日本農村医学会学術総会抄録集
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第58回日本農村医学会学術総会
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  • 浜田 美幸, 田村 佳代子, 近野 洋子, 永井 洋子, 佐々木 由美子, 谷村 さゆ子
    セッションID: 25-01
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉看護師長が全病棟をラウンドし,在庫管理指導を
    することで,看護職員一人一人にコスト意識を持たせ支出
    減に繋げる。
    〈方法〉
    期間:平成20年8月1日~平成21年3月31日
    対象:看護師長を除く病棟勤務者92名
    方法:医療材料の担当者と看護師長が病棟ラウンドし,
    課題を話し合い,目標を立案した。その後,複数の看護師
    長が,不定期に病棟ラウンドし,具体的な在庫管理指導と
    成果を承認した。また,保険請求できない医療材料で,使
    用頻度の高い,注射針等,4種類の使用時のコスト意識と
    請求数,在庫削減状況を問う半構成インタビューを施行。
    医療材料の保管場所と収納面積,請求に関する時間,看護
    部及び病棟の会議録から,コストに関する協議事項を抽出
    し,看護師長の病棟ラウンド実施前後(以下前・後とい
    う)で比較した。
    〈結果〉コスト意識は,4種類すべてで向上し,請求数は
    すべて減少,金額にして1ヶ月間で114,723円の減額で
    あった。インタビューの内容は,前は「日々変化するので
    請求困難である」等できない理由が多く,後は意欲的な言
    葉に変化した。全病棟の材料の保管場所の面積は,32.8か
    ら25.2m2に,距離は保管場所の移動により41m 短縮し
    た。請求関連の時間は65分間が1週間で短縮された。会議
    のコスト関連の協議件数は,4件から13件に増加した。
    〈考察〉今回,担当者が,全部署を見学したことで,自分
    の部署の課題に気づき,自ら目標を立案し,達成のため進
    んで会議に提案するようになり,協議の機会が増え,ス
    タッフ一人一人のコスト意識も高まったと考える。さら
    に,師長がラウンドしながら具体的な指導と評価をし,
    ミーティングで意思統一しながら,師長全員が関わって
    いったことは,スタッフの励みになり継続の一因になった
    と考える。これらは,計画・実行・評価・改善,再実行の
    PDC サイクルに一致しコスト削減の効果に繋がったと考
    える。以上のことから,実務者と病棟管理者が共通認識の
    下,コスト削減に取り込んだことが,スタッフのコスト意
    識を向上させ,在庫の削減になったと考える。
    〈結論〉師長のラウンドによる指導は,コスト意識の向上
    につながり,医療材料の在庫削減につながる。
  • 看護を「可視化」する
    中西 京子, 吉田 公代
    セッションID: 25-02
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    「7対1看護」「クリニカルパス」「DPC」等,昨今の 医療改革は病院経営における看護師の役割と責任を格段に 高めるものである。諸改革の根底に流れる「患者中心の医 療」「チーム医療」という考え方は,患者に一番近い存在 である看護師に,医師,コメディカル等医療者間の調整役 を引き受け,患者との円滑なコミュニケーション,良好な 信頼関係の構築を期待しており,病院経営に対する看護師 の主体的,積極的参加が欠かせない。 しかし,その一方で看護師の社会的評価は未だ十分とは いえない。そのことは高い離職率,潜在看護師問題,男性 看護師の少なさに端的に示されている。看護職は子供の 「将来の夢」で常に上位だが,特に茨城県では看護師を希 望する中高生の数が減少傾向にある。看護の価値が「見え てない」からなのではないだろうか。 したがって,看護支援室の活動として従来の人材確保, 離職防止と並んで,看護を可視化し,地域社会に対しその 存在をアピールすることが第三の柱として位置づけられて いる。JA 茨城県厚生連では看護師自らが進路選択を控え た中高生を対象にガイダンスを行い,看護師の魅力や現場 の実際を語り,優秀な人材を早期に発掘・育成する(地産 地消型人材確保戦略),食育と健康をテーマに地域住民と のふれあいの機会を作り(JA 農協との医食コラボレー ション),看護師が専門性を生かし脳や肺等を鍛えるオリ ジナルエクササイズ(「肺(袋)を鍛え,健康“息イキ” 袋操(たいそう)※注)」)を考案するなど,看護師の素晴ら しさと可能性を追求する全方位的活動が展開されている。 看護支援室による対外的活動は現場看護師の誇りや士気 を高められる効果が期待されるだけでなく,リクルート効 果を最大限に発揮することで,病院経営を強化し,看護 師,医師,そして患者に選ばれる病院づくり(日本版マグ ネットホスピタル)のための起爆剤ともなりうるのではな いだろうか。 ※注)「袋操(たいそう)」とは「COPD(慢性閉塞性肺疾 患)」の啓発を目的とした,呼吸療法士でもある看 護師が考案した,「レジ袋」を使った,子供から大 人まで誰もが楽しめる,お手軽・簡単エクササイズ である。
    http : //www.ibaraki-np.co.jp/47news/20090623_05.htm
  • 看護師数と看護時間数の分析より
    原田 万里子, 三輪 幸世
    セッションID: 25-03
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    〈はじめに〉当院は一般病床182床の急性期病院である。 病床稼働率98.4%,在院日数15.4日で,平成19年度より 7:1看護配置とし2年が経過した。今回,7:1入院基 本料取得に向けての経緯から取得後の現状を明らかにした 結果,今後の取組みを示唆することが出来たので報告す る。
    〈研究目的〉7:1看護配置の実態から看護師数と看護時 間数に注目し,関係を明らかにすることで,今後の課題を 見出すこと。
    〈研究方法〉
    1,人員の試算と人件費の試算
    2,7:1看護配置における入院基本料算定試算
    3,看護師確保への取組みの実態
    4,2年間の1日看護配置数と休日数の関係を分析
    5,2年間の予定看護時間数と実看護時間数の比較と分析
    〈結果〉休日が多い月は1日の実看護配置数が少なくな る。休日の多い月が連続する場合は看護配置数に余裕が必 要である。毎月の予定看護時間数では基準を満たしてい る。予定看護時間数と実看護時間数との差が月平均657時 間で4.3人分にあたる。7:1入院基本料算定による収入 は収入増につながる。7:1看護配置は看護師増員と離職 率の低下につながる。
    〈今後の課題〉
    1,看護配置数と実看護時間数に余裕のある看護師確保が 重要。
    2,急な事態にも対応できるリリーフ看護師の確保と育成 に取り組むことが必要。
    3,急性期の医療現場では,7:1看護配置の継続は不可 欠で,今後とも組織全体で取り組むことが必要。
    〈おわりに〉県内の病院の内,74施設が一般病床届出を行 い,そのうち13施設が7:1看護配置を行っている。当院 を取り巻く環境に於も,7:1看護配置施設が5施設あり 看護師確保はさらに厳しい状況が予測される。今後,余裕 のある看護師数を確保し,職員が安心して働ける環境と安 定した経営のためにも7:1看護配置の継続は重要であ る。
  • 福島 優子, 白井 美智子, 牧野 峰子
    セッションID: 25-04
