形態・機能
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10 巻, 2 号
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Erratum
総説
  • 田尻 翔太, 福井 達也, 吉永 一也
    2012 年 10 巻 2 号 p. 60-64
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    精子は精巣上体を通過する過程で運動能を獲得し、受精に必要な能力を備えていく。1本の長く屈曲した精巣上体管は強力な吸収機能と分泌機能をもち、近位部(頭部)・中間部(体部)・遠位部(尾部)に区分される。この管腔内環境は各部で厳密に調節されており、精子の成熟・濃度・輸送・貯蔵の機能が一定に保たれることで、雄の妊性に重要な役割を演じている。アクアポリンは主に細胞表面の細胞膜に内在するタンパク質で、水やグリセロール、尿素、イオンなどを透過するチャネルとして機能する。生体内のアクアポリンは腎臓・脳・眼・気道など多くの器官・組織で発現している。本総説では、精巣上体で発現するアクアポリンの分布と機能について要約する。
原著論文
  • 中島 由加里, 向井 加奈恵, 今 有香, 井内 映美, 北山 幸枝, 大桑 麻由美, 中谷 壽男
    2012 年 10 巻 2 号 p. 65-72
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    殿部筋肉内注射部位として推奨されているクラークの点は上殿神経損傷の危険性が低いと言われているが、注射部位決定の際に用いる上後腸骨棘が触知しづらいという問題がある。そこで、本研究では上後腸骨棘を用いない注射部位決定法を独自に考案した。上前腸骨棘を通る水平線と大転子中央上縁を通る垂線との交点を新殿筋注点として、21~25歳の女性において、この点が注射部位として適当かを、各点間の距離の計測と、上殿動脈の血流音聴取から、これに伴行する上殿神経の位置を推測し、検討した。その結果、新殿筋注点はクラークの点より常に約1.2 cm下方に位置し、17/26人 (65.3%) で新殿筋注点はクラークの点より後方に位置した。新殿筋注点、クラークの点で、上殿動脈の血流音が聴取されたのは、それぞれ2/17人 (11.8%) と1/17人 (5.9%) であった。残りの14人 (82.4%) は、両点の上方、下方で血流音が聴取されたので、上殿動脈の上枝と下枝は、新殿筋注点とクラークの点を挟むように、フォーク状に走行していると考えられる。これらのことから、新殿筋注点は殿部筋肉内注射部位として適当であると考えられるが、クラークの点の高さのほうが神経から遠いので、新殿筋注点の約1 cm上方では、より安全に殿部筋肉内注射を実施できると考えられる。さらに血管損傷を考慮する場合は、血流検知器で上殿動脈の位置を確認することが重要であると思われる。
  • 向井 加奈恵, 浅野 きみ, 中島 由加里, 高田 佳奈, 原 由里子, 浦井 珠恵, 松尾 淳子, 中谷 壽男
    2012 年 10 巻 2 号 p. 73-79
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    (目的)先の研究において、キトサンオリゴ糖を腹膜腔に長期間投与すると腹膜炎が惹起され、横隔膜に細胞塊が形成されることを明らかにした。今回は、キトサンオリゴ糖よりも低分子の単糖であるブドウ糖、二糖であるショ糖を腹膜腔に投与し、腹水が貯留するか、および横隔膜に細胞塊が形成されるかを観察した。(方法)C57BL/6雄マウスの腹膜腔内に1%のキトサンオリゴ糖・ブドウ糖・ショ糖それぞれ0.2 mlを1日に1回、14日間投与した。14日間後に安楽死させ、腹膜腔を観察し、かつ、横隔膜の細胞塊を採取して電子顕微鏡で観察した。(結果と考察)先の研究と同様にキトサンオリゴ糖投与のマウスには大量の乳白色の腹水が観察され、白色の細胞塊が主に横隔膜の腹膜面に観察された。一方、ブドウ糖、ショ糖を投与したマウスに、大量の乳白色の腹水や白色の細胞塊は観察されなかった。白色の細胞塊は,横隔膜の腹膜下においてリンパ管が発達している部位に見られた。細胞塊はキトサンオリゴ糖を貪食した多数の炎症細胞からなり、細胞間にコラーゲンおよび血管も見られた。この細胞塊は乳斑に類似していた。中皮細胞間からコラーゲンが露出し、リンパ管小孔と思われる部位を通過する細胞も観察された。キトサンオリゴ糖を貪食する大食細胞が見られ、このような細胞は拡張したリンパ管内にも観察された。以上の結果から、キトサンオリゴ糖は乳斑の細胞に貪食され、さらにリンパ管小孔からリンパ管に取り込まれてリンパ管内においても細胞に貪食され、炎症反応が誘起されたと考えられた。
