土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
特集号: 土木学会論文集
79 巻, 15 号
特集号(応用力学)
選択された号の論文の54件中1~50を表示しています
特集号(応用力学)論文
  • 荻野 俊寛, 西尾 伸也
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15001
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    ベンダーエレメント法の測定精度改善を目的として,寸法および形状の異なるベンダーエレメントおよびセルフモニタリングベンダーエレメント(以下素子と記す)の振動特性をレーザー変位計で多点計測した.各素子は複数の固有周波数を持つ多自由度系の減衰振動を示した.実験モード解析の結果,素子の寸法やモニタリング部の有無に関わらず,従来,素子の挙動として想定されていなかった幅方向の曲げによる固有振動モードを確認した.固有モード近似による素子の振動のモデル化を念頭に,固有モードの重ね合わせで近似した周波数応答から素子の応答を計算し,実際の応答と比較した.2 つの主要な固有モードで近似した各素子の応答は,実際の応答をよく表現した.素子全体の誤差の平均は素子によらず 10%程度となった.

  • 渡辺 力, 落合 楓
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15002
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    本研究では,Region-wise ZIG-ZAG 理論を用いた異方性積層板の自由振動解析法を提案する.この Regionwise ZIG-ZAG 理論は,複合材料で補強された鋼やコンクリート構造に ZIG-ZAG 理論を適用するために,改良 ZIG-ZAG 理論と Layer-wise 理論を融合させたものである.板厚方向に領域を設定することで,面外振動モードのみならず,面内振動モードに対しても効果的に高精度な固有振動数を計算することができる.中等厚板に対する精度と領域の採り方の影響を調べ,仮想ラミナを用いる方法を Region-wise ZIG-ZAG 理論に適用して厚板での精度と仮想ラミナの効果を検証している.

  • 三木 陽大, 丸山 泰蔵, 中畑 和之
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15004
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    材料表面にレーザーを照射すると,光音響効果によって構造部材の内部に光音響波 (超音波) が発生する.これは,短時間にパルスレーザー光が作用することで急激な熱応力の変化が生じ,応力波として伝搬するためである.本研究では,光音響波の発生と伝搬を数値的にモデル化し,実験によって数値モデルの妥当性を確認することを目的とする.ここでは,有限積分法のスキームを用いて,熱伝導問題と波動問題を連成して解くことを試みる.超音波非破壊検査の水浸試験において水中でレーザーを照射する場合を考え,固体と液体の界面を含む波動場を想定して伝搬シミュレーションを実施した.レーザーを被検体表面に直接照射する場合と,水中から照射する場合では,発生する縦波の強度が異なることが示された.光音響波の計測実験でも同様の現象が観察され,有限積分法による数値解析は現象を良好に模擬することができた.

  • 北原 優, 北原 武嗣, Michael BEER
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15005
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    老朽化や種々の環境要因による損傷など,既存構造物の性能は経年変化を受けている.このような状況下,構造物のライフサイクルマネジメントにおいて残存性能を適切に評価することが求められる.適切な残存性能評価のため,モデル応答と実挙動が可能な限り一致するよう観測に基づいた数値モデルの更新が重要となる.本研究では,観測データからモデルパラメータ不確定性を定量化するため,バタチャリヤ距離と階段状密度関数に基づく階層ベイズ推定手法を構築し,簡単な数値例題を通して通常のベイズ推定と提案手法の比較を行った.検討の結果,提案手法は様々な分布形状に対するロバスト性を有していること,また,観測誤差やパラメータ不確定性など種々の不確定性要因の組合せにも対応可能であることを示した.

  • 河地 陽太, 車谷 麻緒
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15006
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    本論文では,実験計画法に基づく数値実験により,鉄筋コンクリート(RC)はりのせん断破壊挙動のばらつきを再現するとともに,分散分析と応答曲面法をそれぞれ適用することで,RC はりのせん断破壊における挙動のばらつき要因を定量的に検討する.はじめに,RC はりの 4 点曲げ試験に対して,直交配列表を用いた 4 元配置数値実験を行い,実験と同様のせん断破壊における挙動のばらつきを再現する.次に,数値実験の結果に対して分散分析を適用することにより,RC はりのせん断破壊における挙動のばらつき要因を定量的に示す,さらに,応答曲面法を用いて同様の検討を行い,RC はりのせん断破壊における挙動のばらつきは,コンクリートの材料強度の違いが要因であることを定量的に示す.

  • 木本 和志, 斎藤 隆泰
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15007
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    本研究は, 時間反転集束の原理に基づくイメージングが, 超音波が反響する状況での探傷にも有効であることを, 実験と数値シミュレーションで示したものである. 実験では T 継手形状を模擬した試験体を用い, 人工き裂からの散乱エコーを計測した. 数値シミュレーションでは, 時間反転した計測波形を差分法解析の境界値として与え, 時間反転場の集束挙動を調べた. その結果, 計測波形上では識別困難なき裂エコーが, 時間反転場において散乱源に集束する様子が明瞭に追跡できることを示した. さらに, 計算で得た時間反転場を利用した超音波イメージングを行い, 散乱源位置を正確に示す画像が得られることを示した. 以上により, 時間反転集束法が, 継手のような多重反射や回折波が混在する状況での超音波探傷にも有効であることを明らかにした.

