移植
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59 巻, Supplement 号
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  • 西川 涼馬, 姫野 智紀, 島本 侑樹, 長谷川 雄基, 児玉 卓也, 青木 太郎, 二村 健太, 岡田 学, 平光 高久, 一森 敏弘, ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s361_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    症例は10歳代の女性、身長149.6cm、体重51.0kg、BMI 22.8 kg/m2。二分脊椎、脊髄髄膜瘤のため出生時より神経因性膀胱の状態だった。膀胱尿管逆流防止術が行われ、その後尿管膀胱新吻合術や右尿管利用膀胱拡大術及び交叉性尿管尿管吻合術が行われるも、上部尿路拡張と腎機能障害を認めたため、胃・回腸利用膀胱拡大術及び臍部への小腸利用Monti-Mitrofanoff導尿路作成術が施行された。以後、臍の導尿路より間欠的自己導尿(CIC)を継続していた。8年前から経時的な腎機能障害を認め、先行的腎移植目的に当科を受診した。膀胱機能評価では膀胱容量は450mLでコンプライアンスも良好であった。術前Cr は4.18mg/dLであり、父をドナーとする血液型適合生体腎移植術を施行した。グラフト重量232g、手術時間3時間41分、WIT 2分、TIT 1時間1分、出血量 110mLであり、後腹膜腔に癒着を認め剥離を要するも、拡大膀胱や腸管を損傷することなく右腸骨窩を展開可能だった。グラフト腎動脈を内腸骨動脈へ、グラフト腎静脈を外腸骨静脈へ吻合した。移植尿管は拡大膀胱に粘膜下トンネルを作成して吻合した。術後は尿道バルーンカテーテルを留置していたが、2週間目に抜去しCICを再開した。移植腎の経過は良好で、現在まで水腎症を認めずCr 0.8mg/dL程度で良好に推移している。膀胱拡大術後に腎移植を行った症例は比較的稀であり、文献的考察を加えて報告する。

  • 森田 伸也, 北岡 壮太郎, 宍戸 偉海, 佐藤 温子, 武田 利和, 松本 一宏, 篠田 和伸, 吉田 理, 浅沼 宏, 中川 健, 大家 ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s361_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【緒言】腎移植後の尿管狭窄は、約3%に生じる主な術後合併症の一つである。観血的手術を施行した2例につき報告する。【症例1】63歳男性。腎硬化症による慢性腎不全に対して妻をドナーとしたABO血液型適合生体腎移植術を施行。移植後2ヶ月目に移植腎盂腎炎、移植腎水腎症を認め尿管ステント留置し抗生剤にて加療した。移植後6ヶ月目に移植腎盂自己尿管吻合術を施行し、新たに尿管ステントを留置、元の尿管ステントを抜去した。移植後12ヶ月目に逆行性腎盂尿管造影を施行し明らかなリークは認めなかったが本人希望にて尿管ステント交換とした。移植後1年5ヶ月目に尿管ステントを抜去しその後経過良好である。【症例2】63歳男性。原疾患不明の慢性腎不全に対して妻をドナーとしたABO血液型不適合腎移植術を施行した。移植後3ヶ月で移植腎水腎症、腎機能増悪を認め、尿管ステント留置を試みるも尿管吻合部で閉塞しており留置できず移植腎瘻を造設した。腎瘻定期交換を施行し、移植後11ヶ月目に移植腎尿管膀胱新吻合術を施行した。術後1週間目に施行した腎瘻造影、膀胱造影ではリークを認めなかった。【結語】腎移植後尿管狭窄に対して観血的手術を行った。術後の経過は現在のところ良好である。

  • 酒徳 直明, 野原 隆弘, 加納 洋, 内藤 伶奈人, 牧野 友幸, 岩本 大旭, 八重樫 洋, 川口 昌平, 重原 一慶, 泉 浩二, 溝 ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s362_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【症例】33歳女性、IgA腎症による末期腎不全に対し2022年に父をドナーとする生体腎移植を施行。左腸骨窩を展開、移植腎動静脈は外腸骨動静脈へ吻合、Lich-Gregoir法にて尿管膀胱吻合を行った。16G生検針による1-hour biopsyを施行し、刺入部は吸収性局所止血材にて止血。手術終了後、麻酔覚醒前の移植腎エコーでは血流良好であった。帰室後に移植腎エコーを再検すると、腎周囲に血腫を認め、ドップラーではスパイク状の波形を呈していた。また、強い創部痛も認めた。単純CTにて移植腎被膜下血腫を認めた。症状改善および移植腎血流改善を期待し、移植腎被膜下血腫除去並びに止血術を施行。その後、移植腎は良好に機能し、現在に至るまで経過良好である。【考察】当院では腎移植術中に腎生検を実施し、生検箇所に吸収性局所止血材をあてて圧迫し止血している。また、術直後と帰室直後に移植腎エコーを実施している。腎実質が圧迫されて高血圧、腎不全を呈する病態(Page kidney)の原因として移植腎生検や腎移植手術、外傷が挙げられる。移植腎生検後の被膜下血腫は稀だが移植腎機能不全をきたしうる重篤な合併症である。血腫の急速な増大が見られる場合や腎不全が見られる場合には外科的介入が必要となる。本症例では術直後の移植腎エコーでは明らかな血腫を認めず、帰室時の移植腎エコーにて明らかになったことから、麻酔覚醒時の血圧上昇が誘因となり、被膜下血腫をきたしたと考えられる・

  • 能見 勇人, 高橋 信滋 , 木下 将宏, 岡部 知太, 花盛 敬輝, 藤原 裕也, 吉川 勇希, 松永 知久, 前之園 良一, 中森 啓太 ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s362_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    我々の施設では、2017年から2023年6年間に、多発性嚢胞腎を原疾患とする5例において生体腎移植を施行した。全例男性で、腎移植時の年齢の平均50.4歳、移植後の経過期間は15~81ヶ月であった。生体腎移植に先行し、片側嚢胞腎の全摘除術を5例中2例に施行した。腎移植後の経過では、いずれの症例においても、個有嚢胞腎の体積の比較的顕著な縮小を認めた。腎移植による多発嚢胞腎における腎体積の縮小効果については複数報告されており既知の事実であるが、これらを再確認した。我々の施設の症例を紹介するとともに、腎移植に先行する固有腎の摘除の適応について検討したい。

  • 吉永 香澄, 津川 卓士, 関戸 崇了, 山野井 友昭, 西村 慎吾, 佐々木 達也, 萩谷 英大, 竹内 英実, 荒木 元朗
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s362_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    脳実質内に真菌性病変を形成し救命し得た生体腎移植レシピエントの一例を報告する。症例は46歳、男性。8年前、原疾患:慢性糸球体腎炎の末期腎不全に対し、68歳の実父をドナーとしたABO血液型不適合生体腎移植を受けた。怠薬による拒絶を繰り返すもCr3.0mg/dlで推移し、DMコントロールは不良であった。COVID-19感染症の入院加療後、退院4日目に発熱、頭痛、意識障害のため家族に連れられ受診。頭部CT/MRIで左基底核に4cm大の腫瘤を認め右片麻痺が指摘された。中枢神経感染に伴う膿瘍やPTLD、悪性腫瘍等を念頭にICUで抗菌薬/抗真菌薬を開始、免疫抑制剤の調整を行った。開頭生検を施行したところ術中に虚血性病変が疑われた。病理結果はリンパ腫を含め腫瘍性変化は否定的で、膿瘍形成を伴う壊死組織を認め、菌種同定には至らないが真菌組織が確認された。中枢神経の侵襲性アスペルギルス症・鼻脳型ムーコル真菌感染症が想定された。救命最優先として免疫抑制剤の更なる減量と腎機能依存性の抗真菌薬に変更した。その17日後より再度発熱、意識状態の増悪を認め、MRIでは腫瘤は縮小も周囲浮腫は増悪し、今後の脳幹障害が予想されBSCの方針となった。しかし、小康状態が10日間程続くと徐々に意識は改善、MRI再検で浮腫は改善し、腫瘤も限局化していた。腎機能はエピソード前と同等に保たれ、右片麻痺は残存するも会話も可能となり、リハビリ転院の後、現在定期外来通院できている。

  • 栗原 啓, 當間 俊, 會田 直弘, 伊藤 泰平, 剣持 敬
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s363_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    症例は53歳、男性。2018年IgA腎症による末期腎不全に対し母をドナーとする血液型一致生体腎移植を施行した。導入時シムレクトを使用し、維持免疫抑制療法としてプログラフ、セルセプト、メドロールの3剤併用した。その後在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)を導入し、外来加療中であった。2022年12月より呼吸困難、発熱が出現し当院外来を受診した。38.0℃の発熱とSpO2:92%と低下を認め、胸部単純X線及びCTで両下肺野に浸潤影、気管支肺炎像を認めた。予防的抗生剤投与により治療を開始し症状は軽快したが以降5回にわたり同様の肺炎のエピソードを繰り返した。当初、CPAPの外気フィルターに付着した病原細菌や過敏性肺炎の可能性も考慮したが、フィルターからはBacillus speciesなどの環境中の常在菌を検出するのみであり、トリコスポロン類を検出されないことから夏型過敏性肺炎も否定された。2023年5月の再入院時、問診により生活環境の汚染が高度であることがわかり、一連の経過から住居関連性過敏性肺炎(home rerated hypersensitive pneumonitis、HRHP)と診断した。  HRHPは特定の抗原の吸入曝露により生じるアレルギーが原因の呼吸器疾患であるが、そのうち住居が原因と想定されるものの特定の真菌など原因が証明されない一群をさす。その治療には厳格な抗原回避が必要である。腎移植後に原因の特定が困難であり再燃を防ぐのに苦慮したHRHPの1例を経験したので報告する。