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    新人看護師は,4月に就職していく過程の中,職場環境 や人間関係に慣れずストレスをもちやすい。我々は,新人 看護師が精神的に安心感をもち職場に適応しながら成長し ていくことができるようサポートしていく必要がある。 そこで,新人看護師の気分・感情が経時的にどのように 変化しているのかをPOMS を用いて調査した。4月,5 月,7月は13名,11月は8名で調査した。 結果は,「緊張・不安」では,4月就職時9名(69.2%), 5月8名(61.5% ), 7 月8 名(61.5% ),11月5 名 (62.5%)であった。4月就職時は約7割の新人看護師が 「緊張・不安」を抱えていた。「抑うつ・落込み」では,4 月就職時8名(61.5%),5月5名(38.5%),7月6名 (46.2%),11月3名(37.5%)であった。「怒り・敵意」 では,4月就職時1名(7.7%)いたが,5月,7月,11 月はいなかった。「活気」では,4月就職時3名(23.1%), 5月4名(30.8%),7月6名(46.2%),11月5名(62.5%) であった。「疲労」では,4月就職時7名(53.8%),5月 3名(23.1%),7月3名(23.1%),11月5名(62.5%) であった。「混乱」では,4月就職時7名(53.8%),5月 5名(38.5%),7月9名(69.2%),11月5名(62.5%) であった。 今回のPOMS の調査では,経時的に気分・感情がどの ように変化しているかを確認できた。今後新人看護師の思 いや意見を調査し心身面の支援のあり方,職場環境に適応 するための援助の方向性を考え指導・教育に活かしたい。 新人指導は,コーチやプリセプターだけでなく全スタッフ が関わっていくことが重要であり今後の課題でもある。
  • 児玉 園子, 金 ひとみ, 山本 亜矢子, 松橋 美結希, 川村 和賀子, 加賀美 忍, 佐藤 やよい
    セッションID: 25-05
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉医療現場は,非常にストレスの高い環境にあり, 新人は適応に苦労している。当院では,平成18年度・19年 度ともに1名の新規採用看護職員(以下,新人とする)が 離職している。これまで,基本的看護技術習得の為に,入 職前技術研修や毎月の集合研修を企画,実施してきた。平 成20年度は,更に職場適応を支援することを目的に,新人 の年間教育計画を見直した。その結果,新人をサポートす るための研修のあり方の示唆を得たので報告する。
    〈対象〉平成20年度新規採用看護職員22名。
    〈方法〉2・4ヶ月目にグループワーク形式の振り返り研 修を導入。2・4・6ヶ月目にアンケート調査を行った。 振り返り研修やアンケートで得られた新人の情報を,プリ セプターや所属部署,教育委員へ提供した。
    〈結果・考察〉振り返り研修やアンケート調査により,新 人の悩みや不安,職場適応状況などを知ることができた。 入職後6ヶ月間の新人は,様々な不安や悩みを抱いてお り,この時期の十分なサポートが必要であることが分かっ た。振り返り研修の導入は,同期の仲間と気持ちを表出し 合い不安を軽減する場になった。研修やアンケート調査で 得られた情報を,プリセプターや所属部署,教育委員へ提 供することで,看護部全体で新人を把握することができ た。新人の職場適応状況や望む支援を速やかに現場に フィードバックすることで,各サポート体制は強化され, 新人の満足度は高まった。結果,入職後12ヶ月経過した時 点で離職者はなく,職場適応の支援に効果があった。
    〈結論〉振り返り研修の導入と,職場適応状況や望む支援 を現場にフィードバックすることは,新人の職場適応の支 援に有効である。
  • 林 勝知, 鷹津 久登, 田中 孜
    セッションID: 25-06
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    当院における初期臨床研修5年間の検証を行った。
    1.当院における初期臨床研修のキャッチフレーズ:平成 16~17年度は「経験しよう救命救急,目指そうgeneralist からspecialist まで」,平成18~20年度は「多くの common disease と救命救急の症例の症例が経験でき, 初期診療を実践する機会が多い」であった。初期臨床研 修医は,平成18~20年度のキャッチフレーズのように良 好であったと評価していた。
    2.出身大学:岐阜大学17名,金沢大学2名,杏林大学2 名,その他3名であり,岐阜県関市に所在する当院で は,岐阜大学が71%と多かった。
    3.当院を知る機会:a.岐阜大学病院の関連病院として の実習,b.岐阜大学医学部出身者の先輩からの情報, c.他の大学医学部在学中に当院に見学,d.当院の研修 医が医学生の先輩であり,そこからの情報。これらのこ とにより,当院の情報がある程度,医学生に伝わったも のと推測された。
    4.当院の研修の紹介の工夫:a.初期臨床.研修医等か らの口コミ紹介,b.病院のホームページ(HP)は, 常にup-to-date にするよう委員会で指示,c.臨床研修 のキャッチフレーズの見直し,d.岐阜大学病院におけ る臨床研修指定病院紹介イベント等への参加,e.研修 センターの新設等の研修医室のグレードアップ,f.初 期臨床,研修医を卒後臨床研修委員会の委員とし,オー プンに研修環境の改善を行う。これらの工夫により,当 院への応募は,16年度を除き,平均約11名であった。 マッチングは,16年度を除き,平均約86%(定員7名中 6名)であり,良好であったと思われた。
    5.当院初期臨床研修終了後の進路:2名以上の診療科は 内科5名,麻酔科4名,精神科2名であり,麻酔科が多 く認められた。当院後期研修は24名中8名(33%)で あった。
  • 長谷川 拓哉
    セッションID: 25-07
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉診療記録は,医療過程における医療専門職の思考 のよりどころであり,患者と医療専門職とのコミュニケー ションの基本媒体,チーム医療の共通媒体,医療行為の公 式証明の基本情報,病院経営の基本情報,学術研究・教育 の基本情報,公共社会の健康安全と危機管理の基本情報で ある(日本医療機能評価機構のChart Review 検討会「医 療記録の記載指針」)。また,保険医療機関としては保険請 求の根拠である。このような価値を持つ診療記録の精度を 向上させることは,診療情報管理士の大きな役割である。 診療情報管理室ではこれまで日々の量的点検と非定期的な 監査は行ってきた。また,診療記録の質向上を目的とした 講演会の開催,研修医・看護師への入職時のオリエンテー ション,入院診療記録の他職種による一元記載,DPC デー タを利用したサマリー作成システムの構築等にも関わって きた。しかし,十分な診療記録というには程遠い状況にあ り,定期的な監査の必要性を感じていた。今年,当院は財 団法人日本医療機能評価機構が行う病院機能評価の更新の 時期を迎えVer.6.0を受審する。この受審を機会に診療記 録監査のシステムを確立できないかと考え,Ver.6.0「第 5領域6診療・看護の記録」の評点4~5の取得を目標に 活動を開始した。その経過について報告する。
    〈方法〉診療情報管理室と病歴管理委員会が共同で監査を 行う。量的点検(形式監査)は診療情報管理室,質的点検 (内容監査)は病歴管理委員会の医師・看護師・薬剤師・ 診療情報管理士が行う。監査項目・評価方法の設定,監査 の実施,結果の集計と分析,診療科別・病棟別など関連部 署へのフィードバックを定期的に行う
  • 本多 暁, 石川 雅也, 島田 敏之, 新井原 泰隆, 浅井 太一郎, 小野 尚輝, 大川 伸一, 楠崎 浩之
    セッションID: 25-08
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉以前当院では,パソコンによる簡易RIS の 構築を行い,集計業務などに発展させその経過を農村医学 会において発表してきた。 様々なデータをデータベースソフト(ファイルメーカー Pro)で構築し一元で管理できるようにし,各撮影室で集 計を行い日報を作成,そのデータをデータベースファイル に取り込み一定期間(毎月・上半期・年度)に月報・年報 を作成していた。
    〈目的〉データを抽出するためのシステム(CT・MRI・ RI 集計システム,一般撮影・透視検査集計システム・血 管造影集計システム等)の使用が,当院のオーダリングシ ステム及び市販の放射線部門情報管理システム(RIS)の 導入により使用が困難になり,新たなデータベースの構築 が必要となった。(実際には,2008年2月より一般撮影の オーダリング開始。)
