マテリアルライフに関する多くの議論が, 明確なマテリアルライフの概念や定義が検討されないままに, 材料や生物について行われている.その理由の一つに, マテリアルライフがきわめて複雑な内容を有しており, 材料そのものの寿命, 加工方法による差異, そして成形品の使用される環境などによるからである.たとえば, 新聞紙の寿命はそれに用いられる紙の寿命にも, 新聞に書かれた情報の古さにもよらず, 単に新聞を購入した人が捨てればそれで終わりになる.また, 有機材料と無機材料では寿命を支配する主たる原因が異なり, 有機材料では分子が化学的損傷で崩壊するのに対して, 無機材料では力学的な崩壊が寿命を決定することが多い.マテリアルライフにはそのほかにも心理的社会的要因も無視できず, 流行や製品を持っている人の好みなどの変化によって決まる場合もある.この様な複雑さがマテリアルライフの定義を困難にしているが, 本論文でそれを明らかにすることを試みたものである.
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