  • 坂口 大, 有馬 純矢, 見附 明彦, 吉野 裕史, 鑪野 秀一, 山田 保俊, 榎田 英樹
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s363_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【緒言】2023年5月の五類感染症移行後も腎移植後COVID-19の中には軽症にとどまらず入院治療を要する症例が存在する。過去に我々は腎移植後COVID-19において早期抗ウイルス療法開始が重症化を抑制しうることを報告した(Sakaguchi et al. BMC Nephrol. 2024)。現在も腎移植後COVID-19に対し抗ウイルス療法を積極的に行っている。今回我々は五類感染症移行後に入院治療を行った腎移植後COVID-19症例について検討した。【対象と方法】2023年6月~2024年5月に入院治療を行った腎移植後COVID-19症例14例を対象とした。Mycophenolate mofetilを中止しEverolimusへの変更を原則とした。全症例にレムデシビルを使用した。患者背景の評価、臨床経過および治療成績について検討した。【結果】14例中、中等症1 5例、中等症2 8例、重症 1例であった。年齢の中央値61.5歳(49-74)。ワクチン接種は中央値4回(3-7)で接種状況は良好であった。糖尿病有病率は50%(7例)、過体重/肥満(BMI>25)症例の割合は43%(6例)と比較的高かった。発症から抗ウイルス療法開始までの期間の中央値は3.5日(1-14)で6日以上経過している症例が43%(6例)を占めていた。【結論】診断後に対症療法のみで経過観察された結果、軽症にとどまらず入院治療を要した症例が少なからず認められた。早期の治療介入が重症化を抑制しうることを医療従事者のみならず腎移植後患者にも認識してもらうことが重要だと考えられる。

  • 藤井 孝法, 西村 慎吾, 関戸 崇了, 吉永 香澄, 大西 康博, 山野井 友昭, 河田 達志, 富永 悠介, 定平 卓也, 岩田 健宏, ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s363_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【緒言】COVID-19感染症は2023年5月に2類から5類感染症へ変更となったが、その後も第9波が確認されている。この第9波時期に腎機能悪化を認めた生体腎移植後の症例を我々は経験した。【症例】40歳代、男性。間質性腎炎を原疾患とする末期腎不全に対して、実母をドナーとする血液型一致(抗ドナー抗体なし)の生体腎移植を4年前に施行し、Cr 2.1mg/dL前後で経過していた。定期受診の際、Cr 2.78mg/dLと腎機能悪化を認めたが発熱はなく、体調変化の訴えもなかった。エコーで移植腎の血流も以前と著変なかったが、即時腎生検は希望されず、14日後にCr 8.15mg/dLと急激な腎機能悪化認めた。緊急生検目的に当日入院、全身スクリーニングCTにて肺野にすりガラス影を認め、SARS-CoV-2核酸検査で陽性が判明した。抗ウイルス薬としてモルヌピラビルを開始、MMFは中止した。その後Cr 9.4mg/dLまで上昇しHDを行った。生検では拒絶反応やBKvなどのウイルス腎症は否定的で、尿細管の脱落や空胞変化・増殖に見える部位が見られるが細胞浸潤がなく、間質の炎症も有意なものはなく、尿細管壊死の回復の途中を見ている可能性が推察された。COVID-19感染症が改善するとともにHD離脱、Cr 3.5mg/dLまで低下、12日目に退院となった。

  • 上原 咲恵子, 寺田 真理, 滝口 進也, 富田 祐介, 中村 道郎
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s364_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    [緒言] 腎移植後貧血は比較的頻度の高い合併症である。今回、移植後早期にパルボウイルスB19感染が原因と考えられる重症貧血を来した症例を経験したので、考察を交えて報告する。[症例] 31歳女性。原疾患不明の末期腎不全で血液透析(HD)導入。週1回の鉄剤・ESA製剤投与で、Hb 11g/dl程度に維持されていた。約1年のHD歴を経て、実父をドナーとした血液型一致の生体腎移植術を施行した。移植腎血流は術中から良好に保たれ、術後21日目に軽快退院。維持免疫抑制療法はTac+MMF+PSL+EVRで行い、退院時採血はCr 0.88mg/dl, Hb 9.8g/dlで、周術期の輸血歴はなく、ESA製剤は未使用であった。退院後7週目にHb 6.2g/dlへ急激に低下し、ESA製剤投与や輸血を行うも効果は乏しく、Hb 5-7g/dlの正球性正色素性貧血であった。赤芽球癆を疑い、血液内科へ相談。薬剤性と考えEVR中止、MMF・PSL増量を行った。同時に提出した血清パルボウイルスB19-IgMは陰性であり、骨髄生検は実施しなかった。しかしEVR中止後2ヶ月が経過後も貧血が遷延したため、骨髄生検を実施した結果、巨赤芽球性貧血の所見を認め、免疫染色にてパルボウイルス抗体の強陽性を確認し、原因を特定した。EVR再開、MMF・PSL減量し、免疫抑制剤を調整。その後も貧血が持続したが、パルボウイルス陽性判明から8ヶ月後のESA製剤投与・輸血を最終とし、網状赤血球数は増加に転じ、Hb 10g/dl程度で安定。現在、Cr 1.3mg/dl程度で推移している。

  • 西村 慎吾, 関戸 崇了, 吉永 香澄, 山野井 友昭, 大西 康博, 竹内 英実, 肥後 寿夫, 工藤 健一郎, 田邊 克幸, 荒木 元朗
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s364_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    肺胞蛋白症は、肺胞および呼吸細気管支腔内に過剰なサーファクタントが貯留し、呼吸不全が進行する稀少疾患である。血清抗GM-CSF抗体陽性となる自己免疫性と、粉塵暴露や薬剤に関連するもの、血液疾患や感染症、AIDSや複合型免疫不全に合併するもの(続発性)が主に報告されている。今回、生体腎移植後に自己免疫性の肺胞蛋白症を発症した症例を経験した。症例は76歳、男性。糖尿病性腎症による末期腎不全に対して、X-3年に妻をドナーとしたABO血液型不適合生体腎移植を施行した。移植後4カ月から半年間に潜在性肺結核に対しINH内服加療、移植後7カ月で肺真菌症を発症しVRCZ→AEで中止→ITZ→同様のAEで中止となった。同時期に腎機能低下に対してエピソード腎生検施行しBKvirus腎症の診断となったが、免疫抑制剤減量・休薬によりウイルス腎症は肺真菌症と共に軽快した。X-2年頃から胸部CTで網状スリガラス陰影が増悪し、X-1年に気管支鏡検査を2回施行、肺胞蛋白症の診断に至った。抗GM-CSFも57.0 U/mLと陽性であった。Modified MRC 3度(平地を約100mまたは数分歩くと,息継ぎのために立ち止まってしまう)の労作時呼吸困難も伴い、全肺洗浄を施行し症状改善し、現在は通院経過観察中である。生体腎移植後、自己免疫性に発症した肺胞蛋白症の報告は稀であり、若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 福原 宗太朗, 田原 裕之, 中野 亮介, 坂井 寛, 清水 誠一, 大平 真裕, 井手 健太郎, 田中 友加, 大段 秀樹
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s364_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    腎移植後に発症する血栓性微小血管症は移植直後から発症し、移植腎喪失に至る可能性がある疾患である。当科で生体腎移植を施行した患者のうち、血液型不適合症例2例に血栓性微小血管症を発症した。血栓性微小血管症の定義は、ヘモグロビン値低下、血小板減少、急性腎障害の3徴を満たすものとした。1例目は37歳、男性で、脱感作療法(リツキシマブ、二重濾過血漿交換)を行った後に腎移植を施行した。術後1日目よりヘモグロビン値低下、ハプトグロビン低下、LDH上昇、血小板減少を認め、ハプトグロビン補充と免疫グロブリン投与を開始した。術後3日目より尿量低下、クレアチニン値上昇を認め、血漿交換を計4回行った。呼吸不全も合併したためICU管理を要したが、その後は腎機能改善傾向となり、移植腎喪失なく、術後48日目に退院となった。2例目は59歳、男性で、脱感作療法(リツキシマブ、二重濾過血漿交換)を行った後に腎移植を施行した。術後1日目より、ヘモグロビン値低下、血小板減少、尿量低下、クレアチニン値上昇を認め、ボルテゾミブ投与し、血漿交換を計5回行った。免疫グロブリン補充、シクロスポリンへの免疫抑制剤の変更なども行い、ヘモグロビン値や血小板の改善は認めたが、腎機能の改善には至らず、移植腎喪失となった。今回、腎移植後に発症した血栓性微小血管症の2例を経験したため、若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 野崎 修平, 唐仁原 全, 宮坂 嶺, 田代 学, 井上 朋子, 安倍 正博, 上杉 憲子, 升谷 耕介, 水口 潤
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s365_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    [症例]56歳女性、血液型O型、原疾患SLE。2004年腹膜透析導入後2010年に血液透析へ移行。原疾患でmethylprednisolone (mPSL) 4mg/dayを内服中。ドナーは62歳男性、血液型O型、クモ膜下出血から脳死状態となり2023年10月脳死下献腎移植施行。ドナーの大動脈はアテローム性動脈硬化が顕著であり、0 hr生検では糸球体の1/3に全節性硬化、複数の細動脈に高度の硝子化を認めた。術前リンパ球クロスマッチテストは全て陰性、組織適合はHLA Class I; 2 mismatch, Class II; 0 mismatch、温阻血時間 0分、冷阻血時間 7時間15分であった。[経過]免疫抑制剤は当科プロトコールで術前にrituximab 100mgを投与しtacrolimus, mycophenolate mofetil (MMF), mPSLとbasiliximabを使用。術中術後の血流は良好であったが第5病日に血小板が3.3x104/μLまで低下。貧血とわずかな破砕赤血球を認めるも明らかな溶血性貧血の所見なくtacrolimus減量、MMF中止のみで血小板減少は回復、第11病日に透析を離脱。第12病日の移植腎生検では細動脈を中心とした高度な急性TMAの診断。生検後測定したADAMTS13活性は正常範囲であった。第31病日の移植腎生検では急性尿細管壊死とTMAの治癒過程を示唆する所見を認めた。[結語]移植腎に限局した高度なTMAを認めたが免疫抑制剤の減量により寛解した。原因として虚血再灌流障害、tacrolimusなどの薬剤、原疾患などが考えられた。Rituximabが重症化抑制に影響した可能性もある。

