土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号: 土木学会論文集
80 巻, 16 号
特集号(水工学)
選択された号の論文の174件中1~50を表示しています
特集号(水工学)論文
  • 山口 弘誠, 西村 太一, 中北 英一
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16001
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
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     地球温暖化が進む中,豪雨の甚大化が懸念されており,気象制御による豪雨抑制が期待されている.本研究では 2008年神戸都賀川豪雨をLES (Large-Eddy-Simulation)を用いて再現し,さらに地表面付近の風速場を操作することでゲリラ豪雨の重要な発達要因である渦管を弱体化させ,それが豪雨に与える影響の評価を目的とした.その結果,LESで都賀川豪雨のような複雑な豪雨事例を表現し,さらに風速場操作によって最大降雨強度を約27%弱めることを示した.その抑制メカニズムとして渦管の弱体化による上昇気流の抑制,上昇流をもたらす温位偏差と気流収束の位置のずれ,水蒸気の取り込み量の減少があることが示唆された.以上,気象学的観点から,風速場操作による豪雨抑制のための気象制御手法を提案した.

  • 仲 ゆかり, 神谷 太雅, 中北 英一
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16002
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
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     海峡や谷筋のように地形で狭まった場所では,大気の安定度が高いほど,大気の流れは地形を水平方向に回り込むように流れる.本研究では,大気が安定であるほど水蒸気を含む大気は狭窄域で収束し,水蒸気はより内陸へ入り込むのではないかという仮説を立て,大気安定度に関する感度実験を行った.大阪湾から水蒸気が供給されて発生した2012年亀岡豪雨を対象に感度実験を行った結果,大気が安定であるほど内陸へ供給される水蒸気量が多くなる傾向を明らかにした.感度実験結果の傾向を検証するため過去の大気場をクラスター解析した結果,過去の大気場においても,安定であるほど多くの水蒸気が内陸へ流入する傾向があることを示した.本研究は,大気を安定化させる効果を持つ地球温暖化と豪雨の関係を考える上で重要な基礎的知見を提供している.

  • 梶川 義幸, 渡辺 悠一朗, 大石 哲, 中北 英一
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16003
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
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     京都は関西圏でも豪雨水害の多い都市であり,防災・減災の観点から,豪雨をもたらす降水システムへの理解は必要不可欠である.本研究では京都地方気象台の積算降水量と全国合成レーダーGPV,及びメソ数値予報モデルGPVを用いて,京都市に豪雨をもたらす降水システムの時空間構造及び環境場を解析した.その結果,日最大1時間降水量20mm以上と日最大10分間降水量10mm以上の2種類の閾値により得た降水システムには,その時空間構造及び環境場に明瞭な違いが見られた.前者は六甲山を起点とする線状の降水域で特徴付けられ,上空のトラフを伴う発達した低気圧下で生じていた.一方,後者は京都市周辺に限定された局所的な降水域であり,太平洋高気圧の張り出しと関西域の地表面温度上昇により生じた対流性の降水であると示唆された.

  • 朝位 孝二, 田邉 虎太郎, 西山 浩司, 白水 元
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16004
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
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     本研究では,自己組織化マップを用いて,今後豪雨リスクが高まることが懸念される九州地方を対象として,九州全域を含む気象場と一級河川流域における降水状況の関連について分析を行った.ここでは,流域の代表例として筑後川,六角川,大野川,白川,球磨川,大淀川,川内川の各流域を対象とした.その結果,九州北部西側にある流域(筑後川,六角川,白川)では前線系の豪雨が優位であった.九州南部西側にある流域(球磨川,川内川)は前線系の豪雨に加えて台風性の豪雨も優位となる.東側の流域(大野川,大淀川)は台風性の豪雨が優位である.また,本研究で構築した自己組織化マップ(SOM)を用いて,佐賀県に豪雨を引き起こした2021年8月14日の気象場を診断した結果,筑後川と六角川流域で豪雨リスクが高い気象場パターンであることがわかった.

  • 仲 ゆかり, 福田 果奈, 中北 英一
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16006
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
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     本研究では日本の梅雨期に豪雨災害をもたらす停滞前線性の線状対流系について時空間特性に着目し,過去事例を用いて環境場の解析を行った.その結果,降雨の時空間スケールが大きく前線に付随して発生する前線付随型豪雨は,梅雨前線による強い収束域が外部からの強制力として働き,線状に並んだ積乱雲群を形成すると示された.また,前線から離れた位置に局所的に発生する孤立局所型豪雨は,最初の積乱雲の発生と自己組織的な発達における必要条件が揃った理想的な環境場となる必要があり,必要条件として対流不安定やCAPE,鉛直方向の風向の変化が挙げられると明らかにした.さらに,線状対流系発生時にCAPEと鉛直シアのバランスが一定であることが,特に孤立局所型豪雨の発生・発達において重要な意味を持つと示すことができた.

  • 橋本 弾, 宮本 真希, 大屋 祐太, 山田 朋人
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16007
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
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     冬季日本海上において北西からの季節風が卓越する時に筋状雲を形成する対流系は,温暖な海上と寒冷な大気間の気温差が駆動力となって生じた対流の上昇流域で水蒸気が凝結し雲が形成された雲域と対流の下降流域で雲が存在しない非雲域で構成される.本研究では,2015年から2020年の11月から3月に石狩湾近郊に出現した筋状雲の抽出を行い,その雲域と非雲域下における水蒸気の違いが標準偏差17%で平均1.1倍だけ雲域における水蒸気量が多いことを示した.さらに,両者の水蒸気量の違いは,水蒸気の収支だけでなく,熱力学的効果による水蒸気の容量の変化にも起因することを説明した上で,雲内部における水蒸気の凝結および周辺空気の取り込みの影響の寄与を推定する手法を提案した.