  • 栗原 幸也, 矢口 龍太, 長浜 義彦, 佐伯 昌之
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15008
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    豪雪地区の送電用鉄塔は,部材上に冠雪が発生し,設計値以上の荷重が作用することで,部材変形や破断が発生することがある.冠雪が発生する鉄塔のほとんどは,厳寒期において頻繁な現地調査が困難な場所に建設されており,冠雪による部材変形の詳細なメカニズムは明らかになっていない.そこで本研究では,まず供用中の鉄塔において,部材の傾斜変化とカメラ画像をモニタリングすることで冠雪の状況を把握した.次に,推定した冠雪荷重を部材解析モデルに載荷し,部材に発生する応力を解析することで部材損傷に至るメカニズムを考察した.この解析結果の妥当性を確認するため,実際の鉄塔に冠雪荷重を模擬した荷重を与え,部材の傾斜変化と冠雪荷重の関係を確認した.さらに,構築した解析モデルを用いて冠雪荷重による部材損傷を防止するための工法を検討した.

  • 青木 洋樹, 斉木 功, 大竹 雄, 三井 涼平
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15009
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    道路橋示方書では,せん断遅れによる付加的な応力を有効幅を用いて見かけ上の曲げ剛性を小さくすることで考慮している. しかしせん断遅れは曲げではなく, せん断変形に起因する断面変形によって生じることが分かっている.これまでにせん断による断面変形の自由度を持つ梁理論が提案され,この断面変形梁理論では 3 つの断面パラメタを導入することでせん断遅れによる断面変形,ひいてはせん断遅れによる付加的な応力を高精度に求めることができる.しかし,断面パラメタの決定には代表体積要素の有限要素解析を行う必要がある.本研究ではせん断遅れによる付加的な応力を簡易的かつ高精度で算定するために,有限要素解析の代わりに機械学習を用いた断面パラメタの推定法を提案する.提案手法を用いた付加的なひずみの精度を複数の検証用データで評価し,相対差が平均値 0.02%,標準偏差 0.2% 程度であることを確認した.

  • 塚田 健人, 秦 涼太, 山本 亨輔
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15010
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    橋梁の損傷確率や健全度を評価する一次スクリーニング手法の一つとして,車両の振動と位置データのみから,車両と橋梁の力学パラメータ(質量・減衰・剛性)と路面粗さを同時に推定する VBISI(Vehicle-Bridge Interaction System Identification)法がある.ノイズ無しの理想的な場合,数理モデルにおいて,効率と精度が優れていることが確認されている.但し,ノイズがある場合,力学パラメータの推定精度は低下する.そこで本研究では,ビッグデータから車両や橋梁の力学パラメータを推定する新しいアルゴリズムを提案し,ノイズに対する推定精度の向上を試みる.得られた結果から,先行研究の手法と比較し,複数回走行の VBISI 法により,推定精度が改善することが示された.但し,実環境での適用レベルには至っていない.今後はさらなる推定精度の向上と実環境への適用を考えている.

  • 出口 翔大, 柴田 洋佑, 浅井 光輝
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15011
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    頻発化・激甚化する豪雨災害およびそれに伴う土砂災害に対して,数値シミュレーションによる予測が求められている.大規模なシミュレーションを実施する際,計算資源の制約から幾つかの近似操作が導入されるが,近似解析と詳細解析を紐付けるパラメータ(抗力係数,粗度係数など)は経験的に定められており,適用範囲が不明瞭である.本論文では,深層学習モデルPINN(Physics-Informed Neural Network)を用いて,観測値からパラメータを逆解析する問題に取り組む.実観測で予想される,限定的なデータのみが取得可能な条件において,固有直交分解(POD: Proper Orthogonal Decomposition)に基づき空間特徴量が極大・極小となる領域から重点的にデータを取得することで,従来の乱数を用いたデータの取得と比較して効率的な学習とパラメータ逆解析が可能であることを確認した.

  • 芦田 拓海, 升井 尋斗, 車谷 麻緒
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15012
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    本論文では,デジタル画像相関法(DIC)の最適撮影条件を探索するための方法を提案する.この方法は,応答曲面法に基づいて定式化される.応答曲面法における説明変数は,撮影精度に強く影響する F 値,シャッタースピード,ISO 感度とする.応答曲面における応答には,計測精度を表す指標として,計測範囲における計測変位の分散を採用する.中心複合計画および Box-Behnken 計画にしたがって実験を実施することで,少ない実験回数で応答曲面の推定に必要なデータを収集する.応答曲面法により求めた最適撮影条件と他の撮影条件とで,計測結果の比較を行い,提案手法の妥当性を確認することで,提案手法により DIC の最適撮影条件の探索を効率的に行えることを示す.

  • 大竹 雄, 庄司 大河, 肥後 陽介, 吉田 郁政
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15013
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    近年,大規模災害に対するインフラ施設のレジリエンス性向上の重要性が指摘されている.本研究は,構造物設計側からレジリエンス性能向上へ貢献するためのモニタリング設計法の構築を試みている.液状化懸念層上の盛土の地震時挙動評価を例題として,観測点最適化法および適応型即時予測法の基本的な枠組みを提案している.数値解析結果から対象施設の空間モード関数群を導き,空間モード関数群の特性を有効活用した簡易法を提案している.観測点最適化では,QR-pivoting による貪欲法が工学的に有用な情報を提供することを確認した.適応型即時予測では,周辺尤度を用いて予測に用いる空間モード関数の数を即時に選択(モデル選択)した上で,カルマンフィルタにより構成係数を予測する方法を提案した.最後に,検証用入力地震動の数値解析結果と提案手法による適応型予測を比較した.提案手法は,入力地震動の特性に応じて,リアルタイムに適切なモデル選択を行い予測精度を向上させることを確認した.

