平成15年度藤田保健衛生大学医療系学生の解剖学実習中に遭遇した20遺体中4例の腎臓に、過剰血管 (腎副動脈および腎副静脈と呼ぶ) および尿管の変異をみとめた。
腎副動脈は3例に出現し、その分布はGraves (1971) が報告した腎臓内の5分節 (5 segments) の動脈分布の原則を踏襲したもので、腎門外で動脈枝が分節状に一部配列し、腎実質内へ進入したものと考えられる。腎副静脈は右側のみに2例出現し、左側には見られなかった。左腎静脈が腹大動脈の背側を通り、左第3腰静脈ならびに第4腰静脈に合流らする例が1例みられた。それはMcClure and Butller (1925) がヒト胎児で観察した体節状の上主静脈 (supracardinal vein: 胸部では奇静脈、腰部では腰静脈になる) に下主静脈 (腎静脈) が合流した状態で残ったものと考えられる。
また、腎盤が上・下の2個に分割し、尿管が上・下の2本存在する例が動・静脈の変異と同時に1例観察された。上位腎盤から出る尿管は中腎管の遺残と考えられ、下位尿管背側を通り膀胱の下位へ開口した。下位腎盤からの尿管は本来のもので、上位尿管の腹側を下行して膀胱の上位尿管の開口より上位へ開口した。腎盤が2個に分割した際には血管分布も1分節増加するように見られた。
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