    〈方法〉オーダリングシステムはNEC 社製SyntheScope, 放射線部門情報管理システム(以下RIS)は東芝社製Ko- RIS が導入された。 また集計業務を行うデータベース構築用にRIS から データを抽出するためにRis Extraction(同,東芝社製) を導入した。 Ris Extraction からのデータ抽出には任意の期間・必要 な項目がCSV ファイルとして書き出されるように必要条 件を作成してある。 このCSV ファイルを元データとしてデータベースを構 築する事にした。 書き出しファイルの内容は,撮影条件を含んだ部位等・ 造影剤等の医薬品・RI 医薬品・撮影手技加算・医療材料 の5ファイルを書き出させて使用することとした。 また血管造影の点数計算については,現在のところ1ヶ 月の一覧データを作成し当院の医事課に依頼し点数を記載 して利用している。
    〈結論〉Ris Extraction の出力に必要な項目の検索条件を 作成することにより,短時間でCSV ファイルの出力が可 能になった。 医事課に協力してもらっているCSV ファイルについて も短時間で作成することが可能になった。
  • 石川 雅也, 本多 暁, 島田 敏之, 新井原 泰隆, 三谷 登史恵, 佐藤 雅浩, 大川 伸一, 楠崎 浩之
    セッションID: 25-09
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉同題名の第1報に発表した内容の5つの CSV ファイルを用いてデータベースソフト(ファイル メーカーPro)を使用し,データベースの構築するために データを統合するファイルの作成をした。
    〈目的〉東芝社製Ris Extraction で書き出されるCSV ファイルには,問題がありそのままでは利用出来なかっ た。 CT・MRI・RI・血管造影・透視検査等は,1オーダー 1検査なので問題なく扱えたが一般撮影に於いてはRis よ り一般撮影装置に撮影のための条件キーを流し込むために 撮影の部位数・撮影の方向数によりデータが重複して書き 出されてしまう。(一部透視検査も有り) 例えば,腰椎6方向+頸椎4方向の場合には10項目の データが重複して書き出されてしまう。 これを1オーダー1検査に統合させるようにし,独自の システムで集計業務が行えるようにファイルを作成した。
    〈方法〉そこで,今回は1つの撮影オーダーに対して常に 1つの数字しかあてがわれないオーダー番号に注目し1 オーダーをファイルメーカーでの1レコードに統合するこ とにより問題を解決することが出来た。 まず,撮影条件を含んだ部位等・造影剤等の医薬品・RI 医薬品・撮影手技加算・医療材料の5つのCSV ファイル と医事課で点数を入れたファイルを所定のフォルダに置き それぞれ対応したファイルメーカーPro のファイルに自 動でデータを読み込ませる。 その後,データを統合するためのファイルに全データを 読み込ませて処理をかけ1ヶ月で約9,000件強のデータを 方向数に統合し,約6,000件強のデータにして,部位数を 統合し約5,000件強のデータに直した。 この作業により1オーダー1レコードとしてデータを使 用出来るようになる。
    〈結論〉市販の放射線部門情報管理システムを書き出した データだけではデータベースを構築するのは,困難であ る。 集計業務に必要な項目を持ったデータベースを構築する には,他のソフトを用いてデータを統合等の作業を行う必 要があると思われた。
  • 島田 敏之, 石川 雅也, 本多 暁, 新井原 泰隆, 大胡田 修, 小屋 謙介, 大川 伸一, 城石 大
    セッションID: 25-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉同題名の第2報に発表したデータ統合ファイ ルの作成により1オーダー1レコードとしてデータを扱え るようになった。 ここから,ファイルメーカーPro のファイルを使用し 市販・放射線部門情報管理システムからのデータベースの 構築を行った。
    〈方法〉今回のデータベース構築は,データ数が多いため データベースファイルを2ファイル,集計用のファイルを 3ファイル作成した。 また,様々な検査項目の名称や保険点数を管理するため のマスターファイルも作成した。 新たに集計したい項目の追加や保険点数改正時には,こ のファイルを修正しファイル内容の転送を用いれば他の集 計ファイルに手を加えることなく集計内容の変更が出来 る。 データ統合ファイルで処理をしたデータをそれぞれの集 計ファイル(一般・造影・Angio 集計,CT-MRI・RI 集 計,簡単項目集計)に自動的に読み込みをさせる。その後, 指定の項目(例えばCT の件数・点数等)をFileMaker Pro5.5のスクリプトを使用し自動集計させ,そのデータ をルックアップを用いてデータベースファイルに自動転送 する。 データベースにデータが転送されたらそれぞれの月報 ファイルに月初めの日を入力するだけでルックアップを用 いて簡単に作成することが出来る。 また,年報はリレーションを用いてそれぞれの月報ファ イルに対しリンクをかけ各月の月初めの日を年報に登録し ておくことによってほとんど手をかけることなく作成する 事が可能になった。
    〈結論〉放射線部門情報管理システムよりRis Extraction を用いてCSV データを出力させ,パソコンを用いてデー タベースを構築することが出来た。 今後は,血管造影のデータも独自ファイルを設けて算定 しより素早いデータの作成が出来るようなシステムを構築 していく必要があると思う。
  • 吉田 誠治, 富永 洋功, 村川 和義, 香西 ひろみ, 東原 友美, 松本 拓朗, 向井 浩一朗
    セッションID: 25-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈背景〉当院では2004年に医療情報システムが導入され た。診療録,オーダリング,各種検査結果に至るまで,ほ ぼ全ての診療情報が電子化されている環境では,システム ダウンの影響は非常に大きい。これに備えるシステム障害 対応マニュアルは稼働当初から存在していたが,わかりづ らく職員間の認知度も低かった。稼働から5年を迎えるに あたり経年劣化によるシステム障害の危険性は日々増大し ており,障害時運用を見直すこととなった。
    〈目的〉全ての職員に理解しやすく,かつ障害時に実際使 える対応マニュアルと準備物を作成し周知する。
    〈構成〉
    1)全システムを電子カルテ(オーダ含む),医事システ ム,部門システム,検査結果システムの4つに分類し た。
    2)1)をそれぞれ,復旧に1時間以上を要する場合と,1 時間以内での復旧が見込める場合で対応を分けた。
    3)1),2)の分類から障害パターンを8つに分類した。
    4)8パターンに救急トリアージに類似したトリアージカ ラーを当て,障害状況,状況周知を容易にした。
    5)障害時には紙カルテ,伝票,フィルム等を利用するこ ととし,トリアージカラーに合わせて対応一覧表を作成 し状況把握と対応準備が容易になるようにした。
    6)障害時用伝票を再整備し,各伝票にアルファベット ネームをつけることで,障害時必要な書類が簡単に認識 できるようにした。また,患者への広報ポスターなど, 障害時に必要な物品も見直し整備した。
    〈障害時マニュアル作成と院内周知〉マニュアル作成時 は,各部署から選抜した委員から問題をあぶり出し,対応 方法を検討し形にする方法でマニュアルを作成した。 完成したマニュアルの周知は,各作成委員自らが所属す る部署へ講義することで,障害時に対応の中心となるス タッフ育成を行った。 障害に対して最も認識が低い医師に対しては,複数回の 講義を行うことで周知の徹底を行った。
    〈結果および考察〉外来部門でリハーサルを行ったとこ ろ,職員の理解度が高まっていることと,問題改善意識が 生まれていることが感じられた。今後も定期的なリハーサ ルの開催や障害時運用の見直しを行い,さらなる体制強化 に努めたい。
  • 福原 昇
