一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
58回大会(2006年)
選択された号の論文の317件中201~250を表示しています
口頭発表 食物
  • !) 赤米を混合した米飯の調理性と食味について !)
    奥田 玲子, 石村 哲代
    セッションID: 2Fa-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的  近年、赤米の果・種皮に含まれる色素がポリフェノール類であること、食物繊維を多く含むことなどから、一般の関心が高まっている。
     そこで我々は未搗精の赤米を混合割合を変えて精白米とブレンド炊飯し、得られた米飯について物理的測定や官能検査をおこない、赤米を混合して炊飯する際の調理性や嗜好性について検討をおこなった。
    方法  新潟県魚沼産こしひかりおよび群馬県産赤米(うるち米)を試料とし、赤米の混合割合は5%、10%、20%、30%とした。炊飯は、電気炊飯器(松下電器:SR-X05)を用い、加水量は米の重量の1.5、1.6、1.8、2.0倍とし、浸漬温度25℃、浸漬時間は1時間とした。色調は分光測色計(MINOLTA:CM-2002)を用い、硬さはレオメーター(不動工業:NRM-2002J)を用いて測定した。官能検査は順位法により行い、パネルは本学の学生20から26名とした。
    結果  炊き増えは、いずれの加水比においても赤米の混合割合の高いものほど、わずかながら小さくなる傾向が認められた。色調は、白米飯のL値74.86±1.12、5%混合米飯は71.00±1.45、30% 56.45±0.95であった。官能検査の結果、いずれの混合米飯においても加水量が増すにつれて、有意にやわらかく、粘りが大きいと評価される傾向がみられた。 総合評価は、5%、10%、20%混合米飯において、有意(P<0.05)に、加水比1.6が最も好まれた。また加水比1.6で比較したときには、混合割合が小さいほど軟らかく、粘りが大きく、外観、味、総合評価ともに有意(P<0.01)に良いと評価された。
  • 喜多 記子, 高木 淑江, 長尾 慶子
    セッションID: 2Fa-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】私共は米の消費拡大を目的に嗜好的に好まれるジャポニカ種米粉麺を調製し、これまでに副材料としてタピオカデンプンや豆乳等を添加し、食感及び嗜好性の向上を確認している。今回は栄養機能面から見直されてきている玄米を用いた米粉麺を対照とし、食感及び品質の向上を目的に、植物たん白質素材のグルパールと食品安定剤として利用されているタマリンドを添加した麺について力学測定及び官能評価から総合的に検討した。
    【方法】玄米をミルミキサーで粉砕し、100gを同重量の水に24時間浸漬後、ミキサーで微粉砕にし、50%米粉液を得た。これを7.5%濃度に希釈し、75_から_90℃まで5℃間隔で加熱し、E型粘度計用試料とした。加熱麺のテクスチャー及び官能評価試料として50%米粉液を65℃まで加熱後、混捏・製麺し、蒸し加熱した。グルパール及びタマリンドは各々玄米の1_から_2%(内割り)添加し、対照試料と同様に粘度測定、テクスチャー測定及び官能検査を実施した。また、冷凍したタマリンド添加麺のテクスチャーを非冷凍麺と比較した。
    【結果】粘度測定の結果、Casson降伏値においてはグルパールやタマリンドを添加した場合でも、対照と比べて有意な差はみられなかった。玄米麺の硬さ応力は加熱後の放置時間とともに増したが、副材料添加麺は、老化の進行が緩慢で食感を保持しやすいことが認められた。官能検査において、タマリンド添加麺は総合的にも有意に好ましい評価が得られた。冷凍麺の場合、対照の玄米麺は非冷凍に比べて硬さ応力の低下がみられるのに対し、タマリンド添加麺は冷凍耐性が大で変化が少なかった。玄米にこれら副材料を添加することで栄養面に加えて、嗜好面での向上が示唆された。
  • 片山(須川) 洋子, 片山 眞之, 山本 裕子, 今西 博子, 富田 圭
    セッションID: 2Fa-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目 的 ヒジキには比較的高濃度にヒ素が含有されている。しかし、市販ヒジキは家庭で調理する前に水戻し処理を行うので、この時ヒジキに含有されるヒ素は可成り溶出される(1, 2)。今回、水戻し過程におけるヒ素溶出の様子を知ることを目的として、温度条件を変えて測定した。
    方 法 本実験に使用した市販ヒジキは主として長崎県五島産の原藻を加工したものであり、加工場にて煮沸乾燥されている。この一定量を秤取し、精製水を加えて一定温度 ( 0, 15, 30, 45, 60, 75, 90 ℃)、一定時間 ( 1/3, 2/3, 1, 3, 6, 24 hrs) 保持し、急速濾過・分離して溶出液と残査部分とに分けた。溶出画分・残渣部分ともに、一定量を秤取乾燥し熱中性子放射化分析によってヒ素含有量を定量した。
    結 果 水戻しを行う際の温度を45 ℃以上にすると、20分以内にヒジキに含まれるヒ素量の70 %以上が溶出された。ヒジキ藻体から溶出される可溶性ヒ素量は浸漬温度の上昇や浸漬時間の延長のいずれによっても、増加しなかった。不溶性ヒ素の形態は不明であるが、可溶性ヒ素はヒ酸・モノメチルアルシン酸などと推定される。以上の結果から、市販ヒジキは温湯で20 分程度の水戻しを行い、その液は棄てることが推奨される。
    〔文献〕 1) 片山ら;2005 年日本家政学会大会. 2) 片山ら:微量栄養素研究22, 107-109 (2005).
  • 木下 枝穂, 久保倉 寛子, 津田 淑江
    セッションID: 2Fa-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    (目的) 本みりんには、消臭、照りつやの付与などの調理効果があることが知られており、煮くずれ防止効果も報告されている。本研究では、煮熟時におけるジャガイモ中の成分変化に及ぼす本みりん溶液の影響を明らかにすることを目的とし、ジャガイモのアミノ酸量、アスコルビン酸量の分析を行った。
    (方法) ジャガイモは、新ジャガイモと貯蔵ジャガイモの2種類を用いた。基部から先端の中心部を2.5cm角に切り、水に10分浸漬した後、水、15%本みりん溶液、15%本みりん溶液のアルコール濃度に相当する2.1%エタノール溶液で、98℃を保持したところから10分、20分、30分間加熱した。アミノ酸の定量には液体クロマトグラフィーを用い、о-フタルアルデヒドで誘導体化し、Ex.350nm、Em.450nmで検出を行った。アスコルビン酸量はFキットL-アスコルビン酸により酸化型アスコルビン酸および還元型アスコルビン酸を測定した。
    (結果) 遊離アミノ酸量の分析の結果、新ジャガイモでは10、20分加熱において、貯蔵ジャガイモでは10分加熱において、本みりん溶液で煮たジャガイモは、水で煮た場合よりも遊離アミノ酸総量が多かった。個々のアミノ酸を見ると、みりんに多く含まれるグルタミン酸やアスパラギンは生より減少したが、その減少率は低く、みりんにはほとんど含まれていないグルタミンの減少率も低かった。アスコルビン酸量は、水、エタノール溶液で煮た場合、加熱時間が長くなるにつれ減少した。本みりん溶液で煮た場合、加熱時間の経過によるアスコルビン酸量の減少が抑制された。
  • 明神 千穂, 山口 智子, 高村 仁知, 的場 輝佳
    セッションID: 2Fa-7
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】近年、冷凍食品は一般家庭に普及し我々の食生活に欠かせない。しかし、調理や加工・保存などにより機能性成分の損失が懸念される。従って、食品のもつ機能性成分を損なうことなく摂取することのできる加工および保存方法を考える必要がある。本研究では、野菜を冷凍保存および加熱調理した場合のラジカル捕捉活性の変化を検討した。【方法】生およびブランチングした野菜(オクラ・ゴーヤ)を6ヶ月間_-_18℃および_-_40℃で冷凍保存し、1ヶ月ごとに取り出して、ラジカル捕捉活性、アスコルビン酸量、総ポリフェノール量を測定した。また、同じ条件で1日、3ヶ月、6ヶ月保存したものに加熱調理を行い、同様に測定した。【結果】野菜のラジカル捕捉活性は冷凍保存により減少したが、_-_18℃より_-_40℃の方が活性は保持されていた。加熱調理においては、ゆで加熱より電子レンジ加熱のほうが活性を保持していた。アスコルビン酸は保存や調理の際に減少し、総ポリフェノールは減少が少なかった。また、ゴーヤにおいては、ブランチング後保存するよりも、生で保存した方が活性は保持されていたが、オクラにおいては反対の結果が得られた。適切な保存方法はそれぞれの野菜によって異なると考えられる。
  • 高橋 恵子, 福田 靖子, 香西 みどり, 畑江 敬子
    セッションID: 2Fa-8
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】数種の介類の筋肉部エキス成分について,生および加熱試料の抗酸化力を明らかにすることを目的とし,3種の方法でラジカル消去活性を評価した。さらにブラックタイガーエキスについて,活性に関与する成分の検索を試みた。【方法】(1)東京中央卸売市場で入手した8種の介類の筋肉部を,エタノール処理後水抽出し生肉エキスを得た。生肉を沸騰水中で加熱してドリップを回収し,加熱肉を水抽出し加熱肉エキスを得た。この3種を凍結乾燥後,水に溶解し試料液とした。DPPH法(一般ラジカル消去活性),ORAC法(OH・消去活性),化学発光法(O2・_-_消去活性)でラジカル消去能を評価し,アミノ酸(AA)分析を行った。(2)ブラックタイガーエキスを数種の消化酵素または塩酸で分解し,分解物のORAC価を測定し,ゲルろ過クロマトグラフィーで分画した。また,未分解物も同様に分画し,各画分のORAC価測定とAA分析を行った。【結果】(1)DPPH・消去活性は37_から_161μmol AsA eq./100g fr.wt.で(ハーブ類の約1/5_から_1/100),ブラックタイガー,スルメイカに高かった。ORAC価は1.6_から_3.8μmol Trolox eq./g fr.wt.で(ハーブ類の約1/10_から_1/180),ミズダコ,マダコ,ブラックタイガー,スルメイカに高かった。O2・_-_消去活性は,試料の活性が低く正確な数値は得られなかった。試料の加熱によりDPPH・消去活性は増加する傾向にあった(1.1_から_1.8倍)。ORAC価はエビ類で同等または増加,イカとタコ類で減少した。ほぼ全ての試料でペプチド態AA量が増加した。(2)加水分解物のORAC価は,分解前より有意に高く,クロマトグラムから高分子成分の分解と低分子成分の増加が確認された。未分解物の,最も高分子の画分のORAC価は極めて低かった。
  • 竹口 知里, 宮本 有香, 西村 公雄
    セッションID: 2Fa-9
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 演者らは,タンパク質ゲル状食品へのビタミンC(L-ascorbic acid(AsA))の品質改良効果が,AsAより発生するsuperoxide anion radical(O2-)によることを提唱している1)。今回,SS結合によりゲルを形成する卵白においても,演者らが提唱している品質改良機構によりAsAの改良効果がもたらされる可能性を検討した。
    方法及び結果 1mM diethylenetriaminepentaacetic acid, 75mM,5,5'-dimethyl-1-pyrroline-N-oxide,0.2μM riboflavin(Rf)及び新鮮な鶏卵より調製した卵白アルブミン(OVA)(30.1mg/ml)を含む4.2mM PIPES緩衝液(pH7.0)を調製した。光照射(650,000 lx)することでRfよりO2-を発生させ,その結果OVA上に現れてくるラジカルを電子スピン共鳴法にて測定したところ,特異的なチイルラジカルのシグナルを認めた。一方,4mM Rf及びOVA(86.5mg/ml)を含む0.2Mリン酸緩衝液(pH6.0)とRfを含まない同溶液を調製し,光照射下50℃でインキュベーションした時の濁度の変化を600nmの吸光度測定により追ったところ,Rfを含むOVA溶液(O2-が発生している)は含まない溶液より吸光度が激しく上昇し,4時間後には2.960を示した。この時,Rfが存在するOVA溶液では,濃縮ゲルにも入りきらないような巨大なSS結合重合体の形成がSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により認められた。これらのことは,演者らが提唱するAsAによる品質改良機構によりOVAの重合化が促進されていることを示唆するものである。なお,本研究の一部は,2005年度同志社女子大学研究助成金により行った。[文献]1)宮本有香,西村公雄,日本家政学会誌,56/7, 457-462 (2005).