  • 高井 諭, 西田 隼人, 福原 宏樹, 縄野 貴明, 竹原 知宏, 末永 信太, 高井 優季, 成澤 貴史, 菅野 秀典, 八木 真由, 山 ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s365_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【目的】腎移植レシピエントにおける腎移植後の筋肉量の変化率と関連する因子について検討した。【対象と方法】対象は2014年から2023年に当院で腎移植を施行し術前および術後3ヵ月、12ヵ月に体成分分析装置InBodyを用いて筋肉量を測定した50例のうち、細胞外水分比(ECW/TBW)が0.400以上と高い12例を除外した38例とした。線形混合効果モデルを用いて術前後の筋肉量変化を解析し、さらに年齢、性別、糖尿病既往の有無、血液型不適合、透析期間、術前筋肉量、術前体脂肪率、術前栄養状態、腎移植から3ヵ月以内の入院歴、HLAミスマッチ数、移植後経過期間が筋肉量変化率に影響を与えるか検討した。【結果】筋肉量は術前に比べて術後3ヵ月、12ヵ月目に有意に低下した。「糖尿病既往の有無」が術後筋肉量変化率と関連する独立因子であった。【結語】糖尿病患者が非糖尿病患者と比較すると術後の筋肉量低下率が大きかった。

  • 市川 昌志, 内山 侑紀, 児玉 典彦, 山田 祐介, 野島 道生, 山本 新吾, 道免 和久
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s365_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【はじめに】当院では、2023年4月から腎移植患者の低身体機能の改善を目的に泌尿器、腎透析科と連携してフレイル評価に基づく系統的リハビリテーションを開始している。【症例】48歳女性。生体腎移植のため入院し、第3病日に当科紹介。術前評価は、握力13.5/15.8kg、SPPB 7点、skeletal muscle mass index(SMI)3.2kg/m2(骨格筋11.8kg)、6分間歩行距離316m、EQ-5D-5L 0.7085、腰椎0.409g/cm2、YAM 40%であった。重症サルコペニアと骨粗鬆症による術後廃用が懸念され、術前よりプログラムに準じた運動療法を行った。第32病日に生体腎移植が行われたが、術後合併症と胸椎圧迫骨折によって身体機能とADLが著しく悪化。その間、廃用と二次的合併症の予防に努め、段階的に運動療法を進めた。次第に身体活動量の拡大が得られ、握力15.9/13.7kg、SPPB 8点、SMI 4.4kg/m2(骨格筋15.2kg)、6分間歩行距離305mに改善し、良好なADLが得られ第146病日に自宅退院。以降、機能評価を行いながら運動指導を継続。その結果、術後6ヵ月目評価では握力19.4/16.6kg、SPPB 8点、SMI 4.1kg/m2(骨格筋14.2kg)、6分間歩行距離412m、EQ-5D-5L 0.9391に改善。【考察】腎移植後に術後合併症と胸椎圧迫骨折が併発した症例を経験したが、系統的リハビリテーションによって劇的な身体機能とADLの改善を得た。また長期的なリハビリテーションの継続が、術後の身体機能の悪化を抑制するため非常に重要と考えられた。

  • 高田 昌幸, 大野 良和, 西川 貴雄, 品川 友親, 松井 佑樹, 山内 寛喜, 河野 眞範, 角野 佳史
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s366_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【目的】 日本における腎移植件数は増えているものの地域差が大きい。福井県では1980年代から腎移植が開始されたが年間の移植件数が0から1.2件であった。我々の施設では福井県内の腎移植件数を増やすために当院での腎移植立ち上げを計画した。【方法】2011年より2年間の準備期間の後に2013年より生体腎移植を開始した。high volume centerの協力を得て、大きな問題なく10年間生体腎移植術のみ行った。【成績】2013年から2023年11月までの間に18件の生体腎移植を行った。年齢は19歳から68歳、透析歴は0から264ヶ月、ドナー年齢は44歳から84歳であった。ABO血液型不適合移植は3例であった。腎移植後、5年前後で2名のレシピエントが死亡したが死亡原因は不明でDWFGであった。生存してるレシピエントは全て生着している。更に、他院で移植した患者も合計10名受け入れ外来通院中である。【結論】病院内外の多くの方々の協力のもと腎移植立ち上げから10年間腎移植を継続できた。今後も腎移植が当院で継続可能な医療として根付くための課題を掘り下げていく。

  • 今井 重成, 望月 拓, 村上 純, 岸 八千代, 不破 朝子, 小原 聡美, 江橋 優香, 大渕 美紀, 寺田 直央, 冨永 美佳子, 鈴 ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s366_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    移植医療において多職種連携が重要だが、その中で看護師の役割りは大きい。当院では2019年度から生体腎移植実施に向けた準備を開始し、施設基準や移植実施体制の整備を行い2020年に開始予定だったが、COVID-19感染拡大の影響などで延期となった。2022年4月に腎センターを設置し多職種が介入できる体制を整備し、2022年6月に1例目の生体腎移植を実施した。腎センターでは腎臓移植外科医・腎臓内科医・ソーシャルワーカー・薬剤師・栄養士・検査技師・臨床工学士・外来看護師・病棟看護師・ICU看護師・手術室看護師等、様々な部門が連携している。毎月カンファレンスを実施し腎移植予定患者および腎移植後患者の情報共有や、医学的、社会的問題点に対し様々な意見交換、治療方針の検討を行っている。演者は病棟師長として腎移植体制の整備に携わり、現在は血液浄化センター師長として、腎代替療法に携わりながらレシピエント移植コーディネーターの資格取得を目指している。手術までの準備期間には倫理的問題が生じるケースにも遭遇する。また術後の継続したセルフケアへの援助の必要性も日々感じている。外来での長期的な対応が必要で、対応する看護師の育成は急務だと考える。これまでの活動を振り返り今後の課題を報告する。

  • 添野 真嗣, 有吉 勇一, 小林 肇, 久保 隆史, 安藤 哲郎, 渕之上 昌平
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s366_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【背景】

    生体腎移植希望で来院される患者のうち、腎移植に至らない症例を認めることがある。腎移植実施症例については全国統計で多面的な視点で評価されているが、腎移植不実施症例の原因関する報告は少ない。また、先行的腎移植を希望されて来院される方に関しても、希望通りに先行的腎移植を施行できない症例も多い。

    【対象と方法】

    2022年1月から2023年12月までに当院に初診で来院された生体腎移植移植希望の82組を対象とした。移植実施率、腎移植できなかった理由などを後ろ向きに評価した。透析導入前に紹介された症例に関しては先行的腎移植実施率などを評価した。

    【結果】

    82組のうち、56組が腎移植施行し、26組が腎移植不可であった。ドナー要因16件で、ドナー腎機能不足6件、悪性腫瘍3件、その他理由7件であった。レシピエント要因10件で、悪性腫瘍4件、社会的要因4件、その他理由2件であった。先行的腎移植希望者は36組あって、希望通り施行できたのは30組(実施率は83%)であった。

    【考察】

    当院は先行的腎移植希望者には初診外来から3カ月以内に腎移植移植を実施できることを目標にしている。初診外来患者数と腎移植実施率を把握できたことは手術日程をマネジメントする上で有効であると考えられた。

  • 倉石 真理, 香川 友紀, 原 麻由美
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s367_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【目的】腎移植後患者のフォローアップ(以下f/u)における体制構築、認定レシピエント移植コーディネーター(以下RTC)の役割検討のためにクリニック(以下CL)開設後の現状を明らかにすることを目的とした。【方法】CL転院患者を対象に、転院時年齢、移植後年数、通院距離等をカルテより抽出した。またCL開設前後の当院外来診療状況を比較した。【結果】外来f/u患者の30.8%がCLへ転院、転院時年齢は50.4±13.3歳、移植後年数は8.8±7.3年であった。通院距離は短縮・不変が34%、延長が66%であった。患者は受診日の幅が広がったこと、待ち時間短縮等に転院のメリットを感じていた。医師・RTCは、CLからの診療依頼に際して定期受診の必要性を感じる一方で、外来患者数の減少により日々の診療負担が軽減し、術前患者等への時間確保が可能となった。【考察】遠方にも関わらず患者が転院を選択したのは、外来待ち時間の短縮のみでなく、自身の主治医であった医師への信頼感・安心感があったためと考える。移植後患者へのケアの質を保障していくためには、CLへの患者移行を含めたf/u体制の構築が重要であり、CLとの連携強化、連携体制の可視化が望ましいと推察される。今後、医師がCL移行への医学的条件の設定を行い、RTCはCL転院のメリットを転院対象患者に紹介する必要がある。CL対応困難な患者の受け入れをスムーズにするためには、自立支援医療施設認定による問題があり、今後の課題である。

  • 長坂 隆治, 上村 恵子, 大塚 聡樹
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s367_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【はじめに】当院の献腎移植待機者は100名前後である。抗HLA抗体検査の算定要件が見直され、日本臓器移植ネットワークに移植希望登録中で輸血歴や妊娠歴などの既往者に対しての抗HLA抗体検査が保険収載され、2024年6月から運用開始となった。これまで生体腎移植症例に対しては術前検査可能であったが、献腎移植ではダイレクトクロスマッチ(XM)検査結果で候補者がリストアップされていた。【取り組み】年1回通院中である献腎移植待機者の外来受診時採血に、予め感作既往歴を確認して抗HLA抗体検査用採血を追加しておいた。診察時に抗HLA抗体検査実施の説明をした。抗体スクリーニング検査陽性例に対しては、同じ検体で抗体特異性同定検査まで行い、次回外来受診時に説明することとした。【考察】これまで当院では、頻回輸血・血小板輸血・移植など既往のある患者に対して、抗HLA抗体検査を自費で行ってきた。実際に献腎候補にリストアップされた際にはXM結果を待つことなく、意思確認や移植準備ができていた利点があった。今回、献腎移植待機者の術前抗HLA抗体検査が保険収載され、患者に負担をかけることなく、また抗ドナー抗体弱陽性の移植症例を避けることができると思われた。さらにその詳細をE-VAS入力できるようになれば、バーチャルクロスマッチによる迅速な献腎候補リストアップも可能になると思われた。現時点での問題点につき考察する。

