mより陸側の長さ168mが完成している.この間,浜松五島海岸では深浅測量やUAV撮影など,様々なモニタリング調査が行われてきた.当初計画では,この突堤の先端水深は,粗粒材が主に堆積している水深帯の沖端水深4.0mとされており,海側残区間の整備が必要とされている.まず,集積されたモニタリングデータの解析を行い,突堤周辺部での地形変化について調べたところ,養浜を始めとする対策が効果を発揮しつつあることが確認された.

  • 田中 慎也, 福本 直, 香川 慶太, 川端 豊喜, 日比野 忠史
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18030
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     様々な沿岸域において石炭灰造粒物を用いた人工干潟を造成し,その干潟材料の適用性評価されている.既往の研究では,高有機泥(浚渫土等)が堆積した干潟を対象に石炭灰造粒物を敷設し,底質や生物環境改善を確認している.本研究では,有機成分が少ない泥が堆積し,底生生物の生息が乏しい干潟(環境)を対象とした地点で実証試験を実施し,石炭灰造粒物の敷設による底質の環境改善効果,アサリを含めた底生生物の増加効果および干潟の一次生産力の向上効果を明らかにした.併せて,石炭灰造粒物の干潟への敷設の有無による生息する生物種類の違いについて比較し,石炭灰造粒物の敷設により多様な生態系の構築効果があることを明らかにした.

  • 田中 慎也, 森本 優希, 河内 友一, 菅野 孝則, 日比野 忠史
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18032
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     石炭灰造粒物(GCA)の堆積泥への効果として①腐植化の促進,②微細粒子の砂・礫径化,③脂肪酸の高分子化・けん化現象が推定されているが,分析により現象を確認しており,化学的な検証はされていない.本論文ではGCA堆積泥について①~③効果の化学的検証のための分析方法を確立する.有機物の難分解性化の指標として提案されている腐植性有機物,有機錯体について,GCA層内での形成機構を明らかにすることを目的とした.このため,有機泥(有機物を含んで堆積した泥)のアルカリ分解,酸分解,n-ヘキサン抽出等の分析法を組み合わせて分析することで難分解性有機物の組成,難分解性化機構について明らかにした.

  • 片山 大地, 中村 亮太, 石橋 邦彦, 大泉 洸太
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18033
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     新潟海岸に位置する雨水吐口では主に冬季の荒天波浪に起因する堆砂現象が発生している.堆砂対策を数値計算で考案するためには,まずは堆積土砂を高精度に数値計算する必要がある.そこで本研究では,土砂輸送モデルXBeachを用いて堆砂量および周辺海域の地形変化の数値計算を行った.その結果,現況の雨水吐口で確認されている堆砂現象を再現できた.また,計算堆砂量と浚渫土砂量を比較した結果,XBeachでの算定結果は過小評価していた.そこで再現計算で最も再現精度の高かった計算期間において水面下での土砂の限界勾配に影響を及ぼすwetslpパラメータを変化させた数値計算を再度実施した.その結果,wetslpを0.24に設定することで再現精度の向上が見られた.他方で周辺海域の再現精度についてはさらなる検証が必要であるものの,雨水吐口内の堆砂現象を再現できた.

  • 宇多 高明, 近藤 俊彦, 小野 能康, 五十嵐 竜行, 伊達 文美
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18035
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     相模湾に面した長さ2.7kmの砂浜海岸(七里ヶ浜)では,近年侵食が著しい.本研究は,この海岸の侵食原因を調べることを目的とした.まず現地調査により,海岸に設置された歩道橋等の天端と現況砂浜地盤との落差を調べることにより,侵食に伴う海浜地盤高の低下量を求め,これより侵食土砂量の推定を行った.また,衛星画像を用いて汀線付近での露岩域の広がり状況を調べるとともに,侵食が激化する前の2015年11月28日当時の海岸状況との比較を行い,海浜の侵食状況を把握した.既往検討では,七里ヶ浜周辺区域では正確な海底地形が不明であったことから,2022年1月には航空レーザ測深(ALB測量)を行い,この測深結果を基に海底地形特性を調べた.