  • 長野 宏子, 横幕 愛美, 伍 斤, 堀 光代, 古田 喜彦
    セッションID: 2Fa-10
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】小麦は卵、乳、乳製品とともにアレルギーを引き起こす原因食品となっている。小麦アレルギーは、加齢によって減少せず、難治性であると言われている。小麦の野生種は低アレルゲン性のものがあると報告されているため、保存小麦品種の低アレルゲン化の検討と、小麦粉を低アレルゲン化するための酵素選択と作用条件を比較検討することを目的とした。【方法】(1)保存小麦品種による検討は、小麦粒をブレンダーにて粉にし、60メッシュの篩にかけたものをたんぱく質抽出した。(2)小麦の状態による違いについては、小麦と小麦の粒を浸漬したもの、小麦をつぶしたものについて検討した。(3)上記の条件にて粉にした小麦については、浸漬温度による違いと浸漬日数による違いについて検討し、それぞれをSDSおよび抗原抗体反応を行った。【結果】(1)保存小麦品種により抽出したたんぱく質のSDSおよび抗原抗体反応の結果、岐阜県産のタマイズミ等の品種は外国産強力粉に比べ、バンドの変化がみられた。(2)小麦粒をつぶした時の培養酵素の作用をみた結果、伝統発酵食品中には、プロテアーゼ活性を有する微生物が存在し、濃縮酵素においては低アレルゲン化していた。(3)濃縮酵素を小麦粉へ作用させた場合、4℃においても、対照区と異なる小麦たんぱく質を分解していた。また、日数3日においては、抗原抗体反応のバンドも少なく、小麦粉の低アレルゲン化の可能性を示した。
  • 小川 宣子, 炭田 友美, 伊藤 敬恵, 山中 なつみ
    セッションID: 2Fa-11
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    1.研究目的
    豆乳製造工程における異なる磨砕方法で調製した豆乳の性状を成分及び物性により調べ、違いの要因を解明し両者の豆乳の生理作用を腸内発酵性から比較検討した。
    2.研究材料・方法
    岐阜県産大豆フクユタカを洗浄後、浸漬・磨砕し得られた呉を対流釜で4分間加熱、圧搾機により一回圧搾し、豆乳、おからを得た。磨砕工程時に花雲母製石臼(以下:石臼)またはセラミック製高速グラインダー(以下:グラインダー)を用い、この違いが豆乳の性状に及ぼす影響を調べた。ただし、グラインダーでは呉を30秒間加熱し、二回圧搾を行った。実験1) 呉および豆乳の性状:抽出タンパク質をポリアクリルアミド電気泳動法により調べた。水分、粗灰分、粗蛋白質、粗脂肪を測定し糖質量を算出し、スタキオース及びラフィノース量を測定した。豆乳の性状の違いの要因を、おからの表面構造観察により明らかにした。また、豆乳の粘度を調べ、調理加工への活用を考察した。実験2)生理作用:豆乳と菌体を培養し短鎖脂肪酸量を測定した。
    3.研究結果・考察
    実験1) 石臼豆乳の粗灰分、粗蛋白質、粗脂肪、糖質はグラインダー豆乳より有意に多かった。これは石臼おからの表面構造は粒が細かく、空洞が多いため成分がよく抽出されたと考えられた。特に石臼呉では熱変性しやすいホエー蛋白質が多く抽出され、これは60℃における石臼豆乳のずり応力がク゛ラインダー豆乳より有意に高くなった要因と推定した。また、石臼豆乳のラフィノース及びスタキオースはグラインダー豆乳と比較して有意に多かった。実験2)石臼豆乳とグラインダー豆乳の腸内細菌でのプロピオン酸の産出量には違いが見られた。
  • 磯部 由香, 土屋 里衣, 阪 恵理子, 松井 宏樹, 成田 美代
    セッションID: 2Fa-12
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】三重県産のさばおよびあゆのなれずしについて、分子生物学的手法を用い、微生物相の解析を行った。
    【方法】なれずしは平成15年に南牟婁郡紀宝町で漬けられたものを用いた。なれずしをフードプロセッサーで破砕し、DNAを抽出後、PCRによりリボゾーム(r)RNA遺伝子を増幅させた。これをベクターに組み込み、大腸菌に導入し、LB寒天培地で培養を行った。rRNA遺伝子がベクターに導入されたコロニーを選択し、PCRで増幅後、シーケンスを行い、塩基配列を決定した。GenBankデータベース中の配列との相同性検索を行い、菌種の推定を行った。
    【結果】さばなれずしから得られた93の配列から、23種類の細菌の存在が推定された。乳酸菌と考えられたものは、Lactobacillus. sakeiなど6属10種であり、発酵に関わる主な乳酸菌はLb. sakeiPediococcus pentosaceusLactococcus pisciumLeuconostoc gelidumの4種類と考えられた。あゆずしから得られた101配列から、22種類の微生物細菌の存在が推定された。乳酸菌と考えられたものはLb. sakei など7属12種であり、発酵に関わる主な乳酸菌はLc. sp. MARL49Lb. sakeiLeuc. gelidumP. pentosaceusの4種類と考えられた。本研究室において、同じ紀宝町で漬けられたさんまなれずしからは5種類の乳酸菌が確認されており、発酵に主に関与すると考えられる乳酸菌は1種類であった。このことから、なれずしの発酵に関わる主な乳酸菌は、1種類の菌が優勢になる場合と、数種類の菌が競合して増殖する場合があると考えられる。
口頭発表 被服
  • 森 俊夫, 浅海 真弓, 鎗田 起久子, 中野 麻子, 小見山 二郎
    セッションID: 1Aa-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    <目的>綿布を天然染料で濃色堅牢に媒染する方法を開発している過程で、天然染料と合成染料で染めた布の測色値に大きな違いがあることがわかった。そこで、本研究の目的は1.上の目的のために媒染法を考案すること、2.天然染料で染色した綿布の色の特徴を捉える測色法を見出すことの2つとなった。<方法>昨年、緑葉、茜、ウコン、くちなしの抽出物による、濃色、堅牢な媒染法を報告した。媒染時にカチオン界面活性剤を添加すること、ロート油による布の処理、染料溶液のpHの制御、重ね媒染、超音波処理などにより一回の染色で濃色の染色ができた。(実践女子大学生活科学部紀要43号(2006))今回は洛東化成提供のえんじゅ、クスノハガシワ、インド茜、ラックダイ抽出物による綿布とカチオン化綿布の1回染色を行い、比較した。<結果>エンジュは、媒染によりカチオン化綿より約7倍濃く染まった。他の3種の染料では、媒染によりカチオン化綿と同程度に濃色で、より鮮やかな色相に染まった。この過程で、反応染料、茜、反応染料+天然染料(ローズ)、K社製天然染料染色物の4種のサンプルの測色を、0.1mm幅で行ったところ、H、V、Cに天然染料染色物では7%の変動があるが、合成染料による染色物では0.5%の変動しかないという顕著な違いがあることがわかった。0.1mmの幅は人間の目が識別できる最小単位に近い。これが自然感の元であろう。
  • 島崎 恒藏, 開発 晴子
    セッションID: 1Aa-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的  縫い目強さは、縫い目の基本的性能として重要な要素である。縫い目強さに関しては、本縫いミシン縫い目においていくらかの研究例はあるものの、環縫い系ミシンについては殆ど報告されていない。本研究では、ステッチ形式101、401、504の環縫い系ミシンによる縫い目の強さについて検討を行うことにした。方法  上記の三種のステッチ形式を構成する単環縫い(ペガサス:DH-10)、二重環縫い(ペガサス:DM-20)、縁かがり縫い(ブラザー:EF4-B511)の各ミシンを用いて縫製試料を作製し、50mm幅の縫い目の強さを引張り試験機(東洋精機ストログラフ)によって測定した。結果  縫い糸が破断する場合の縫い目強さには、一般に縫い糸の強さやそのバラツキ具合、そしてステッチ密度などが影響することが知られている1)。これらの因子の影響については筆者が本縫いミシン縫い目で考察した「最小強度分布」の考え方1)が適用可能と思われる。すなわち縫い目に均等に力が作用する場合には、最も強さが小さい部分で破壊すると考えられるため、この最小強度が縫い目に中にいかに存在するかということが縫い目全体の強さと関わることになる。本実験で対象にした環縫い系の三種類のステッチ構造を検討してみると、縫い糸が破断するという前提のもとでは、いずれの場合も縫い糸のループ強さ(引掛け強さ)が大きく関与していると判断できる。これをもとに最小強度理論を用いて縫い目強さの推定値を算出したところ、ある程度、これらの環縫い系ミシン縫い目の強さを説明できることがわかった。[文献]1)島崎恒藏他:繊維学会誌、Vol.47、No.7、365_から_372(1991)
  • 杉浦 愛子, 淺海 真弓, 森 俊夫, 日下部 信幸
    セッションID: 1Aa-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 布面上に形成されたランダムなリンクルしわやシャープな折しわは、布の粘弾性的性質により、何時間もかかって少しづつしわが回復する。しかし、いくら放置しても取り除くことのできない残留ひずみがしわとして残る。このような布の粘弾性的性質やしわ回復挙動は、従来力学的視点から研究が行なわれ、しわ外観の経時的変化を視覚的に解析した研究は少ない。しわ外観の経時的変化を解明するために、カラースキャナを通して布の表面変化を画像として一定時間ごとに計測し、しわ外観の画像解析を試みた。
    方法 試料は樹脂加工が施されたしわ等級の異なる綿布4種類と未加工の綿、麻、羊毛、絹、レーヨン、アセテート、ナイロンおよびポリエステルの9種類の白布である。各試料にリンクル法に従ってしわを付与し、しわ外観の経時変化をカラースキャナを通して取り込んだ。これらの布しわ画像はグレイレベル画像に変換され、画像情報量として一次統計量(MIU)、角二次モーメント(ASM)、コントラスト(CON)、相関(COR)、エントロピー(ENT)およびフラクタル次元(D)が算出された。