  • 中沼 伸一, 林 智之, 関 晃裕, 岡崎 充善, 荒木 崇博, 加藤 一希, 西田 直仁, 所 智和, 武居 亮平, 高田 智司, 加藤 ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s367_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【はじめに】胆汁漏や胆管損傷後の仮性動脈瘤や動脈性出血の止血に用いたコイルが、稀に胆管に迷入して胆管炎、閉塞性黄疸、胆石の原因となる。今回、生体肝移植後に胆道系にコイルが迷入した症例を報告する。【症例】26歳、女性。急性肝不全昏睡型に対して、姉をドナーとする肝右葉グラフトを用いた生体肝移植を行った。移植肝の胆管後枝が左肝管より分岐し、胆管前枝および後枝の2か所の胆管空腸吻合を行った。術後に胆汁漏を認め、ドレナージ管理を行った。移植後28日に腹腔内出血を認め、血管造影検査で肝動脈A7根部から造影剤の漏出を認めた。前区域枝からA7末梢が造影されることを確認し、コイルを用いてA7根部の動脈塞栓術を行った。胆汁漏は改善したが、移植1年5か月後にMRCPで胆管空腸吻合部狭窄を認めた。胆管炎による3回の入院加療を認めたことよりバルーン拡張術を予定した。移植2年1か月後、小腸ダブルバルーン内視鏡(DBE)を行ったところ、胆管空腸吻合部にコイルの迷入を認め、胆管炎の原因と判断した。出血に備えてIVRをスタンバイし、把持鉗子で視認されたコイルの大部分を摘出した。再び胆管炎を認め、再度DBEを行った。再びコイルの迷入を認め、視認されたすべてのコイルを摘出した。現在、胆管炎を認めず経過は良好である。【まとめ】生体肝移植後に動脈塞栓術用コイルが胆管空腸吻合部に迷入したがDBEにて摘出し得た。

  • 島田 恵, 橋本 拓哉, 中沢 祥子, 丸山 嘉一
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s368_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    ABO不適合肝移植はリツキシマブを中心とする抗体関連拒絶に対する予防策が確立して以降,生体肝移植が主流であるアジアを中心に拡大してきた.一方で微小血管閉塞に伴う広汎な胆管狭窄はABO不適合肝移植の合併症として未だ問題となっている.今回ABO不適合肝移植後に生じた胆管狭窄に対して,移植7年後にグラフト肝の区域切除を行った症例を経験した.症例は58歳女性.C型肝硬変に対して,右肝グラフトによる生体肝移植を行った.レシピエントはO型,ドナーはA型でABO不適合移植であった.術前リツキシマブ500mg/bodyの投与を行った.胆道再建は胆管-胆管吻合.胆管は前区域,後区域別々の2孔で,それぞれ吻合を行った.術後2週で前区域領域に胆管狭窄とそれに伴う末梢胆管拡張が出現し,最終的に前区域に3本の経皮胆管ドレナージチューブの留置が必要になった.一方後区域胆管は狭窄を認めず,胆道ドレナージは不要であった.ドレナージチューブの留置が必要な状況は持続し,患者の生活の質を大きく低下させていたため,移植7年後にグラフトの前区域切除を施行した.手術時間7時間56分,術後胆汁瘻やそれに伴う腹腔内感染の問題があり入院期間が長期化したが術後70日目にドレーンがない状態で退院となった.前区域領域のみ広範な胆管狭窄が出現した稀な状況ではあるが,ABO不適合肝移植後の胆管狭窄に対して肝切除にて問題解決した症例を経験したため報告する.

  • 宇賀 菜緒子, 上野 豪久, 出口 幸一, 野村 元成, 渡邊 美穂, 神山 雅史, 東原 大樹, 木村 武司, 奥山 宏臣
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s368_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    症例は1歳7ヶ月女児、胆道閉鎖症、体重13.8kg。父をドナーに生体肝移植を行った。外側区域グラフト、GV/SLV 57.3%, GRWR 1.7%、血液型は適合であった。免疫抑制剤はタクロリムスとステロイドとした。術後3週間までの経過は良好であったが、術後3週間頃から右胸水が出現、呼吸状態が悪化しドレナージ開始した。その後、2~3000ml/日の胸腹水の排出を認め、最大約4500ml /日に達した。胸水は乳びで、オトクレオチドなどの保存的加療とリンパ組織郭清術など複数回の外科治療を行ったが、胸水を止めるに至らなかった。術後3ヶ月から敗血症を繰り返し、術後4ヶ月でARDSを発症、透析導入した。術後5ヶ月で消化管出血をきたし血管造影を行った。上腸間膜動脈造影では右横隔膜下に増生した血管を認め、そこから胸腔内へのシャント血流を認めた。また、下横隔膜動脈から肺静脈へのシャント血流も描出された。門脈造影では門脈狭窄は認められず、右結腸静脈の分枝にコイル塞栓を行ったが、肝不全にて移植後5ヶ月22日で永眠された。本症例は血管造影でシャント血管が発達しており、同様にリンパ管も増生したと考えられ、それが多量の胸腹水の原因であったと推察された。生体肝移植後の胸腹水はたびたび見られるが、本症例は経過・原因ともに稀有な症例であった。

  • ブンヤニワース タナポン, 北國 大樹, 佐々木 一樹, 岩上 佳史, 山田 大作, 富丸 慶人, 野田 剛広, 高橋 秀典, 小林 省吾, ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s368_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【目的】肝移植における主要な術後合併症の一つとして急性または慢性の腎障害(AKI, CKD)がある。その原因として、免疫抑制剤をはじめとした薬剤性は認知されているが、他の周術期因子は明らかではなく、今回、肝移植術後AKI、CKD発症のリスク因子を個別に検討することを目的とした。【方法】2010-2018に当科で肝移植した患者を対象とし、周術期因子、術後1週間以内のAKI、術後5年以内のステージ3以上のCKD、全生存期間を後方視的に調査した。AKI、CKDの定義はAKIN基準、KDIGO基準に従い、単変量・多変量解析で検討した。【結果】本研究では62名の患者が解析対象に含まれ、平均年齢は51.6歳、脳死移植は16.1%で、AKI、CKDの発症率は51.6%(32名/62名)、69.8%(37名/53名)であった。術後AKI患者は非AKI患者と比較し、予後不良であった(5年生存率AKI 72% vs 非AKI 90%、P=0.071)。AKI発症の独立リスク因子は、術中の再灌流後10分の平均動脈圧≧75mmHgであった(P=0.010)。CKD患者は非CDK患者と比較し、予後不良の傾向が見られた。(5年生存率CKD 89% vs 非CKD 100%、P=0.17)。CKD発症の独立リスク因子は、レシピエント年齢≧50歳(P=0.0041)、術前Hb< 12 g/dL(P=0.0061)、術後AKI(P=0.030)であった。【結論】肝移植後AKIのリスク因子として、再灌流後の平均動脈圧の上昇、CKDのリスク因子として、高年齢、術前貧血、術後AKIの発症が同定された。

  • 秋岡 清一, 有村 勇哉, 的場 はるか, 萩野 元晴, 竹本 晴彦, 小城 正大, 長田 寛之, 中野 且敬, 中山 和輝, 井田 智治, ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s369_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    TMAは溶血性貧血、血小板減少、臓器障害性の血栓症を特徴とする疾患群で移植後に見られる合併症であり重症化するものでは予後不良で注意を要する合併症である。当科では2007/12から2024/5に76例の腎移植を実施し、4例の腎移植後TMAを経験した。4例ともABO血液型不適合移植の女性で、発症時年齢は30から69歳で発症時期は3例が移植術直後であったが1例が術後59ヶ月後と超晩期症例であった。移植術直後の発症の3例は移植手術との直接の関係が疑われたが、晩期症例の1例は多発骨折後の観血的手術直後に発症しており、移植術より他の原因の関与が疑われた。全例とも高度の血小板減少、破砕赤血球を伴う貧血、LDHの上昇を認めたが臓器障害など認めず、臨床的な急性拒絶反応も認めなかった。治療は全例で新鮮凍結血漿(FFP)による血漿交換(PE)とカルシュノイリン阻害剤の変更ないし中止で、速やかな効果、治癒が得られた。近年では血液製剤の大量使用の回避や感染症、アレルギー反応の回避のためにアルブミン置換によるPEが可能な場合に選択されることが増えており、直近の症例では初回にアルブミン置換を実施したが回復が得られず2回目よりのFFPによるPEを実施し著効が得られた。TMAの晩期症例を経験し、従来法のFFP置換によるPEの有効性が示唆された。

  • 八木澤 隆史, 立木 綾音, 石山 雄大, 小野原 聡, 飯田 祥一, 清水 朋一
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s369_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【目的】腎移植後新規に認めたde novo移植腎尿管結石は、移植後合併症として比較的まれである。De novo移植腎尿管結石に対する内視鏡的破砕術の治療成績を検討する。【方法】2018年6月から2024年4月の期間に当院にてde novo移植腎尿管結石に対して経皮的腎尿管結石砕石術(PNL)、経尿道的腎尿管結石砕石術(TUL)を施行した6症例の手術成績を検討した。【結果】PNLは4例、TULは2例であった。PNL症例は、腎尿管結石1例、腎結石1例、尿管結石2例であった。TUL症例は2例とも尿管結石であった。全ての症例で結石は完全破砕し、術後の腎機能低下や貧血進行は認めなかった。【考察】移植腎尿管結石に対する内視鏡的破砕術では、非生理的な上部尿路解剖下における結石へのアプローチ戦略が重要である。一般的にはTULが相応しい結石であっても、PNLが選択されるケースがある。移植腎周囲の線維性被膜は非常に硬いことが多く、経皮的アプローチの際のトラクト造設に難渋することがある。また、移植尿管口が膀胱頂部や側壁付近に位置していること、尿管の可動性が非典型的であることから結石への経尿道的アプローチや破砕中の視野確保に難渋することがある。今回、当院での移植腎尿管結石に対するPNLとTUL症例を検討したが、いずれも周術期合併症を認めることなく結石破砕を施行した。