  • 澤村 直毅, 前田 健一, 大桑 有美
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16008
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
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     多様な地盤・水理条件下におけるパイピング破壊の評価指標は未だ確立されていない.そこで,本研究では外水位の高さに対する堤内の漏水量に着目して模型実験を実施し,地盤・水理条件の違いを補正した漏水量とパイピング進展度(堤体敷幅に対する行き止まり-緩み先端間距離の比)の関係からパイピング破壊の危険度の定量的な把握を試みた.その結果,漏水時からパイピング破壊までの累積漏水量に限界範囲が存在することが分かった.そこから,パイピング破壊曲線(外水位の作用時間に対する堤防強度の限界曲線)という新たな考え方に発展させた.今後,実堤防への適用に向けて現地での流量計測が望まれる.

  • 吉井 祥真, 窪田 利久, 柏田 仁, 鎌田 直樹, 鈴木 聡佑, 二瓶 泰雄
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16009
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,破堤幅が時間と共に広がったH27年関東・東北豪雨時の鬼怒川氾濫を対象として,破堤幅の時間変化と家屋被害状況との関係性を明らかにすることを目的とする.そのため,破堤幅が時間的に変化する堤防決壊を伴う鬼怒川を対象に,河川流・氾濫流一体解析を実施した.その結果,堤防決壊地点周辺の流速と浸水深は,破堤幅により大きく変化し,破堤幅変化に合わせて,被災家屋における流体力のピーク出現時刻が大きく異なっていた.多くの流失家屋周辺では流速と水深が2.0m/s,2.0mを超え,倒壊限界(木造家屋,旧耐震基準)を上回った.一方,倒壊限界を下回り,小さな浸水深となった流失家屋が存在しており,これらの場所では,地盤侵食が進行し,基礎ごと流失した可能性が高いことが示唆された.

  • 鈴木 聡佑, 窪田 利久, 柏田 仁, 鎌田 直樹, 吉井 祥真, 二瓶 泰雄
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16010
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
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     近年の豪雨に伴う洪水氾濫では多くの家屋被害が見られるが,洪水氾濫流の水理特性と家屋被害との関連性には不明な点が多い.本研究では,令和元年東日本台風・千曲川破堤氾濫において,家屋流失被害の空間分布特性を解明することを目的とする.そのため,決壊地点の流況を精度良く再現するべく,千曲川とその周辺における河川流・氾濫流一体解析を行った.その結果,決壊箇所からの氾濫流は三方向に分離し,流失家屋が帯状に分布する所では大きな流体力の範囲が広がることが確認された.また,決壊地点から離れた家屋では,氾濫流速や流体力が小さく旧耐震基準の倒壊限界を下回った.そのため,より高解像度の氾濫解析の必要性が示唆された.

  • 小田 竜生, 田中 規夫, 五十嵐 善哉
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16011
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
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     降雨によって引き起こされる河川災害と土砂災害を精度良く再現するために,分布型降雨流出氾濫解析と斜面安定解析を組み合わせたモデルを開発し,既往災害における検証を行った.降雨データは埼玉大学に設置されている気象レーダMP-PAWEのデータを用いた.分布型降雨流出氾濫解析は10mメッシュで計算を行い,氾濫水を起源となる河川または雨ごとに分離して求めることで支川における氾濫形態をより詳細に分析することができた.排水路や下水道,ため池などをモデル化することで更なる精度向上が期待される.斜面安定解析は安全率が低下した箇所と実際の斜面崩壊箇所が一致した.崩壊時刻を正確に予測するためには,鉛直方向の浸透過程を考慮することやパラメータの設定方法を工夫することが必要である.

  • 西田 渉, 佐々木 達生, 田崎 賢治, 中村 幹太
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16013
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     都市域で洪水氾濫が発生した場合,氾濫流による浸水被害に加えて,自動車等の漂流物が建物への衝突被害を生じさせると共に,流水の堰上げによって浸水域を変化させる恐れがある.本研究では,洪水氾濫時の浸水域の分布予測に自動車が及ぼす影響を考慮した手法を構築することを目的として,自動車の存在を考慮した氾濫流の数値モデルと,自動車を単一の矩形の浮体要素とみなした数値モデルを作成した.このモデルを直線水路と市街地を模した平面領域における浮体の流送と浸水域の予測に適用した結果から,文献で報告されている流送限界条件を計算できること,流水区間のうち浮体の上流側の水深が増加することが示された.また,平面領域での氾濫流の拡がりに対して浮体が水の流下を阻害することで,浸水域の範囲と水深に変化を及ぼすことが示された.

  • 鎌田 智哉, 関根 正人
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16014
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     近年,台風や前線による大規模豪雨が頻発し,さらに局地的集中豪雨と呼ばれる豪雨によって,警報が発令する前に被害が発生する可能性がある.2020年8月には埼玉県川口市で,アンダーパスにおいて冠水が発生し,数台の車両が水没した.本研究では,東京都23区にある芝浦処理区を対象として,精緻な浸水予測手法であるS-uiPSに断面交通量から算出した車両台数を組み込み,交通渋滞を反映した想定最大規模降雨時の浸水予測計算を行った.その結果,幹線道路とその周辺の道路で浸水深が上昇することが判明した.また,同エリアにおいて,人口集中地域から病院まで浸水を回避できる経路検索システムの検討を行った.浸水解析と連動させることで豪雨時でも通行可能な経路が得られ,時間刻みを小さくするとより経路長が短い経路を得た.