    結果 リンクルしわの視覚的回復挙動はいずれの布も画像情報量が経時時間に対して多かれ少なかれ対数関数的に変化する。しわを視覚的なひずみとみなすと、画像情報量のこのような変化はクリープ回復と似ていて、布の粘弾性的性質に起因する。そこで、力学的な粘弾性的回復挙動とのアナロジーから、視覚的回復挙動に対数関数を仮定した回帰曲線によるカーブフィッティングを行ない、しわの回復の速さの目安となる視覚的しわ回復指数を算出した。これらの指数は目視で評価されたしわ等級と非常によい対応関係を示した。
  • 開発 晴子, 島崎 恒藏
    セッションID: 1Aa-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 布は使用過程の様々な段階でしわを生じるが、特にセルロース系の素材では注意を要する事項である。しわの評価に関しては、視覚的手段で行うのが一般的であるが、筆者らのソニック法による布の剛さ評価実験において、剛さだけでなくしわの定量化が可能であることを示唆した1)。これを踏まえ、本研究においては麻、綿などセルロース系織物のしわ評価について検討することにした。方法 試料は綿、麻(リネン、ラミー)およびポリエステルとの混用素材など6種類を用いた。主に洗濯しわを想定し、湿潤した試料の乾燥方法により、ランダムなしわや方向性を持ったしわを発生させた。これらの試料はテンションプレッサーを用いて、たて、よこ方向に500gfの荷重を与えた条件下で固定し、ダイナミックモジュラステスターを用いて、たて、よこ、バイヤス方向の音速を測定した。一方これらの試料はAATCCのレプリカを用いて等級づけを行った。結果 ダイナミックモジュラステスターにより測定した音波の速度は、しわの発生程度により減少する傾向を持っている。また布における音速は方向により異なり、また布の種類によっても相違するので、各試料ごとにしわのない状態(5級レベル)の音速によって基準化した音速相対値を求めた。音速相対値とレプリカによる評価との間にはバラツキはあるが、ある程度の直線関係が成り立った。またソニック法により方向性のあるしわについてもある程度の評価が可能と思われた。[文献] 1) 松梨久仁子、島?恒藏;繊消認、Vol.46、No.5、307_から_314(2005)
  • 金澤 等
    セッションID: 1Aa-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    ポリプロピレンやポリエチレンは軽量かつ高強度であるが、親水性に欠けるために、用途に限界があった。これらは塩素を含まないために環境問題が少ないという長所もある。本研究は、これまで困難とされてきたこれらの材料の改良を行う事を目的とした。活性化処理、高分子処理、モノマー処理からなる連続的な処理によって、これらの材料に高吸水性と接着性を付与できた。その結果、これらの材料の用途が大いに拡大されると期待された
  • 材料として有用な高分子量タンパク質モデルの製造
    金澤 等
    セッションID: 1Aa-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    アミノ酸N-カルボキシ無水物(アミノ酸NCA)の重合法は、溶液重合が一般的である。しかし、これまでのアミノ酸NCAの純度や実験方法を厳密に追究した結果、溶液重合は一般に極めて不活性であるが、結晶のままで重合させる固相重合は多くの場合、重合活性であり、高分子量の生成物を与える事がわかった。さらに、溶液および固相反応に両者において、分子量分布の狭いポリペプチドが得られた。その結果、繊維、フィルム、その他の材料として有用なタンパク質モデルが得られるた。
  • 賓 月珍, 席 いん, 松生 勝
    セッションID: 1Aa-7
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 ポリエチレンなど結晶性高分子は絶縁体であり、使用中静電気を発生することがある。一方、カーボンナノファイバーが優れた力学性質を有する導電体であるため、高分子との複合により、材料の補強効果があるばかりでなく、電気的、熱的に多くの機能性を付与することが期待されている。本研究では、カーボンナノファイバーやナノチューブとポリエチレンの複合フィルムを作成し、その電気物性と床暖房への応用を検討した。方法 ゲルー結晶化法を用いて複合ゲルフィルムを作成した。カーボンファイバー(CF)、気相成長カーボンナノファイバー(VGCF)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)をフィラーとし、分子量630万の超高分子量ポリエチレンと分子量41200の分岐型低分子量ポリエチレンを9/1の組成でマトリックスとして用いた。直流電圧下の電気抵抗のフィラー含有量の依存性と室温から180℃までの電気伝導度の温度依存性を検討した。また、10μHz_から_32MHzの周波数にわたって、試料のインピーダンスと位相の温度依存性を分析した。結果 ゲルー結晶化法で作成したブレンドゲルフィルムは極めて狭い温度領域で電気抵抗値が上昇するいわゆるPTC効果を発現させ、温度が150℃を越えても形状が安定したスイッチ素材の開発に成功した。床暖房などへの応用を検討している。CF、VGCFとMWNTの直径とその分布、絡みあいの度合いとマトリックスへの分散性が大きく異なるため、形成した複合材料のPTC効果の違いが明らかにした。
  • 大和田 薫
    セッションID: 1Aa-8
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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     大気圧マイクロ波プラズマと低圧水銀灯からの紫外線照射によりポリマーの表面を親水化にすることを目的に研究を行った。実験条件としては、照射の距離と時間を変化させ照射し、その後接触角計で接触角を測定しポリマー表面の親水化について検討した結果、これらの照射後接触角が低下した。
  • 牛腸 ヒロミ, 丸井 正樹, GOTOVAC Suzana, 仲西 正, 小見山 二郎
    セッションID: 2Aa-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的極細、超極細繊維などで、直径がサブミクロンになると、表面積が10m2/gのオーダーになり、繊維極表面の物性が吸湿性に影響するのではないかと考えて、これまでに、工業的に生産された極細および超極細ナイロン6とポリエステル繊維について、インバースガスクロマトグラフ(IGC)法により、吸湿量を測定してきた。本発表では、繊維の種類の違いによる吸湿挙動の違いに焦点を当てて、結果を比較する。
    方法試料は直径20-2μmの東レ製極細ナイロン6(溶融紡糸、海島紡糸)、0.9-0.5μmのクラレ製超極細ナイロン6(海島紡糸)、および8-4μmの帝人製極細ポリエステル繊維(溶融紡糸)である。それぞれ0.5_%_の酸化チタンを含む。十分に精製した試料を5-50cm程度のカラムに詰め、IGC法により40-90℃で吸湿量を測定した。結果をBET理論で解析し、吸着座席数と吸着エネルギーの温度依存を求めた。
    結果試料のナイロン6繊維は製造法、直径の異なる2群のものであるが、「繊維の直径が細くなるほど、すなわち単位質量当たりの表面積が大きくなるほど、両方の試料に共通の一定の割合で吸湿量が増す」ことがわかった。一方ポリエステル繊維では、繊維直径の減少とともに吸湿量は減少した。これは、ナイロン6では繊維の極表面層の分子配置が疎になり水分子の吸着座席数が増すが、ポリエステルでは、逆に極表面層の分子配置が密になり、吸着座席数が減少するためと解釈した。
  • 田川 由美子, 後藤 景子
    セッションID: 2Aa-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】 環境負荷の少ない洗浄法を開発するためには、洗浄性の客観的評価法を確立する必要がある。本研究では、水晶振動子(QCM)を利用し、ナノグラムオーダーでの固体粒子汚れの脱離現象を調べた。次に、得られた結果と洗浄前後の自由エネルギー変化の関係を調べ、洗浄結果の妥当性について検討を行った。【方法】 モデル基質には、QCMの金電極および金電極にポリエチレン、ナイロン6およびトリアセテートをスピンコートさせた被膜表面を用いた。固体粒子汚れのモデルには球形のポリエチレンとナイロン12を用いた。基質への粒子の付着は、基質を粒子水分散液に垂直に浸浸する方法で行い、浸浸前後のQCMの周波数変化から付着量を求めた。脱離実験は、粒子を付着させたQCMを水/エタノール混合液中に浸漬し、液を攪拌して粒子を脱離させる方法で行った。粒子の脱離量は洗浄前後のQCMの周波数変化から求め、脱離率を算出した。粒子および基質の表面自由エネルギーのLifshitz - van der Waals 成分、酸成分および塩基成分は、接触角測定法に基づき評価した。【結果】 粒子、基質および液体の種類により、かなり異なる脱離率が得られ、どの基質からもナイロン12粒子の方がポリエチレン粒子よりも脱離しやすいことがわかった。また、いずれの粒子でもエタノールを添加した水溶液中での方が添加していない水溶液よりも脱離率が大きい傾向が認められた。次に、粒子、基質および液体の表面自由エネルギーの各成分を用いて脱離に伴う自由エネルギー変化を算出し、脱離率との関係を調べた。その結果、自由エネルギー変化、すなわち粒子を脱離させるのに必要な仕事量が小さいほど脱離率が大きくなる傾向を示し、得られた洗浄結果の妥当性が示された。
  • 大橋 郁美
    セッションID: 2Aa-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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     酸化チタンの光触媒の洗浄への応用として有機物質の布からの除去性について研究した。本実験内容としては、ブラックライト照射下における有機汚れ付着酸化チタン担持ポリエステル布からの有機汚れの除去性について分光反射率計や重量測定などによりその除去性を検討した。実験条件は、ブラックライト光源からの照射距離と照射時間を変化させて検討した。その結果、照射条件の違いにより除去性大小はあるものの酸化チタン存在下では有機汚れの除去性が見られた。