  • 宇多 高明, 長谷川 準三, 小野 能康, 五十嵐 竜行, 横田 拓也
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18036
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     茅ヶ崎漁港から引地川までの長さ6.4kmの海岸線では,東向きの沿岸漂砂と同時に,冬季の飛砂の作用が著しい.この沿岸に位置する茅ヶ崎中海岸地区と菱沼地区では,侵食対策のために養浜が行われてきているが,養浜砂の一部が冬季の飛砂により内陸へ運ばれ,海岸線に沿って走る自転車道に過剰に堆積して交通障害を引き起こしている.これらの現象について,セルオートマトン法とBGモデルにより飛砂と漂砂の効果を組み合わせたモデル用いて近年の地形変化を再現し,菱沼地区の海岸保全手法について検討した.

  • 佐藤 之信, 中山 恵介, 駒井 克昭, 佐野 史弥
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18039
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     北海道オホーツク海に面しているコムケ湖は,昭和50年代に導流堤を建設し永久湖口となったことから,湖内環境が改善されている.しかし,昭和50年代に建設された導流堤が老朽化し,更新期を迎えているが,導流堤の改良・更新を行う場合,湖口幅が変化してしまう可能性があり,湖口幅の変化は湖内環境へ影響を与えてしまう可能性がある.そこで本研究では,湖内環境へ影響を与える水質項目として,塩分と溶存無機炭素量に着目した湖口幅の変化が湖内環境へ与える影響を,3次元環境流体モデルFantomを用いて湖内環境評価を行い,湖口幅を変化させることで湖内環境へ影響を与えることがわかった.本研究結果をもとに,湖口幅を変化させず導流堤・水路護岸の改良が可能な,既設矢板を利用した施工方法の提案を行った.

  • 田中 裕一, 板垣 侑理恵, 中島 健一, 野中 宗一郎
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18040
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     カルシア改質土は,軟弱な浚渫土とカルシア改質材を混合した材料であり,干潟・浅場の造成材,護岸の腹付材,埋立材,深掘跡の埋戻材等として広く使用されている.

     カルシア改質土の海域利用では,グラブを用いて水中に投入する例が多いが,カルシア落下混合船を使用した施工では,トレミー管により水中投入する方法が運搬・投入工程を簡略化可能であり効率的であると考えられる.一方,粘性の高いカルシア改質土を従来のトレミー管を用いて投入した場合,濁りの発生やトレミー管の閉塞が懸念される.そこで,こうした問題に対応可能な新たなトレミー管の開発を行った.実験に結果,開発したトレミー管では,濁りの発生を抑制可能であり,濁度の最大値は従来型のトレミー管と比較して40%程度に,濁りの発生量は10%程度に低下することを確認した.

  • 富田 孝史, 三河 大晟
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18041
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     最大規模の高潮は日本に接近した既往最大規模の台風に基づいて推定されるのが一般的である.その台風の中心気圧の再現期間は東京湾,伊勢湾及び大阪湾では500〜数千年とされているが,それによって生起された想定最大規模の高潮の再現期間は明らかではない.本研究では,入手可能であった観測潮位および潮位偏差の毎時データに基づいて,名古屋及び御前崎における想定最大規模の高潮の再現期間を推定した.観測潮位には高潮だけでなく,黒潮の流路変動などによって生じる異常潮位が含まれる場合があるので,本研究では高潮以外の異常潮位の影響を除去して解析することした.想定最大規模の潮位偏差の再現期間は,名古屋で約4,000年,これまで高い高潮が多くない御前崎では約28,000年であった.海域により高潮の再現期間が異なっている.

  • 迫田 由華, 毛利 惇士, 菊池 喜昭, 野田 翔兵
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18042
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     杭基礎を用いた海洋構造物には, 様々な荷重レベルの水平方向荷重が多方向に繰返し作用する. 本研究では, 杭の根入れ長さと繰返し最大水平応力を変化させて繰返し水平力載荷時の杭の挙動が杭の根入れ長さの違いによってどのように変化するか検討した. その結果, 水平力を繰り返し受ける杭の挙動は, 最大水平力載荷時の根入れ比Er(=杭の根入れ長さ/曲げモーメントの第1ゼロ点の深さ)によって変化することがわかった. すなわち, 繰返し回数ごとの載荷点変位の変化率は, Er≧1.0であればErの影響をほとんど受けないが, Er<1.0になるとErが大きい時に比べて変化率が大きく変化した. このことから, 根入れ長さがEr<1.0となる荷重を繰り返し受けるときは, Erによって繰返し載荷による変位の増加の程度が変わることを考慮に入れた設計が必要となる.