  • 葛山 七花, 平井 敏仁, 小針 悠希, 福田 洋典, 吉田 一彦, 海上 耕平, 清水 朋一, 石田 英樹, 高木 敏男
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s369_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    移植患者に対する癌免疫(IO)療法は移植片拒絶反応のリスクがあり、適応の判断は容易ではない。今回、我々は移植後20年経過した腎移植レシピエントの転移性腎癌に対し、IO療法を行い、治療効果を得た症例を経験した。症例は61歳男性、X-21年に母親をドナーとした生体腎移植術を受けていた。X-10年に右自己腎腫瘍を指摘され腎摘術を施行、病理診断は淡明細胞癌、G1>G2 grade1 pT1b)あった。X-2年、CTで左肺転移が疑われ肺腫瘍切除術を施行したところ腎癌肺転移であった。X年7月にCTで胸膜転移、多発肺転移を指摘された。手術適応はなく、血清クレアチニン値(sCr)2.0mg/dLと既に慢性拒絶が進行していたため、セルセプト中止、タクロリムス減量の上、X年9月にアベルマブ+アキシチニブ療法を開始した。治療2クール目にsCr 4.5mg/dLまで上昇しステロイドパルス療法を施行、エベロリムスを追加するもsCrは徐々に上昇し、X+1年1月に透析再導入となった。その後もアベルマブ+アキシチニブ併用療法を継続し、8クール終了時点のCTで胸膜転移は60%縮小、肺転移巣は消失しており部分奏功と判定している。これまでのところ、腎不全以外の免疫関連有害事象は確認されていない。移植患者に対する免疫チェックポイント阻害剤は移植片の拒絶を引き起こす可能性が示唆されるが、癌の進行リスクも考慮し使用を検討する必要がある。

  • 坂井 寛, 本明 慈彦, 中野 亮介, 清水 誠一, 黒田 慎太郎, 田原 裕之, 大平 真裕, 井手 健太郎, 田中 友加, 小林 剛, ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s370_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    (目的)夫婦間や親子間は高感作ドナーで免疫学的ハイリスクであると考えられている。免疫学的検査としてドナー特異的抗原(DSA)やクロスマッチ試験による抗ドナー抗体の評価は行われているが、細胞性拒絶の免疫学的解析は十分に行われていない。(方法)当科では術前・術後にリンパ球混合試験(MLR)を行いレシピエントの抗ドナー応答を評価している。生体・脳死肝移植レシピエント316例を対象に、ドナー続柄やMLRによる抗ドナー応答解析を含め、短期予後に影響する免疫学的因子を検討した。(結果)ドナーの続柄は、子供、親、夫婦、兄弟姉妹、脳死の5群に分類した。短期成績を単変量解析すると、ドナー年齢、血液型不適合、夫婦間移植、術後MLR高値がリスクとして抽出された。多変量解析ではドナー年齢のみが有意なリスクであった(p<0.0001)。ドナー年齢と、血液型不適合/夫婦間移植/MLRそれぞれの因子との関連は認めなかった。MLRと血液型不適合との関連はみとめなかったが、MLRと夫婦間移植との関連を認め、夫婦間移植ではその他のドナー続柄に比べ術後MLR抗ドナー応答が有意に亢進し、急性拒絶反応発症率は最も高かった。拒絶症例は非拒絶症例に比べ有意に予後不良であった。(結語)短期予後に最も強く影響する独立因子はドナー年齢であった。一方でドナー年齢に関係なく、夫婦間移植は、MLR抗ドナー応答が亢進し拒絶発症率が高く、免疫学的ハイリスクである。

  • 今岡 洸輝, 大平 真裕, 長ヶ原 一也, 別木 智昭, 中野 亮介, 矢野 琢也, 田中 友加, 大段 秀樹
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s370_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    目的:当科では動脈硬化の指標となる腹部大動脈石灰化(AAC)を有する生体肝移植ドナーでは,肝臓内免疫の中で肝臓内ナチュラルキラー細胞(lr-NK)の腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導ligand(TRAIL)発現が低下する事を報告した.一方担癌状態肝臓で,AACがlr-NKの機能に与える影響は不明である.本研究では,AACが大腸癌肝転移(CRLM)術後の残肝再発及びlr-NKのTRAIL発現に与える影響を明らかにする.方法:1. 2010年~2019年にCRLM99例を対象に,AACの程度で二群に分別し,臨床的データと術後肝臓内再発率を解析した.2. CRLMに対して切除した肝臓を,門脈より灌流し肝臓内免疫細胞を回収した10例を対象に,AACの程度で二群に分別し,lr-NKの表現型を解析した.結果:1. 患者を高AAC群(N=67)と低AAC群(N=32)の二群に分類した.PSMで両群の患者背景及び腫瘍背景因子を一致させると,CRLM術後の肝内再発率はAAC高値群で上昇した一方,肺転移再発率とAACには関連はなかった.2. 高AAC群(N=6)は低AAC低値群(N=4)と比較し,lr-NKのTRAIL発現は有意に低下した.結論:動脈硬化の強い患者は,CRLM術後の残肝再発のリスク因子であった.またlr-NKの抗腫瘍活性は低下し,術後再発との関連が示唆された.

  • 深見 晴恵, 吉川 実季, 柴田 一泰, 姫野 智紀, 島本 侑樹, 長谷川 雄基, 二村 健太, 岡田 学, 平光 高久, 鳴海 俊治, ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s370_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【目的】カルシニューリン阻害薬(CNI)は臓器移植後に使用する免疫抑制薬の要である。周術期には目標値に合わせて定量測定可能範囲内で調節されているが、移植臓器の長期生着やエベロリムスの登場により、日常検査では定量感度付近の血中濃度測定も少なくない。臨床側へ定量感度未満で報告した場合、低めの濃度で維持できているのか、ノンアドヒアランスなのか伝わらない。今回、薬物濃度測定担当技師において、CNIの定量感度未満の報告方法の統一を試みたので報告する。【方法】対象は2023年8月から2024年4月までの移植外来におけるタクロリムス(TAC)とシクロスポリン(CYA)の定量感度未満報告例。薬物濃度測定担当技師に対して、2023年12月にCNI定量感度未満の解釈についてのスライド教育を行い、教育前後の電子カルテへの参考値コメント記載率を比較した。【結果】教育前と教育後のコメント記載率はTACで50%→90%、CYAで50%→63%とTACにおいて良好な結果が得られた。【考察】免疫抑制薬の血中濃度測定は、大学病院以外では臨床検査技師が測定を行っている施設が多い。臨床検査技師も測定だけではなく結果について理解を深め、Therapeutic Drug Monitoring(TDM)に携わることができれば、医師の手助けになると考える。

  • 高橋 雄介, 藤原 拓造, 清水 順也
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s371_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【目的】

    当科における小児腎移植後維持免疫抑制剤コンバージョンの現状を検討する。

    【対象・方法】

    2020年10月から2023年12月までに当院で施行した20歳未満の小児腎移植患者のうち、維持免疫抑制療法中の14例に関し、維持免疫抑制剤変更(add onを含む)の有無、変更理由、変更後の短期予後に関し検討した。

    【結果】14例中9例(64%)で維持免疫抑制剤の変更(1例はadd on)を行なった。移植後から薬剤変更までの日数の中央値は241日(15日-1036日)で、変更理由は発熱性好中球減少1例、好中球減少及び下痢が2例、繰り返すウイルス感染症が2例、non adherenceによる拒絶反応が2例、BKウイルス腎症が1例であった。変更した薬剤はミコフェノール酸モフェチル(MMF)が最も多く、3例がミゾリビン(MZ)への変更、3例がエベロリムスへの変更、1例がMMFのadd on、計画的変更が1例であった。好中球減少および下痢の1例はMMFからMZの変更でも下痢の改善がないため、さらにプログラフからシクロスポリンへ変更した。

    変更後に拒絶反応を起こした症例はなかった。

    【考察】

    今回の検討では、免疫抑制剤の有害事象を原因とした薬剤変更が多く、小児、特に低年齢児に対する移植時には免疫抑制剤の有害事象に留意しつつ免疫抑制療法を行う必要があると考える。

  • 西川 晃平, 大和 俊介, 西川 武友, 加藤 桃子, 東 真一郎, 杉野 友亮, 佐々木 豪, 井上 貴博
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s371_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【緒言】2024年6月から既存抗体陽性が疑われる献腎移植待機患者に対する抗HLA抗体スクリーニング検査(スクリーニング)の実施が保険適応となった。当科では以前より全待機患者に対し定期的なスクリーニングをLabscreen Mixed(LSM)を用いて実施してきたため、その陽性率について検討を行った。【方法】対象は2019年1月から2023年12月までに当院の献腎移植待機外来に受診し一度でもスクリーニングを実施した168例。登録情報上感作歴を有する症例は78例(46.4%)で、内訳は輸血歴45例(26.8%)、妊娠歴41例(24.4%)、移植歴9例(5.4%)であった。また、輸血歴が不明であった症例が3例(1.8%)含まれていた。LSMの陽性Cut-off値は1.5とし、複数回の検査を行った症例については一度でも陽性と判定された場合は陽性症例として扱った。【結果】患者一人当たりのLSM施行数の中央値は2.5(範囲:1-5)回であった。全症例での陽性は67例(39.8%)であった。感作歴ありもしくは不明の症例では44%(54.3%)で陽性となった一方で、感作歴なしとされた症例でも23例(26.4%)で陽性の判定となった。【考察】本検討では抗体同定検査は施行しておらず真の抗体陽性率は不明であるが、感作歴がないとされた症例でも一定数でLSM陽性の判定となった。今後、献腎待機患者にスクリーニングを行っていく上で、LSMの運用方法やCut-off値の検討とともに、より詳細な感作歴の聴取を行う必要があると考えられた。

  • 福原 宏樹, 西田 隼人, 高井 諭, 縄野 貴明, 竹原 知宏, 高井 優季, 成澤 貴史, 八木 真由, 菅野 秀典, 山岸 敦史, 内 ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s371_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    症例1は60歳女性。夫をドナーとしたB型からO型の血液型不適合生体腎移植(ABOi-KT)目的で受診。CDCクロスマッチ(CDC)陰性、フローサイトメトリークロスマッチ(FCXM)陰性、抗ドナーHLA抗体(DSA)陽性 (A2 MFI 2339, DR4 MFI 2364)、抗血液型抗体価は2048倍だった。術前2週間前よりTAC、MMF、MPを開始。脱感作療法としてリツキシマブ(RIT)(200mg, 2回)、DFPP4回、PEX1回施行し、IVIGは3日間施行した。術後1年9か月、3年3か月で抗体関連型拒絶反応を発症し治療したがCrea 1.0mg/dl前後で推移している。症例2は33歳女性。父をドナーとしたB型からO型のABOi-KT目的で受診。CDC陰性、FCXM B陽性、DSA陽性 (DR0405 MFI 4745)、抗血液型抗体価は64倍だった。脱感作はDFPP3回以外は症例1と同様に行い、IVIGは4日間施行した。移植後6か月目に移植腎尿管吻合部狭窄に対して移植尿管自己尿管吻合術を行ったが拒絶反応はなく、Crea 1.0mg/dl前後で推移している。DSA陽性症例に対して高容量IVIGを用いて脱感作療法を行った2症例を経験したため文献的考察を加え報告する。