  • 山元 通子, 角田 光雄
    セッションID: 2Aa-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 今までは水の存在しない乾燥下で光を照射し,綿布に付着した有機質汚れが除去されたかどうかを反射率をもって判断してきた。しかし,TiO2の光触媒作用においては,従来,水の重要性が指摘されている。この水の効果については,TiO2表面の水酸基が,この光触媒作用に大きな効果を持つことによる。そこで,今回はTiO2の光触媒作用による有機質汚れの分解と水の効果・影響について調べた。
    方法・TiO2付着綿布 綿布に100%アナターゼ型単結晶TiO2を浸漬,塗布後自然乾燥して作製した。
    ・汚染布の作製 アセトンに流動パラフィンを溶かし,その中にTiO2付着綿布を浸漬し引き上げた後,暗所で自然乾燥し汚染布を作製した。
    ・照射条件 光源は高圧水銀灯を用いた。照射距離は5,10,20,30_cm_とした。照射時間は1,3,5,10分とした。
    ・測定方法 UV-2500PCを用いて種々の条件で処理した試料の反射スペクトルを測定した。
    除去率 除去率は光の照射前後の反射率から算出した。
    結果 水が存在する場合には異なるスペクトル変化を示し,水の存在,不在で反応に差があることがわかった。
  • 田村 直也, 金田 英之, 宮前 喜隆, 濱 逸夫
    セッションID: 2Aa-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、地球温暖化等の観点から生活者の環境への関心は高まっている。家庭洗濯分野でも環境に配慮した製品開発は進んでおり、最近では洗剤中の界面活性剤相当分は低下傾向にある。このような環境下で十分な洗浄力を確保するには、少量の添加でも高い洗浄効果を示す酵素は有効な手段となり、この活用技術の重要性は高まると予想される。 筆者らは洗剤への酵素の応用技術の検討を進めており、汚れの状態を改質する事で酵素の働きが高まり、高い洗浄力が得られる事を報告している1)。一方、衣類に付着する汚れ成分に着目するとタンパク質、油脂、でんぷん等の成分が混合した複合汚れである場合が多い。そこで、本研究では複合汚れに着目し、酵素による効率的な除去方法を検討した。【実験】単独成分からなるモデル単独汚れと、タンパク質、油脂、デンプンが混合したモデル複合汚れを作成し、単独酵素、複合酵素による洗浄挙動の変化を解析した。【結果】複合汚れは単独汚れと比べ、酵素による洗浄効果が低下する傾向を確認した。複合汚れの場合、複数の汚れが共存するため、汚れと、その汚れに対応した酵素との接触確率が低下したと考えられる。そこで、複合汚れに対する酵素を用いた洗浄方法について検討したところ、汚れの成分に合わせた複数の酵素を併用する事で、汚れの除去効果を大きく向上できる事を確認した。このように酵素の機能を引き出し、洗浄に応用する事で、低界面活性剤洗浄でも高い洗浄力を発揮する洗剤設計が可能となる。1)田村、永安ら:日本家政学会第56回大会(2004)要旨集,p67
  • 宮前 喜隆, 大熊 洋一, 千葉 瑞栄, 濱 逸夫
    セッションID: 2Aa-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、生活者の省エネや環境問題に対する関心は高く、環境への配慮は家庭製品開発における重要品質の一つとなっている。家庭洗濯の分野でも、古くは洗剤の無リン化から、生分解性の高い界面活性剤の活用、洗剤組成中の界面活性剤の低減など環境への配慮を進めている。また、家電メーカーでも、少ない水で効率よく洗濯できる節水型洗濯機の開発など環境負荷低減を進めている。一方、1997年の京都議定書の締結以来、二酸化炭素排出量低減に対する関心も高まっており、様々な分野で二酸化炭素増加抑制への取組みが進められている。二酸化炭素排出量の抑制手段の一つに、石油原料からリサイクル可能な植物原料へ代替が考えられ、当社では洗剤に使用する界面活性剤の植物原料化を進めている。そこで二酸化炭素排出量抑制の観点から、植物原料比率を高めることの意義についてライフサイクルアセスメント(LCA)による検証を行ったのでその結果を報告する。【結果】当社が1988年に上市した石油原料由来の界面活性剤(LAS)を主基剤とするコンパクト型洗剤と、植物(パームヤシ)を原料とする界面活性剤(MES)を主基剤とする最近のコンパクト洗剤をモデルとし、洗濯1回あたりに排出される二酸化炭素量のLCAを実施した。その結果、植物由来の界面活性剤比率を高めることで、1回の洗濯で排出される洗剤由来の二酸化炭素量は大幅に削減されることが明らかとなった。本報告では、洗剤組成中の界面活性剤量(界面活性剤相当分)の低減効果など、二酸化炭素排出量に関する因子のLCAの結果と共に植物由来の界面活性剤について紹介する。
  • 鈴木 聡子, 船橋 良, 阿部 祐子, 片山 倫子
    セッションID: 2Aa-7
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    〈B〉目的〈/B〉 近年、日本の家庭用電気洗濯機は渦巻き式から回転ドラム式へと急速に転換しているが、外見は同じでも両者の洗浄機構には大きな違いがある。一方、古くからドラム式を使用してきたヨーロッパでは、店頭の洗濯機に対して洗浄性能評価の表示を義務付けている。そこで著者らは次々に出現したドラム式についてJIS C 9606で採用している湿式人工汚染布とIEC60456で採用している4種のEMPA汚染布による洗浄性能の比較を試みた。〈B〉方法〈/B〉 被洗物としては、JIS C 9606で規定されている模擬洗濯物(シーツ1枚,シャツ1枚,タオル4枚,ハンカチ2枚の計8枚に補助布を加え,約1.5kgに調整)を、供試洗濯機は家庭用全自動洗濯機(ドラム式)3台とIEC基準機のウェスケーター(回転数は52rpm)及びJIS C 9606標準洗濯機を用いた水のみ(17±2℃)による10分間の洗濯を行った。被洗物の受けた機械作用は小型MA試験布によって推定し、洗浄力については各汚染布の表面反射率変化及び表面反射率から算出したK/S値によって検討した。〈B〉結果〈/B〉 IECのウェスケーター、日本の標準洗濯機及び3種のドラム式洗濯機(H11年、H13年、H17年製造)について洗浄力を湿式人工汚染布による洗浄前後のK/S値の差で、被洗物の受けた機械作用をMA/5値で推定したところ、標準洗濯機はウェスケーターの約2倍の機械作用を被洗物に付与しながら洗浄力はウェスケーターの半分程度であった。3種のドラム式には大きな差はなく、いずれの機種もウェスケーターと比べるとMA/5値は1.7倍、洗浄力は1.4倍程度であった。湿式人工汚染布とEMPA112はほぼ同じ洗浄性能であったが、EMPA111のみは水に溶出しやすく機械力との相関が見られなかった。
  • 石川 祐輔, 大矢 勝
    セッションID: 2Aa-8
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 過去に本研究室は専用の画像処理システムによる油性汚れ、酸化鉄汚れの洗浄性評価が可能であることを示してきたが、より簡易的に試料画像を取得・評価することを目的として家庭用デジタルカメラを用いた手法の開発を試みた。デジタル画像の色情報に影響を及ぼす要因としてデジタルカメラの感度、露光時間、光源などがあるが、この影響を補正し適切に汚れの量が計算されているかについても検討した。
    【方法】 光源には蛍光灯と白熱灯の2種を使用し、撮影は家庭用デジタルカメラ(LUMIX, DMC-FZ10, 最大取得画素400万)と設置型で産業用レンズを装備した高分解能デジタルカメラ(Jenoptic, ProgRess C14, 最大取得画素1200万)を比較した。まずカメラが異なる場合の検討として、マクベスカラーチェッカーの24色を対象にX・Y・Z値を算出した。次に家庭用デジタルカメラを用いて蛍光灯と白熱灯の2条件下でスダンブルー汚染布を撮影し、付着量を評価した。
    【結果】 2種のカメラで撮影したマクベスカラーチェッカー画像の24色はXYZ値の全てが近い値を示し、家庭用デジタルカメラの適用が可能であることがわかった。またこの実験においてデジタル画像から出力されるRGB値をXYZ値に変換する際に行う重回帰分析の回帰次数を一次から二次に変更することでXYZ値の算出精度の向上が確認できた。蛍光灯と白熱灯のもとで撮影したスダンブルー汚染布についてアプリケーションから求めた汚れ量は光源に依らずほぼ一定であることが確認された。
  • 金澤 千晶, 角田 光雄
    セッションID: 2Aa-9
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 従来の洗浄剤では洗濯後の部屋干しによって雑菌汚染が原因となり部屋干し臭が発生する。また雑菌汚染は、洗濯時の肌着にいては高齢者の皮膚病の原因ともなる。その為、新洗浄剤となるエタノール水溶液系洗浄剤の殺菌性はどの程度あるのか調べた。[方法] 検体を指定の組成に調製し、試験液とした。試験液に大腸菌及び黄色ブドウ球菌の菌液を添加、混合後、25℃で作用させ、5、15及び30分間作用後に試験液の生菌数を測定した。[結果] 黄色ブドウ球菌についてはLAS自身にも殺菌力があることが分かった。大腸菌についてはエタノールに炭酸ナトリウムを添加することで非常に強い殺菌力が現れることが分かった。そして、全ての組成を加えた洗浄液は、エタノール濃度20%以上あれば黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対しても5分間でコロニーが1以下になった。よって、最も最適な洗浄性の結果はエタノール濃度20_から_60%の間なので洗浄液として殺菌力が十分あると言える。
  • 井上 美紀
    セッションID: 2Aa-10
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】本研究では,製餡した際に残った小豆種皮部抽出液の界面活性剤としての基礎実験を前報告〈SUP〉※1〈/SUP〉に引き続き行った.さらに本報告では,製餡時の小豆の煮汁についても検討した.