原著
  • 後藤 朱里, 福永 信太郎
    2012 年 10 巻 2 号 p. 80-85
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    血液透析療法では患者の血液は体外循環して透析回路内を流れるので体内とは異なる条件にさらされる。その結果血液は透析回路内で凝血しやすくなる。血液回路内での血液凝固を防止し透析治療を円滑に遂行するために、抗凝固薬の使用が透析治療の際に不可欠になっている。しかしながら、多量の抗凝固薬を用いる治療では出血傾向になりがちである。したがって、凝血を防止する血液回路材料の開発が待たれる。透析回路内の血液凝固反応について解明するために、血液が生体外の材料に接した場合に引き起こされる血液凝固活性化とその効果を評価する実験を実施した。実験に使用した試験管の材料は、ガラス類(ガラス、シリコーン化ガラス)と高分子類(ポリテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコオキシエチレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリスチレン)である。その結果、全血凝固時間はガラス類ものに比べて高分子類でのものが有意に(p<0.05)延長していた。また、トロンビン様活性に関しては、ガラス類のほうが高分子類よりも有意に(p<0.05)高い結果となった。試験管内壁表面におけるトロンビン類似物質の形成が凝血時間の短縮に寄与していると考えられた。トロンビン類似物質はヘパリン結合基によって試験管内面に吸着するが、その酵素活性基は試験管内に突出しておそらくまだ残存しているためであろう。したがってヘパリンはガラス壁に結合したトロンビン様活性を阻止することができないと推察される。本実験の結果から、高分子材料の中でも特にポリプロピレンとポリスチレンはガラス材料に比較してより血液適合性に優れていると結論できることを示唆する。
原著論文
  • 三國 裕子, 一戸 とも子, 千葉 正司
    2012 年 10 巻 2 号 p. 86-93
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    安全な静脈穿刺部位を選定するために、解剖実習体66体132側における皮静脈と動脈などの位置的関係および破格動脈の走行について調査した。浅上腕動脈は27例(21%)に出現し、これらはAdachi(1928)のIII型、V型、VIII型、XVI型に分類された。浅前腕動脈は2例(2%)に出現し、尺側浅前腕動脈が1例(1%)、正中浅前腕動脈が1例(1%)であった。浅上腕動脈は尺側皮静脈と肘正中皮静脈との合流部の深層で、肘正中皮静脈の尺側の深層を走行した。尺側浅前腕動脈は、肘正中皮静脈の尺側で前腕正中皮静脈の深層を、正中浅前腕動脈は尺側正中皮静脈と前腕正中皮静脈の深層を走行した。浅上腕動脈および浅前腕動脈の走行と出現頻度は先行研究とほぼ一致していた。静脈穿刺の際には、肘正中皮静脈の尺側部の深層において、上腕動脈と浅上腕動脈の走行に注意する必要がある。浅前腕動脈が出現した際には、肘正中皮静脈の尺側部および前腕正中皮静脈の深層における動脈走行にも注意を払う必要がある。安全な静脈穿刺部位は、肘正中皮静脈の中央より肘正中皮静脈と橈側皮静脈の分岐部の間と考えられる。静脈穿刺の際には、動脈の拍動を視診・触診により十分確認することが重要である。
原著
  • 向井 加奈恵, 長澤 真理, 中村 恵理, 西田 なつき, 堀 彩香, 八木 由佳梨, 山岸 亜矢, 渡邊 愛, 浦井 珠恵, 高田 佳奈, ...
