土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号: 土木学会論文集
79 巻, 26 号
特集号(環境システム)
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
特集号(環境システム)論文
  • 石橋 澄子, 川合 春平, 谷口 守
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26001
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     COVID-19流行下における自動車CO2排出量の変化の追跡と要因解明は今後の脱炭素社会実現に向けた急務であるが,従来のデータや手法では我が国における詳細な変化を捉えることは困難であった.本研究では流行下5時点における個人の生活行動データを用いることで,都市別の自動車CO2排出量を推計し変化の様子を明らかにした.その結果,流行初期には外出自粛によって自動車CO2排出量が減少していたが,流行長期化の中で,感染拡大期のテレワーク実施率の大きな高まりはむしろ自動車CO2排出量の減少につながらないという関係性に変化していることが分かった.また中・長期的には流行前よりも自動車CO2排出量が増加している都市が多いことが分かった.COVID-19流行による全国的な環境負荷の高まりとテレワークの影響は,今後の脱炭素型まちづくりを考えるうえで看過できない傾向であろう.

  • 青木 えり, 平松 あい, 花木 啓祐
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26002
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     テレワーク実施者に対し,その頻度と通勤行動変化の調査を行い,CO2排出量低減効果を推定するとともに,ICT利用に伴うCO2排出量を概略評価し,地域特性も含めて比較した.通勤交通の鉄道依存が高い東京23区と,自動車依存が高い栃木県を対象に,2020年4–6月,11月をテレワーク最多時期とし1週間当たりの勤務と通勤状況を尋ね,東京23区(n=1032),栃木県(n=506)の有効回答を得た.

     テレワークによる年間の1人当たり環境負荷削減効果を両地域で推定すると,東京23区で60kgCO2,栃木県で233kgCO2だった.しかし,確実に削減が見込まれる乗用車と二輪車のみの評価とすると,栃木県では226kgCO2の低減だが,東京23区では4kgCO2のみの低減となった.鉄道利用者比率が高い東京23区ではビデオ会議の利用時間次第でテレワークによりCO2排出量が増加する可能性も示された.

  • 河瀬 玲奈, 一瀬 護
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26003
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     本研究は,滋賀県を対象に建て方別,構造別,築年代別,断熱改修の有無別,省エネレベル別に利用可能な住宅ストックを1970~2050年の期間で推計することで,CO2ネットゼロ社会実現にむけた住宅に関する施策目標の分析を行うことを目的とする.

     2050年の利用可能な住宅ストックに占める2021年以降築のストックの割合は,対策強化ケースにて44%であった.新築での省エネ基準の向上や適合義務化を見込み,断熱改修率をトレンドから戸建を4倍,集合を6倍に加速させても利用可能な住宅ストック平均での最終エネルギー消費量は,0.81(現行省エネ基準=1)であり,ZEHの太陽光発電量を全量自家消費とみなすと0.63となった.2021年以降の累積エネルギー消費量の削減率は,対策強化ケースにて停滞ケースと比較して5.5%に留まる.

  • 西尾 弘樹, 尾﨑 平, 檀 寛成
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26004
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     SDGsは不可分な関係であるが,そこにはシナジーとトレードオフが考えられる.本研究では健康寿命の延伸をゴールとしたネクサス構造を分析し,健康寿命延伸とSDGs達成の関係性を明らかにする.また,構築したネットワーク構造を用いて,SSPシナリオに基づき健康寿命の推計を行い,優先度の高いゴールを示すことである.その結果,健康寿命延伸にはゴール1等の社会的分野が効率的であるが,トレードオフも多く,慎重に政策を選択する必要があること.一方,ゴール13等の環境的分野は1次波及では影響は大きくないが,シナジーは最多,トレードオフは最少であるため,2次以降の効果波及が大きい可能性があることを示した.また,将来推計よりSSP1でも健康寿命は減少し,健康寿命の積極的な延伸にはゴール13やゴール15の改善が重要であることを示した.以上より,自治体が社会的分野と並行して環境的分野を推進することで健康寿命およびSDGs達成に寄与する可能性があることを示した.