    【方法】試料には,製餡後に残った種皮部を乾燥させたものと製餡時の小豆の煮汁((有)佐藤製餡所提供)を用いた.乾燥した種皮部は,一昼夜水に浸漬後,所定時間煮沸した溶液を用いた.これら溶液の表面張力,起泡性,乳化性などについて測定した.併せて,インゲン豆の種皮部抽出液についても測定し,比較検討した.
    【結果】小豆の種皮部を抽出すると,抽出液の表面張力が大きく低下した.特に,40℃で測定した溶液の表面張力は42.4dyne/cmであったが,40℃以上で測定した場合の表面張力は,40℃測定時とほぼ同程度であった.また,抽出液には乳化性が見られた.一方,小豆の煮汁の表面張力は41.9dyne/cmであり,種皮部抽出液と同様に,煮汁にも起泡性が見られ,さらに,種皮部抽出溶液よりも高い乳化性を示した.
    インゲン豆種皮部を抽出すると,小豆抽出液と同様,表面張力が大きく低下した.
    ※1井上:小豆抽出液の界面活性,(社)日本家政学会東北・北海道支部研究発表会要旨集,49,p25
  • 小野 泰代, 小柴 朋子, 田村 照子
    セッションID: 1Ba-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 女性特有の不定愁訴とされる冷え性、その定義は定かではない。冷え性自覚者に特有な寒冷に対する生理的反応および着装行動について明らかにするため、調査および全身寒冷曝露、足部寒冷曝露実験を行い、その実態および特性について解明を試みた。方法 (1)若年女子954名を対象に、冷え性についての意識、生活習慣、体質、冷えの程度対策等に関するアンケートを行い、集計解析した。(2)自覚的冷え性者・非自覚者各7名に対し、環境温度20℃から10℃へ下降する人工気候室下に30分間および回復期30分間全身曝露させたときの、体温・皮膚温・血流量・代謝量変化、心拍変動を測定、着衣行動を観察した。(3)自覚的冷え性者・非自覚者各5名を対象に、気温10℃の冷却Box内に30分間足部曝露したときの、皮膚温および温冷感を測定した。(4)自覚的冷え性者6名・非自覚者5名の冬季寒冷下における戸外外出時の着衣量を調査し、着衣Clo値を推定し、冷え性の自覚の有無による差を検討した。結果 (1)アンケート集計の結果、冷え性自覚者は全体の60.1%を占め、非自覚者に比べBMIが有意に小さく、末梢血管反応、遺伝的体質、月経不順や自律神経機能の変調が冷え性と関連して申告された。冷えを感じる部位は足指先・手指先の申告が多く、腹部・背部は少なかった。(2)全身寒冷暴露時、自覚的冷え性者は、腹部・手指先の皮膚温低下が大きく、非自覚者に比べ有意に代謝の増大がみられた。自覚者は室温低下の小さい時点で寒冷を自覚し、早めに着衣量を増加させた。(3)足部寒冷曝露時、下腿部の皮膚温低下が有意に大であった。(4)日常着の保温力は非自覚者より小さい傾向がみられた。
  • 三浦 瑞恵, 三野 たまき
    セッションID: 1Ba-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は暖色系は温かく,寒色系は涼しいという印象を持っている.Yasukouchi et al.(2000)は色温度による皮膚温及び直腸温への影響を寒冷環境下で調べているが,暖色系の照明を用いると皮膚温が下がると報告している.本研究では,快適な温熱環境の中立温域において,波長の異なる視覚刺激が皮膚温へ及ぼす影響を調べた.【実験方法】被験者は21歳の成人女子1名である.以下のいずれの実験でも被験者は,中立温域に設定された人工気象室に入室後,1時間椅座位安静を保った後の30分以内に,サーモク゛ラフィ装置(TH3102MRS,NEC三栄,分解能0.08℃)を用いて,左手手掌の皮膚温を自ら測定した.実験1:環境温の変化に伴う皮膚温の感度と応答速度を求めた.実験2:中立温域で灰・青・橙のメカ゛ネで目を覆ったときの,視覚刺激の違いによる皮膚温の変化を比較検討した.【結果・考察】結果1:単位時間当たりの変化量の環境温と尺骨神経支配領域の皮膚温との回帰式を求めると,y=0.73x-3.00×10-4(R2=0.320)となった.結果2:皮膚温の時刻変動の影響を除くため,刺激を与える直前の値を基準として,各試行の皮膚温を相対値で表した.また,S/N比を改善するため,灰・青・橙の各々の視覚刺激毎に同期加算し,その平均値を求めた(n=24-42).コントロールに比べ,灰の刺激を与えた時の皮膚温は有意に変化しなかったが,橙・青の場合,着用前に比べ着用中及び着用後のそれが有意に0.16℃・0.3×10-1℃上昇した(α≦0.05).この時,照度調節を行う照明からの発熱による環境温の上昇が皮膚温に及ぼす影響は,実験1の回帰式から0.90×10-2℃であることがわかった.よって,橙・青のメカ゛ネ着用時に生じた皮膚温の上昇は環境温の変化によるものではなく,橙・青の視覚刺激によるものであった.Yasukouchi et al.(2000)Effects of color temperature of fluorescent lamps on body temperature regulation in a moderately cold environment, J Physiol Anthropol Appl Human Sci, 19:125-134
  • 環境条件,着衣条件による検討
    佐藤 真理子, 小島 みさお, 豊島 泰生, 田村 照子
    セッションID: 1Ba-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年,機能性新素材の開発や多様なデザイン展開によりファッション商品における選択肢は広がり,より快適な衣生活をおくることが可能となった.しかし,女性の下衣衣服内におけるむれやぬれ,べたつき等の不快要素は未だに解消されていない.本研究では,ショーツ内外を中心とする下衣衣服気候が,着衣の快適性に及ぼす影響を明らかにすると共に,パンティーライナー(PL)を装着した際のショーツ内気候についての検討を行った.
    【方法】19_から_22歳の健康な女性10名を被験者とし,暑熱環境(34℃・75%RH)及び寒冷環境(10℃・75%RH)下で,各々の環境に無理のない着衣条件(上衣は同一,下衣はスカートまたはパンツ)を設定し,着用実験を行った.被験者は前室で温熱的中立状態に達した後,暑熱または寒冷環境へ移動し,40分間安静座位を保った後,5分間の運動,続けて15分間安静座位とし,計60分で実験を終了した.測定項目は,下衣衣服内温湿度(10秒毎)・皮膚温(10秒毎)・感覚値(5分毎)で,同一条件にてPL装着時の測定も行った.
    【結果】暑熱環境下でのショーツ内外と鼠径部内側,及び寒冷環境下での鼠径部内側の衣服内湿度は,パンツ着用時と比べスカート着用時に有意に高かった.暑熱環境下でのショーツ内外,尾骨上部,鼠径部内側における湿度と全身の不快感とに有意な相関が得られ,着衣の快適性における下衣衣服気候の寄与が示された.
  • 予備実験と問題点
    團野 哲也, 川口 順子, 鳥居 隆司
    セッションID: 1Ba-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 巡航高度に達した旅客機の機内は,0.8気圧,相対湿度10%程度と,通常の生活環境からは大きく隔たっていることが知られている.このような外部環境の変化に伴って,衣服気候も相当の変化を伴うと予測されるが詳細については不明な点が多い.長時間のフライトにおいても健康で快適な衣環境が提供されることは,旅客にとって重要である.そこで本報告では旅客が機内へ搭乗開始してから目的地へ到着するまでの,外部環境と衣服気候を詳細に記録する方法とその問題点について述べる.また,得られたデータについての解析も一部行う.
    方法 データロガーとして,TANDD社製Thermo Recorder TR-72Uを2台用い,それぞれ機内環境,衣服気候測定用とした.温湿度ジャンプ方により求めた温湿度プローブ(TR- 3110)の時定数(63%)は,それぞれ180秒(温度),150秒(湿度)であった.測定は2005年7月30,31日ANA高知,東京間の往復にて行った.被験者は49歳男性で,衣服気候測定プローブを田村の方法1)により,みぞおちの皮膚に固定した.測定間隔は1分とした.測定時の服装には,内衣として半袖Tシャツ,上衣には半袖のカッターシャツを着用した.
    結果 機内温度は離陸直前から巡航高度にいたる約15分間に3.5℃低下し,その後は徐々に上昇した.機内湿度は離陸直後から下降直前までに約50%低下し,最低値は13%であった.衣服気候も機内環境の変化に伴い同様に下降上昇を示したが,温度は環境変化に良く追随したのに対し,湿度変化は環境変化よりも緩慢であった.環境変化が短時間で起こるので,レスポンスの早い測定プローブを使用する必要があると考えられる.