  • 辻尾 大樹, 久保田 博貴, 熊谷 健蔵, 森 信人
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18043
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     波浪等の海象観測が実施されていない国や地域では,経験に基づいたアドホックな海岸構造物が設計されている.しかし,現在,全球・領域レベルの詳細な海洋・海象情報が入手できるようになってきている.本検討は,このような代表例として観測データが乏しい,フィリピン国ダバオ市の海岸を対象として,各種大気・波浪解析データを海岸マスタープランの策定へ適用したものである.

     長期波浪解析データをもとに,WAVEWATCH III–SWAN結合モデルによる波浪ダウンスケール計算を実施して,対象海岸の確率波浪を求めた.また,潮位観測の欠測期間を補完するために,大気再解析値をもとに高潮解析を実施して,確率潮位を求めた.これら,一連の解析結果から100年確率値を用いて計画道路護岸を評価した結果,一部の区間で天端高が打ち上げ高に対して不足することが分かった.さらに,本成果を2045年までのアクションプランを含む海岸マスタープランの策定に適用した.

  • 中村 菫, 川端 雄一郎, 森川 忠泰, 石澤 武紘, 木村 匡伯
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18044
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     港湾工事における低炭素型材料の活用にあたり,その活用効果を,従来材料との調達・施工条件等の相違も加味した施工プロセス全体で評価することが望ましい.また,その活用効果を工事実施前の意思決定段階(設計,工事発注)で推定することが望ましいが,工事実施前では材料の配合や調達条件等が未確定であり,推定誤差を適切に見積もる必要がある.

     本研究では,低炭素型材料を活用した場合の施工プロセス全体としての効果を検討するため,実際の鉄鋼スラグ水和固化体の活用事例について,CO2排出量の事後評価を行った.また,事前推定での誤差要因の検討を目的とし,工事発注段階を想定した事前推定を行った.これにより,施工プロセス全体としての活用効果に影響を与える要因の分析や,事前推定での各種誤差要因が推定精度に与える影響の検証を行った.

  • 兼村 瑶望, 中村 亮太
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18046
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,異なる避難開始時間を設定し,宮城県気仙沼市鹿折地区における東日本大震災の津波を想定した津波避難シミュレーションを行い避難完了率と死亡者数について定量的に評価した.避難開始時間については人それぞれ津波に対するリスク認知が異なるため,様々な避難開始時間について考慮する必要がある.結果として,一斉避難する場合は避難時間が遅いほど死亡者数は増加し,避難完了率は低下した.また,時間差避難と死亡者数には非線形的な関係があり,時間差を考慮した避難が効果的な手法の一つであるということが分かった.シミュレーション結果より避難開始時間が遅くなるにつれて死亡者数が増加して,避難完了率が低下することがわかった.地震が起きた際には早期避難に加えて時間差避難をすることが重要ということが分かった.

  • 村上 智一, 小林 雄生, 伊藤 芳英, 下川 信也, 杉原 薫, 山田 吉彦
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18047
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     2022年に西表島網取湾において,コドラート法によって礁縁から礁斜面深部の水深40mまでのサンゴを調査し,種同定に基づき被度・白化を評価した.これによって得られた主要な結果は以下である.

     (1) 調査したサンゴは,12科34属85種に分類された.(2) 2022年のサンゴの白化は,2016年の大規模白化に並ぶものである.(3) 水深3および10mでは,種の多様性が大きく,優占種が不明瞭であった.また,その白化率も種によって大きく異なっていた.(4) 水深20,30および40mでは,優占種が明確であった.(5) ほとんどの種の鉛直分布の範囲は,約10m以下もしくは10~20mに限られる.(6)本研究で得られた結果は,従来の形状別や属レベルの分類では十分に評価できない可能性がある.