  • サムナー 圭希 , 井上 卓也, 泉 典洋, 清水 康行
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16015
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     豊平川花魁淵では,砂礫消失後に岩盤が露出・侵食したことによりニックポイントと呼ばれる小滝が形成され,ニックポイントの後退(上流移動)が確認されている.本研究では,岩盤侵食を考慮した数値計算モデルを用い花魁淵でみられた川幅と勾配に変化がある岩盤河川の侵食過程について解明を試みた.数値実験では川幅と流量に変化を与え計算を行った.数値実験の結果,ニックポイント周辺の川幅が変化することにより流砂量が増加し岩盤侵食量が増加することで,ニックポイントの維持と後退を促進することが示唆された.また,乾湿風化は,上流側の岩盤床を平坦化し急勾配部を全体的に低下させるため,川幅変化によるニックポイント後退への影響を維持する効果があることが示唆された.

  • 音田 慎一郎, 寺田 恒喜
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16016
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     河床に生じる河床波は,流れや土砂輸送に影響を与え,砂堆の発達・遷移過程においては流れに及ぼす抵抗が変化することから河床波の形成に関する予測技術の構築は河川工学的に重要な課題である.本研究では,3次元流れ解析モデルと河床近傍での圧力勾配の影響を考慮した土砂輸送モデルを組み合わせ,砂堆の形成過程に関する数値解析を行い,モデルの妥当性を検証した.初期に発生した比較的規則正しい河床波が時間の経過とともに砂堆形状へと変化し,上流側の砂堆が下流側の砂堆に追いつき,合体し,波高を大きくさせることで波長の大きい砂堆へ発達する過程を再現できることを示すとともに,数値解析結果から合体前後の流れ特性について考察を行った.

  • 井上 卓也, 岩崎 理樹, サムナー 圭希 , 平松 裕基, 尾関 敏久, 佐々木 俊一, 冨野 龍朗, 木戸 理歩
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16017
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     交互砂州河道における砂州波高の変化予測は河道管理の観点から重要である.本研究では,砂州波高の成長率を把握するために理論解析と数値解析を実施した.また,理論解析で用いられる波高成長率式を参考に,数値解析結果より複断面河道における簡易的な波高推定手法を提案した.砂州波高の増大が問題となっている忠別川を対象として,提案した波高推定手法に,ダムによる流量調整あり想定規模のハイドロと,流量調整なし想定規模のハイドロを与えた結果,前者では砂州波高が増大し続けるのに対し,後者ではピーク流量付近で砂州波高の減衰が生じるため,最終的な砂州波高が大きく増加しないことが確認された.このことは,ダムの調整による流量の平滑化が砂州波高の増大に大きな影響を与えている可能性を示唆している.

  • 住谷 翼, 関 翔平, 茂木 大知, 安田 浩保
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16018
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     河床材料が砂礫で構成される河川において自発的に形成される砂州に関する研究は多いが,その発生機構の物理的解明には至っていない.本研究では,単列砂州の形成時の底面と水面をStream Tomographyにより計測したうえで,流速を平面二次元解析により計算し,移流と拡散の比であるPeを算出した.その結果,Peと底面の幾何学形状の間には密接な関係があり,また,Pex成分のヒストグラムは二峰性を有することがわかった.特に,砂州の形成初期では条件によらず一定の値でヒストグラムの分布が変化していた.以上のことは,砂州の形成過程における大きなPeは砂州の移流が拡散に勝り,この均衡関係により河床波の波高が発達することを示唆し,また初期のPeによって砂州の発生を分類できる可能性を示す.

  • 高見 和湖, 三好 翔, 小林 泰輔, 鵜﨑 賢一
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16020
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     利根川中流域の八斗島水位観測所の左岸水位標埋没問題を対象として,河川合流部の砂州の挙動について,航空写真解析と水文データ解析,ならびに移動床実験と可視化実験によって調べた.航空写真解析結果からは,H23出水による埋没が,2000年頃からの上流側左岸砂州の伸長によることがわかった.水文データ解析からは,年総流量以上に,2000年頃以降,年最大流量比が顕著に変化していることがわかった.移動床実験結果は,合流後の総流量が変化する・変化しない場合のいずれにおいても,利根川インパクトの流量比変化によって左岸砂州が伸長し,その後の烏川インパクトによってその形状が先鋭化することがわかった.蛍光砂による可視化実験結果は,これらの変化をもたらす砂の挙動を明らかにした.

  • 古川 仁志, 桒原 昭夫, 安藤 悠, 朝岡 良浩
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16022
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     河道内を流下する流砂量を計測し土砂の移動特性を把握することは特に堆砂量の多い経年ダムの土砂管理において重要である.FC(Flow cell)型超音波減衰スペクトル計は2017年に初めて実河川に設置された浮遊砂観測装置である.これまでの観測ではwash loadは測定できるが,細砂・中砂以上の粒径の粒子を含む土砂の測定にはサンプリング方法やFCの構造などに課題があった.本研究ではサンプルの増量と粒度試験方法の改善を行うとともに,FCを改良した超音波減衰スペクトル計を用いて融雪出水期の浮遊砂観測を行った.その結果,FC型超音波減衰スぺクトル計が粒径2mm以下の浮遊砂とwash loadの濃度と粒度分布を測定できることを確認した.また,これらの測定データを用いて粒径階級別に土砂輸送量を算定することが可能となった.