  • 野口 紘嗣, Baldwin William, 谷本 昭英
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s372_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    [Introduction]Complement has been implicated as a pro-inflammatory mediator in ischemia reperfusion injury (IRI). However, C1q, a subcomponent of C1, functions as a pattern recognition receptor (PRR) that removes injured cells. [Method]We examined the effects of C1q in kidney allografts. A/J kidneys were transplanted to wild type C57BL6 or C1q-knockout (KO) recipients. Treated mice were euthanized from 1 day to 28 day after transplantation to see the C1q function in early to chronic phase inflammation by these tests.[Result]All kidney allografts survived more than 14 days in wild type recipients. In contrast, allografts subjected to cold or warm ischemia failed acutely in C1q-KO recipients with unresolved IRI. C1q transcripts increased in allografts from 1 day to 7 days after transplantation. nanoString analysis on flow sorted infiltrating versus resident myeloid cells isolated from transplants indicated higher C1q transcripts from resident macrophages than infiltrating macrophages.[Conclusion]These data indicate that C1q functions as a PRR to resolve IRI incurred at the time of transplantation.

  • 澤田 貴虎, 坂本 みき, 西田 敬悟, 大西 智也, 渡辺 隆太, 西村 謙一, 福本 哲也, 三浦 徳宣, 宮内 勇貴, 菊川 忠彦, ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s372_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    抗体関連拒絶反応に対する治療としてのリツキシマブや血漿交換療法が承認され、腎移植患者にとって福音となった。当院ではこれまで腎移植後の拒絶患者に対し、monthly DSG 治療を中心に行ってきた。当院におけるmonthly DSGはDSG(3-5mg/kg)を5日間投与し、そのうち3日間でmPSL(125-500mg)±IVIg(5g)を投与するもので、これを1か月おきに3コース行うことを基本としている。治療後に移植腎生検を行い、その結果でrATG治療、DFPPなどの追加治療を行うかの判断をしている。2014年10月から2024年2月までに当院でmonthly DSGを施行した拒絶患者は13例であった。このうち、治療後の移植腎生検で拒絶を認めなかったのは6例で、現在まで追加治療なしでフォローできているのが3例、CNI毒性による透析再導入となった症例が1例、後の移植腎生検で拒絶を認めたため、治療を行った症例が2例であった。この2例を含めた、追加治療を行った9例においてもDeath with functioning graftに至った1例を除いて、現在まで透析再導入に至ることなくフォローアップできている。今回、これらの症例を振り返ることで、当院におけるこれまで、そしてこれからの拒絶治療について検討した。

  • 川島 光明, 豊川 剛二, 中尾 啓太, 叢 岳, 阿瀬 孝治, 永田 宗大, 福島 崇仁, 山谷 昂史, 山口 美保, 山口 美和, 玉城 ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s372_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【目的】本邦での脳死肺移植待機期間は概ね2年半~3年である。その一方、待機期間が短いことも経験する。患者背景ごとに脳死肺移植待機期間が異なると仮説をたてた。【方法】当院における2015年7月1日から2024年4月30日の脳死肺移植症例を解析し待期期間の検討を行った。待機日数(連続変数)は正規分布していなかったため、ノンパラメトリック検定を行い、中央値(第1四分位点、第3四分位点)で表した。【結果】対象期間中に脳死肺移植は163例行われ、待機日数は798日(452日、1055日)であった。18歳未満の待機日数は156日(119日、413日)、18歳以上の待機日数は820日(523日、1068日)だった(p<0.001)。血液型ごとでは、A型が1001日(808日、1358日)、B型が749日(452日、1073日)、O型が770日(308日、957日)、AB型が325日(157日、654日)、 だった(p<0.001)。原疾患ごとでは、間質性肺炎が752日(379日、752日)、閉塞性肺疾患が856日(757日、953日)、骨髄移植後移植片対宿主病が523日(452日、638日)、肺高血圧症が1016日(832日、1233日)、肺移植後慢性期移植片機能不全が1005日(842日、1081日)、その他の疾患が968日(334日、1401日)だった(p=0.003)。片肺移植の待機日数は798日(523日、1020日)、両肺移植では801日(328日、1074日)と有意差は無かった。【結論】本検討では脳死肺移植の待機日数は患者背景ごとに異なり、年齢、血液型、原疾患は関係していた。

  • 渡邊 トシカズ, 平間 崇, 渡邉 龍秋, 渡辺 有為, 大石 久, 新井川 弘道, 岡田 克典
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s373_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【目的】COVID-19はSARS-CoV-2ワクチン(以下、ワクチン)接種を施行しても肺移植患者の入院死亡率は他の合併症よりも高い感染症である。SARS-CoV-2は市中の呼吸器感染ウイルスで、健常者でも肺炎を呈するが、肺移植患者にとってはグラフト感染症として機能損失につながる恐れがある。これまで肺移植患者においてCOVID-19肺炎を起こすリスクについての報告は少なく、今回肺炎を合併した患者の特徴について評価することを目的とした。【方法】2001年1月から2023年11月までに東北大学病院で脳死肺移植を受けた患者172人についてレトロスペクティブに検討した。2023年11月末の時点での横断的研究であり、COVID-19に罹患歴のある患者を同定し、罹患した全員のCTをもとに肺炎の有無を判定した。【結果】罹患歴があった39名のうち9名(23%)に肺炎の合併を認めた。肺炎群では移植前にmRNAワクチンを接種していた患者はいなかった。また肺炎群では感染日から抗ウイルス薬の投与までの期間の中央値が6日であり、非肺炎群の1日以内に対して治療の遅れを認めた。COVID-19関連の死者は肺炎群で2名(22.2%)と非肺炎群で2名(6.7%)の合計4名であり、肺炎群で死亡率が高い傾向にあった。【考察】肺移植患者ではCOVID-19での肺炎合併率が高い傾向にあり、リスクを減らすために移植待機中のワクチン接種が推奨される。またCOVID-19の早期診断および治療開始が予後に寄与する可能性がある。

  • 今村 由人, 岡戸 翔嗣, 野亦 悠史, 渡邉 裕樹, 川角 佑太, 仲西 慶太, 門松 由佳, 上野 陽史, 加藤 毅人, 中村 彰太, ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s373_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【背景】当院は2023年3月に国内11施設目の肺移植実施施設の認定を受け、同年8月より脳死肺移植の待機登録申請を開始した。肺移植適応評価入院の際に冠動脈疾患を新たに指摘された症例が複数認められたことから、そのリスク因子との関連を調べた。

    【方法】2024年4月末時点で、肺移植を目的に紹介された患者28例のうち、今後の適応評価入院予定5例を除き、適応評価した13例を対象とし、患者背景および検査結果と冠動脈所見について調査した。

    【結果】13例の原疾患は間質性肺疾患10例、造血幹細胞移植後肺障害1例、慢性閉塞性肺疾患1例、びまん性汎細気管支炎1例であった。冠動脈疾患のリスク因子とされている項目に関して調査した結果、喫煙歴あり7例、高血圧症4例、糖尿病6例、脂質異常症4例、CT画像上冠動脈石灰化あり3例認めた(重複あり)。上記リスク因子を3個以上認められた4例に冠動脈造影CT検査が施行され、うち2例で冠動脈狭窄が新規に指摘されたが、心筋シンチグラフィーで虚血性心疾患は否定的なことから移植適応について他科と協議し慎重に検討を行っている。

    【結語】当院の肺移植適応評価13例のうち2例に新規の冠動脈狭窄が判明し、いずれも3個以上の冠動脈疾患リスク因子を有していた。冠動脈疾患の併存は肺移植周術期の重篤な合併症発生のリスクであるため、今後も慎重に適応評価を継続していく。

  • 俣野 貴慶, 杉本 誠一郎, 田中 真, 柳光 剛志, 調枝 治樹, 富岡 泰章, 堂口 佳子, 石原 恵, 諏澤 憲, 枝園 和彦, 三好 ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s373_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    臓器移植後のサイトメガロウイルス(CMV)感染症の予防にレテルモビル(LTV) が保険適用となった。LTVはガンシクロビル(GCV)やバルガンシクロビル(VGCV)と比べ、腎毒性や骨髄抑制等の副作用が少ないことが知られている。両側脳死肺移植後のCMV感染症に対してLTVの予防投与が有効だった一例を経験したため報告する。症例は36歳、男性。肺静脈閉塞症による肺高血圧症に対して両側脳死肺移植を施行した。ドナー(+)/レシピエント(-)のCMVミスマッチ症例で、術後からGCV・VGCVや免疫グロブリンの投与を行った。術後54日目までCMV-DNAは65~850 IU/mlを推移したが、68日目より約2週間の陰性化を確認したためGCVの予防投与に移行した。しかし、72日目に再度CMV-DNAの陽転化とVGCVの副作用による好中球減少をきたした。初期治療量の抗CMV薬や免疫グロブリンを投与し免疫抑制剤を減量したが、93日目にはCMV-DNA 2360 IU/mlにまで上昇したため、漸減していたプレドニゾロンは慢性期維持量(0.1mg/kg/day)まで減量し、ミコフェノール酸モフェチルも中止した。術後121日目よりCMV-DNAが陰転化したためLTVの予防投与を開始し、約4週間の陰性を確認後、術後147日目に退院となった。その他の合併症を認めず3カ月間CMV-DNA陰性を継続している。肺移植後は6~12カ月の抗CMV薬の予防投与がガイドラインで推奨されているが、VGCVより副作用の少ないLTVは有効な選択肢になる可能性がある。