    セッションID: 25-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    患者取り間違えは最も注意すべき問題である。従来,医 療従事者は患者を顔で認識していたが,DPC の導入後は 入院期間の短縮化,患者数の増加があり患者の顔を覚えら れない事が増えている。また入院前に検査を行うため外来 での検査件数も増加している。このため取り扱い患者数は 増加し取り間違えの危険性は以前よりも高くなっている。 患者識別として外来では名前を読んでの確認,入院ではリ ストバンドを使用する方法が行われているがこれらでは不 十分である。呼称のみでは聴力や認知能力の低下者や高齢 者には適当な対応方法とは言えない。リストバンドの使用 は費用,使用感,文字のかすれ等の問題がある。そこで生 体情報を利用した新しい患者認証方法を考案した。
    〈従来の生体情報を利用した識別法〉現在,生体情報を利 用した個人認証には指紋認証,静脈認証,虹彩認証,顔認 証などが使用可能である。一部の指紋認証法以外は使用す る機器が大型,高価であり設置場所および費用面で問題が ある。また従来の方法では院内に生体情報を保管する必要 がある。さらに接触型センサの不特定多数患者での共有は 院内感染の問題もある。その上患者の状態の変化
    〈新方式での個人識別〉診察券をIC カードとしカード内 に特殊な小型指紋認証センサを付けた。本カード表面には 写真を付けることも可能であり名札としての使用も可能で ある。本カード情報の読み取り機器は安価で小型であり設 置も容易である。個人専用のため院内感染の問題もない。 指紋情報を病院が保管する必要もない。本カード内には既 往症,禁忌薬剤などの医療情報を記録する事も可能であ る。本カードでの個人認証は院内のみならず院外施設にて も共有可能であり最適の認証システムと考える。
  • 米津 太志, 角田 恒和, 山本 銀河, 高橋 健太郎, 垣田 謙, 高山 啓, 李 哲民, 家坂 義人, 藤原 秀臣
    セッションID: 26-01
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    〈背景・目的〉僧帽弁乳頭筋機能不全は急性心筋梗塞の重 要な合併症のひとつと考えられているが,急性心筋梗塞患 者における乳頭筋の虚血性変化に関しては明らかにされて いない。今回我々は急性心筋梗塞患者の乳頭筋障害を心臓 MRI で評価した。
    〈方法〉急性心筋梗塞で入院し,急性期に経皮的冠動脈イ ンターベンションを施行し,発症14日以内に心臓MRI を 施行した連続26症例を対象とした(前壁梗塞14例,非前壁 梗塞12例)。心臓MRI で,左室基部短軸のT2強調画像 (T2W)と遅延造影像(LGE)における前乳頭筋(APM) と後乳頭筋(PPM)の高信号域の有無を評価し,APM と PPM の高信号の頻度を前壁梗塞と非前壁梗塞で比較し た。
    〈結果〉前壁梗塞のうち8例(57.1%)においてT2W 画像でAPM に高信号を認めたが,LGE 像でもAPM に 高信号を認めたのは1例(7.1%)であった。非前壁梗塞 では6例(50.0%)においてT2W 画像でPPM に高信号 を認め,そのうち5例(41.7%)でT2W とLGE の両方 で高信号を認めた。APM とPPM を比較すると,T2W 像で高信号APM を認めたのは9例でそのうち2例 (22.2%)でLGE でも高信号を認めた。また,T2W 像で 高信号PPM を認めたのは6例でそのうち5例(83.3%) はLGE 像でも高信号を呈した。T2W で高信号を呈した 例ではPPM のほうがAPM と比較して明らかにLGE で 高信号を呈する頻度が高かった(p<0.05)。
    〈結論〉心臓MRI で心筋梗塞における乳頭筋の虚血性変 化を評価することが出来た。前乳頭筋・後乳頭筋ともに急 性期の虚血性障害を受けるが,前乳頭筋は後乳頭筋に比べ viability が保たれる傾向があった。
  • -Fusion TM の使用経験-
    藤井 隆, 対馬 浩, 卜部 洋司, 三玉 敦子, 前田 幸治, 辻山 修司, 関口 善孝, 藤川 光一, 高畑 明, 山口 裕之
    セッションID: 26-02
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈背景〉MDCT を用いた虚血性心疾患の診断能は飛躍的 に向上し,狭窄病変の陰性的中率は,100%に近くCT で 狭窄を認めなければ器質的狭窄に伴う狭心症は,ほぼ否定 できるまでに診断技術が進歩した。一方,2007年,米国で 胸痛患者における中等度狭窄例で心臓CT が施行された 100例中24例において確定診断に至らず,核医学検査が必 要であったとする報告もある。 従ってCT 診断の不備な点を,複数のモダリティ画像を 重ね合わせることで診断の精度を向上させようとする試み がなされている。
    〈方法〉SPECT と64列MDCT のそれぞれ単独診断法で 評価不能であった2症例において,核医学およびCT の画 像データを融合するGE 社のソフトウエア「Card IQ Fusion 」を利用し,CT の冠動脈造影画像から抽出した心筋 の3次元画像上に負荷心筋シンチ検査で得られた心筋血流 情報を重ね合わせる3次元イメージ(Fusion 画像)を作 成し,虚血性心疾患の診断法としての有用性を検討した。
    〈結果〉症例1:陳旧性下壁心筋梗塞を既往に持つ狭心症 症例において,MDCT では血管内腔狭窄診断の難しい強 い石灰化を三枝に認め,責任血管の判定が困難であった時 にFusion 画像が有用であった。症例2:広範囲前壁陳旧 性心筋梗塞と,その数年後の狭心症の既往を有し右冠動脈 狭窄でステント留置された症例における胸痛精査におい て,ステント内狭窄病変の有無が十分にはCT 画像の判定 で困難であった時に,Fusion 画像がステント内狭窄診断 の一助となった。
    〈考案〉核医学検査と心臓CT が補完し合うFusion 画像 は,それぞれの単独診断では解決できない複雑な症例や現 在のCT 分解能で診断不可能な症例において臨床的に有用 と考えられた。
  • 西宮 健介, 高橋 俊明, 武田 智, 國生 泰範, 深堀 耕平, 菅井 義尚, 伏見 悦子, 関口 展代, 平山 克, 林 雅人
    セッションID: 26-03
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    左冠動脈肺動脈起始異常症(Bland-White-Garland 症 候群)は先天性心疾患の0.25~0.5%以下とされる稀な疾 患であり,さらに2歳までに80~85%が心筋虚血や心不 全,突然死で死亡するとされている。今回我々は成人期に 血行再建術を施行し,術後に左冠動脈主幹部の高度狭窄を 来たした症例を経験したので報告する。 症例は50歳女性。16歳時に他院にて上記診断。その時点 では症状軽度で手術適応なしと判断される。2008年の人間 ドックで心拡大を指摘され,同年7月10日当科初診。労作 時息切れあり。8月5日心臓カテーテル検査を施行。左室 造影では左室拡大と前壁から心尖部にかけての壁運動低下 が認められた。右冠動脈造影で側副血行を介して左冠動脈 が描出され,逆向性に肺動脈主幹部に抜ける血流が観察さ れた。 左冠動脈肺動脈起始症は,成人期まで無症状で生存して いる例でも突然死の頻度が高いため手術適応とされてお り,本症例でも同年10月29日冠動脈再建術(大動脈―冠動 脈直接吻合術)と僧帽弁形成術を施行。術後第27病日の心 臓カテーテル検査で正常な冠動脈血流が観察され,また左 室造影では左拡張末期容積減少と左室駆出率の増加を認め た。 2009年1月下旬より労作時の胸痛が出現。冠動脈造影で 左冠動脈主幹部に90%の狭窄を認め,同年2月12日同部位 にステントを留置し,狭窄解除に成功した。
  • 目黒 昌
    セッションID: 26-04
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    ASO 症例に対する下腿三分枝の血行再建(以下distal
    bypass)は,近年手術手技や周術期管理の進歩に伴って
    開存率の向上が得られつつある。当院でも2002年以降虚血
    肢に対して積極的にdistal bypass を行っている。
    今回はその中期遠隔成績と問題点を検討し報告する。