  • 増田 和輝, 金澤 剛
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18048
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     海上工事の工程管理上,1~2週間先までの精度の高い短期・中期の波浪予測が求められている.波浪予測では物理モデルに加えて深層学習を用いたモデルも近年活用され,気象予報値を用いて数日先の波浪が高精度に予測されている.しかし,気象予報値の不確実性などに起因して,予測時間が長いほど予測精度が低下し,1週間先以降の波浪予測は精度的に実務への適用が難しい現状にある.本研究では,近似ベイズ推定に基づいたベイジアンディープラーニングを行い,気象予報値とモデル表現の不確実性を考慮したアンサンブルな波浪予測を行った.既往モデルの決定論的波浪予測と比較して,本提案モデルによる11日先波浪予測は10%~20%の精度改善が図られた.

  • 秋元 唯人, 谷 和夫, 野村 瞬, 池谷 毅
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18049
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     海域においても簡便かつ経済的に地盤調査ができる方法として,連続した試料のサンプリングとサウンディングを同時に行うことが可能なサンプリング兼コーン貫入試験(S&CPT:Sampling and Cone Penetration Test)を提案している.貫入性能,試料の採取性能,施工性を向上するために,サンプラーの構造などを改良して,陸域の砂質土地盤において現場実験を行った.その結果,N値が20程度までの砂質土地盤に対して数メートルのやや乱された試料を連続して採取することに成功した.サンプラーおよびプローブの貫入と揚収に要する作業時間はコーン貫入試験と比較して約2倍で,施工性も標準貫入試験などに比べて高いことが示せた.

  • 坪野 考樹, 津旨 大輔, 三角 和弘, 木原 直人
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18050
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     波浪注意報・警報を用いた洋上風力発電施設の保守点検月の選定について検討した.防災情報DBから2013~2022年の注意報・警報情報を取得し,6地点の波浪注意報と波浪警報の発表の有無(波浪注意報情報)を6時間毎に作成した.WAVEWATCH IIIにより再解析した2010~2020年の有義波高を用い,波浪注意報情報と比較可能な情報に分類した.分類は閾値(Ex1)とニューラルネットワーク(Ex2)による手法で検討した.それらの正解率は一地点(0.83)を除き,約0.9となった.防災情報DB,Ex1およびEx2の波浪注意報情報から日中の注意報・警報の発表回数について月毎平均を計算した.月毎平均値に明瞭な季節変動を示す地域があり,月平均値が少ない月のほうが点検時のコスト面で有利であると示唆された.

  • 金澤 剛, 横山 隆司, 久保 忠義, 奥田 毅, 小塚 海奈里, 酒井 大樹, 藤原 敏晴
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18051
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     海域におけるCO2固定の場であるブルーカーボンとしてアマモ場が注目されている.新たにアマモ場を造成する場合,少なくともアマモの生育に適した水深と海底が砂泥質であることが必須であるが,これらは大きな制約条件であり,適切な造成候補地を見出すことが困難な場合も多い.そこで,人工地盤を海中の適切な水深に設け,アマモを生育させることを考えた.実海域でアマモ種子と底質を入れた小規模な容器を所定の水深に垂下設置してアマモの生育実験を実施し,垂下式アマモ場造成の可能性を検討した.その結果,水面下1.0~3.0mに垂下設置した容器からアマモの発芽生育が確認され,さらに2年目の株からは種子が再生産され,本垂下式アマモ場造成法においても経年的なアマモ場造成の可能性が示された.

  • 高木 秀蔵, 林 浩志, 乾 元気, 山下 泰司, 加村 聡, 穴口 裕司
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18052
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     沿岸海域の底質が悪化している場所にカキ殻を敷設し,底生生物と魚類相の変化を調べるとともに,安定同位体を用いた食物網解析を行った.敷設後3ヶ年平均の底生生物の種類数,多様度指数(H’),魚類の目視確認個体数は18.2±10.3種類,3.1±0.7,4.8±6.3個体/m2となり,対照区の3.5倍,2.2倍,7.5倍となり,ベントスの増加と魚類の蝟集が確認できた.また,敷設区の底泥,軟体動物,節足動物,敷設区周辺で漁獲された魚類のδ13Cは-20.2±0.8,-18.1±2.3,-17.1±0.9,-16.2±0.6‰,δ15Nは9.1±0.5,12.2±1.7,13.2±1.5,16.4±1.0‰となり,栄養段階に応じた同位体比の上昇が見られ,魚類による敷設区ベントスの摂餌は否定されなかった.一連の結果から,カキ殻を敷設することによって底生生物が増加し,それらを餌とする魚介類が増加することが示唆された.