  • 松永 嵩, 小川 良太, 匂坂 充行, 藤吉 宏彰, 石井 元武, 礒部 仁博, 吉村 忍, 山田 知典
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15014
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    センサを用いた打音検査手法(以下,「デジタル打音検査」という)を用いて, コンクリート構造物の各種変状を詳細評価するにあたっては,コンクリートの変状とデジタル打音検査結果の網羅的なデータベースが必要となる.筆者らは先行研究においてコンクリートの変状の状態とデジタル打音検査結果の物理現象を実験及び FEM 解析により明らかにし,変状の状態からデジタル打音検査結果を出力する順解析モデルを構築した.本研究では,この順解析モデルで作成したデータベースを機械学習の学習データとして,デジタル打音検査結果からコンクリートの変状を定量評価する逆解析モデルを構築し,その評価精度並びにこのデータベースを用いたアプローチの有効性を取りまとめた.

  • 松岡 弘大, 貝戸 清之, 元木 宏志朗, 櫛谷 拓馬, 小林 裕介
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15015
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    レール継目直下の鋼橋部材では高周波の振動の発生が懸念されるが,100Hz を超える高次部材振動モードの減衰については不明な点が多い.本研究では,現地試験で利用可能な多点加振と相反定理を用いた既存のモード同定法を改良し,伝達関数の逆フーリエ変換により模擬的に多点同期計測された自由振動波形を生成し,ERA 法によりモード減衰比を含めた高次部材振動モード特性の同定法を提案する.提案手法を実物大の鋼鉄道橋ウェブ部材に適用し,2000Hz までのウェブ部材のモード特性を同定した.また,得られたモード減衰比と固有振動数の関係から,300Hz を超える高次部材振動モードではモード減衰比が 1%を下回る小さい値となる場合があることを実証的に示した.

  • 佐々木 優奈, 西岡 英俊, 笠原 康平, 佐名川 太亮, 大竹 雄
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15016
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    近年の豪雨災害の増加に伴い,戦前に建設された旧式河川橋脚の直接基礎の洗掘被害が増加している.被害が生じても,被災基礎の再供用により応急復旧できる場合もある.早期の応急復旧には,残存支持力の大きさを迅速かつ必要十分な信頼性で評価して再供用の可否を判断する必要がある.これまでに,徐々に非線形化する滑らかな荷重変位関係をワイブル曲線によりモデル化した上で荷重変位関係をベイズ推定する手法が提案されている.この手法は,荷重レベルが小さい範囲での荷重変位関係の観測情報から,未経験の荷重レベルまでの挙動を予測するとともに,その予測精度を確率分布として定量的に示すことができる.本研究では,この手法のモデル化の精度向上を図ると共に,より具体的に活荷重未満の観測情報から活荷重作用時の支持力の破壊確率を算出した.

  • 山本 佳士, 久保 洸太, 藤森 竣平, 園田 潤
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15018
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    コンクリート内部の非均質な比誘電率分布を推定する手法として,有限時間領域差分法(FDTD 法)にデータ同化手法の一つであるアンサンブルカルマンフィルタを適用した手法を提案した.既往の研究において,電磁波伝播問題を対象とした FDTD シミュレーションに対してデータ同化を適用した例はないため,本研究では単純なモデルを用いた数値実験により提案手法の適用性の検討を行った.具体的には,モルタルおよび骨材相からなる簡単なコンクリートモデルに対してレーダ試験を模擬したシミュレーションを行い,骨材数や観測点数等を変化させながら模擬観測データを用いてデータ同化実験を行った.検討の結果,観測点は 1 つでも,レーダの移動までを対象とすることで,内部の複数の骨材の比誘電率を良好に推定できることが分かった.

  • 藤岡 秀二郎, 辻 勲平, 浅井 光輝
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15019
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    SPH 法,MPS 法などの粒子法は,一般的に着目粒子から近傍粒子までの距離に応じた固定したカーネル関数(重み関数の一種)を使った内挿近似を行うため,規則的な粒子配置の場合のみ,計算精度が担保される.粒子法による流体解析では,粒子配置が乱れるほど近似精度が低下するため,粒子配置が規則的な状態へと再配置を行う粒子のシフティング法と,微分作用素の離散近似モデルに対する粒子の乱れに応じた補正の併用が高精度化に繋がる.そこで本研究では,Taylor 展開の 2 次の項までを満足する 2 階微分モデルの提案を行い,提案モデルの精度検証として,複数の非線形関数による打ち切り誤差に関する検証と二次元正方キャビティ流れを対象とした解析を行うことで提案モデルの妥当性と優位性を示し,また既往の SPH 法モデルとの差異を議論した.

  • 阿部 和久, 佐藤 和輝, 紅露 一寛
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15020
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    軌道・トンネル・地盤系と走行台車との連成問題を対象に,レール凹凸およびパラメータ加振に起因する振動応答解を求めた.レールは離散支持された無限長 Timoshenko ばりで,トンネルは円筒シェルで,地盤は無限動弾性場でモデル化した.その下で,レール支持間隔の周期性に基づいた Floquet 変換を適用して,無限長の連成系を当該周期長で与えられる 1 ユニットの問題に帰着して解く手法を構成した.レール頭頂面には定常ランダムな凹凸を設定し,トンネル内観測点における振動加速度エネルギースペクトル密度の期待値を導出した.解析例として,直結系軌道,防振マット軌道,および防振まくらぎ軌道の 3 ケースを対象に,それら軌道構造の違いが振動応答に及ぼす影響について調べた.