  • 手塚 透吾, 溝口 裕太, 斉藤 展弘, 崎谷 和貴
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16023
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     河道内に繁茂する竹林を対象としたLocal Maximum Filtering(LMF)による樹頂点の抽出において,その入力データであるDSMの作成方法の違いが樹頂点の抽出結果に与える影響を検討した.航空レーザ計測データとUAV空撮画像のSfM-MVS解析から,DSM-AとDSM-Uの2つのDSMを作成した上で,LMFを実行した.その結果,LMFのパラメータである最適なWindow size(WS)はDSM-Uの方が小さくなった.これは,DSM-UがDSM-Aよりも標高の凹凸が小さく滑らかなDSMであることが主因であると考えられた.このことから,LMFによる樹頂点の抽出精度を左右するWSは,データの取得方法により作成されるDSMの性状が異なることに留意をし,設定することの重要性が示された.

  • 小橋 力也, 大森 嘉郎, 椿 涼太, 吉村 英人, 藤田 一郎
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16024
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     河川流を可視化計測する際には,水流の乱れに起因して現れる波紋を映像パターンとして追跡して流速分布を算出する.低水時など波紋が不明瞭な場合には表面トレーサーを散布するが,表面トレーサーは表面流の吸い込み部へ引き寄せられトレーサー密度が不均一になり,統計量の算出などに制限があった.ところで,河川流では河床・水流・大気の温度差と乱流によって水温の微少なゆらぎが生じる.この温度ゆらぎは水面にも現れることから,この温度ゆらぎを中波長赤外線カメラにより映像パターンとして取得し,STIVの特長を活かした新たな方法を考案して,河川流の乱流計測を試みた.提案手法とPIVによる乱流特性の分析結果と比較した結果,提案手法はより高精度に乱流成分が取得できることが示唆された.

  • 鈴木 朱音, 茂木 大知, 安田 浩保
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16025
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     河川の計画と設計においては,洪水中の流量と構造物が洪水時に安定を維持できる基礎深度を把握する必要がある.このためには洪水中の河床変動の把握が不可欠であるが,洪水中の流水中の現象の定量化手法は未確立である.洪水時の濁水下でさえ入手可能な水理量として表面流速がある.マスコン法を応用すれば理論上は,既知の表面流速から流水深を算定でき,流水深を介した河床の把握が可能となる.そこで本研究では,流速の平面分布を入力値として,連続式に基づき平面二次元の流水深を推定する手法を構築した.その結果,数値実験で,砂州を模した流れにおいて流水深の分布を推定でき,重み係数を空間の変数として推定すると推定精度が向上することを確認した.また,入力値のノイズは流水深の振幅と同程度まで許容されることを示した.

  • 山﨑 陽生, 武田 龍弥, 岡田 将治
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16026
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,様々なスケールに対応した河川濁度計測手法の開発を目的として,マルチスペクトルカメラと衛星データを用いた検討を行った.その結果,マルチスペクトルカメラを用いた観測と衛星データにより得られる水面反射率が概ね等しくなり,同じ濁度推定式を用いた濁度推定が可能であることを明らかにした.さらに,近赤外波長では現地に適用可能な濁度推定式を実験データから構築できる可能性を確認できたが,赤波長では水深の影響を受けるため,現地観測データが必要となることがわかった.

  • 工藤 俊, 萬矢 敦啓
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16027
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     本論文では,これまでの洪水流量観測技術の発展を踏まえた上で,河道の流速の平面的な分布情報を陽に考慮した流量把握技術を,今後の流量観測の技術的な発展の方向性の一つとして認識し,流速の面的把握から流量算出までを試行した.試行イベントは2021年度に実施された千代田実験水路の通水実験とした.初めに,カメラの角度及びカメラと水面までの距離の情報を用いて幾何変換を行った上でPIV解析を実施し,得られた表面流速を電波式流速水位計から得られる表面流速と比較した結果,概ね整合することを確認した.その上で,流量算出断面を設定し,通水中の河床高の横断分布は小規模河床波に関係する流水抵抗の知見を活用して推定し,流量を算出した結果,通水実験における実際の流量を良好に再現する結果が得られた.

  • 萬矢 敦啓
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16028
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     著者は河道内の水理量に関して観測データを基に評価することを目的とした計測手法を開発した.近年多発する大規模洪水での現象把握を目標とし,UAVに搭載したビデオカメラを主たる計測機器として位置付けている.本手法は撮影した動画を用い,PIVによる流れ場とSfMを用いた水面形を計測するものである.同手法の精度評価と得られる物理現象を検討するために千代田実験水路で観測を実施した.流速場,水面形から小規模河床形態が検出され,流水抵抗から水深を高い精度で推定することができた.また異なる河道条件に応じて流線上のエネルギー分布を算定し,エネルギー損失を評価した.

  • 若林 遼, 岩出 大輔, 入江 政安, 中路 貴夫
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16029
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     いずれ海洋ごみとなりうる河川内のごみの輸送形態を明らかにすることは環境面また行政面で重要である.著者らはこれまで大和川本川の高水敷に残るごみの特性について明らかにしたが,本検討では支川での調査を加え,ごみの種類についても検討した.加えて,浚渫工事中の汚濁防止フェンスによって捕捉された漂流ごみについても詳細な調査を実施した.高水敷に残るごみについて,被覆率とごみの重量には線形の関係があり,ごみの被覆率1%あたりの重量は,26.8g/m2と推定された.一方,上流に設置された汚濁防止フェンスに捕捉されたごみの重量は,54日の間に,約112kgであった.また捕捉されたペットボトルおよび飲料缶の製造時期を推定したところ,1年以内に製造されたと思われるごみが約91.2%であることが推察された.