  • 白井 浩介, 栗栖 聖, 福士 謙介
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26005
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     将来的な気候変動によるQoLに対する影響評価に向けた基礎的な検討として,主観的なQoLの要素間の関係を明らかにすることを目的とし,日本全国を対象にアンケート調査を実施し11,880サンプルを得た.生活満足に対しては経済状態や人間関係といった個人の状態への満足度による影響が大きく,地域の状態への満足度では生活利便性,地域環境・文化による一定の影響が示された.主観的幸福感に対してはポジティブ感情の影響が特に大きいが,生活満足による直接的な影響も存在した.また,地域の状態への満足度で地域を分類した結果,平均気温が低く地域気候への満足度の低い地域等特徴的なクラスターが抽出された.主観的幸福感は地域差がみられなかったものの生活満足は地域差が大きく,地域の特性に合わせた評価が必要であることが示唆された.

  • 清水 康生
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26007
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     水循環基本計画は,地下水の適正な保全及び利用を明確に位置付けた計画として意義がある.しかし,同計画では,計画区域とされる流域の範囲について議論の余地がある.また,水道や下水道という人工系の水循環の河川との水量的な連続性とその有する意義に関しては言及されていない.本稿では,計画区域として,水源となる河川流域,水道区域,下水道区域を包絡する水循環圏の概念を提案する.そして,同圏域の人工系と自然系の水循環の水量的な連続性,即ち,他流域で取水された都市域の水道水が使用後に下水から処理場を経て再生水となり,都市河川に放流されている実態について分析する.この再生水は,河川流量を維持する重要な水資源となっていることを多摩川の事例を通して検証し,その水循環の意義について生活者の視点から考察する.さらに,この水循環の健全性を診断する方法についても提示する.

  • 奥野 文佳, 中久保 豊彦, 牧 誠也, 平野 勇二郎
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26008
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     下水処理場による電力負荷制御の導入支援に向け,水処理設備にオキシデーションディッチ法が採用されている小規模施設を対象として,稼働計画に応じて電力消費量を30分解像度で推計することが可能となる電力需要マネジメントモデルを構築した.処理場敷地を活用した太陽光発電(PV)の導入を想定し,現行の設備運転実績を再現した稼働計画Aに対して,PV発電時間帯を考慮して電力需要を昼間に配置する稼働計画Bを設計した.PV発電量と電力消費量が年間総量ベースで一致する条件下において,30分解像度での電力需給バランスを踏まえた年間での自給率と消費率により2つの稼働計画を比較評価した結果,稼働計画Aに対して稼働計画Bの自給率は46%から57%に,消費率は44%から54%に向上することを示し,電力需要マネジメントの有効性を提示した.

  • 伊藤 開登, 荒井 康裕, Muhammad Anshari CARONGE , 國實 誉治, 小泉 明
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26009
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     AIを活用した漏水検知モデルにて,汎化性能(漏水有無が未知のデータに対する判別能力)の向上を目的に新たな実験を試みる.金属管路のダクタイル鋳鉄管,非金属管路の硬質ポリ塩化ビニル管の各10地点で実漏水音を取得し,それらの音響データをリカレンスプロットに変換した.畳み込みニューラルネットワークによる漏水検知モデルを構築し,未学習データの判定を行った.データの前処理としてバンドパスフィルターによるフィルター処理,実フィールドで取得したトランス音や下水流下音等の擬似音を活用したノイズ低減処理を実施し,汎化性能が向上するか検証した.実験の結果,一部精度が低い地点に両処理を施すことで,精度の向上が確認された.熟練漏水調査員の判定評価と比較しても,2つの前処理を組み込んだ本アプローチの優位性が示された.