  • 松本 瞭, 田中 里奈, 坂之上 一朗, 栢分 秀直, 豊 洋次郎, 中島 大輔, 伊達 洋至
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s374_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【背景】CAR-T療法(Chimeric antigen receptor T-cell therapy)は患者自身のT細胞に遺伝子を導入することで抗腫瘍効果を得る治療で、B細胞性の悪性リンパ腫や白血病の治療法として用いられているが、正常のB細胞も障害される。今回、CAR-T療法後の小児に対して生体肺移植を施行し、移植後緑膿菌肺炎治療に難渋した症例を経験したのでその臨床経過と対応について報告する。【症例】6歳時に急性リンパ球性白血病と診断。化学療法後同種骨髄移植を施行されるも再発し、10歳時にCAR-T療法を施行され以後再発なく経過。造血幹細胞移植後肺障害の為、12歳時に両側生体肺移植を施行した。緑膿菌性肺炎を発症し、気管切開を行い術後3日目から4週間抗菌薬を投与した。投与終了から2日後、発熱と呼吸状態の悪化があり、40℃近い発熱が続き、浸潤影は悪化し、P/F ratioが60程度まで低下した。緑膿菌肺炎再燃と診断し、MMFは中止、経静脈的投与に加え吸入でも抗菌薬投与を行い、週1回程度のガンマグロブリンの補充を行った。計6週間の抗生剤加療を行い、肺炎の治癒を得た。ガンマグロブリンの補充を継続し、術後3.5ヶ月に退院、術後9ヶ月間経過中である。【考察】CAR-T療法後の患者に対する肺移植後の重症緑膿菌性肺炎を経験した。感染症発症時は通常より長期間の抗菌薬投与と頻回のガンマグロブリンの補充が必要で、術後免疫抑制に関しても検討が必要と考えられた。

  • 中島 一樹, 名倉 豊, 早川 雅之, 澤田 良子, 川端 みちる, 廣瀬 有香, 小堀 恵理, 古谷 江梨子, 昆 雅士, 日野 俊哉, ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s374_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【はじめに】Passenger Lymphocyte Syndrome(PLS)は、ABO血液型マイナーミスマッチの臓器・造血幹細胞移植後に、ドナー由来Bリンパ球から産生された抗赤血球抗体により一過性に溶血反応がみられることがある病態である。今回我々は脳死肺移植後にPLSを呈した症例を経験したので報告する。

    【症例】患者は10歳代女性、血液型はA型RhD陽性、不規則抗体陰性。

    【経過】徐々にHbが低下し術後16日目に7.4 g/dLとなった。その際、赤血球輸血依頼があったため患者同型赤血球製剤と交差適合試験を行ったが不適合(陽性)となった。この検体で血液型検査を行った結果、通常A型の血漿中には産生されない抗Aを検出した。直接抗グロブリン試験陽性となり、抗体解離試験を行った結果からも抗Aが確認された。脳死ドナーの血液型がO型であったためPLSと考えられた。担当医に報告し、赤血球輸血はO型とすること、継続的に溶血性貧血の発症がないか確認することを提案した。約2ヵ月後に転院、約6ヵ月後に来院した際の検体で抗Aの消失を確認した。

    【考察】PLSは無症状または赤血球輸血を含む対症療法で対応可能な場合が多く、本症例では輸血検査で抗Aを検出したことにより発覚した。ABOマイナーミスマッチ肺移植後の10%でPLSを発症したとする報告もあり、移植後に交差適合試験陽性や溶血所見を認めた場合、ドナー血液型の確認、ABO不適合移植の場合はPLSも考慮し輸血管理を行う必要があると考えられた。

  • 柳光 剛志, 杉本 誠一郎, 田中 真, 富岡 泰章, 石原 恵, 堂口 佳子, 枝園 和彦, 諏澤 憲, 三好 健太郎, 岡崎 幹生, 豊 ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s374_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【緒言】肺移植後の消化器合併症の発生率は16-43%と報告されている。機能性ディスペプシア(FD)は器質的・代謝性疾患がないにも関わらず慢性的に上腹部症状を呈する疾患であり、持続する嘔気・嘔吐は低栄養だけでなく誤嚥や不安定な免疫抑制療法をきたしCLADのリスクを高める可能性がある。肺移植後のFDに対しPEG-J留置が奏功した一例を経験したので報告する。【症例】17歳男性。CLADに対して脳死両側再肺移植を施行。POD16より経口摂取を開始したが嘔気・嘔吐により絶飲食と食事再開を繰り返した。アコチアミド塩酸塩水和物などによる薬物療法の効果は限定的で、再燃時には中心静脈栄養や免疫抑制剤などの静脈投与を要した。小腸カプセルを含めた上下部消化管内視鏡検査で器質的疾患はなく、胃不全麻痺やSMA症候群は否定的で、PET/CTでPTLDも認められずFDと診断された。POD76に退院後、FDのため再入院し空腸に留置したEDチューブから経腸栄養と薬剤投与を行った。六君子湯の開始後から徐々に症状は改善したが、再燃時に自宅や紹介元病院でも治療できるようPOD147にPEG-Jを留置し退院した。その後、症状再燃時にはPEG-Jを使用したが頻度は徐々に減少し、移植後7か月で症状が消失し移植後11か月でPEG-Jを抜去した。【結語】PEG-Jによる経腸栄養は安定した免疫抑制療法と栄養療法を可能にするため、肺移植後の遷延するFDに対して有効な可能性がある。

  • 椎谷 洋彦, 渡辺 正明, 千葉 龍平, 佐々木 明洋, 大高 和人, 藤原 晶, 氏家 秀樹, 新垣 雅人, 加藤 達哉
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s375_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    背景:新規開発されたエリスロポエチンアナログ製剤(ARA290)は、EPOR-βcRを介した抗炎症効果により臨床応用が期待される。ARA290の肺虚血再灌流傷害抑制効果を検証した。方法:Lewisラットの左肺門を1時間クランプ後再灌流する肺虚血再灌流傷害モデルを用い、虚血再灌流傷害群、ARA290治療群(120μ/kg 2回静脈投与)、偽手術群の3群で検証した。2時間後に摘出した肺組織において、肺水腫の程度を摘出直後の肺重量と乾燥肺重量の比で評価した。病理組織学的に血管周囲の浮腫、好中球浸潤(Myeloperoxidase染色)、マクロファージ浸潤(CD68染色)について比較検討した。結果:ARA290治療群では、虚血再灌流傷害群と比較して、肺水腫および血管周囲の浮腫が有意に軽減し、肺組織への好中球浸潤、マクロファージ浸潤が抑制された。結語:エリスロポエチンアナログ製剤は、肺の虚血再灌流傷害を軽減し、肺移植の成績向上につながる可能性がある。

  • 稲永 由紀子, 藤野 真之, 李 小康
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s375_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【目的】近年、移植臓器不足解消の為、ブタ臓器を使う異種移植が注目されている。MSCは、免疫調節能、特に免疫抑制作用を持ち、その能力はサイトカインなどのPrimingにより増強すると報告されている。異種移植時の免疫反応を抑える方法の一つとして、MSCは有力な候補と考えられる。本研究では、異種移植時の免疫調節にヒト及びブタMSCが有用であるかをin vitro系で検討した。【方法】ヒトMSCは臍帯由来を、ブタMSCは脂肪由来MSCを分離して使用した。ヒト炎症性サイトカインであるIFNγ(hIFNγ)とTNFα(hTNFα)でPrimingしたヒト又はブタMSCについて、いくつかの免疫調節関連因子のmRNAの発現をRT-PCRで調べた。【結果】ヒトMSCは、同種hIFNγ/hTNFαの Primingにより免疫調節関連因子IDO, HO-1, IL-6, IL-1b,NOS2などのmRNA発現が濃度依存性に増加した。ブタMSCにおいても、異種hIFNγ/hTNFαのPrimingによりIDO, HO-1, IL-6, TGFb, COX2(PTGS2)などのmRNA発現が濃度依存性に増加した。【考察】ヒト及びブタMSCは、ヒトサイトカインでPrimingされることにより、免疫調節能の増強を示した。ブタMSCは、異種の環境下においても免疫調節機能を十分発揮できる可能性が示唆された。

  • 荒田 了輔, 谷峰 直樹, 中野 亮介, 坂井 寛, 清水 誠一, 田原 裕之, 大平 真裕, 井手 健太郎, 田中 友加, 大段 秀樹
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s375_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【緒言】アロ反応性T細胞の詳細な解析は、移植免疫を理解する上で重要となる。我々は短時間活性化マーカーCD154とCD137を用いたアロ反応性T細胞の検出、解析がマウス皮膚移植の拒絶モデルにおいて免疫感作を反映することを報告してきた。本研究ではこの解析法を用いて、末梢性免疫寛容モデルを検討した。【方法】2種類のMHC フルミスマッチ(BALB/c→C3H or B6)皮膚移植モデルに寛容誘導(CTLA4抗体+抗CD40L 抗体)を行い、7日後と30日後に免疫応答を比較した。ドナー(BALB/c)のB細胞をCD40LとIL-4で24時間培養しStimulatorとし、Responderの脾臓T細胞と18時間のMLRを行いCD4+CD154+/CD8+CD137+アロ反応性T細胞を同定、解析をフローサイトメータで行った。【結果】B6マウスは全例でBALB/cグラフトを拒絶した(MST 18 days)が、C3Hマウスには免疫寛容が成立し、19例中16例で長期生着した。移植7日目では寛容成立モデルでドナー反応性CD8+T細胞の割合が有意に低く、IFN-γやGranzyme Bの産生能に差はなかった。移植30日目にはモデル間でドナー反応性CD8T細胞の割合は差がないものの、寛容成立モデルでIFN-γやGranzyme Bの産生能はともに抑制されていた。【考察・結語】本研究により、新規免疫解析法は免疫寛容モデルの免疫状態を量的・質的かつ妥当に評価し、寛容導入・維持期でT細胞応答性が変化することを示唆した。この迅速な免疫解析法は寛容モニタリングとして有用な可能性がある。