  • 大江 悠人, 古谷 昌大, 片岡 智哉
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16030
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     本研究では新品の飲料用ボトルキャップ試料片に紫外線を照射し,分子構造・表面形状・質量変化に着目して劣化度を評価した.UV照射によってキャップ試料片の質量減少が見られ,表面に亀裂等が生じていることが確認された.また表面粗さの指標である算術平均粗さが質量比(初期質量に対する劣化質量の比率)と有意な相関があることから,粗くなった表面からnmサイズレベルの微細プラスチックが発生している可能性が示唆された.そこで,紫外線照射量を説明変数に,質量減少率を目的変数にした一般化線形モデルを構築し,全国各地の年間紫外線量を代入することで,全国に散乱する飲料用ボトルキャップからの年間微細プラスチック発生量を推計したところ,年間22.6kgであった.これは,国内河川からの年間プラごみフラックスの0.01%未満であったが,河川流域における散乱プラごみの微細化について更なる研究の進展が求められる.

  • 安達 智哉, 門脇 大典, 中谷 祐介
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16031
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     深層学習モデルYOLOv5を用いて,定点カメラで撮影した水面画像から河川浮遊ごみを連続検出する手法を構築し,良好な検出精度を得た.構築した手法を用いて,都市感潮河川である大阪府平野川を対象に,複数の定点カメラを用いた浮遊ごみの高密度観測を実施し,浮遊ごみの時空間的な挙動特性を解析した.浮遊ごみの挙動は主に潮汐に支配されており,満潮時に流れが停流する上流域において,浮遊ごみが滞留・集積する様子が見られた.潮汐流の変動成分によって生じる物質拡散が上流域に比べて下流域で大きいために,上流域では浮遊ごみの密度が大きく,下流域では小さい傾向が見られた.平野川では,平水時にも多くの浮遊ごみが流下しており,川沿いへの人のアクセスが多いために,平水時に直接水面に投棄されるごみ量が増加するものと考えられた.

  • 矢島 啓, 藤井 陽, 管原 庄吾, 吉田 圭介
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16032
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     本研究では多波長励起蛍光光度計(MFL)による植物プランクトンの組成分類に,ランダムフォレスト(RF)を適用した.まず,培養株により現場を疑似的に再現した擬似観測データを用い,RF適用の妥当性を確認した.その後,ダム湖で得られた観測データを用いて,RFの適用性を検討した.組成分類は4グループ(Brown(珪藻+渦鞭毛藻+黄金色藻), Green(緑藻), Mixed(クリプト藻), Blue(藍藻))とした.その結果,BrownおよびGreenは比較的良好な,Blueはある程度の精度が得られたが,Mixedは良好な精度は得られなかった.さらに,RF学習モデルをダム湖に現地適用したところ,特にBrownとGreenの特徴的な分布を捉えることができ,MFLの有用性が示された.

  • 宮平 秀明, 宮園 誠二, 赤松 良久
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16033
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     外来沈水植物オオカナダモの異常繁茂による水域生態系への影響が懸念されている.今後,オオカナダモのさらなる影響を抑えるために,流域全域におけるオオカナダモが異常繁茂し得る河川区間を効率的に把握し駆除する必要がある.本研究では,江の川水系を対象に環境DNA分析を用いてオオカナダモの繁茂状況の把握を行った.続いて,オオカナダモ繁茂と環境要因との関係について解析し,オオカナダモ繁茂のポテンシャルマップを作成した.結果として,オオカナダモは河床勾配の緩やかで土砂堆積の起こりやすい地形に定着しやすいことやオオカナダモが休眠状態になり得る水温の時間数が多いほど定着しにくいことが推察された.また,環境DNA分析を用いることで水系内のオオカナダモの繁茂ポテンシャルを推定可能であることが明らかとなった.

  • 小橋 乃子, 肥後 拓馬, 安達 貴浩
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16034
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     熱帯域や亜熱帯域に広く繁茂するボタンウキクサ(Pistia stratiotes)は,強い繁殖力により湖沼や河川の水表面を覆い尽くし,その異常増殖が問題となっている.我が国でも西日本を中心に異常繁茂が報告されており,地球温暖化の進行に伴って外来浮草の問題は今後も深刻化することが懸念されている.効率的な浮草駆除のためには,浮草バイオマスの動態を定量評価できるモデルの活用が不可欠である.このため,本研究では既往の実験・観測データを可能な限り活用し,汎用性の高いボタンウキクサ増殖モデルの構築を試みた.2つの検証データに対して再現計算を行ったところ,比較的良好な結果が得られたことから,次に,構築したモデルを用い,効率的な浮草回収方法について基礎的な検討を行った.

  • 武藤 裕花, 塩尻 大也, 小槻 峻司
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16037
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
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     水工学委員会論文集編集小委員会事務局は,古いバージョンを掲載してしまったため下記論文を取り下げました.この論文の正しいバージョンを「土木学会論文集, Vol.80, No.16, 23-16197, 2024」に掲載します.

