我々は前回の研究
6)でカドミウムや熱に影響されて凝集塊を形成した非線維的な変性フィブリンをフラクタル幾何学的に解析し、血液の凝固機能に悪影響を及ぼす可能性を示した。 一般に写真をイメージ・スキャンすると、x 軸に対するy 軸の濃淡の変化はデジタル量(グレースケール、振動量)として表すことができる。本研究はフィブリンの重合によって形成されたネットワーク構造の濃淡変化に周期性があることをFFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)によって明らかにし、カドミウムによる変性フィブリンのそれと比較検討することを目的にした。1)セルラ・オートマトン(cellular automaton)によって得られた各種の画像をモデルとして解析した結果、パワースペクトルに見いだされた空間周波数は1/f
o、1/f
1/2、1/f の3つの“ゆらぎ”成分からなり、サイクリック空間(cyclic space)は1/f の他に1/f
1/7、1/f
1/5が検出された。2)カルシウム、マグネシウム、亜鉛によるフィブリン・ネットワークはサイクリック空間と同じゆらぎ成分から成り立っていた。しかしながら、3)カドミウムに暴露されたフィブリン・ネットワークには1/f
1/7成分に密度の低いもう一つのパワースペクトルが見いだされた。すなわち低周波成分を特徴とし、非線維的な異常フィブリン塊が析出した結果であることが示唆された。
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