  • 橋本 慎太郎, 谷口 大輔, 宮崎 拓郎, 土肥 良一郎, 小畑 智裕, 野中 隆, 荒井 淳一, 富永 哲郎, 白石 斗士雄, 松本 理宗 ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s376_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【背景】iPS細胞から分化誘導した平滑筋細胞で血管様構造体を作製した報告はあるがスキャフォールドフリーの構造体の報告は少なく、また他の臓器への応用は確立していない。iPS細胞から神経堤細胞(NCC)を介した間葉系幹細胞(iNCMSC)の誘導法は凍結や大量の細胞ストックに利点があるとされる。今回iNCMSCを平滑筋細胞へと分化誘導し、3Dバイオプリンタによる組織構造体の作成とラット気管への移植を行い評価した。【方法】平面培養したiNCMSCを、FBS含有DMEM培地にTGFβ1を添加した(TGFβ1群)と添加しない群(DMEM群)で28日間培養し、蛍光免疫染色での平滑筋マーカーの発現を評価した。TGFβ1群の細胞のスフェロイドを用いて3Dバイオプリンタで管状構造体を作成し、21日間培養したのちシート状に成形しラット頸部気管前壁に作った全層欠損部に平滑筋パッチとして移植した。【結果】TGFβ1群では免疫細胞染色で平滑筋マーカーであるαSMA、カルポニン、ミオシン重鎖が強く発現し細胞収縮に関与するとされるストレスファイバーも観察された。構造体のラット気管移植後28日の組織学的評価で、生着と血流が確認され、レシピエントの組織から上皮が進展し気管構造が維持された。【考察】iPS細胞から誘導した平滑筋様細胞による組織構造体は、移植グラフトとして気道欠損部を充填し、組織修復の足場として有用であった。

  • 武原 悠花子, 徳永 卓哉, 池本 哲也, 宮崎 克己, 山田 眞一郎, 齋藤 裕, 森根 裕二, 石橋 広樹, 島田 光生
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s376_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    背景:我々は、ヒト脂肪由来幹細胞(ADSC)から効果的にシュワン細胞様細胞(SLC)を分化誘導するプロトコルを確立し、坐骨神経損傷モデルマウスにSLCを移植すると、坐骨神経修復とその機能が有意に改善することを報告した (Cell Transplant. 2022)。 最終的に骨盤手術後の末梢神経損傷の回復にSLCを応用するために、in vitroでの癌に対するSLCの影響と骨盤神経損傷ラットモデルに対するSLCの有効性を検討した。方法:ヒト ADSC からSLCを作成した。次に、神経障害を誘発するsemaphorinの存在・非存在下で SLC を市販の神経細胞 (cNC) と共培養し、cNCの軸索伸長を蛍光免疫染色で評価した。さらに、結腸癌細胞をSLCと共培養し、癌細胞の増殖能を評価した。in vivoでは、神経原性排尿障害を誘発するためにSCIDラットで両側骨盤神経切断 (BPNC) を実行し、5×106 個のヒトSLC (hSLC)を神経切断部位に移植し、膀胱内圧測定および組織学的検討を行った。 結果: SLC は、sham群と比較し、semaphorinの有無によらず、cNCの軸索伸長が有意に増加した (p<0.05)。結腸癌細胞株とSLCの共培養では、増殖能に有意差は認めなかった。SLC移植モデルラットでは、BPNC 群では術後14日目に最大膀胱内圧が大幅に低下していたが、BPNC+hSLC 群では14日目にsham群と同程度まで最大膀胱内圧の改善を認めた。 結論: hSLC 移植は、直腸癌手術による骨盤神経損傷に対して安全かつ効果的である可能性がある。

  • 宮本 大輔, 福本 将之, 松隈 国仁, 三好 孝之, 長井 一浩, 丸屋 安広, 原 貴信, 松島 肇, 今村 一歩, 足立 智彦, 曽山 ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s376_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【目的】我々は特定の小分子化合物刺激にて臨床肝組織より分離した成熟肝細胞がリプログラミング化し、増殖性ならびに肝分化能を有する肝前駆細胞(CLiP)を作製できることを明らかにした。そこで本研究では、ヒト肝硬変患者より作製したヒトCLiP移植における肝硬変に対する治療効果について検討した。【方法】肝硬変患者における肝手術切片より分離したヒト成熟肝細胞よりヒトCLiPを作製し、FACSにて特性を評価、ならびに免疫不全NASH肝硬変モデルマウスに経脾移植し治療効果につき検討した。【結果】分離したヒト成熟肝細胞を低分子化合物添加培地にて培養すると細胞集団の80%以上が前駆細胞マーカー(EpCAMとCD133)陽性細胞となった。NASHモデルへのヒトCLiP経脾投与にて、4週目以降で抗ヒトALB染色にて成熟肝細胞へと分化が確認され、血中ヒトアルブミンの増加(CLiP移植群:300 ng/mL)ならびに障害マーカー(ASTならびにALT)の減少を確認した。さらにNASH肝硬変モデルの肝内コラーゲン線維面積の減少を示した(コントロールvs CLiP移植群 = 108,332 vs 48,308, p=0.05)。【考察】肝硬変患者より作製したヒトCLiPは肝機能改善ならびに肝線維化抑制効果を有していることが明らかとなり、ヒトCLiP移植は硬変換改善に有効な治療法であることを示した。

  • 中尾 俊雅, 進藤 岳郎, 大山 雄大, 南園 京子, 西田 翔, 武藤 倫弘, 岩見 大基
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s377_1
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【背景】新規免疫抑制剤の開発は、臓器・幹細胞移植後の患者やアレルギー・自己免疫疾患の患者に大きな利益をもたらす可能性がある。我々は過去、抗がん剤の一種であるMEK阻害剤が、免疫抑制剤として有用な可能性を報告してきた。今回、ファースト・イン・クラスのMEK阻害薬であるトラメチニブ(TRA)の、免疫系に対する作用を調べ、そのメカニズムを明らかにしたので報告する。【方法・結果】マウスの脾細胞T細胞のin vitro増殖試験においてTRAの抑制能を評価した。培養液中のトラメチニブ濃度は1nM-100nMに設定した。その結果、TRAは、CD4/CD8 T細胞の増殖と、活性化T細胞に発現するCD25およびTIM3を用量依存的に抑制し、T細胞関連サイトカインの分泌も併せて抑制した。また、TRAは活性化T細胞のG1停止とアポトーシスを誘導することにより、T細胞の増殖を抑制することが解明できた。さらに、毒性については低濃度TRA(1-10nM)ではT細胞および正常マウス肝細胞に対して毒性がないことも確認できた。【考察・結語】本研究ではTRAが、サイトカイン分泌の抑制とともに、G1停止とアポトーシスを誘導することにより、CD4およびCD8 T細胞の増殖を抑制することが解明できた。T細胞、正常肝細胞への毒性が低いことも確認できており、TRAの免疫抑制剤としての適応拡大への可能性を示すことができた。

  • 渡邊 卓次, 木戸 高志, 久呉 洋介, 長谷川 然, 永島 利章, 平 将生, 吉岡 大輔, 島村 和男, 上野 高義, 宮川 繁
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s377_2
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【背景】小児心臓移植ではサイズミスマッチなドナー心を移植することが少なくない。また、本邦でも先天性心疾患術後の重症心不全症例に対する心臓移植が散見されるようになり、サイズミスマッチだけでなく解剖学的特徴を克服するための外科的工夫を要することもある。今回当院で経験した小児心臓移植時に外科的工夫を要した症例を報告する。【症例】症例1: 4歳, 10kgの男児。拘束型心筋症で両心室補助人工心臓を装着中に9歳時からの臓器提供あり、体重差は+200%以上であったがレシピエントの全身状態を考慮して心移植を施行。ドナー側の大動脈を喫状にトリミングして縫縮し、レシピエント側の大動脈と吻合。術後3年で吻合部位の有意狭窄を認めたため、上行大動脈再建術を施行。その後吻合部位の狭窄は認めていない。症例2: 5歳, 13kgの女児。単心室症にてextracardiac-TCPC施行後に発症した心室緻密化障害に対して、左室補助人工心臓装着中に臓器提供あり、心移植を施行。肺動脈ならびに上大静脈前面に自己心膜ならびにドナーの下行大動脈壁を使用して血管再建を行った。術後3年経過しているが有意狭窄なく経過している。【まとめ】小児心臓移植ではサイズミスマッチを解消するための工夫や血管再建に使用する血管を心摘出と同時にハーベストするといった工夫を要することもあるため、心移植術前の綿密な手術計画が肝要であると考えられた。

  • 安藤 智, 辻 正樹, 金子 沙樹, 栗原 尚裕, 磯谷 善隆, 石井 聡, 武城 千恵, 沼田 玄理, 齊藤 暁人, 八木 宏樹, 皆月 ...
    2024 年59 巻Supplement 号 p. s377_3
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル フリー

    【背景】近年、Sodium-glucose Cotransporter 2 inhibitor (SGLT2i)の心不全や腎不全に対する有効性が示されているが、心臓移植後の慢性腎不全に対する有効性は明らかでない。慢性腎不全を有する心臓移植後患者におけるSGLT2iの腎機能に対する影響を検討した。【方法】当院に通院中の心臓移植後患者74名がSGLT2iを内服しており、そのうち移植後1年以上経過し慢性腎不全を有する35名に対して、後方視的に投与6ヶ月前、投与時、投与6ヶ月後のeGFR(estimated glomerular filtration rate)を比較した。【結果】投与開始時の年齢は52.0(四分位範囲 48.0-60.0)歳、男性28名、投与開始は移植後8.4(四分位範囲 3.8-10.1)年であった。投与6ヶ月前、投与時、投与6ヶ月後のeGFRはそれぞれ44.8(四分位範囲 31.3-50.2)、39.0(四分位範囲 31.4-48.1)、44.0(四分位範囲 33.3-49.8) mL/min/1.73m2であり、投与前後6ヶ月のeGFR変化率は上昇した(-8.4→+7.4%, p=0.097)。また5名が2型糖尿病を有しており、2型糖尿病の有無でeGFRの変化率に差はなかった(p=0.56)。脳性ナトリウム利尿ペプチド、ヘモグロビン、尿酸は有意に改善した(p=0.0057、p=0.0001、p=0.0001)。【結論】SGLT2i投与でeGFRの変化率は改善傾向にあり、心臓移植後患者の慢性腎不全に対しても腎保護的に作用する可能性が示唆された。今後症例数を増やして更なる検討が必要である。

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