  • 森田 浩史, 高淵 稔貴, 岸本 豪太, 竹中 寛
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18054
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     水中コンクリートに必要な配合条件を満足したスランプフロー50cmの高流動コンクリートを対象として水中打設実験を行い,水中部での適用の可否について検討するとともに,水中での流動性やコア供試体による品質について評価した.この結果,増粘剤含有高性能AE減水剤または高性能AE減水剤を用いた高流動コンクリートは,水中コンクリートと同様に水中部での適用が可能であり,水中での流動性を確保することで,水中コンクリートよりも一度に多量のコンクリートを打設できるため,生産性向上に寄与できることが示された.また,増粘剤含有高性能AE減水剤を高流動コンクリートに用いた場合,水中での流動性に対する影響は小さいが,材料分離抵抗性が向上する可能性があるため,水中での流動に伴う強度のばらつきは抑制されることが示された.

  • 嶋田 陽一
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18055
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     黒潮続流によって東北地方太平洋側から流された漂流物は天皇海山列に妨げられるか,あるいは,東向きの海上風により東へ移動する傾向を示す.一方,天皇海山列周辺の海上風が南向きの傾向であれば,漂流物は南下し天皇海山列から離れ,西向きの海上風により日本方面へ移動する.しかし,漂流物が日本方面へ移動する間に北向きの海上風が続くと,漂流物は北上し黒潮続流域に戻る.漂流物は天皇海山列を越えなくても天皇海山列西方面において,海流,海上風及び天皇海山列によって概ね1年以上の大規模な周回移動をすることが観測によって初めて明らかになった.

  • 片野 直樹, 山本 康太, 團村 肇
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18056
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     港湾の施設の技術上の基準・同解説では,2007年の改定1)において性能設計に関する考え方が示された.その後,2018年の改定2)において既存施設の改良設計の考え方が明確化され,既存ストックの有効活用の促進についての考え方が示された.今般,東京港中央防波堤外側地区において,長短の鋼管矢板で構成される既設護岸(長杭を有する二重鋼管矢板構造)の前面に新設のジャケット式桟橋3)を設計するにあたり,護岸部分において,新たに長杭の効果を評価し性能規定4)の設定を試みた.その結果,レベル2地震時に長杭が抵抗力を発揮し,新設桟橋杭に発生する応力の低減効果を確認した.本論文は,性能設計の枠組みの中で既存港湾施設の構造形式を有効活用し,経済的な設計を実施したものである.

  • 長津 義幸, 赤倉 康寛, 中川 元気, 山端 俊也
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18057
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     2021年のスエズ運河閉塞に加え,海上輸送システムへのサイバー攻撃等,近年の国際海上輸送を取り巻く環境は一層不確実な様相を呈してきている.東京湾中央航路は,湾内各港への玄関口として首都圏を中心に企業の生産活動や国民生活を広範に支えており,仮に航路が途絶するような事態に至れば我が国経済・社会への深刻な影響は免れられない.

     本研究では,コンテナ・ユニットロード貨物を対象に,東京湾中央航路が閉塞した際の代替輸送経路別貨物量及び輸送コスト増加額を推定した.その結果,航路閉塞時には,関東地方発着の外貿コンテナの約7割以上で利用港湾の変更が必要となる他,仙台塩釜港や伊勢湾港等でも能力限界までコンテナを受け入れる必要があり,輸送コストの増加額は約29.3億円/日,増加率は約32%となることが明らかとなった.

  • 中村 友昭, 牧 亮太, 趙 容桓, 水谷 法美
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18058
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     地形変化モデルXBeachを礫浜の地形変化に関する既往の断面実験に適用し,漂砂に関わるパラメータが与える影響を調べるとともに,断面実験結果との比較により地形変化の再現性を評価した.その結果,礫浜表面を出入りする浸透滲出流の影響を考慮するため,岸向き掃流砂量の倍率uprushfacを1より大きくし,沖向き掃流砂量の倍率backwashfacを1より小さくすることで,断面実験で確認されていた堆積型の地形が得られることを示した.また,XBeachを礫浜に適用した既往の研究と同様に浸透滲出流の機能を使用するだけでは,堆積型の地形の再現は困難であることが判明した.上述した岸向き掃流砂量と沖向き掃流砂量の倍率に加えて底質の静止摩擦角reposeangleをキャリブレーションすることで,波浪条件や人工リーフの有無によらず地形の時空間的な変化の再現性が向上することを確認した.