    〈対象〉2002年10月から2009年4月までにdistal bypass
    術を施行された15肢(15症例)。全例男性で手術時平均年
    齢は70.6歳であった。術後平均観察期間は2009年4月30日
    現在871日(約2年5ヶ月)である。術前のFontaine 分
    類は2b 度,3度,4度が各5例であった。全例ラリンゲ
    アルマスクによる全身麻酔で手術を施行した。平均手術時
    間は6時間1分であった。13例は自家大伏在静脈をin situ
    graft として使用した。残りの2例は静脈が細かったため
    人工血管を使用したが,末梢側吻合部には静脈パッチを作
    製した。
    〈結果〉術中合併症として,静脈弁カッターによる静脈の
    損傷を2例に認めた。術中あるいは術後1病日以内の急性
    血栓閉塞を4例に認め,このうち1例は血栓除去後も再閉
    塞した。1例で一過性の心不全を認めた他は重症な術後合
    併症を認めず,手術死亡もなかった。術後遠隔期に5例が
    死亡した。死因はいずれも心・血管系の疾患であった。
    生存率は2年で65.6%,3年で56.3%であった。術後二次開
    存率は1年で93.3%,2年以降は86.7%であった。大切断
    に至った症例はなかった。
    〈結語〉distal bypass は,膝上部のバイパス等と比較し
    て,術中のグラフト損傷や術直後の急性閉塞を生じやすい
    傾向にある。しかし,それらの合併症に適切な処置を行え
    ば中期の二次開存率は比較的良好であり,重症虚血肢に対
    しては積極的に行うべきである。また,遠隔期に心血管系
    の疾患で死亡する症例が多く,術後の外来では下肢だけで
    なく全身管理にも十分に注意を払う必要がある。
  • 鈴木 一郎
    セッションID: 26-05
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈症例1〉64歳,男性。『主訴』両下肢,さらに,陰嚢, 顔面,全身にむくみが出た。1ヶ月前から両下肢にシビレ を自覚している。『既往歴』5年前より,近医にて「高血 圧症」,「糖尿病」で内服薬治療中である。『現病歴』近医 より,降圧剤と経口糖尿病薬を処方されているが,依然と して血圧は高く,HbA1c:10.9%である。両下肢,全身 むくみの精査・治療を依頼されて,当科に紹介された。 『経過』心臓超音波検査にて「正常な心収縮能と心嚢液貯 留」を証明した。また,両下肢:深部静脈血栓症は否定で きた。利尿剤にて尿による除水を図り,降圧剤と経口糖尿 病薬の追加,変更を行った。
    〈症例2〉81歳,女性。『主訴』全身むくみ,特に,右上 肢のむくみとシビレ。『既往歴』約20年前から,近医にて 「高血圧症」,「糖尿病」,「脳梗塞後遺症」等を治療されて いる。『現病歴』約2ヶ月前から全身にむくみ,右上肢の むくみとシビレ,体動時の息切れを自覚していた。かかり つけ医は積極的な治療を対応しないため,紹介状は無く, 当科受診となった。HbA1c:9.0%であった。『経過』心 臓超音波検査より,「正常な心収縮能と心嚢液貯留」を認 めた。胸部レントゲン写真で明らかな「心拡大と胸水貯 留」像を認め,さらに,臥床が続くためか,「沈下性肺炎」 を合併していた。酸素吸入と去痰剤投与,抗生剤も併用し たが,利尿剤投与で,「肺炎」,及び,「心不全」は軽快し た。
    〈考察〉「高血圧症」と「糖尿病」合併例は誠に多い組み 合わせと言える。しかし,治療不十分であると,「心不全」 も併発してしまう。体重増加,むくみ,或は,体動時の息 切れなどは要注意事項である。「心不全」早期診断には, 胸部レントゲン写真撮影,及び,指尖酸素飽和度が有用で ある。
  • ~呼吸器外科開設の経験を通して~
    鈴木 久史
    セッションID: 26-06
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉肺癌は国内における癌死亡原因の第1位であ り,肺癌による死亡数は依然増加傾向にある。肺癌の根治 治療には手術が不可欠であるが,肺癌は症状が出現してか らの受診では診断時に進行癌であることが多く,手術不可 能例も少なくない。当院では2年前に呼吸器外科を開設 し,肺癌手術が行える体制を整えた。今回我々は,呼吸器 外科開設以来,当院で行った肺癌切除症例を見直し,どの ような経緯で切除可能肺癌が発見されたかについて検討し た。
    〈対象と方法〉呼吸器外科が開設された2007年4月より現 在までの2年間で行われた肺癌手術症例42例を対象とし, 受診経緯を中心に症例の比較検討を行った。
    〈結果〉肺癌切除症例数は,男性33人,女性9人の計42 人。平均年齢は男性71.1歳,女性63.4歳であった。受診経 緯については,健診発見が18例(42.9%),他疾患フォ ロー中の発見が13例(31.0%),有症状受診が9例(21.4 %),その他2例(4.7%)であった。他疾患フォロー中の 症例については,一般消化器外科,泌尿器科,内科,脳外 科,眼科など多方面からの紹介で発見された。発見時の腫 瘍の大きさは各群で有意な差はなかったが,病理病期に関 しては健診発見群で早期の割合が多かった。一方,有症状 受診群では早期症例は少ない傾向にあった。
    〈考察〉切除可能な肺癌症例を発見するためには,症状の 出ないうちに早期発見することが重要であるが,今回の結 果より健診の役割が高いことが改めて示された。さらに他 疾患フォロー中に発見される例も多いため,呼吸器科以外 で胸部異常影を確認した場合は,呼吸器科への速やかなコ ンサルテーションが望まれる。そのためにも各科間でス ムーズな情報交換ができる院内環境も重要であると考えら れた。
  • 田畑 雅央, 木村 啓二, 齋藤 良太, 関口 展代, 後藤 孝則, 平山 克, 林 雅人
    セッションID: 26-07
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    当院における肺抗酸菌症の特徴を明らかにするため,昨 年1年間(平成20年1月1日~12月31日)に当科で新規に 経験した肺非結核性抗酸菌症(NTM)ならびに肺結核 (Tbc)について検討した。NTM は日本結核病学会2008 年の診断基準に従い診断し,Tbc は抗酸菌培養で結核菌陽 性をもって診断した。 人数はNTM30人,Tbc26人,両者の合併1人であっ た。NTM は男性30%,Tbc は男性62%とTbc に有意に男 性が多かった。診断時平均年齢はNTM64.9歳,Tbc74.6 歳とTbc が有意に高かった。自覚症状を有していたもの はNTM47%,Tbc77%とTbc が有意に多かった。医療機 関受診から臨床診断までに要した時間はNTM で平均27 日,Tbc で35日であった。喀痰のみで診断し得た症例は NTM で23%,Tbc で69%であり,NTM の多くは気管支 洗浄液にて診断された。塗抹陽性率はNTM40%,Tbc 81%とTbc が有意に高かった。基礎疾患を有しているも のはNTM53%,Tbc81%であり,Tbc に有意に多く,そ の内容も重症のものが多かった。死亡例はNTM 0名, Tbc10名38%とTbc に有意に多く,ほとんどが状態不良 にて入院したものであった。一方臨床改善例はNTM69% で,Tbc は死亡例以外は全員改善を認めた。Tbc の薬剤感 受性では,INH の初回耐性が2名存在したが,多剤耐性 菌はなかった。 当科ではNTM の診断は喀痰でなされることは少なく, 診断には気管支鏡が有用であった。診断までに要した日数 はTbc の方が長くなっているが,自覚症状のある胸部異 常陰影を長期間フォローされていた例が存在したためであ り,注意を要すると思われた。Tbc では寝たきり状態で全 身状態不良にて入院した患者に死亡例が多かった。また INH 初回耐性が2名おり,治療に際し注意が必要と考え られた。
  • 神谷 文彦, 安田 憲生, 大須賀 健, 岩田 啓之, 飯田 真美, 鷹津 久登, 田中 孜, 末松 寛之
    セッションID: 26-08