  • 唐澤 奈央子, 長谷部 寛
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15021
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    従来の有限要素解析における直線ベルヌーイ・オイラーはり要素を用いて曲線部材を要素分割すると,形状関数には 3 次のエルミート多項式を用いるものの,形状は折れ線近似で表現することになり形状誤差が生じる.そこで本研究はアイソジオメトリック解析の考えに基づいて,CAD の形状表現に用いられる NURBS 関数を形状と未知変数の基底関数として用いるはり要素を検討した.さらに,曲線部材のひずみの定義を用い,2 次元の曲線部材の形状を厳密に表現しつつ,高次の基底関数が容易に採用できる曲線ベルヌーイ・オイラーはり要素を構築した.そして,水圧荷重の作用する 1/4 円弧はりを対象に解析を行った結果,従来の有限要素解析における直線ベルヌーイ・オイラーはり要素よりも少ない要素数で精度の良い解が得られることを確認した.

  • 西本 和貴, 本西 亮太, 鳥生 大祐, 牛島 省
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15022
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    本研究では,密度逆転領域を含む自然対流を伴った水の凍結および氷の融解問題に対し,相平均モデルに基づく多相場数値解法を適用した.凍結・融解モデルについては,固液界面におけるステファン条件の計算手法を改良し,計算セル内における界面位置を考慮して凍結層厚さを計算する方法を提案した.1次元の凍結問題を計算して提案手法の基礎的検討を行った後,矩形領域内における非定常凍結問題および非定常融解問題を計算した.その結果,計算により得られた固液界面位置の変化が既往の実験結果によく一致することが示された.また,密度逆転を伴う自然対流についても適切に計算されることが示された.

  • 佐伯 勇輔, 辻 勲平, 浅井 光輝
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15023
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    近年,局地的な豪雨により,土砂災害や橋脚の流失が多発している.橋梁被害要因のひとつである橋脚周りの洗掘を粒子法である SPH 法で解析する際,粒子分布の偏在化や負圧に伴う引張不安定性が生じる.本研究では,負圧領域においても安定した解析を行うために,慣例的に頻用されてきた圧力勾配モデルに焦点を当て,負圧領域に適した圧力勾配計算について議論した.また,粒子を用いた離散近似および粒子配置の乱れに対して一次の精度を満足する修正勾配モデルと粒子シフティング技術を用いた.上記の SPH 法の基礎技術を用い, ISPH 法による定式化で,円柱周りの流れで生じる双子渦・カルマン渦の再現解析を実施し,実験結果との比較検討を行い,提案モデルの有用性を示した.

  • 古川 陽, 松村 耕佑, 斎藤 隆泰, 廣瀬 壮一
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15024
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    本論文では,異方性材料の面外波動問題に基本解近似解法を適用し,その有効性を検証した.基本解近似解法はメッシュフリー型の数値シミュレーション手法であり,対象とする問題の基本解を用いて近似解を表現する.解表現に用いる近似係数は,境界条件に基づく連立 1 次方程式を解くことで決定される.本論文では,この解くべき連立 1 次方程式の取り扱いをもとに解法を分類し,比較に用いた.数値解析例では,入射波の散乱問題を考え,基本解近似解法によって得られた解と境界要素法による参照解との比較を行った.解析結果から,異方性の影響がそれ程強くない材料に対しては,基本解近似解法は解の収束性に優れることが確認された.一方で,異方性の影響が強い材料に対しては,基本解近似解法は解の収束性が低下することが確認された.

  • 松井 聖圭, 干場 大也, 小倉 大季, 加藤 準治
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15026
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    近年,積層造形技術の発展により,構造物の形状(マクロ構造)だけでなく材料の微視構造(ミクロ構造)を制御し,所望の特性を持つ材料を製造することが可能になりつつある.そのため,最適なミクロ構造を設計するマルチスケールトポロジー最適化が注目を集めているが,これを実設計に適用するには課題が多い.特に,ミクロ構造解析の高い計算コストは,高解像度での解析や非線形問題への拡張の妨げとなっている.本研究は,これを解決するため,高速フーリエ変換を用いた均質化手法に着目し,より高速で省メモリな新しい最適化手法を開発する.線形弾性材料を想定した剛性最大化問題を対象に,従来手法との比較に基づく性能検証を行い,提案手法の妥当性を確認するとともに,計算コスト削減への効果について検証する.

  • 紅露 一寛, 阿部 和久
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15027
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    車両・軌道系の連成振動問題を対象に,レールの各種材料物性値・形状特性値の空間的ばらつきが軌道振動応答解析結果に及ぼす影響を,確率有限要素法を用いて評価・検討した.軌道振動モデルは,質点,はり,Voigt ユニットを組み合わせたモデルを採用し,レールの Young 率,質量密度,断面積,断面二次モーメント,およびレール凹凸の空間的ばらつきは Karhunen-Loeve 展開で表現した.動的解析結果へのばらつきの影響の伝播の度合いは,所定数の組み合わせの擬似正規乱数を与えた決定論的解析結果を用い,stochastic collocation method を援用して定量評価した.数値実験結果をもとに,車輪-レール接触力,レール-まくらぎ間作用力,まくらぎ-道床間作用力のばらつきの発現への影響と,車両の走行速度の違いが振動解析結果に伝播するばらつきの増幅度合いに及ぼす影響について検討した.その結果,各作用力においては車両の走行速度の上昇により動的応答が増幅し,解析結果の標準偏差も増幅する傾向が認められた.