  • 吉見 和紘, 馬渕 慎也, 吉田 翔
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16038
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     局地的大雨などの短時間降雨予測に,気象レーダの観測データから推定可能な三次元風速場の推定結果を導入することを想定して,二重偏波フェーズドアレイ気象レーダで得られる三次元的に高密度な観測データを用いて,VVP法ならびにDualドップラー解析により三次元風速場の推定を行った.その結果,解析に用いるデータの仰角密度が高くなると,鉛直風の弱風の頻度が減少し,強風の頻度が増加するとともに,推定される風速のばらつきが小さくなることがわかった.また,Dualドップラー解析による鉛直風の推定結果は,VVP法の推定結果と比べて,ばらつきが小さくなることがわかった.

  • 中北 英一, 佐藤 克哉, 中渕 遥平
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16039
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     日本には急峻な地形が多く存在し, 山岳の影響により降雨が強化され, 多量の雨をもたらす地形性降雨という現象が発生する. 地形性降雨によって, レーダー観測雨量と地上観測雨量にずれが発生することがある. 地上雨量を正確に推定することは, 防災上の観点から非常に重要である. 本研究では, 地上雨量推定の精度を向上させることを目的として, レーダー情報から捕捉率を推定する手法を開発し, その捕捉率を用いて地上雨量推定を行った. その結果, 捕捉率は信頼性のある値で算定でき, レーダー情報から得られた捕捉率を用いた場合でもXバンド偏波ドップラー情報とCバンド偏波ドップラー情報を合成して得られた雨量情報(以下CX合成雨量と呼ぶ)と比較して従来の推定手法と同じかそれ以上の高い精度で地上雨量を推定することが可能であることが示された.

  • 瀬戸 心太, 内海 信幸, 久保田 拓志
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16040
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     雨量計観測から降水強度を算出する場合,一般には,観測した降水量を対象時間で割る手法(単純法)が用いられる.転倒ます型雨量計において,単純法は対象時間が短いほど精度が悪い.著者らは,転倒時刻を統計的に推定し,累積降水量の内挿により降水強度を算出する手法(内挿法)を開発した.本研究では,ディスドロメータの観測から雨量計の模擬観測データを作成し,単純法と内挿法の精度を検証した.内挿法は単純法より優れており,特に降水強度算出対象時間が短い場合に精度の差が大きいことが分かった.また,内挿法では,雨量計記録時間分解能が短いほど精度が向上することが示された.1時間分解能の記録しかない場合において,転倒発生時刻の推定を改良することで,内挿法における1時間降水強度の算出精度をさらに改善することに成功した.

  • 田村 隆雄, 吉田 弘, 端野 道夫, 梅岡 秀博
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16041
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     著者らは水平方向の浮遊微細水滴輸送が降雨遮断に寄与するという仮定の下,風速および浮遊微細水滴量の源となる降雨量を時間変動する確率変数と見なし,乱流あるいは移流拡散係数の概念を水平方向の浮遊微細水滴輸送に援用することで,浮遊微細水滴の水平輸送フラックスを風速と降雨強度の風雨積として確率論的に定式化し,この風雨積を基本説明変数として構成される降雨遮断量の重回帰モデルを提案した.徳島県内に開設された2つの流出試験地(奥野井試験地:針葉樹,横野谷試験地:広葉樹)で観測された降雨遮断量及び気象データから総計219の降雨イベントが抽出され,降雨イベントごとに観測データが本論文で提案される重回帰モデルに適用された.解析結果は本重回帰モデルが降雨遮断量の時間変化を良好に再現することを示した.

  • 笠原 豪, 新谷 哲也
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16043
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
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     津波や洪水等の複雑な流体現象に対して数値シミュレーションは非常に有効な定量化手法である.中でも格子ボルツマン法は完全に陽的な計算手法であり並列化効率が高い.近年キュムラントモデルとPhase-Field法を用いることによって安定性のある気液二相流解析が行えるようになったが,土木分野では適用事例が依然として少ない.そこで本研究ではキュムラントモデルとPhase-Field法を用いて激しい流れ場に対する二相流解析モデルを開発した.モデルの検証として,無重力空間での液滴振動,水柱崩壊現象を解析したところ,本モデルにおいて表面張力と重力流がそれぞれ理論値,実験値と良好な一致を示すことを確認できた.障害物を含む水柱崩壊の解析を行った結果,水位変化・作用波力ともに過去の実験結果を精度よく再現できた.

  • 中山 恵介, 新谷 哲也, 押川 英夫, 小林 健一郎
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16044
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     河川流の再現には,その簡便さから水深積分型の長波近似方程式(longwave model)が用いられることが多い.一方で,進行波の再現にはBoussinesq方程式を用いるべきであることがわかっている.つまり非静水圧成分の再現が重要なポイントであり,過去の研究で変分原理を利用した水深積分型の方程式が提案されている.そこで本研究では,longwave modelと,変分原理に基づいたWave-Current model using Variational principle(WCV model)を用いて,進行波,常流,射流の再現計算を行い,その信頼性の検討を行った.また,鉛直断面内の渦の効果を検討するために,3次元数値計算モデルとの比較も行った.その結果,射流状態での流れの再現にはWCV modelを用いるべきであることがわかった.さらに,水面や河床の変動が有限振幅であるような流れ場においては,その鉛直渦を再現できる3次元数値計算モデルを用いるべきであることがわかった.