    文献 1) 田村,基礎被服衛生学,p78,文化出版局(1988)
  • 植竹 桃子, 正地 里江
    セッションID: 1Ba-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】おむつが一般の被服と異なる点は、その着脱の世話をする立場の者がおむつのつけ心地を実体験或いは理解していないケースがほとんどである、という点である。紙おむつが必需品となった高齢者や乳幼児が心地よく衣生活を過ごせるためには、おむつのつけ心地の理解(宣伝どおりに快適ではない)が必要と考え、このために効果的な授業を行うことを目的とした、おむつの装着実験のあり方(手部装着実験の妥当性)を検討する。
    【方法】(1)被験者:健康な成人女子2名(満46歳、満34歳)。(2)実験条件:紙おむつ(成人用テープ型)の装着法は、手部装着と実装着(臀部)の2法。おむつ内状況は、乾燥と湿潤(37℃のぬるま湯を200cc注入)の2条件。恒温恒湿室内の条件は、蒸し暑い(28℃、65%RH)状況での椅座位(夏と称する)、要介護者を想定した心地よい室内(20℃、60%RH)での寝床内仰臥位(冬と称する)の2条件。(3)測定項目:実験開始後から15分間隔で90分後まで、おむつ内の温度・湿度を測定し、同時に官能評価と自由記述を実施した。
    【結果】(1)装着法による紙おむつ内の温・湿度は、紙おむつ湿潤時には殆ど差が生じない。(2)冬は、乾燥時では温かく違和感のないもの、と評価する可能性がある。夏は、乾燥時の手部装着では実装着の不愉快さを感じるまでに時間を要する可能性がある。(3)総じて、授業時に手部装着実験を行うには、冬(過ごしやすい環境)の場合は紙おむつを模擬的にぬらす必要がある。夏(暑い環境)の場合も、つけ心地を確実に理解させるためには、紙おむつをぬらすことが望ましい。
  • 丹羽 寛子, 三野 たまき
    セッションID: 1Ba-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】ウエストベルト着装時の圧感覚を以前報告したが,異なる服種を着用した際に発生する被服圧とその圧感覚がどのように変化するか,浴衣を用いて調べた.【実験方法】被験者は21歳の成人女子1名で,実験前に基礎体温・室温・体重・最大及び最小胸囲・最小腹囲・最大臀囲を測定した.予備実験から被験者のちょうどよい長さに設定したウエストベルト(幅2.5_cm_)を着用し,その被服圧(以後ウエストベルト圧とよぶ)を測定した(液圧平衡方式による被服圧測定システム使用).次に被験者自ら浴衣を着用し,浴衣と,帯を締める前の腰紐との間の圧(以後腰紐圧とよぶ)と,その上に半幅帯を文庫結びに締めた帯の下層の腰紐との間の圧(以後帯下の腰紐圧とよぶ)を測定した.なお,腰紐はウエストベルトと同位置に結び,帯とともに日々調節した.また,その時の着用感覚を比率尺度で申告させた.上記実験は人工気象室内で,夏季連続35日間と初冬連続32日間の計67日間測定し,そのデータ間の相関係数を算出し,有意差検定(t検定)を行った.【結果】本被験者は体型の季節・月経周期変動にともなってウエストベルト圧が変化した.ウエストベルト圧とその圧感覚はそれぞれ,夏季に比べ初冬で有意に高かったのに対し(α≦0.01,0.01),帯下の腰紐圧とその圧感覚では夏季に比べ初冬で有意に低かった(α≦0.05,0.01).また,ウエストベルト圧・帯下の腰紐圧とそれぞれの圧感覚との間には,ともに有意な直線関係があった(Y=0.45x+0.19,α≦0.001,Y=0.10x+2.92,α≦0.05).両者の勾配は前者より,後者が22%ゆるくなった.これより,帯下の腰紐の圧感覚はウエストベルトを着用したときに比べ,許容量が大きくなることがわかった.
  • 丹羽 寛子, 三野 たまき
    セッションID: 1Ba-7
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】和服を着用するためには複数の紐が使われる.本研究では浴衣と胸紐,腰紐,帯との間に生じる被服圧に焦点を当て,圧分布から着装の特徴を明らかにした.【方法】被験者は21歳の成人女子1名で自ら浴衣を着用し,帯を締める前の浴衣と胸紐・腰紐との圧(胸紐圧,腰紐圧とよぶ),半幅帯を文庫結びに締めた後の浴衣と帯の上端・中間・下端との圧(帯上圧,帯中圧,帯下圧とよぶ),帯下の腰紐・胸紐との圧(帯下の腰紐圧,帯下の胸紐圧とよぶ)の計7面の圧を測定した(一面あたり10部位を液圧平衡方式による被服圧計測システムで測定).上記実験は夏季8回と初冬7回の計15回測定し,得られた被服圧と基礎体温・起床時室温・体重・最大及び最小胸囲・最小腹囲・最大臀囲の各項目間の相関係数を算出するとともに,それらのデータ間の有意差検定(t検定)を行った.【結果】帯下の腰紐面(1.4±0.3kPa),腰紐面(1.1±0.4kPa),帯下の胸紐面・胸紐面(0.5±0.2kPa),帯中面(0.4±0.1kPa),帯上面・帯下面(0.3±0.2kPa)の順に圧が高く,特に腰紐・胸紐の下層の圧が高いことがわかった.腰紐圧は帯を締めることにより35%有意に増したが,胸紐は帯を締めても変わらなかった.また,帯下の腰紐圧と帯圧(帯上圧・帯中圧・帯下圧)との間に正の相関関係があった(α≦0.05)が,胸紐圧と帯下の腰紐圧との間には相関関係はなかった.なお,帯下の胸紐圧・胸囲差(最大胸囲と最小腹囲の差)と最小胸囲との間には負の相関関係があり(順にα≦0.01,α≦0.001),胸囲差は帯下の胸紐圧と正の相関関係があった(α≦0.01).このことから,三野ら(1998)の報告同様,同一被験者であっても胸囲差は季節変動し,その差が大きいほど胸紐をきつく締めることがわかった.【文献】Mitsuno et al. (1998)Study on the cloting pressure developed by yukata -In special reference to deformation of dressing and sensory evaluation, J Home Econ Jpn,49:255-267
  • 井上 真理
    セッションID: 1Ba-8
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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     目的 着圧タイツはむくみを防ぐ目的で、医療用として用いられていたが、一日中立ち仕事をしているために足が疲れる、むくむといった悩みをもつ人を対象として、近年では一般市場にも着圧タイツや着圧ソックスが流布するようになった。整形効果を期待する商品として販売されているものもある。着圧ソックス布地の力学特性は直接衣服圧に関係し、表面特性、熱・水分移動特性とともに着用感に大きく影響する。本研究では、着圧ソックス布地の特性の特徴を捉えるとともに、衣服圧と着用感について考察する。 方法 市販されている8種類の着圧ソックスを試料とした。KES-Fシステムを用いて、力学特性、表面特性、熱・水分移動特性を測定した。編布の伸長特性を測定する場合、KESでは最大荷重250gf/cmを標準条件としているが、伸長率が大きいことから、ここでは最大荷重を100gf/cmとして特性値を求めた。エアバッグ法により試料着用時の足首、ふくらはぎの前後部の衣服圧を測定し、続いて試料中から圧の異なる3種類の着圧ソックスを選び、着用直後、8時間着用後の衣服圧を測定して、官能評価を行った。 結果 着圧ソックス布地は、一般の編布に比べると、伸長、圧縮の特性値が大きく、せん断、表面の特性値が小さい。特に伸長特性は最大荷重100gf/cmという低荷重条件においても、上に凸の性質を有し、この性質により大きな衣服圧を生じさせている。官能評価の結果、圧迫感は足首部の衣服圧と、着用感は足首、ふくらはぎの前部の衣服圧との相関が高いことが明らかになった。
  • 運動機能に障害がある人を対象とした1症例
    雙田 珠己, 鳴海 多恵子
    セッションID: 1Ba-9
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】身体的負担を生理学的に評価する方法として、近年では心拍を測定し心拍変動スペクトル解析を行う方法が注目されている。これは身体的・精神的負担を定量化する上で有効な方法と考えられており、被服学の分野でも快適感の定量化などに用いられてきた。今後はさらに多くの分野で役立つことが期待される。そこで本研究では、着脱時に感じる負担の評価に心拍変動スペクトル解析を応用することを試みた。筆者らはすでに運動機能に障害がある人を対象に、身体的・精神的負担を定量化する方法として、時間、衣服の変形、介助者の心拍数の測定を行ってきたが、さらにそれを発展させ、心拍変動スペクトル解析を応用する可能性を探った。【方法】運動機能に障害のある男性1名を対象に、介助による着衣時の心拍数をR-R間隔で測定した。また、介助者についても同様に心拍数を測定した。R-Rデータは最大エントロピー法によるMemCalc((株)GMS,東京)を用いて、心拍変動スペクトル解析を行った。試験着は、長袖Tシャツを基本形とし、それに着脱のしやすさを改善するため修正を加えた2タイプのものの計3種類とした。【結果】本症例においては、運動機能に障害がある人の安静時のR-R間隔、LF値、HF値は健常者よりも小さいことが明らかになった。LF/HF値は健常者よりも大きかったが、着衣動作を行った直後に上昇しない例もみられた。着衣時の着やすさの官能検査結果では、着用者介助者とも修正を加えない基本形の評価は低かったが、これは基本形着衣後のLF/HF値が他に比べ高くなる傾向と一致し、本解析による評価の有効性が示唆された。
  • 高橋 佐智子, 松本 朋子, 高部 啓子
    セッションID: 2Ba-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 肩部や頚部は衣服の着心地を左右する身体部位といわれる。衣服設計では従来、いかり肩、なで肩、前肩、猪首などの体型的特徴が取り上げられ、それらへの対応が補正という形で行われてきた。これらの形を合理的に把握するには形状を数量的にとらえる必要がある。本研究では肩部を三次元計測してその形状を数量的に把握することを試みた。方法 ミノルタ製非接触三次元デジタイザVIVID910を2台用いて、2004年11_から_12月に18_から_22歳ボランティア女子大学生63名を対象として三次元計測を実施した。回転台を用いて120度ずつ回転し、3回の撮影で6枚の画像を取得し貼り合わせて全周画像を得た。今回は上方及び正面から見た画像上で計測するために、頚部中間部からウエストまでの画像を切り取りデータ画像とした。この三次元画像に三次元解析ソフト3D-Rugleを用いて特徴点8点の三次元座標値及び断面図を計測した。これらから直線距離6項目と角度5項目を算出して解析データとし、基本統計量の算出や主成分分析結果から肩部及び頚部の形状の数量的把握を試みた。結果 (1)左右の肩傾斜角の平均値は22.5度、23.3度であり、標準偏差は4.3度、3.5度であった。肩前湾角は平均値4.7度、-0.2度、標準偏差7.1度、8.9度であり、なで肩、いかり肩より反身屈身傾向の個人差が大きい。(2)前後の頸入りと肩傾斜角間及び頚部矢状径と頚部傾斜角間には相関関係が見られた。すなわち、なで肩ほど頸入りは大きく、頚部矢状径が長いほど頚部の前傾は小さい。(3)11項目の主成分分析の結果からは、4つの主成分が抽出された。第1主成分として頚部の傾斜を表す成分、第2主成分としてなで肩かいかり肩を表す成分が抽出された。第3主成分と第4主成分は左右の肩が前方にあるか否かを表すものとなった。
  • 3次元体形イメ-ジ評価による体型分類
    増田 智恵, 村上 かおり, 平林 由果
    セッションID: 2Ba-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】通販などの利用率が4割近くを占め,インターネットなども利用した婦人服の直接販売が拡大しつつある.注文前に具体的に個々の体形に選択したデザインを,シミュレーションで仮想的に示し,着心地や似合い度などについて確認できるシステムが必要である.Part 1では各年代の成人女子を対象に,衣服のデザイン選択を支援するための基本の人体形状について,3次元体形イメージを把握する.