  • 藤原 睦樹, 干場 大也, 西口 浩司, 加藤 準治
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15028
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    高強度かつ高靭性な構造は工学的に理想的な構造である.一部の複合構造物では,延性材料と脆性材料という性質の異なる 2 種類の材料を組み合わせることで,構造全体で高い強度と靭性を両立している.本研究では,そのような複合構造物を対象として,強度および靭性を最大化するためのトポロジー最適化手法を提案する.この手法は,強度を担う脆性損傷材料と靭性を担う von Mises 弾塑性材料からなる 2 相構造を想定し,数理構造の異なる 2 つの材料構成則を部分的に組み合わせた特殊な材料表現法を用いるものである.本論文では,本手法に関する一連の定式化について記述し,数例の数値計算結果を示す.

  • 本西 亮太, 牛島 省
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15029
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    非圧縮性の密度流の数値計算を行う場合,圧力ポアソン方程式に効果的な前処理を利用することは,計算時間を短縮する上で重要である.また,非圧縮性流体の圧力計算手法である C-HSMAC 法では,圧力ポアソン方程式の求解を繰り返し行うことで,妥当な計算結果を得る上で重要な非圧縮条件を高精度に満足するように制御できる.本論文では,C-HSMAC 法における圧力ポアソン方程式の求解に前処理付き Bi-CGSTAB 法を用い,その効果について考察した.その結果,前処理により計算時間が短縮されることが確認できた.特に,Multigrid 法を前処理として用いた場合に,C-HSMAC 法の反復回数が他の解法と比べて大幅に少なくなるケースが存在しており,この現象も計算時間の短縮につながっていると考えられる.

  • 稲岡 龍彦, 新宅 勇一, 寺田 賢二郎
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15030
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    本研究では,脆性破壊を表現可能な結合力モデルに起因する材料非線形および幾何学非線形を有する問題に確率論的選点法を適用し,荷重変位曲線および脆性亀裂の進展量のばらつき評価に対する有効性を検討する.また,脆性亀裂進展を表現可能な結合力埋込型超弾性構成則を用いた有限要素法,および確率論的選点法を組み合わせた信頼性評価手法を提案する.さらに,実空間における材料定数のばらつきを評価するために,提案手法と RBF 補間(Radial Basis Function Interpolation) を組み合わせた手法を構築する.モンテカルロ法との比較によって,脆性亀裂進展解析に対する確率論的選点法を用いた統計量計算の収束性や,材料非線形性や幾何学非線形性を含む問題に対する有効性を検証する.最後に,RBF 補間を用いることで材料定数の空間的なばらつきを考慮して,脆性亀裂の進展挙動に対して統計量を評価する.

  • 白井 航太, 小野 泰介, 平野 廣和, 佐藤 尚次
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15031
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    ステンレス製パネルタンクは,地震動による様々な種類の被害が報告されている.これらの原因の一つとして,タンク構造体の振動が主体となるバルジング振動に起因する被害が挙げられる.バルジング振動は,短周期の地震動によって構造と流体が相互作用する連成振動である.しかし,バルジング振動に関する設計基準は無く,これらの基準を確立する必要がある.本論文では,基準作りの基礎となる加振方向角を変化させながら流体と構造とを連成させた時刻歴応答解析を実施する.この結果,バルジング振動が発生した場合のステンレス製パネルタンクの弱点を明らかにする.具体的には,変位に関しては加振方向角 0°で最大であること,さらに von Mises応力に関しては加振方向角に関係なく隅角部が弱点となることを明らかにする.

  • 牛島 省, 鳥生 大祐, 牧 志峰
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15032
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    底面から局所的に流入する鉛直上昇水流(平均流速約 0.77 m/s) により,粒子層で内部流動化が発生し,最終的に水流が粒子層を貫通して崩壊に至る過程を対象として,実験および粒子スケールの流体・固体連成計算を行った.実験では,2 種類の礫粒子(粒径約 7 mm と 4 mm)および粒径約 7 mm のガラスビーズを用いて,高速ビデオで粒子の動きを撮影し,超小型間隙水圧計による計測を行った.一方,計算では個々の粒子を四面体要素で表現する粒子モデルを利用し,最小粒径粒子の計算では,粒子モデル数を 21,936,流体計算セル数を 117,504,000 として,粒子周辺の流体計算に十分な分解能を設定し,2,176 プロセスの並列処理により演算を高速化した.実験および計算結果を用いて,粒子層内に生ずる過剰間隙水圧の時間的・空間的分布を比較するとともに,計算結果を利用した粒子移動パターンを示し,一連の過程が進行する力学的な要因や,粒子形状および粒径による現象の相違について考察を加えた.

  • 金氏 裕也, 河野 勝宣
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15033
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    高レベル放射性廃棄物の地層処分において,天然バリア材のバリア性能を評価するためには,岩盤亀裂へのベントナイト系材料の侵入量を予測することが必要不可欠である.本研究では,ベントナイトの膨潤を考慮した岩盤亀裂へのベントナイトの侵入量を予測する簡易的な解析モデルを提案した.ベントナイトの膨潤は,ベントナイトの封入流体吸収・拡散により生じる体積膨張であると定義した.このベントナイトの体積膨張を考慮した閉口亀裂へのベントナイトの侵入に関する力のつり合いより支配方程式を構築し,支配方程式の解を近似する数値解を導出した.解析結果から,侵入初期ではベントナイトの侵入挙動は外部膨潤圧と粘性抵抗力に依存し,時間が十分に経過した後はベントナイトの封入流体吸収・拡散に起因する侵入挙動が支配的になることを示した.