  • 浅田 洋平, 大山 修蔵, 申 文浩, 鈴木 哲也
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16045
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,漏水1点に対応した数値スキームを組み込んだ数値シミュレーションを用いた圧力変動データ同化による新たな管内漏水検知法を開発し,本手法における1点漏水の漏水位置と漏水量の推定精度を検証した.その結果,模型管路実験及び現場管路実験の両方において,管全長に対する推定漏水位置誤差が約2%以下,実測値に対する漏水量誤差が約30%以下となり,本漏水検知法が実用的に支障のないレベルのパフォーマンスがあることが示された.また,漏水検知限界となる漏水規模は,模型管路実験及び現場管路実験においてそれぞれ管断面積に対して1.70×10-5,2.73×10-3の大きさであることが明らかになった.これらの結果は,既往の研究と比較して模型管路実験では10オーダー小さい,現場管路実験では同程度のレベルであった.

  • 佐藤 柳言, 高橋 正行
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16046
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     スルースゲート直下に形成される自由跳水を対象に,与えられたフルード数のもとでレイノルズ数を広範囲に変化させた系統的実験によって,跳水内部の空気混入率の大きさと分布が示された.跳水内部の空気混入率の大きさと分布に対して,レイノルズ数の影響の認められる範囲と認められない範囲とが示された.高速度ビデオカメラを用いた流況観察より,空気混入率の大きさと分布へのレイノルズ数の影響が認められる場合,レイノルズ数の減少とともに跳水の水表面から取り込まれる空気泡の量が少なくなることが示された.

  • 秋野 淳一, 西嶋 貴彦, 伊藤 幸義, 金目 達弥
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16047
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     近年多発している堤防決壊の主要因は越水であることが指摘されている.国土交通省では,越水に対して「粘り強い河川堤防」を整備することを目的として,河川堤防の強化に関する技術検討会を発足し,粘り強い河川堤防の整備区間で使用できる工法の技術開発を推進している.本研究では,実際の河川工事で使用されているブロックの模型を用い,その表面突起の形状などをパラメーターとして越流水によって作用する流体力の計測を行った.その結果,表面突起高を高くした場合,抗力作用面積は大きくなるが,流速が低減されることで,抗力が小さくなることが確認できた.また,ブロックに開孔を設けることで揚力が小さくなることが確認できた.河川堤防の裏法面で使用する場合,安定性の高い被覆ブロック形状の一例を示すことができた.

  • 堀 謙吾, 國領 ひろし, 二瓶 泰雄
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16048
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,河川堤防の裏法面および裏法尻にかご系構造物を配置した場合の越水に対する基礎的な性能を把握することを目的に,堤防越流時のかご系構造物周りの流れ,かごの変状および中詰石の挙動を実験的に検討したものである.先ず,大型水平開水路を用いてかご厚さと中詰石の粒径および越流水深を変化させた実験を行い,かご層内外の流れを検証した.次に,かご構造物に対し,越流前後のかごの変状および中詰石の移動状況を3Dスキャナにより計測した.その結果,越流水深に関わらず,いずれのケースもかご厚さの4割以深から流速が一定となり,かご表面の流速に対して流速が低減されていることが明らかとなった.さらに,越流前後において,かごの変状や中詰石の大幅な移動は認められず,十分な耐侵食性を有していることを確認した.

  • 平松 裕基, 井上 卓也, 高橋 一鳳, 米田 直弘, 内田 龍彦, 泉 典洋
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16049
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     本論文では,岩盤河川上にある滝の位置が上流に移動する現象に着目した.実験では,緩勾配水路における滝が上流移動する過程を調べるとともに,この移動を引き起こす流速や土砂移動速度の縦断変化に注目した.低強度のモルタル床を用いた実験を行った結果,落差の縁の直上流に射流域が現れ,この区間とステップ状の侵食が見られる区間が一致することがわかった.ステップ状の侵食の波長は,基盤岩上で形成される周期ステップを対象として得られた知見から算出された値と同程度になり,類似点があることが示唆された.また,固定床を対象としてPIV・PTV計測を行った結果,河床面付近で下降する粒子の鉛直方向の移動速度を縦断で見ると,移動速度が増加する箇所の間隔もステップ波長と同程度の値となった.

  • 横田 慶二, 泉 典洋, 井上 卓也, 平松 裕基
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16050
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     岩盤上に形成されたニックポイントの上流進行プロセスに及ぼす土砂供給量の影響を調べるため,水路実験を行った.水路内に初期落差のある岩盤を模擬したモルタル床を打設し,そこに上流側から土砂を供給し,侵食過程を観察した.その結果,以下のことがわかった.水路内において,初期段差の上下流の一様勾配区間で侵食が発生せず,初期段差上の急勾配区間でのみ侵食が生じる場合,滝の上流進行プロセスはオーバーハング型をとる.初期段差の上下流の一様勾配区間と初期段差上の急勾配区間の両方で侵食が発生するとサイクリックステップ型の上流進行プロセスとなる.本研究の実験条件では,土砂供給量が25g/minと35g/minの間に,この2つの上流進行プロセスを分ける閾値が存在する.

  • 加藤 宏季, 福岡 捷二
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16051
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     土石流による渓床・渓岸侵食を瞬間的,局所的な変化過程として捉えるだけではなく,時空間的な広がりを持つ現象として捉えることが重要である.土石流の侵食をエネルギー的に捉えることにより,時空間的に広がりを持ったスケールで侵食メカニズムを考えることができる.本研究では,石礫流を対象とし,まず初めに三次元運動方程式に基づいた観点から,詳細な三次元数値実験より,渓床・渓岸侵食機構を検討する.次に,三次元運動方程式から得た水理量を用い,エネルギー輸送の観点から渓床・渓岸侵食機構を大きなスケールで検討する.検討結果より,縦横断的に大きなエネルギー勾配を有する石礫流が渓岸にぶつかることで侵食が起こっていることを明らかにしている.