  • 山中 美結奈, 馬場 健司
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26010
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     本研究では,地方都市における消費者を対象とした質問紙調査により,燃料電池車(FCV)や電気自動車(BEV)に対する消費者の選好を明らかにする.得られた主な知見は以下のとおりである.第1に,FCV,BEVいずれについても,特にライフサイクル全体での温室効果ガス排出量等に係わる知識は希薄な傾向にある.第2に,FCVに対する選好は,購入価格,燃料代,水素ステーション整備数,航続距離の順であり,BEVについては,燃料代,購入価格,航続距離,急速充電施設数の順となっており,それぞれの特性を反映して各要素の重要度はやや異なっている.第3に,いかなるケースでもFCVもBEVも選択しない回答者は40.3%と非常に多く,その理由として,「全ての面において現在のガソリン車と同等かそれ以上」が46.5%を占めており,前述の選好要素の重要度に沿った環境の改善が重要であることが示唆される.

  • 馬場 健司, 小澤 はる奈
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26011
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     本研究では,シチズンサイエンス(市民参加型モニタリング)の担い手となり得る環境NGO・市民団体を対象とした質問紙調査を実施し,気候変動を題材としたシチズンサイエンスの可能性について明らかにする.得られた主な知見は以下のとおりである.第1に,シチズンサイエンスの「担い手」として期待され得る団体は「自ら企画,主催して実施してみたい」とする13.1%であり,国内でのシチズンサイエンスの裾野は広がりがあるとはいえない状況だといえる.第2に,参加が可能なシチズンサイエンスの分野や対象として,身近な動植物の観察に係わるものが多く,地域社会への何らかの貢献等の外発的動機付けや非金銭的な内発的動機付けが有効である.第3に,これまでの参加経験の要因として,団体設立のきっかけや活動の種類等が重要であり,この参加経験が今後の参加意向を決定する大きな要因となっている.

  • 堂脇 大志, 関 将太郎, 沖田 優美, 土屋 依子, 井原 智彦
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26012
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     低風速でも稼働し低騒音な小型風車は設置場所の制約が少なく,風力発電の普及に重要である.風車の導入検討では見込まれる発電量(風力導入ポテンシャル)情報が重要となる.しかし既存の情報は大型風車を対象としている上,解像度が粗く特定自治体地域内での検討には適さない.したがって自治体が小型風車を導入する場合,その自治体が資金などの各種リソースを割いて風況推定からポテンシャル推計までを独自に行う必要があった.そこで本研究では,福島県新地町を対象にフリーGIS(QGIS)を用いて数点の観測データから簡易的な風況推定を行い,小型風車を分散配置した場合の発電量推定を試みた.観測地点数と計算精度の関係を考察した他,町内の各集落に対してポテンシャルの評価を行い,ポテンシャルを様々な時間スケールから比較検討することができた.

  • カオリ ルトフィア , 藤山 淳史, 松本 亨
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26013
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     本研究では,住宅用太陽光パネル(PV),定置用蓄電池(BT),電気自動車(EV)の導入と連携の効果について,7つの世帯モデルを設定して世帯単位の電力需給調整の可能性およびCO2排出量,費用を評価した.導入効果の評価にあたっては,PVとBT,EVの組み合わせによる5種類のケースを設定した.その結果,CO2排出量では,「V2H」次いで「PV, EV」で大きな削減効果を得られることがわかった.さらに,北九州市を対象に類型別世帯数をもとに拡大推計を行うことで,都市全体に与える効果について評価を行った.その結果,V2Hを導入することで都市全体の家庭部門CO2排出量に対して約25%の削減効果があることが明らかとなった.

  • 田崎 智宏, 塩竈 秀夫, 亀山 康子
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26014
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     気候変動による悪影響が進行するなか,現世代の人間活動が将来の世代に及ぼす悪影響の正義論が注目されている.本研究では,将来世代が経験する超極暑日の情報を一般市民960名に提示し,ウェブアンケートによりその反応を調べた.情報提供によって対策行動意図が高まる一方で、約6割の人々は,将来世代が超極暑日を400回経験するという状況を想像できていなかった.他方,情報を信じない回答者群のように既に形成されている態度の方が大きく影響する可能性も見出された.多変量解析を用いて回答者の属性と27の対策への態度を分析した結果,情報を信じない人と将来を無視する人が対策に否定的であった.将来世代が受ける悪影響を示す情報を人々に提示しても,既存の取組実践者の行動意図を強化するにとどまる可能性があり,さらなる研究が求められる.