  • 松本 高志, 遠藤 祐希, 近藤 健太
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15034
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    CFRP 板の四点曲げ変形に対してデジタル画像相関法による解析を行い,らせん積層を含む3種類の積層構成についてひずみ分布を比較検討した上で,らせん積層 CFRPの変形挙動を検討した.直交積層と疑似等方積層が梁理論に従った分布を示すのに対して,らせん積層は梁理論によるものとは異なる特異な分布を示した.特に,曲げ支間において上縁で負のせん断ひずみと下縁で正のせん断ひずみを生じ,最大で 10000μ以上の非常に大きな値を示した.等価的に,曲げ支間での最大主ひずみベクトルは上縁および下縁で斜め方向を向いており,板厚中央面に対して対称の分布を示した.

  • 升井 尋斗, 那須川 佳祐, 車谷 麻緒
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15036
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    本論文では,粗骨材の充填率・粒度・形状を反映したコンクリートの 3 次元メゾスケールモデルの作成方法を提案し,実際のコンクリートとメゾスケールモデルの類似性を評価する.はじめに,ボロノイ分割と粒度曲線を利用して,粗骨材の形状と粒度分布を反映したコンクリートの 3 次元メゾスケールモデルを作成する方法について説明する.次に,粒度分布が既知である実際のコンクリートと,粒度分布を再現した 3 次元メゾスケールモデルを比較することで,3 次元メゾスケールモデルの再現性能を検証する.具体的には,両者の断面における粗骨材の体積率,個数,体積分布,扁平率,細長比を比較することで,粗骨材の充填率・粒度・形状の観点から,実物のコンクリートとメゾスケールモデルの類似性を評価する.

  • 羽生 隼輝, 芦田 拓海, 車谷 麻緒
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15037
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    本論文では,コンクリート構造物の非線形有限要素解析に対する V&V のうち,とくに Validation に関する基礎的研究として,非線形有限要素解析における材料パラメータの不確かさを定量化するためのモンテカルロシミュレーションを短時間で精度よく代替する方法を提案する.本論文の検討対象を曲げ破壊型鉄筋コンクリートはりとし,はじめに損傷モデルを用いた非線形有限要素解析の概要を示し,数値シミュレーションによる実験結果の再現性を確認した後,材料パラメータに関する感度解析を実施する.材料試験および感度解析の結果から,応答曲面法を用いて代替モデルを作成し,その性能を検証した後,代替モデルを用いて実施したモンテカルロシミュレーションが,妥当性確認に適用可能であることを示す.

  • 森本 逸紀, 木本 和志, 河村 雄行
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15038
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    高レベル放射性廃棄物の地層処分場における長期的な物質移行挙動を理解する上で,ベントナイト緩衝材の主成分であるモンモリロナイトの膨潤を定量的に予測する計算科学的手法を確立することは重要である.そのためには,マクロ膨潤の起源である粘土層間水と層間陽イオンの水和相互作用を分子スケールで十分に理解する必要がある.本研究では,モンモリロナイトの層間イオン種に応じた特徴的な膨潤を,水和構造の観点から調べることを目的として,Na 型及び Ca 型のモンモリロナイトの層間陽イオンと水分子の分布を分子動力学法により解析した.その結果, 陽イオンの水分子配位数が層間水量と陽イオン種によって異なること,それぞれの配位数とイオン種に特有の明確な水和構造を有することを明らかにした.

  • 松丸 貴樹, 海野 寿康
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15039
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    本研究では,不飽和土に含まれる封入空気が繰返しせん断挙動に及ぼす影響を数値解析的に検討した.まず,土の示相図において封入空気の存在を考慮し,保存則や構成則をもとに不飽和繰返し三軸試験の支配方程式において封入空気を取り込んだ定式化を行った.次に,不飽和繰返し三軸試験を模擬した解析において,封入空気と連続空気の質量交換や,初期からの封入空気の存在を考慮した解析を行ったところ,間隙水圧・空気圧の上昇やサクションの低下挙動が変化する一方で,応力~ひずみ関係や応力経路にはほとんど影響を及ぼさないことが確認された.また,実際の不飽和繰返し三軸試験の解析を試みたところ,従来の手法では再現の難しかったサクションの低下挙動を提案手法ではより実験に即した形で再現できることがわかった.

  • 手嶋 良祐, 別府 万寿博, 市野 宏嘉
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15040
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    著者らはこれまでに,変位と幾何学的長さに異なる次元を設定することで,重力場において実規模構造と同じ材料を用いた縮小模型実験に適用できる相似則を提案した.また,片持ちばりに対する実験および数値解析的検討から提案相似則の妥当性を検証したが,提案相似則の理論的根拠は不明のままであった.本研究は,はりのたわみに関する支配方程式から提案相似則を理論的に導出したものである.また,縮小模型と実規模構造物の荷重-変位関係が弾性範囲において一致することから,弾性応答と弾塑性応答を関連付けるエネルギー一定則を適用し,実規模構造物の弾塑性変形量を推定する方法を提案した.

  • 森 広毅, 別府 万寿博, 市野 宏嘉
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15041
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    RC 版が大きな衝撃荷重を受けると局部破壊が生じるため,局部破壊の評価に関する検討が行われてきたが,実験的な研究が多く未解明の点が多い.本研究は,飛翔体の衝突を受ける RC 版の局部破壊メカニズムを調べるため,実験および数値解析を行い,裏面剥離を評価する方法を検討したものである.実験では,RC 版の裏面に発生する加速度および速度分布を調べた.実験に対する数値解析に基づいて,衝撃荷重を受ける RC 版の慣性力およびせん断力特性を分析した.作用せん断力と修正した押し抜きせん断耐力式を比較することで,裏面剥離を評価する方法を検討した.