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    レジオネラ感染症は,レジオネラ肺炎(在郷軍人病)と ポンティアック熱に区別され,特にレジオネラ肺炎は市中 肺炎の2~9%とも言われ,決してまれな感染症ではな い。またβ―ラクタム薬耐性で,重篤になりやすく,迅速 かつ適切な治療が必要であるにも関わらず,時として診断 に苦労し,治療が遅れることもあり得る。検査方法とし て,痰培養やPCR 法,直接蛍光抗体法,血清抗体価の検 査などあるが,感度・特異度の問題や,コスト,診断時間 の問題などあり,迅速正確な診断などにおいては決定的と 言えない。最近は尿中抗原を検出する迅速診断薬の普及に より容易に診断ができるようになってきたが,レジオネラ 肺炎の起因菌のうちL. pneumophillia_I_型は43.5%であ り,尿中抗原で診断できるのはL. pneumophillia_I_型の みである。ゆえに,尿中抗原のみでは診断できない症例も ある。最近当院で経験したレジオネラ肺炎症例を検討した ところ,男女比は11:1,温泉・入浴施設利用が12例中3 例,肝障害出現が12例中8例,横紋筋融解出現が12例中3 例,その他,CRP 高値や除脈,血中エンドトキシン高値, 症状に比べ胸部レントゲン上の重症感がないなど,臨床的 特徴が認められることが多い。これらより,単一検査に依 存して診断するのではなく,臨床医としてより総合的な視 点から患者の診察,検査結果の解釈をし,診断を下す必要 がある。我々は,最近当院で経験したレジオネラ肺炎を検 討し,若干の文献的考察を加えここに報告する。
  • 米丸 亮, カラガン 徳代, 黒石 正子, 荒幡 篤, 宮崎 聡, 山本 誠
    セッションID: 26-09
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
     新幹線運転士の停止位置ミスが睡眠時無呼吸症候群 (Sleep Apnea Syndrome : SAS)に起因したことが判明 したことを契機に,我が国においても社会的問題が次々と 明らかとなり,SAS が注目されるようになった。本研究 では職場作業の安全管理上SAS に関心の高い某事業場の 従業員183名に対してアプノモニターにてスクリーニング を実施した。事業場の産業医の指示にて実施したアプノモ ニターのデータを,当院の医療連携室を経由して生理検査 室にて分析した。被検者183名中アプノモニターによる無 呼吸/低呼吸指数(Apnea/Hypopnea Index : AHI)が5 以上15未満を示す要指導者が28名(15%)存在した。AHI が40以上を示す者はいなかったが,15以上40未満を示す者 が18名(10%)認められ,当院においてPolysomunography( PSG)検査を実施した。PSG によるAHI が10以上 の者が10人認められ,SAS と診断された。SAS の有病率 は5.5%(10/183)であった。また,AHI が20を超える 者5名については,CPAP を導入した。至適CPAP 圧は マニュアルタイトレーションにより決定し,平均7.9cm H2O であった。CPAP 導入によりAHI は平均27.8から 平均3.7に低下し,AHI の減少率は87%であった。CPAP 導入患者については,定期的外来管理を継続しており,日 中帯での眠気を認めていない。必要に応じ在宅での状況を メモリーチップに記憶させ,当院にてその後AHI の経過 観察に利用している。事業場の健康管理センターと地域連 携を構築し,症状が乏しい従業員に対して効率の良いSAS の診断,CPAP 治療の導入により,地域の健康増進に貢 献できると考えられた。
  • 彦坂 美保子, 小笠原 律子, 出口 恵三, 三谷 幸生
    セッションID: 26-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は,昼間の眠
    気・集中力の低下・抑うつ気分など生活の質の低下と,高
    血圧・心筋梗塞・脳梗塞等の合併症を引き起こすことで注
    目されている病気である。OSAS の一般的な治療法である
    CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)は非常に有効ではある
    が,その持続的治療を苦痛に思う方も少なくない。そこで
    我々は,日本のOSAS 患者の6~7割が肥満であり,そ
    の肥満を改善する事がOSAS の改善に繋がることに着目
    し,服薬や入院治療に頼ることなく啓蒙活動や意識改革を
    する事で減量を成功させ,CPAP を離脱することのでき
    た3症例を経験した。以下,その内容について報告する。
    〈症例〉(1)20代女性・153cm・96kg:他院よりOSAS 疑
    いにて当院紹介となる。AHI(無呼吸低呼吸指数):100と
    重症のOSAS でCPAP 導入。減量でCPAP 卒業が可能と
    の説明で,卒業を志して食事を中心とした減量に励む。32
    kg の減量でAHI:7となり,CPAP 離脱。(2)30代男性・
    166cm・88kg:健診でOSAS が疑われ受診。AHI:80と
    重症の為,CPAP 導入。マスク装着でのトラブルに悩む
    中,情報紙CPAP レターにて卒業の記事を読み,卒業を
    切望。食事制限と運動により30kg 減量し,AHI:3と正
    常範囲内になりCPAP 離脱。(3)50代男性・164cm・82kg:
    他院でCPAP を導入し,自宅に近い当院へと転院。治療
    に前向きで運動習慣もあったが,CPAP 専門外来で87kg
    と体重増加を認めた。技師による指導で食事制限と運動量
    を見直し,20kg の減量に成功。AHI:9となりCPAP 離脱。
    〈まとめ〉今回報告した3名は皆,私たちに満面の笑みで
    感謝を述べて卒業していった。減量は,OSAS の改善だけ
    でなくその他の疾病予防にもつながり,患者さまのQOL
    向上に検査技師も貢献できたのではないかと考える。
  • 病・診・薬・行政一体型連携システム構築の試み
    大林 浩幸, 柴田 尚宏
    セッションID: 26-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    岐阜県医師会では,厚生労働省が立案する『喘息死ゼロ 作戦』推進に向け,平成20年度より県全域を岐阜・飛高 山・西濃・中濃・東濃5地区に分け,喘息カード・ガイド ライン普及を軸に,各地区の特性を活かした対策行ってい る。当東濃地区はJR 中央線沿いに,多治見・土岐・瑞 浪・恵那・中津川の5市が並び,3地区医師会にまたがる 南北90km 近い地区である。『東濃喘息対策委員会』は, 東濃5市基幹病院及び開業医の専門医,保健所所長,地区 薬剤師代表を核に,県内で最も早く立ち上がった喘息対策 委員会である。喘息死ゼロ実現のため,病・診・薬・行政 一体型連携システム構築を目指し活動している。『喘息死 ゼロ』を達成するには,ここ数年来85%前後を占める高齢 患者の喘息死対策が重要である。具体的には,依然低い 吸入ステロイド剤処方率の向上,不適切な吸入デバイス 操作の是正,残存する末梢気道炎症の制御といった,3 つのハードルを順にクリアする必要がある。我々は定期的 な講演会・研究会で非専門医へのガードライン普及を促 し,同時に末梢気道炎症制御に有効な治療法の確立を検討 している。さらに病院・調剤薬局薬剤師対象に吸入指導セ ミナーを開き,患者に対し,均一で良質な吸入指導が提供 できる体制の確立を目指している。今回,我々は,これま での東濃喘息対策委員会の活動の軌跡とその成果を報告す る。
  • 矢田部 佳久
    セッションID: 26-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉茨城県の整形外科専門医の現状について検討する こと。
    〈方法〉茨城県にある日本整形外科学会(以下,日整会) が認定する整形外科研修施設(以下,施設)数と,県内に 所属のある同学会認定整形外科専門医(以下,専門医)数 を調査した。また,他の主要な都道府県の施設数,専門医 数を調査し,茨城県と比較した。さらに専門医数を人口10 万人当たりの人口比で求め,茨城県と他都道府県とを比較 した。