    【研究方法】 1) 2004年8月から2005年1月に,非接触3次元カラー人体計測器(VOXELAN LPW-1800W:計測時間6から10秒)により,成人女子72名(20代-70代)の3次元体形を計測した.2) 3次元体形の前面,左右側面,背面図を作成し,全体体形6イメージと部分体形19イメージについて5段階評価を行った.評価者は平均年齢46歳の成人女子81名である.多変量分析により体形イメージを抽出した.
    【結果および考察】1) 主成分分析の結果,肥満系-痩身系・理想的な・標準的な全体体形,脚の長さ-胴の長さなどの部分体形のバランス,女性的な-男性的なの全体体形のライン,肩・背部の部分体形,姿勢・脚の部分形状が抽出された(累積寄与率82.14%). 2) 主成分得点を用いてWard法によるクラスタ分析を行い, 3次元体形イメージを六つの体形イメージに分類した.各クラスタの感性的体形イメージと年代の特徴をまとめると,(1)短脚胴長のやや華奢な女性的体形イメ-ジの20-60代のバラツキのあるグループ,(2)脚・腕細く,胴のくびれたプロポーションの良い理想的・痩身系の女性的体形イメージで,30-60代のグループ,(3)バスト小の猫背でやや腹部が出るなど部分的体形イメージに特徴のある30-60代のグループ,(4)腹部の突出をはじめ部分体形が大きく,丸みのある肥満系の体形イメージで60代,70代の多い30-70代グループ,(5)肩幅が広く,怒り肩で平背,バスト・ヒップもやや大きく,丸みのあるやや女性的で太った体形イメージの30代後半から50代の多い70代までのグループ,(6)やや肩幅が広く,怒り肩傾向の男性的体形イメージが抽出された.以上の結果,3次元着装シミュレーション用モデルとして20-40-70代の日本人の平均体型人体モデルを,3つの体形イメージの代表に選択して,着装シミュレーション用人体として形成した.
  • 3次元体形モデルによる着装シミュレーションのイメージ評価
    村上 かおり, 増田 智恵, 平林 由果
    セッションID: 2Ba-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】Part1で分類した異なる体形イメージのうち20-40-70代の日本人の平均体型とされる人体モデル3体を,体形イメージの代表として3次元着装シミュレーション用モデルとして選択,同じデザインでサイズの異なる服20着を着用させた.その仮想的に着装したシミュレーション画像をさまざまな角度から回転動画によって表示可能として,デザインイメージの評価を行った.その特徴からイメージとデザイン服との関係について分析した.
    【研究方法】 1) これまでの研究で得られた衣服デザインイメージ用語136語による5つの系に基づいて,ファッション雑誌を参考に素材やデザインの異なる20種のデザイン服を選定した.2)このデザイン服を3体のモデルに着装させたシミュレーション画像を作成した.3)画像はCDに保存し,パソコンで表示し各デザイン服に対するイメージ,イメージ決定のデザイン要素等について評価を行った.主成分分析よりデザインイメージ,特徴を抽出した.評価者は学生を除いた成人女子127名である.
    【結果および考察】分析の結果,年代の異なるモデルによるデザインイメージ評価に大差は認められない.3体での評価傾向として「レディ&フェミニン系」「エレガント系」は複合して捉えられ,20種のデザイン服は,「レディ&フェミニン&エレガント系」「スタンダード&レトロ系」「カジュアル系」「シャープ&モダン系」に分類することができた.「レディ&フェミニン&エレガント系」の代表的なスタイルは,ピンクや花柄の素材のブラウススーツやツーピーススタイルであった.「スタンダード&レトロ系」は,柔らかい素材のワンピース,「カジュアル系」は,綿のTシャツにジーンズのようなパンツスタイル,「シャープ&モダン系」は,黒い皮素材のパンツスーツが代表的なイメージのスタイルとしてとらえられていた.黒のパンツスーツスタイルは最も人気の高い評価を得た.なお,ワンピースのようなスタイルは着る機会が少ないためか,評価することが難しいと感じていることがわかった.
  • !)受風により揺動するパンツの空隙量変化!)
    冨田 明美, 中山 晃
    セッションID: 2Ba-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 パンツに加えたゆとりが形成する空隙量は、体型適合性と動作的・温熱的性能を左右するパターン設計上重要な条件でありながら、この空隙を捉える方法が確立されておらず、人体の動き、空調や窓から侵入する風によって変動する状況を定量的に測定する試みは、ほとんど行われていない。そこで、本研究では受風によって揺動するパンツの空隙を定量的に捉え、パンツに用いた布とゆとり量が空隙量の変動に及ぼす影響について検討した。方法 実験には、任意の速度をもつ層流の風を発生することのできる風洞装置と、その風洞の吹き出し口前面に種々の条件で試料布を設置することのできる試料取り付け台、有風下におけるパンツの揺動を記録するための撮影装置を製作して用いた。実験基体は、20_から_24歳女子の下腿部をモデル化した直径9cm、長さ50cmの円筒とした。パンツ素材は市販布の中から15種選択して用いた。基体とパンツとの距離は1、2、3、4cmの4段階、風速は1、2、4m/secの3段階に変化させた。そして、空隙面積変動率(KA)は、無風時の空隙面積(Ao)と有風時における空隙面積(Aa)の比で求めた。結果 _丸1_有風下におけるパンツの揺動パターンは、用いた素材により3タイプに大別できることがわかった。_丸2_剛軟度が小さく通気度の大きな布は、揺動による空隙面積が1周期の間に大きく変動し、変動率も大きいことがわかった。_丸3_剛軟度の大きな布は、1周期当たりの面積変動率の経時変化が比較的小さく、有風下でも空隙の形状は比較的安定していることが確かめられた。
  • 布施谷 節子, 松本 智絵美
    セッションID: 2Ba-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉 スカート丈は流行によって変化するものの,定番のタイトスカートで、下体部が美しく見え、かつ、着用者に適合するような丈や色の設定はいかなるものであろうか。本研究では、若い女性が気にするような、脚が細く長く見える条件を体型別に明かにしようと試みた。〈資料・方法〉 被験者は体型が異なる女子大生4名で,着用実験に用いたタイトスカートは,各人の身体寸法に合わせて製作したものである。スカート丈は膝の中央を基準として、膝上10cm、膝の中央、膝下10cm、ふくらはぎの位置、踝の5条件で白と黒の2種類、計10条件をカメラで撮影し、これを評価の資料とした。写真資料を51名の女子大生が、バランスの良い・悪いもの、下体部の太く・細く見えるもの、脚の長く・短く見えるもの、総合評価の7項目の印象評価を行った。〈結果〉 _丸1_因子分析の結果、固有値1以上の6つの因子が抽出され、体型別に評価が分かれることがわかった。_丸2_黒スカートの場合、脚が細く長く見える丈は、背が高く太った被験者では踝丈、背が高く細い被験者では膝上10cm丈、背が低く太い被験者ではふくらはぎ丈であった。背が低く細い被験者では膝丈又は膝上10cm丈であった。スカートと脚のバランスの良い評価はいずれの被験者も膝丈であった。_丸3_白スカートの場合は、細い被験者は黒の場合と同じ評価であったが、太い被験者の場合では膝下丈は脚が細く見えるが、脚が長く見えるのは膝上丈であった。_丸4_黒と白のスカートを比較すると、太った被験者は黒の評価が高く、細い被験者では評価は分かれた。
  • !)共立女子大学コレクションを中心に!)