  • 瓦井 智貴, 小室 雅人, 岸 徳光, 鈴木 健太郎, 三上 浩
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15042
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    本研究では,アラミド繊維製連続 (AFRP) シートを用いて下面接着曲げ補強を施した RC 梁を対象に,その動的応答特性や AFRP シートの破壊性状に関する基礎資料の収集を目的とした重錘落下衝撃荷重載荷実験を実施した.ここでは,緩衝ゴムを設置する場合や AFRP シートの補強量を変化させた場合に関する計 4 体の RC 梁を対象に実験を実施した.また,梁の損傷劣化が進行していく状況を段階的に計測するために,漸増繰り返し載荷により衝撃荷重を作用させることとした.その結果,1) シート補強量にかかわらず緩衝ゴムを設置することで設置していない場合と比較して最大衝撃力を 1/4 程度まで抑制可能であるものの,2) 緩衝ゴム設置の有無にかかわらずシート補強量が小さい場合にはシート破断によって,大きい場合にはシート剥離によって終局に至ること,などが明らかとなった.

  • 木梨 優太, 西岡 英俊
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15043
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    スパイラル杭は,平鋼板をねじって作られる杭であり,人力のみで回転貫入により打ち込むことができるため,狭隘で重機が入らない工事現場での採用が期待されている.しかしながら,スパイラル杭に関する支持力特性に関しては不明な点が多く,特に鉛直方向の引抜き抵抗特性(最大引抜き抵抗力および杭頭ばね定数)に関しては,施工の精度が抵抗力に与える影響など,実際の施工現場で想定される引抜きの挙動の原理が十分に解明されていないのが現状である.そこで本研究では,豊浦乾燥砂における模型杭の引抜き実験を実施し,打設時の過回転,押込み,杭体のブレといった施工精度の影響を検討した.その結果,施工精度の違いによる引抜き抵抗特性に及ぼす影響は,杭中心間隔によって異なる傾向を示した.これらは杭の打設によって杭周辺の地盤密度が変化することによって生じたと考えられる.

  • 嶋川 理, 堀口 俊行, 別府 万寿博, 香月 智
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15044
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    近年の異常気象によって大規模な土石流が発生し,鋼製透過型砂防堰堤が破損する事例が報告されている.これらの損傷事例では,設計荷重を上回る土石流が衝突したことが原因とされている.このような大規模な土石流に耐える有効な構造設計を構築するために,堰堤の破壊メカニズムの詳細な検討が望まれる.そこで本研究は,南木曾町で発生した土石流を対象に,個別要素法を用いて鋼製透過型砂防堰堤の損傷事例を検証したものである.その際,鋼管の剛性値を断面分割法で算出し,個別要素法のばね剛性として適用した.また,堆積した礫間を浸透する流水流量を考慮した流速分布モデルによる再現解析を行った.その結果,堰堤上部が流出するためには鋼材の継手部が影響することが判明し,中空鋼管の押し込み変形が重要な因子であることが明らかになった.

  • 安田 陽一, 村野 哲太
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15045
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    本研究では,マンホール底部に接続する鉛直雨水管から雨水幹線や貯留施設に流出するときの排水能力を向上することを目的に,鉛直管内に螺旋コイルを設置し,マンホールおよび鉛直管内に形成される局所流の形成を工夫するによって排水能力が向上することを実験的に見出した.マンホールの上部を閉塞し,マンホールに流入する雨水管の位置をマンホール底部よりも管径の半分程度上部に位置し,鉛直管内に螺旋コイルを設置すると,流量増加に伴い鉛直管内が満水になり回転しながら排出するため,マンホール上部を開放した場合に比べて,マンホールに接続する横引管流入部で評価した流量係数が 0.6 から最大 1.2 近くまで向上することを示した.

  • 高橋 範仁, 風間 聡
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15046
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    気候変動を踏まえた治水対策を論ずる上で重要と考えられる,今後来るべき巨大台風による大気圧降下が洪水流量形成に影響を与えるか否かを評価することを目的とし,大気圧変動・地表流・地下水流を連成した物理水文モデルを開発した.大気圧変動を連成した数値実験を行い,陸域での大気圧降下による自由水面の吸い上げ効果や地下水流と地表流の相互作用など流体の挙動を追跡可能であることを確認した.基礎的な数値実験から,大気圧変動による流出高の影響として,大気圧が 100hPa 降下することで流出高が約 1.3 倍程度増加する場合があり得ることを確認した.また,大気圧変動の空間分布によって,流出高の減少と流出高の増加という 2 つの河川流域の流出形態のモードが存在する可能性を示した.

  • 服部 康男, 長谷部 憂麿, 須藤 仁, 中尾 圭佑, 石原 修二
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15047
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    高 Reynolds 数条件下での円柱周りの粒子輸送を対象に,ラージ・エディ・シミュレーションを実施した.理想条件を対象とした既存研究との比較による妥当性検証の後,Reynolds 数および Stokes 数による円柱表面への粒子衝突効率の変化を調べた.粒子衝突効率は,円柱前面においては Reynolds 数に依存せず,衝突過程での慣性効果の顕在化を与える Stokes 数の領域に対して急増を呈した.一方,円柱後面においては Stokes 数に対して極大値をとり,Reynolds 数に依存した.また,衝突効率の周方向分布において,よどみ点だけでなく,はく離点近傍にも極値が見られた.円柱後面ごく近傍では粒子の長期滞留も認められ,高 Reynolds 数条件下での後流構造の 3 次元化の影響が示唆された.