    〈結果〉平成20年12月現在茨城県内にある施設は45,専門 医は272人であった。全国の専門医総数は16,392人で,全 国平均248.8人であった。他の都道府県の施設数/専門医 人数は,東京都159/1,825,神奈川県112/1,049,北海道 100/713,青森23/164,福島33/233,栃木25/217,群 馬32/248などで,茨城県を含めた18都道府県の専門医数 は計1,109人,平均61.1人であった。人口10万人当たりの 人口比でみると,茨城県内の専門医数は9.2人であった。
    〈考察〉茨城県内の整形外科専門医は人数では特に不足し ている訳では無かった。一方,人口10万人当たりの人口比 でみると,全国平均の4分の3にも満たず,茨城県で整形 外科専門医が不足している実態が表われていた。また,茨 城県内にある施設数は,18都道府県の4分の3程度であっ た。認定施設数が100を超える都府県がある一方で,20に も満たない県もあった。現存の少ない医師数で地域医療に 貢献するためには,地域での専門医同士の連携が不可欠で あると考えられた。
    〈結語〉茨城県では整形外科専門医,施設数ともに不足し ており,専門医同士の連携が不可欠である。
  • 浅井 俊亘
    セッションID: 26-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    認知症患者を取り巻く諸問題は医療のみで解決すること は困難であり,介護,福祉などとの連携が必要であるとの 認識は共有されている。厚生労働省も「認知症サポート 医」の養成研修事業が行っており,その役割は認知症高齢 者の診療に習熟し,かかりつけ医に対する助言や支援及び 専門医療機関や地域包括支援センター等との連携の推進を 行う事とされている。当地域での認知症ネットワークの活 動と今後の展開について論ずる。 当海部(津島)医療圏は愛知県西南部,名古屋市に隣接 し人口約36万人,大都市郊外でかつ農村地域も多く含む。 当初海部地域にてのネットワークの構築は地域支援セン ターを核にした小グループのディスカッションを通じ地域 医師との「互いに顔の見える関係」の構築を行った。その 後地域のケースワーカー,福祉施設職員などに参加を求 め,疾患としての認知症,認知症を取り巻く法的問題など の講習会やすべての地域での患者・家族会の構築などを 行った。津島市医師会,津島海部医師会の合流を得て医療 圏全体がネットワークに参加している。 地域診療所での認知症患者は多く,医師はその診療に熱 意をもつ一方で診断や周辺症状等の管理に不安を持ち社会 的要因の対応に難渋している。 当初,地域支援センターの役割が医師には必ずしも充分 理解されてはいなかった。 地域診療所,介護・福祉施設の当初求めるものは異なっ ていたが,議論を繰り返す中で問題点の共有がなされた。 薬剤師会は認知症患者に対する服薬指導,医療機関では 認知症とは診断されていない患者の早期発見などで積極的 に関与している。 行政も問題を認識し,民生委員などを通じて早期発見, 医療が介入する以前での早期スクリーニング,在宅生活の 援助などを行っている。  
  • 遊佐 直道, 田代 理, 石黒 沙織, 菊池 昭夫, 平井 良, 遠藤 俊郎, 石河 泰子, 小島 賢二, 新井原 泰隆, 大川 伸一
    セッションID: 26-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉当院では,平成13年6月から在宅医療支援の 一環として特別養護老人ホーム(以下,特養),患者の居 宅等で携帯型X 線撮影装置によるポータブルX 線撮影 (以下,在宅ポータブル撮影)を開始した。 今回,在宅ポータブル撮影人数の推移,撮影件数を集計 した。当院が所属する医師会の担当地域の特養の定員数と 撮影件数の比較,検討した
    。 〈調査対象,期間〉対象は,周辺開業医等から当院に依頼 された在宅ポータブル撮影を対象とした。期間は,撮影人 数で平成16年度から平成20年度,撮影件数は平成20年度, さらに撮影部位別を胸部,腹部,その他の部位に分類し た。また,出張先を特養と居宅等に分け集計した。
    〈結果〉撮影人数は,平成16年度から平成19年度まで増加 し,平成20年度は微減であった。 撮影件数は平成20年度で844件であった。撮影部位別で は,胸部が最も多かった。撮影件数からみた特養と居宅等 の比率は,73.0%,27.0%であった。 同地域の特養定員数は,564名であった。特養での胸部 撮影件数は,597件で定員数を33件上回った。
    〈まとめ〉今回の結果から,撮影人数は,平成17年度から ほぼ横ばいで大きな変化はなかった。また,出張先の多く は,同地域の特養であり,撮影部位は胸部が多かった。 今後,撮影人数等の増加等,業務の拡大を検討すると, 特養の入居者数は,定員があり,大幅な増加は見込めな い。これからは,特養以外で居宅等の在宅医療に積極的な 医師と連携強化が必要と考えられる。 
  • 新井原 泰隆
    セッションID: 26-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    伊勢原協同病院での地域連携紹介放射線検査は2000年よ り本格的に開始しました。2002年よりの過去6年間の推移 を報告します。その推移から今後も紹介放射線検査の増加 が予想されます。ただし今後の課題として検査依頼医, 患者様の信頼を確保し満足度を高める。迅速で丁寧な予約 対応。院内検査とのバランスの確保。検査で即時治療の結 果が出た場合の対応などの整備が必要であります。
    〈報告内容〉下記数字は2002年と2007年の比較です。
    1.病院全体と放射線紹介件数の推移は 伊勢原協同病院への総紹介件数は6,499件から10,705件 で1.6倍の増加。 その内,放射線紹介件数は1,522から3,112となり2.04倍 の増加。 放射線紹介件数の平均割合は27%でした。
    2.放射線紹介医院数の推移は 72医院から174医院で2.4倍に増加しました。
    3.放射線紹介件数の推移は CT は797件から1,140件で1.4倍の増加。 MRI は597件から1,925件で3.2倍の増加。 RI は103件から47件で37%に減少しました。
  • ソーシャルワーカーの立場から
    神林 ミユキ, 原 靖子, 橋本 澄春, 小瀧 浩
    セッションID: 26-17
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉平成20年4月より開始された後期高齢者退院調整 加算にともない,退院困難因子を有する入院患者抽出のた めに,ソーシャルワーカー(以下SW)による,全後期高 齢者のスクリーニングを開始した。その結果,スクリーニ ングでチェックされる患者と,実際にSW が介入の依頼 を受ける患者の合致する割合が14.6%と予想以上に低いこ とが明らかになった。
    〈方法〉日本医療社会事業協会開催「診療報酬に伴う研修 会」の配布資料に掲載された,スクリーニングシートを参 考に,項目の加筆を行い当院独自の後期高齢者退院支援ス クリーニングシートを作成した。平成20年4月より,この シートを用いてSW が入院した全後期高齢者を対象にス クリーニングを行った。1年分のデータと,SW の援助記 録の比較から,チェック項目にある退院困難因子は,医療 スタッフが感じる因子と一致しないという仮説をたて,整 合性の高いチェック項目への変更を検討した。
    〈結果〉1,727名の対象者が入院し,うち1,400名に対して スクリーニングが行われた。このデータとSW の援助記 録449名分のデータを比較したところ,スクリーニングに おいてチェックされる項目数が多いケースほど,依頼され る割合が高かった。SW への依頼割合が高いチェック項目 を類型化すると,病状や社会資源の有無より,家族内に困 難因子を抱えていることが多く,このようなケースは入院 が長期化する傾向がみられた。すでに多くの研究や論文 で,長期入院の指標は発表されており,それらも参考に当 院の現状に即した新たなチェック項目を策定した。
    〈考察〉今後,改定したチェック項目の整合性が高いこと が実証できれば,SW への依頼基準が明確になり,新たな 依頼システムを確立することも可能になると考える。今後 も加算算定のための一業務としてではなく,スクリーニン グからのデータの集積・分析を継続していきたい。