  • 大山 剛弘, 高倉 潤也, 藤井 実, 中島 謙一, 肱岡 靖明
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26015
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     気候変動の進行に伴い,夏季五輪をはじめとするスポーツイベントへの暑熱影響が懸念される.本研究では,暑熱基準が明示されている夏季五輪における9つの屋外競技を対象として,世界の都市における気候変動下での夏季五輪への暑熱影響と適応策の評価を実施した.結果,過去の気候条件下ではほとんどの都市で開催可能であったものの,21世紀末には開催可能な都市が最大4割程度減少し,特にアジアと北米の都市で減少が顕著であった.一方,開催時期・時間の変更や,国内複数都市での開催といった適応策を組み合わせれば,開催可能な都市の減少を1割未満に抑制できることも分かった.本研究の結果は,単一種目(マラソン)に着目した既往研究よりも暑熱影響が大きい点が顕著に異なり,夏季五輪の様な複数競技型のイベントの実現可能性を評価する上では,複数競技を統合した評価が重要であることが示唆された.

  • 鬼束 幸樹, 白岡 敏
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26016
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     河川整備を行う上で魚が休憩や疲労回復が可能な領域確保が必要である.粗度下流側の低流速域に魚体が包含される巨石が魚の休憩場所になることは知られているが,魚体が完全には入り込めない小粒径を有する流れにおける魚の遊泳特性は不明である.本研究では,河床粒径を1.2~10mmの4通り,体長倍流速を2~10(1/s)の4通りに変化させて,平均体長60mmのカワムツの遊泳特性に及ぼす影響を調査した.その結果,カワムツは遊泳の合間に底面に腹部を押しつけて休憩すること,休憩中は流水抵抗を最小化させるために上流を向いて躯幹の投影面積を最小にすること,この体勢は流速および粒径の影響を受けないことが解明された.また,流速および粒径が増加しても休憩頻度は変化しないが,一回当たりの休憩時間が増加することが解明された.

  • 大坂 真希, 島多 義彦, 森時 悠, 平河 怜
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26017
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     夜間点滅発光するホタルのモニタリングについて,従来の目視による方法では労力がかかり,個体数を正確に計測することは困難であった.そこで,ネットワークカメラや一眼レフカメラで撮影した動画内に出現した点滅発光するホタルを自動で検出し,個体数をカウントする専用のソフトウェアによるホタルモニタリングシステムを開発した.本研究では,ゲンジボタルを用いた室内実験によるソフトウェアの検出精度の評価と,ヒメボタルの生息地への本モニタリングシステム導入により,発生状況の把握と本システムの適用性の検証を試みた.その結果,ホタル発光個体数の調査精度の向上とモニタリング省力化の可能性を示した.

  • 平松 隼人, 河口 洋一, 佐藤 雄大, 杉本 健介
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26018
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     本研究では,徳島県鳴門市の蓮田においてアメリカザリガニ対策を検討するために,局所的・地理的なスケールの環境要因が本種の分布に与える影響を明らかにすることを目的とした.調査は2022年6・7月に3回行った.解析の結果,6月では水深とレンコンの植被率が,7月上旬では圃場畦のコンクリート化率が有意な関係性を示した.コンクリート化率については,3回の調査全てにおいて,アメリカザリガニの個体数と弱い負の関係性を示した.3回の調査を通じ,アメリカザリガニの個体数と地理要因との関係性は認められなかった.このことから,本種の個体数は,局所要因から影響を受けていることが示唆された.レンコンの植被率が低い6月以前における浅水深での水管理や圃場畦のコンクリート化を促進することが本種の対策として考えられる.

  • 大杉 裕康, 平山 修久
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26019
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     災害時には住宅で使用されていた木材の固定炭素がCO2として排出されるなど,膨大な量の災害廃棄物に伴い,災害時にも温室効果ガスの排出がなされる.しかしながら,災害廃棄物に伴う温室効果ガス排出量に関する調査研究はほとんどなされてきていない.本研究では,災害時の住家被害による家屋解体に伴う災害廃棄物からの温室効果ガス排出量の推定手法を構築することを目的とする.住宅被害に伴う固定炭素解放量推定モデルを構築し,2016年熊本地震をケーススタディとして住家被害に起因する家屋解体に伴うCO2排出量を評価した.その結果,2016年熊本地震での家屋解体に伴うCO2排出量が106.2万t-CO2と推定され,災害廃棄物CO2排出量により温室効果ガス排出量が2017年基準で8%~16%増大することを明らかにした.