  • 因 岳宏, 関根 正人
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16052
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     粘着性材料が露出している河川では,災害と環境の両面で懸念を抱えている.そこで,粘土河床上に砂礫が堆積,離脱する現象について定量的に解明する必要がある.本研究では,粘土河床上に堆積した砂礫が離脱する現象に着目し,Pick-up Rateおよび粘着力を算定した.その結果,底面せん断力が大きいほど砂礫の離脱が起きやすく,Pick-up Rateの値が大きくなる傾向にあることを確認した.また,移動限界時を対象として粘土が付着した砂礫の力の釣合いから粘着力を算定すると,その値の範囲内に引張り試験より得られた粘土の示した粘着力の値が収まることがわかった.このことから,引張り試験から求めた粘土の特性値から,粘土河床に堆積した砂礫の離脱条件を求めることが可能であると示唆した.

  • 舛屋 繁和, 井上 卓也, 平松 裕基, サムナー 圭希 , 傳甫 潤也
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16053
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     軟岩あるいは土丹と呼ばれる侵食が生じやすい岩盤層が露出した河川の管理に資するため,これまで様々な研究が実施されているが,混合粒径砂礫が軟岩床上を通過する際の侵食速度は調査されていない.本研究では,混合粒径砂礫が軟岩床を侵食する際の移動・堆積状況を観察するため,モルタルを施工した疑似的軟岩水路上で,混合粒径砂礫を供給する模型実験を実施した.その結果,混合砂礫が軟岩床上を流下する場合は,平均粒径のみではなく軟岩床の凹凸と堆積する細粒分の大小関係や流砂量,軟岩侵食に大きく寄与する比較的大きな砂礫の流砂量など,軟岩侵食量を推定するにあたっては,平均粒径以外の要素と軟岩侵食速度の関係も明らかにする必要がある可能性が示唆された.

  • 関根 正人, 稗田 明哲, 帆足 拓海
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16054
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     本論文では流砂がすべて河床を起源とすることを考慮して,掃流砂と浮遊砂の濃度分布と流速分布に着目してその連続性を確認することを目的とする.また,解析技術の向上により精緻に粒子の追跡・カウントが可能となり,鉛直分級を可視化するだけでなく流砂量を濃度分布から直接算出することができた.その結果,浮遊砂と掃流砂が下降流に乗って大きな速度で移動するという同様の運動特性が確認され,改めて浮遊砂と掃流砂の分類の稀薄性が示された.また,同粒径で遮蔽が生じない二粒子であるが,明確な鉛直分級が確認され,給砂粒子が河床の交換にどの程度寄与するか明らかとなった.さらに,濃度分布と流速の実験値により河床面上の掃流砂の運動特性を粒子の存在比で表すことができた.

  • 江頭 進治, 南雲 直子, 原田 大輔, 秦 梦露
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16055
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,浮遊砂に関する新しい解析法に基づいて浮遊砂および掃流砂の分級過程を論じたものである.砂粒子の分級は,掃流砂層から浮遊砂流への連行現象および浮遊砂流から掃流砂層への粒子沈降によって起こることを推察し,浮遊砂流および掃流砂層における各砂粒子の粒径毎の質量保存則を提示した.次いで,浮遊砂卓越河川の一つとして,トンレサップ湖へ流入するセン川を選び,セン川河道における河床材料に関する調査データを示し,シミュレーションを通じて河床材料の分級は掃流砂層の浮遊砂流による連行と浮遊砂流からの砂粒子沈降によって生じていることを確認した.この際,浮遊砂の堆積領域における河床表層の粒度分布は,浮遊砂を構成する砂粒子の沈降現象によって決定されることを導いている.

  • 溝口 裕太, 黒木 秀和, 戸村 健太郎, 金谷 将志, 中村 圭吾, 崎谷 和貴
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16056
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     機械学習の一つであるRandom Forest(RF)を用いて,地被スケールの河川景観(草地,樹林地,自然裸地,開放水面など)を判読するための処理手法を検討した.釜無川と九頭竜川の直轄管理区間を,2つの領域に分割して作成した学習・テストデータを組み合わせ,4つのケースを試行し,判読精度を検証した.その結果,多クラス分類の評価指標であるmacro-F1は最大73%,また,開放水面と自然裸地のF1 socreは最大90%,次いで草地,樹林地は70%ほどとなった.学習データによる判読精度の差異は小さく,この理由には,計測時期や時刻の影響を受けにくい数値表層モデル(DSM),植生高分布,反射強度が,RFにおける寄与率の高い特徴量であることが一因であると推察された.

  • 周 月霞, 戸田 祐嗣, 溝口 裕太
    2024 年 80 巻 16 号 論文ID: 23-16057
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

     水理解析モデルを用いて河道内樹木による流下能力への影響や洗堀・澪筋固定化等の現象を推定するためには,河道内樹木群の密生度や樹高を把握する必要がある.河道全域で樹高・密生度を調査するためには膨大な労力・コストを要するが,河川調査で普及・使用されている航空レーザ測量(ALB測量)データを活用し河道全域の樹木情報を効率的に把握できるような技術開発が期待される.そこで,本研究ではALB測量点群データ,単木解析手法を用いて樹木(竹林・木本類)の密生度の推定を行い,推定結果を水理解析に活用して,洪水水位への影響を検討した.現地調査結果との比較から単木解析手法は樹高及び木本の範囲を抽出できること,また,抽出した樹木密生度を使った水理解析結果と観測結果の比較から,水位を比較的高い精度で解析できることが確認できた.

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