組織培養研究
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34 巻, 2 号
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原著論文
  • 金子 愛, 山海 嘉之
    原稿種別: 原著論文
    2015 年 34 巻 2 号 p. 123-132
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/19
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    脳・脊髄よりなる中枢神経系(CNS)は、人間にとって非常に重要な機能を司るが、一度損傷を受けると殆ど再生しないと考えられていた。本研究は、この脊髄の生体内での再生を再現しうる三次元組織培養の確立を目的とした。組織工学の三大因子は、細胞・基質・成長因子である。先行研究では、細胞として脊髄組織を、基質としてPuraMatrixを使用し、更に本研究では、(神経)成長因子としてNGFを加えた。成体ラットから採取した厚い脊髄組織を三次元ハイドロゲルPuraMatrix(25%、50%)に包埋した本実験系では、8週間の長期培養後も約90%の生存率及びニューロン比、多くのFM1-43 陽性スポット数と約 700 μmの組織厚さを示し、これらの結果は全て、二次元培養の2倍以上と有意に高くなった。50% PuraMatrix包埋組織からは、細胞の移動と突起の伸長が起こったが、NGFを培地に添加することによって、頭側と尾側組織間の細胞移動距離が2~4倍と、有意に増加した(~ 2 mm)。移動細胞の多くは、シナプス活性を示す生存ニューロンであった。25% PuraMatrix包埋組織では、FM1-43 陽性スポット数が最も多かったが、同時に、組織の剥がれ・浮きが起こりやすかった。操作性及び、生体内の脊髄断端間の細胞移動・神経再生の再現という目的のためには、50% PuraMatrixが最も好適であることが示唆される。このように、PuraMatrixとNGFを使用した本実験系では、脊髄組織細胞(ニューロン)の生存・シナプス活性・細胞構築が長期間維持され、組織間の細胞移動が促進され、生体内のCNS再生が再現されうることが示唆される。従来、コラーゲンゲルの包埋培養法は広く行われているが、PuraMatrixに脊髄組織を包埋した本実験系は初の試みであり、また、成体CNS組織の長期培養及びNGFによる細胞移動の促進も殆ど例がない。本実験系は、生体内でのCNSの再生の条件や機序の解明、臨床的薬理作用や慢性毒性試験等に広く応用可能であると思われる。生体内(in vivo)の三次元的環境と生体外(in vitro)の二次元培養のギャップを埋める為の三次元的な組織/器官培養(ex vivo)の重要性は、再生医療や組織工学の進展とともに、今後さらに高まって行くと考えられる。
特別寄稿
  • Toshiharu MATSUMURA
    原稿種別: SPECIAL CONTRIBUTION
    2015 年 34 巻 2 号 p. 133-138
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/19
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    Robin Holliday, a noted British philosopher and a sculptor, born in 1932 died in 2014. After his remarkable contribution in nineteen sixties and seventies to modern molecular biology through his presentation of a genetic recombination model, i.e., Holliday model, and his proposal of epigenetic control mechanisms based on DNA methylation, he poured in nineteen eighties his scientific interests in the mechanisms of aging, particularly in solving the problem of in-vitro limited proliferative lifespan of cultured human diploid cells (HDCs). Two major findings obtained during that time in his laboratory were that cell’s memory of proliferative life span can be modified with a pulse treatment of DNA-methyl transferase inhibitors, 5-azacytidine and 5-azadeoxycytidine, and that SV40-infected-, but not immortalized, HDCs maintain their level of DNA methylation until the end of their proliferative life span. It was shown with these two lines of findings that the drift of DNA-methylation level is influential, but not essential determinant of the limitation of proliferative potential. These studies underlay further studies of Hayflick limit in nineteen nineties including the discovery of telomerase participation.
総説
  • 中路 正, 藤本 くる美, グジュラル チラグ, 皆川 雄太, 北野 博巳
    原稿種別: 総説
    2015 年 34 巻 2 号 p. 139-151
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/19
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    細胞移植による難治疾患治療は、患者にとって実現が切望されるものである。特に、パーキンソン病は、その病因から、完治には細胞移植以外は困難といわれている。そのような背景から、組織または細胞移植によるパーキンソン病の治療に関する研究が盛んに行われてきた。その結果、細胞を移植するだけでは、生着率が極めて低いことと、たとえ生着しても挫滅した組織は移植細胞を制御できるだけの能力を有していないという問題から、病態の劇的な改善には至らないことがわかってきた。そこで我々は、「生存率向上」と「in situでの細胞精密制御」の両方を達成できる生理活性バイオマテリアルの創製を着想した。開発した材料は、生存率向上およびin situでの細胞精密制御の両方を達成できる機能を有するコラーゲンハイドロゲルである。本稿では、各機能について解説し、本ハイドロゲルを用いた細胞移植によるパーキンソン病の治療への可能性について述べる。
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