  • 松橋 啓介, 石河 正寛, 崔 文竹, 有賀 敏典, 金森 有子
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26020
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     軽乗用車についても車検時の走行距離計のデータが入手できることが判明した.軽乗用車と乗用車の車検データから得た全国市区町村別の年間走行量を用いることで,自家用乗用車の一人あたりCO2排出量をこれまでより高い信頼性で推計し,北海道東部や茨城県・福島県で多いこと等を示した.また,軽乗用車と乗用車の地域別の走行量の違い等を分析し,脱炭素化に向けた地域別の対策の考察を試みた.その結果,年間走行量が短く軽乗用車の割合が高い島しょ部や西日本内陸部の市区町村において自宅充電による電気自動車の普及が行いやすいと考えられること等を示した.

  • 谷 聡悟, 中尾 彰文, 山本 祐吾, 吉田 登
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26021
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     本研究では,食料生産で重要な役割を果たしている施設園芸の複合環境制御におけるキーテクノロジーのひとつである炭酸ガス施用に着目して,地域に賦存する未利用資源を利活用して得た炭酸ガスの空間的な需給バランスを定量的に把握した.分析の結果,未利用資源由来の炭酸ガス施用を想定した場合,農業の持続性の高い農用地内において47都道府県中35都道府県で需要を満足しており,炭酸ガス回収の技術進展に伴い持続可能な施設園芸の生産基盤となりうるポテンシャルを有すること,またその需給特性は供給セクターにより異なり,特に清掃工場において十分に需要を充足することがわかった.本研究で評価指標とした充足率や地理情報をもとに,セクターごとに供給ポテンシャルの高い地域を抽出できることから,今後の高度な食料生産で重要視される炭酸ガス施用に地域の未利用資源を活用することによる,強靭で持続可能なサプライチェーンの構築を支援する基礎的なツールを提供しうるものといえる.

  • 雑賀 優衣, 中尾 彰文, 吉田 登
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26022
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     地方公共団体の財政逼迫と廃棄物処理に係る担い手不足を抱える地方域では,従前のままの一般廃棄物処理体制の継続が困難な状況に陥ることが予見される.そうした厳しい状況にあっても社会的要請のもと廃棄物処理施設の整備に合わせた地球温暖化対策を強化することが求められており,これまでとは異なる視点から安定的・効率的な廃棄物処理体制を検討することが重要である.本研究では,こうした地域課題解決と脱炭素化への対応をふまえて,ごみ処理施設集約化に伴う既設建屋の流用による効率的な中継施設整備と高効率ごみ発電を組合せた,中継輸送および中継施設整備方式の複合的なシナリオの違いがごみ処理広域化の事業性に及ぼす影響について,紀の川流域の広域ブロックを事例として分析した.その結果,中継施設整備は輸送費削減の観点からは有効であるが,中継施設の建設費や点検補修費をあわせると必ずしも地域全体の事業費削減にはならず,適切な中継拠点数を考慮する必要があることを明らかにした.

  • 玉井 昌宏
    2023 年79 巻26 号 論文ID: 23-26023
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

     大阪平野では,その地形条件から様々な局地風の形成や流入が見込まれ,ヒートアイランド対策として有効に利用されることが期待される.夜間に淀川沿いに南西方向に流下する冷気流は大阪平野の夜間ヒートアイランド現象の緩和に貢献し得ると考えられる.本研究では,この気流を対象としてWRFによる数値計算を実施し,気流構造や発生メカニズムを検討した.この気流が海陸面の温度差によって生じる陸風ではなく,主として木津川流域から大阪平野に流入する低温位の山風により形成されていること,生駒山地など小さな孤立峰的山地からの斜面下降風は大阪平野の気温低下に貢献しないことなどを明らかにした.

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