  • 皆川 晶子, 河村 哲也
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15048
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    近年海流発電が注目されているが海流は低速であり抗力型の回転装置の利用が考えられる.そこで逆回転する2つのサボニウス型回転装置について,2 次元でのシミュレーションを行い,主流とのなす角を変化させて相互作用の影響を調べた.また,2 つの装置の回転に位相差がある場合についても調べた.複数の装置を回転させるため,流れの領域を,各回転装置の近接領域と回転しない外部領域とに分け,各領域の境界部分において,各つなぎ目を精度よくつなげる手法を用いている.主流の方向を 5 方向に変化させたところ,上流側の装置の回転による流れの変化が下流側の装置の回転に影響したことによる,トルク係数や流れ場の変化を定量的に捉えることができた.位相差をつけた場合には,概ね 45 度の位相差が最大トルクを得る上で適切であることが分かった.

  • 徳永 宗正, 池田 学, 八木 英輝
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15050
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    橋りょうのたわみや衝撃係数の推定精度を向上するためには,曲げ剛性の精緻な評価が必要となる.本研究では,一般的な鉄道鋼橋および合成橋を対象として,3次元有限要素解析に基づき,軌道部材等の非構造部材が主構造の曲げ剛性に及ぼす影響について検討した.開床式鋼桁の主構造剛性に,横構,対傾構が与える影響は僅かである一方,レールが及ぼす影響は相対的に大きく,その剛性増加率はレール締結装置の拘束条件に依存して大きく変化することを明らかにした.さらに,単純合成桁の主構造剛性に与える影響は,非構造部材の中で制振コンクリート,路盤コンクリートが相対的に大きいこと,連続合成桁のレールの影響は,橋長が長く橋りょう境界の回転拘束の影響が小さくなることから,単純合成桁の20%となることなどを示した.

  • 松岡 弘大, 田中 博文
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15051
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    橋梁性能を表す代表的な指標である列車通過時の桁たわみの地上計測には多大な労力と費用を要する.本研究は,より効率的な計測手法として,走行車両上で計測された軌道高低変位に基づく桁たわみ推定法を検討した.実際の営業車両に搭載されている軌道検測装置の設置位置を反映した理論分析により,先頭と最後尾車両で計測された軌道変位の差分が準静的な桁たわみに比例すること,これにより先頭と最後尾車両の軌道変位の差分最大値に変換係数を乗じて桁たわみ最大値を推定できること,その感度は軌道変位の計測位置により変化すること,を明らかにした.最後に,実路線で計測した軌道変位から提案手法により推定した2橋梁の桁たわみ最大値は,地上計測の結果と誤差10%以内で良好に一致することを実証した.

  • 中田 学, 松岡 弘大
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15052
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    本研究では,鉄道連続桁の衝撃係数算定,逆解析や信頼性評価に活用可能な計算負荷の小さい動的応答計算法の構築を目的として,Johansson らにより提案された移動荷重下の多点支持条件梁の閉形式解を再定式化し,列車通過時の連続桁の動的応答簡易計算法として実装した.また,有限要素解析および数値積分に基づく解析結果との比較により理論解の精度および計算効率を確認した結果,閉形式解に基づく計算法は数値積分と比較して 10 倍以上高速に連続桁の動的応答を計算できることを示した.また,実際の連続桁の列車通過時のたわみ計測結果との比較を行い,提案手法の実用性について検証した.

  • 貝戸 清之, 松岡 弘大
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15053
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    ベイズ構造モデル更新ではパラメータ間に相関が存在する場合,不確実性の推定において各パラメータの事後分布に独立を仮定できない.これに対して,期待値推定とは別に同時事後分布の裾空間を推定するデュアルサンプリング法が提案されているが,2 段階目の裾空間の推定手法については計算効率の観点で改良の余地が残っている.本研究では,代表的な広域空間推定手法であるレプリカ交換 MCMC 法を 2 段階目の推定法として導入し,その有効性を既往研究と同じ実橋梁データにより検証した.その結果,1/4 程度の時間で既存の GA による手法と同様の事後分布の裾空間を推定できることを明らかにした.

  • 四井 陽貴, 松岡 弘大, 貝戸 清之
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15054
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    桁へのアクセスが不要なノンターゲット画像計測は,鉄道橋の効率的な変位計測手法として近年広く検討されている.しかしながら,変位の計測精度は構造物表面の状態に大きく依存し,変位応答波形が得られない点も存在する.本研究では,RC 桁と鋼 I 桁を対象にデジタル画像相関法による変位計測を実施するとともに,サブピクセル推定における補間関数の 2 階微分値により変位計測に適する箇所を評価した.その結果,既存手法では水平方向の誤差が鉛直方向の変位推定精度の低下に大きく影響を及ぼすことを明らかにした.また,この水平方向の影響を除去する実用的な改善法により,鋼 I 桁では主として補剛材の位置に限定されていた変位応答波形が得られる箇所が増加することを実証的に示した.

  • 森近 翔伍, 関屋 英彦, 葉山 瑞樹, 永井 政伸
    2023 年 79 巻 15 号 論文ID: 22-15055
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

    近年,圧電素子センサを活用した疲労損傷の検知手法について検討が進められている.著者らは,MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)加速度センサと圧電素子センサを組み合わせたシステムにより,活荷重の大きさが変動する供用中の実橋梁においても使用できるシステムを提案している.しかし,提案システムは異なる計測方式を組み合わせる必要があるため,システムが複雑である.そこで本研究では,これまで MEMS 加速度センサが担っていた「積分範囲の決定」および「外力情報の取得」を圧電素子センサにて行う手法を検討し,圧電素子センサのみによる簡易なモニタリングシステムを提案する.実橋梁における計測結果から,従来手法よりも簡易なシステムにて疲労損傷をモニタリングできる可能性を示した.

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