  • 八木澤 一城, 木口 輝, 森 昌也, 丹羽 幸一, 宍戸 雄太, 白鳥 夏生, 鳴海 日出人, 山下 俊彦
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18059
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     サロマ湖は北海道北東部に位置する我国最大の汽水湖であり,第1湖口と第2湖口の2カ所でオホーツク海とつながっている.第2湖口は,1979年の人工的な開削以降,自然の状態で湖口の水深が維持されていたものの,2012年1月に航路が埋塞する災害が生じた.本研究では,来襲波浪や河川流出土砂量の経年変化と,地形変化および汀線変化の変遷を整理することで,常呂川の大規模出水と東寄り波浪の卓越といった外力条件に対して地形変化が顕著に応答したことが,2012年の埋塞災の要因であると結論付けた.また,1-lineモデルにより汀線変化を再現した上で,既往最大の河川出水と東寄り波浪の卓越期が重なったシナリオを想定した将来予測を実施し,第2湖口の東側汀線が大きく前進する結果が得られ,気象変化に伴い悪条件が重なった場合には航路維持が厳しくなる危険性を示した.

  • 佐藤 佑真, 小原 祐貴, 中村 亮太
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18061
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     有義波高予測は船舶の航行可否,海上工事の施工可否の判断基準等の様々な場面で用いられている.さらに,洋上風力発電の大規模開発などに伴う海上工事の施工数増加により,数時間から数日程度先の短期間波浪予測の需要が増大することが考えられる.一方で,現在の主流となっている全球波浪モデルに加えて,より低廉な計算コストでの予測が可能となる機械学習を用いた手法に関する研究が盛んに行われているが,深層学習を用いた波浪予測は定点予測が多く,2次元波浪場を予測した研究事例は少ない.そこで,本研究では,第3世代波浪推算モデルSWANの数値計算値を学習データとして,畳み込みLSTMを用いた2次元波浪場の予測を試みた.その結果,1~3時間後の短時間有義波高予測において,SWANによって算定された有義波高データの入力のみで比較的高精度な波浪予測が実現できた.

  • 青田 徹, 錦織 和紀郎, 土橋 和敬, 小林 航, 関谷 勇太, 鈴木 英樹, 鈴木 高二朗, 下迫 健一郎
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18062
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     港湾域で既に実用化されている洋上風力発電システムの課題の1つは,基礎の洗掘対策である.近年,モノパイル式支持構造の基礎の洗掘対策に袋型根固材を適用した多くの研究が実施され,洗掘対策効果などが明らかにされてきている.一方,袋型根固材が波や流れに対して安定であることが必要であるが,これまでは個別の条件に対する検討に止まっている.本研究では,袋型根固材の所要質量算定法の提案を目的に,モノパイル周りに敷設した袋型根固材の安定性に関する水理模型実験を実施した.その結果,潮流や海流のように比較的緩やかな流れの影響は小さく,袋型根固材の安定性に対しては波の影響が支配的であることを明らかにした.また,水深や波の周期などの影響を確認し,水深波長比に対する袋型根固材の安定数Nsの算定図を提案した.

  • 横田 雅紀, 羽田野 袈裟義, 今井 康貴, 村上 啓介
    2023 年 79 巻 18 号 論文ID: 23-18063
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/04
    ジャーナル 認証あり

     日本沿岸は波エネルギーが豊富に存在し,再生可能エネルギーとしての活用が期待される.本研究では,水面下に据え付けた正圧・負圧の1対の耐圧容器を連通し,波の通過の際に連通部分に発生する一方向流を動力に変換する方式を提案している.水面下に設置した潜堤と同様,高波浪の来襲による破損の可能性が低いため,高波浪時のエネルギーを取得することが期待できる.本研究では断面2次元の造波水路に試作模型を設置して波を作用させ,連通管内に発生する流速の計測を行った結果,規則波の作用下で安定した一方向の流速を得ることが可能であること,波高の増加に応じて発生流速を増大させることが可能であることを確認した.また,不規則波の作用下では流速が不安定になるものの,規則波の65%程度の平均流速を得ることができることを明らかにした.

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