    2012 年 10 巻 2 号 p. 94-100
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    この研究は、卵巣摘出した雌マウスに皮膚創傷を作製し、経口投与したイソフラボンの一種であるダイゼインが、創傷治癒にどのような影響を与えるかを観察したものである。8週齢の雌マウスを卵巣摘出群と卵巣摘出し創作製した後にダイゼインを与えた2群に分けた。両群共、卵巣摘出後、ダイゼインを含まない精製飼料で2週間飼育後に、左右の背部に直径4 mmの皮膚全層欠損創を作製した。創作製後、ダイゼインを含まない飼料とダイゼインを含む飼料で2週間飼育した。ダイゼインは、飼料1 gに0.01 mg含むように作製した。両群の創面積は、2週間の間の観察期間全てにおいて、有意差は見られなかった。しかし、炎症期である創作製後4と5日では、ダイゼイン食で飼育した群が無ダイゼイン食で飼育した群が、より創面積が小さい傾向がみられた。創作製後の3日での、再上皮化の割合は、ダイゼイン群で40.7 ± 17.6%、無ダイゼイン群で21.0 ± 16.8%となり、ダイゼイン群はより上皮化が進んでいる傾向が見られた。これらの結果は、エストロゲン欠乏状態で、ダイゼインの経口投与が、創傷治癒において炎症を抑制し、上皮化を促進することを示唆している。
原著論文
  • 高橋 敬, 羽田野 美里, HC Kwaan
    2012 年 10 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    ウロキナーゼ・タイプ・プラスミノーゲンアクチベータ-(uPA)のクリングル・ドメインはヘパリンの硫酸基と特異的に結合するという知見に基づいてヘパリンの新しい細胞生理機能を探索した。すなわち高転移性がん細胞(ATCC, CCL-138, Detroit 562)を用い、ヘパリンを吸着させた培養プレートに対して細胞の接着とコロニーの形成能を検討した結果、1)ヘパリンにより細胞接着数は増加し、uPAを除去すると減少した。uPAを添加すると接着性が回復した。2)ヘパリン処理細胞への蛍光標識ヘパリンの結合は競合が起こり抑制された。3)ヘパリンは、コロニー数の増加と増殖(コロニー当りの細胞数)を抑制した。細胞表面の受容体結合uPA)は細胞外プロテアーゼとして機能(オートクリン)し、インテグリンとともに細胞接着斑に局在し細胞移動に関与することが知られている。すなわち、ヘパリンはがん細胞の増殖や浸潤・転移(移動)のブレーキとして機能することが示唆された。
  • 中島 由加里, 向井 加奈恵, 今 有香, 北山 幸枝, 大桑 麻由美, 尾崎 紀之, 中谷 壽男
    2012 年 10 巻 2 号 p. 108-114
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    殿部筋肉内注射部位として推奨されているクラークの点は、上殿神経損傷の危険性が低いと言われているが、指標点となる上後腸骨棘が触知し難いという問題がある。そこで本研究では、上前腸骨棘を通る水平線と大転子中央上縁を通る垂線との交点を新殿筋注点と定めた。医学生の解剖学実習で解剖された29体 (53~94歳) の右側29側において、クラークの点と新殿筋注点の位置を比較した。29体のうち19体の解剖体の右側19側において、クラークの点と新殿筋注点に注射針を刺入し、刺入針と神経・血管との位置関係の観察を行った。その結果、新殿筋注点は、常にクラークの点よりも男性で平均1.3 cm、女性で平均1.1 cm下方に位置した。両点において上殿神経上枝への針刺入は見られなかった。上殿神経下枝への針刺入は、クラークの点で2/19側、新殿筋注点で4/19側であった。一方、上殿神経上枝に伴行する上殿動脈深枝の上枝への刺入は、クラークの点で1/19側、新殿筋注点で0/19側、上殿神経下枝に伴行する上殿動静脈深枝の下枝への刺入は、クラークの点で5/19側、新殿筋注点で2/19側であった。これらの結果から、新殿筋注点はクラークの点と同様に筋注部位として安全であることが明らかとなった。
短報
  • ―肩こり視認化の可能性について―
    吉永 砂織, 藏元 恵里子, 木下 博恵, 根本 清次
    2012 年 10 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    健康な成人女性4名を対象に、運動負荷の前・後および回復期に僧帽筋の筋電図測定と頚肩部の自覚症状の聞き取りを行った。測定した筋電図は高速フーリエ変換による周波数解析を行い、パワースペクトルを求め、64階調のスケールカラーで表す筋電位トポグラムを構成した。この結果から、“肩こり”という症状を視認的に説明するための一助として、トポグラフィにより運動負荷による影響について検討した。  肩こりを自覚する2名には、運動負荷後に特徴的な電位の増大が認められ、周波数1~3 Hzおよび10~15 Hz帯域のトポグラム上で鮮明に確認された。これらの筋活動は肩こりのない2名には観察されなかった。以上の結果から、低周波帯域で電位が増大した筋活動は、肩こりに特有な筋活動現象であることが示唆された。
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