    野澤 久美子, 伊藤 紀之
    セッションID: 1Ca-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】現在ビーズ細工の制作法に関する書物は欧米や日本を中心に大量に出版されている。研究書や論文は民族社会学、考古学の立場から述べたものが中心で、近代の服飾および装飾品または工芸としてのビーズワークのデザインや文化についての専門的な研究は現時点ではみられない。研究者やコレクターの著書で歴史の流れのなかで触れているものもあるが、いずれも概論にとどまっている。そこで本研究では近代におけるビーズワークに焦点を当て、主に服飾の観点からその様相を解明していく。【方法】共立女子学園所蔵のビーズワーク254点を資料に、調査品目の分類および集計を行い概観するとともに個々の資料の詳細を調査し全容を解明していく。また、主に19世紀以降のヨーロッパの手芸の制作法に関する文献調査の結果を元に近代のビーズワークについて考察する。【結果】共立女子学園所蔵ビーズワークは昭和63年に教育・研究用資料として購入されたものであるが、どのようなものであるのか不明なままであった。品目は衣食住を中心に生活用品全般に及ぶ。室内装飾品が108点と全体の42.5%を占め中でもクッションが37点と最も多かった。続いて服飾品が69点(27.1%)で、バッグが44点を占める。刺繍や編み込みなどの技法で制作年やイニシャル、名前、地名等が表されているものや、印刷物が収納されている資料が27点あり、制作の背景を知る手がかりとなる。書かれた言語はドイツ語で、また制作年で最も古いものは1817年、新しいもので1878年であった。複数の名前やイニシャルが読み取れることから、一人のために作られたものではないと考えられる。いずれにせよ、実際に使用していた形跡が随所に見られることから、家中の様々なものをビーズで飾って楽しんでいた様子がうかがい知れる。
  • 今村 綾子, 石井 美奈子
    セッションID: 1Ca-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 明治時代に始まった「洋髪」は、近代的で新しい髪型とされ、女性達の間で流行した。また、大正から昭和にかけて流行した着物「銘仙」は、従来の着物とは違い「おしゃれ着物」として女性達の間で流行した。当時の写真などを見ると、銘仙姿には洋髪のスタイルが多く見られ、今までの着物姿のイメージとは違ったものを感じさせる。そこで、銘仙が他の着物と違うことや洋髪とのイメージの類似点に着目し考察することを目的とした。
    方法 洋髪に関する文献、雑誌等を調査し、銘仙と洋髪の関係性を考察する。また、銘仙流行当時の雑誌や資料を中心に銘仙流行の時代背景について調査考察する。
    結果 文献調査より、銘仙と洋髪は共に、流行した時代や時代背景がほぼ同じであることが分かった。洋髪は、従来のヘアースタイルと比べると経済的で利便性に富み、人々にとても新しい感覚を与えた。それはおしやれとされ、女性達が個性を主張し、大きく変化するきっかけとなった。これにより、洋髪は女性達の在り方を変え、女性達が大きく活躍する一つの材料となったのではないだろうか。また、銘仙の柄も他の着物と比較すると西洋的であり、柄が単純化されとても近代的である。そして、銘仙や洋髪はおしゃれの対象であり、人々は新しさを求め、銘仙や洋髪によりその人自身の個性を大きく表現しているといえる。その背最には近代化を意味する「モダン」という言葉がある。このことから、銘仙と洋髪を求める人々は、近代的で新しい文化を積極的に取り入れ、おしゃれを通して自分白身の個性を主張していこうとするという点で共通するところがあり、銘仙と洋髪は密接に関係しているのだといえる。 
  • 流行と洋装の受容をめぐって
    永田 麻里子
    セッションID: 1Ca-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】実業之日本社から明治39年に創刊され28年の歴史をもつ『婦人世界』と、明治41年に創刊され48年の歴史をもつ『少女の友』は、かねてから読者の一貫化を目的に編集された姉妹誌として位置付けられている。『婦人世界』は家庭婦人向けの実用記事と大衆読物でその後の婦人雑誌の原型を築き、『少女の友』は“抒情”と呼ばれる小説や絵画によって女学生を中心とする1つの少女文化を築いた。本研究では、両誌における服飾表現について比較・検討する。
    【方法】発行期間を共にする昭和初期までを中心に、表紙絵に描かれた人物の服飾における流行と洋装の受容形態を考察する。
    【結果】大正末期は、両誌において和装から洋装への転換期であった。『少女の友』は明治期より運動に関わる場面や用具と共にわずかながら洋装を描いており、『婦人世界』に比べて積極的に洋装を取り入れる傾向が見られた。又、頭頂に幅広リボンや着物にエプロン、ワンピースや耳隠し、断髪に帽子など、各誌が読者層に見合った流行を取り入れていく過程より、社会の一員としての意識が見てとれた。時に『婦人世界』は割烹着姿や花嫁姿を描いており、家庭内を活動の場とした上で外部の情報を取捨選択している様子が推察された。
  • 佐々井 啓
    セッションID: 1Ca-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 19世紀後半のイギリスでは女性の権利の主張を目指した運動がしだいに多くなっていった。そのなかでも、New Womanは小説や戯曲にも登場し、さまざまな反響を呼んだのである。そこで、このような女性を主人公としている演劇を取り上げ、他の作品と比較しながら、当時のNew Womanの服飾表現を検討する。 
    方法 1890年代の作品の内容を分析するとともにThe Sketch, The Queenなどの当時の雑誌の批評や衣裳についての記述を検討した。また、他の作品との比較を行い、New Womanの服飾と当時のファッションとの関係を明らかにした。
    結果 1894年に上演された“The New Woman”の衣裳は、ドレスメーカーであるMrs. Nettleshipが手がけた。とりわけ右肩に大きな鳥の装飾のあるドレスは、「非情で軽率なファッションの模倣者」と評されている。このような鳥の装飾や鳥の羽根を使ったドレスは他の雑誌にも紹介されており、さらに羽根扇とともに鳥の羽根を飾った帽子もみられる。また、オスカー・ワイルドの喜劇「理想の夫」に登場するチェヴリー夫人のドレスにもツバメの装飾があり、「効果的ではあるが野蛮で不快である」と述べられている。このように目立つ衣裳のデザインは劇中の人物の役割や性格をあらわす上で効果的である。以上の点から舞台衣裳が流行の発信としての役割を持つとともに、登場人物の役柄の主要な伝達手段であったことがわかる。その結果、積極的で新しい意識を持つNew Womanは、舞台衣裳によってその性格をいっそう強調するものとなったのである。
  • 小見山 二郎, 宮崎 由伊, 中野 麻子
    セッションID: 1Ca-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>昨年、表題の現象について社会心理学的に考察した。ジーンズのボロ化現象は続いているが、今回、各社会的要因、個人化、アメリカ化、環境意識などの重要度とこれらと個人の意識の連関について、少し深く再考した。また前回はこれらを取り上げた理由を直感としか説明しなかったが、少し詳しい説明が必要と考えた。実践女子大学生活科学部紀要43号(2006)に投稿するに際し、これらのことを再考したのでお話したい。<方法>その後の文献調査により、この取り扱いは、デカン「流行の社会心理学」岩波書店(1981)の亜流といってもよいことがわかった。戦後の日本社会の変化はいろいろの視点で捕えられるが、本説の捕え方は50年間に書物と経験から得た知識の集大成としか言いようがない。当日要点を説明する。またボロ化が前近代への突き抜けであるとの考察では、柳田國男の視点を参考にした。現代の個人の意識については、聞き取った言葉から抽象した。<結果>衣服文化論を離れて、戦後の日本社会の変化が、人々の心にどういう変化をもたらしたかを概括した。ジーンズのボロ化に対する影響における重要度の順に、個人化、アメリカ化、環境意識とした。ボロ化における個別性、下から上への流行の波及、自然化と前近代化、がこれらの3つのそれぞれの影響であると考えた。個人の意識と社会的意識を納得できるように結ぶことも重要で、この点は当日説明する。さらにボロ化の3分類、すだれ状の破れ、脱色、つぎはぎ、の今後についても議論する。
  • 橋本 令子, 内藤 章江
    セッションID: 1Ca-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】人類の発生以来、我々の祖先は執拗なまでに装身行為を繰り返してきており、アクセサリーは人間にとって最も古くから身近な道具といえる。また現在のように自由な着こなしによって服装をコーディネートする時代の中で、アクセサリーは必須アイテムである。そこで、本研究は一般的に使用頻度の高いであろうアクセサリーを対象とし、現在の若者のアクセサリーの対する意識とその実態を調べ、アクセサリーと服装との組み合わせについて評価し、両者の関係を検討した。【方法】_丸1_最初に若者のアクセサリーに対する意識を調べるため所持数、身に付ける場面や理由、購入理由、モチーフについて本学学生100名を対象に集合調査法にて回答させ、関心度や古代の考え方との相違について探った。_丸2_若者の日常生活におけるトータルな服装ファッションイメージを分類して、その服装傾向を明らかにするため、100名の若者の服装を写真撮影した。評価は25名の被験者に10個のファッション用語を示し4段階評定させた。主成分分析、クラスター分析を行いファッションイメージの各代表を選出した。_丸3_選出した若者が身につけていたアクセサリーと服装を各々に分け、他のアクセサリーや服装と組み替え、ファッションイメージを学生50名に4段階評価させた。そして数量化理論_I_類を用いて解析し、アクセサリーと服装ファッションの関係を検討した。【結果】アクセサリーの購入意識はデザインを考慮するものが100%近くをしめ、ついで似合うか否か、価格と続いた。現在は日常的に身に付けている事が多く、アクセサリーは無くてはならない存在であり、現在は実用的機能を重視するのではなく、遊び心から来る古代のホモル_-_デンス説の意識が強い。若者のファッションイメージ主成分分析の結果、女性的、個性的、魅力的の3主成分が抽出された。クラスター分析の結果、5クラスターに分類された。各々組合わせた試料で3主成分に似合うを加えて評価を行った人類の発生以来、我々の祖先は執拗なまでに装身行為を繰り返してきており、
  • 辻 幸恵
    セッションID: 1Ca-7
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】現在、キャラクターはその商品のイメージアップや売れ行きを良くするために衣類、食品類などの多く商品に活用されている。本報告の目的は、幼稚園児に選択されやすいキャラクター商品の特徴を明らかにすることである。【方法】調査地域は兵庫県と大阪府である。調査対象は幼稚園に通う5歳児クラスの158人である。なお、これは複数の幼稚園に通う園児の合計人数である。彼らを観察したことにより得た結果をデータとした。相関分析を用いて園児(男女それぞれ)と菓子(新製品、定番)、キャラクター(新キャラクターと定番)と菓子などの項目ごとに分析をした。【結果】女子の園児と女の子の好むキャラクター間(0.86)、男子の好む菓子とキャラクター間(0.78)には強い相関が見られた。一方、定番である菓子とキャラクター間(0.11)と新製品の菓子とキャラクター間(0.14)には相関が見られなかった。【考察】女子は菓子の種類よりも、キャラクターを選択基準としては優先させる傾向にある。一方、男子は菓子そのものの種類が重視されている。ここから女子には見た目の美も商品には必要であることが考えられる。また、「かわいい」にはサイズ、色に加えて流行の要因があると考えられる。
  • 伊藤 久美子
    セッションID: 1Ca-8
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 2色配色の感情効果について研究を行っているが、ファッション雑誌から女子大学生が12種の色彩感情に当てはまる2色配色の服装を自由に選んだものについて、その配色から色彩感情の傾向を検討した。更に昨春調査実施の結果(日本色彩学会第36回全国大会発表、2005)と昨秋実施の結果とを比較し、季節による差の有無も検討する。
    方法 2005年11月号の国内若い女性向けファッション雑誌13誌中の、上衣と下衣が2色配色の女性服で、次に示す12の色彩感情を表している配色を、40名の女子学生にイメージごとに1つずつ選ばせた。12個のイメージとは、前回同様に、派手な、地味な、スポーティ、エレガント、緊張した、ゆるんだ、ゴージャス、シンプル、好きな、嫌いな、調和、不調和である。それらを、「トレーニングカラー120」(日本色彩株式会社製)の120色と照合して、12個の色彩感情ごとに、色相別トーン別に集計した。
    結果 12個の形容詞ごとに、2色配色を色相の観点から、同一色相配色、異色相配色、無彩色と有彩色の配色、無彩色同士の配色、以上の4つに分けて結果(割合)をみた。全体の平均百分率では、無彩色と有彩色の配色が春49%、秋48%と最も多く、異色相配色(春39%、秋36%、)、無彩色同士の配色(春5%、秋10%)、同一色相配色(春7%、秋6%)の順であったが、無彩色と有彩色の配色と無彩色同士の配色を合わせると春53%、秋58%を占め、これは服飾の配色における無彩色の多用を示した。この点では春秋の差が認められなかった。
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