  • 山杉 睦子
    セッションID: 26-18
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉病棟には担当薬剤師,管理栄養士,検査技 師,放射線技師,PT,OT,ST,MSW などのコメディカ ルスタッフが常に出入りし,多くのスタッフが患者に関わ るようになってきた。しかし,数多くの検査,それに伴う 移送,処置,点滴に追われ,膨大な文書に追われ,検査や 文書に伴う患者や家族への説明に追われる。その一方で, 精神的なケアが必要なターミナルの患者も少なくない。ま た,入院患者の高齢化が進み,医療依存度の高い患者が増 加するなかで家族機能が低下し退院調整が必要な患者の割 合が増加している。 昨年7月にDPC 導入し退院調整がさらに重要となっ た。そこで今回,病棟看護師が行っている退院調整の内容 について述べる。
    1.退院調整に困難をきたす要因分析
    各病棟において,下記の6タイプ別に分類した。 1)重度の合併症があり,状態が安定しない,2)問題行 動がある(不穏,認知症など),3)方向性が明確でない, 4)ADL が入院前よりも低下している,5)入退院を繰 り返す,6)ターミナル期である。
    2.タイプ別の病棟看護師の退院調整への関わり
    退院調整が困難なタイプ別に病棟看護師の関わりを述べる。
    3.病棟看護師と入退院センターとの協働
    入退院センターが実施している「アナムネーゼ聴取とそ の入力」「退院時サポートアセスメント」から得られる情 報により早期から退院調整できるようになった。
    4.退院調整の目的の明確化
    「看護師としてこれでいいのか」急性期病院として在院 日数の短縮が言われていると生まれる思いである。しか し,地域住民が24時間いつでも安心して受診できるような 医療体制を提供するために,常に一定の病床を確保する必 要がある。退院調整の本来の目的が明確でなければ臨床現 場の退院調整は進められない。
    5.病棟看護管理者の役割
    病床管理は平均在院日数と病床稼動率のバランスが必要 であるため,病棟師長は毎月1回医事課から出される当該 病棟における平均在院日数と病床稼働率を確認している。 また,退院調整のため亜急性期病床への転床時期を考える ために活用している。臨床現場が抱える問題は患者の目線 で考える必要があり,病棟師長は入退院センターやコメ ディカルと協働し,互いに患者との関わりの中で退院調整 ができる体制を考えて行くことが重要である。
  • ~患者家族へのアンケート調査から~
    藤原 拓也, 有馬 聡一郎, 佐川 京子, 河村 加代子, 北川 千佳子
    セッションID: 26-19
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉当院においてMSW が転院調整に携わるよ
    うになり10年が経過し,年間約270名の転院調整を行って
    いる。そこで転院調整の現状を振り返る為,転院した患者
    家族に,転院の納得の有無等11項目についてアンケート調
    査し,結果を考察したので報告する。
    〈研究方法〉平成20年11月1日~平成21年3月31日の期間
    に転院された患者132名のうち50名を無作為に抽出し,
    郵送調査法により患者家族にアンケート調査を実施。
    〈結果〉回収率64%(32名),転院について納得した94%
    (30名),納得出来なかった6%(2名),面談時の対応に
    満足した91%(29名),満足出来なかった9%(3名),希
    望通りの転院先であった72%(23名),希望通りでなかっ
    た28%(9名),満足のいく情報提供を受けた78%(25
    名),情報提供に不足があった22%(7名),情報提供に食
    い違いがあった19%(6名),現在転院先で困っている事
    がある25%(8名)であった。
    〈考察〉転院についての説明は概ね問題はなかったが,
    1名は説明不足があったことで転院に納得が出来ず,希望通
    りの転院調整に繋がっていなかった。大半は面談時,患者
    家族の気持ちを理解し対応できていたが,患者家族と相談
    員との信頼関係が築けていなかったケースについては,情
    報提供不足を招き希望通りの転院調整には繋がっていな
    かった。情報提供の内容については転院先の施設情報だけ
    でなく療養生活がイメージ出来る説明が必要だった。
    100%ご家族の希望に添える転院調整を目指すには全ての
    プロセスにおいて確実に対応する必要があった。転院先の
    療養生活に対して不満を抱えるということは,転院そのも
    のに不満を招いてしまうことが分かった。
    〈おわりに〉より良い転院調整を行うには,十分な説明と
    同意,情報提供,信頼関係,希望に添った転院先の紹介だ
    けでなく,その後の療養生活をもサポートする必要がある
    ことが分かった。
  • 医療ソーシャルワーカーとしての1年目を振り返って
    橋本 澄春, 神林 ミユキ, 原 靖子, 小瀧 浩
    セッションID: 26-20
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉老人保健施設併設の在宅介護支援センター職員か ら急性期病院の医療ソーシャルワーカー(以下MSW)へ 転職して約1年が経過し,入院期間という限られた時間内 での業務遂行に大きな戸惑いを感じていた。そこで,この 1年を振り返り,急性期病院の職員として組織の利益を守 りながら,患者・家族ができる限り不安を感じることのな い短期退院援助の方法を模索した。
    〈方法〉1年間で介入したケース50件の平均在院日数は, 当院の平均在院日数の約4倍であった。この結果から,現 在のMSW としての退院援助に,まだ短縮できる部分が あるのではないかと考えた。日報やケース記録から,ケー スごとに依頼までの日数,依頼から初回面接までの日数な ど援助過程を細分化し,それぞれの期間におけるMSW の援助内容が妥当であったかを確認した。
    〈結果〉専門職として学んだケースワーク過程を展開し, 社会資源の利用準備を行う援助過程の中に省ける部分はな いため,退院援助をおける時間短縮することは難しい。し かし,地域における急性期病院の役割を果たすためには, スピーディーな退院援助はMSW の絶対的な使命であ る。そこで援助過程の短縮ではなく,効果的に資源を利用 し援助期間を短縮する方法として,短期完結を可能とする 援助方法の獲得,社会資源を円滑に利用するための準備, 院内スタッフとのコミュニケーションの促進が有効ではな いかと考えた。入院期間という限られた時間内で,患者・ 家族が退院の準備をする時間を多く確保するため, MSW・地域・病院などの資源を最大限活用したい。
    〈考察〉入職時に抱いていたMSW のイメージは,「退 院」に対する病院と患者・家族とのギャップを患者側の立 場で埋めていく専門職である。病院という組織が直面して いる課題を知ることで,そのイメージを現実にする方法が 少しずつ具体的に見えてきた。専門職として,また病院の 職員として,一つずつ課題を達成することが,患者の利益 を守ることになると信じて,日々の業務に励んでいきた い。
  • 井出 政芳, 早川 富博, 鈴木 宣則, 小林 真哉, 福富 達也, 都築 瑞夫, 江崎 洋江
    セッションID: 26-21
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈背景〉足助病院では,近隣の特別養護老人ホームの嘱託
    を受け,隔週で入所者の診療を行っている。嘱託医は入所
    者の病状変化に応じ処方を変更し,検査・入院治療の必要
    性の有無を判断する。突発的に発生する療養上の問題につ
    いては,電話・FAX による連絡,あるいは施設職員が直
    接来院し嘱託医と面談する等の方法で対処して来た。
    しかし,情報の伝達に関する(1)迅速性,(2)確実性,(3)記録性を
    軸にこれらの連絡方法を評価すると,それぞれ一長一短あ
    り,総合的に判断していずれもが特に優れているとは言い
    難い。こうした状況の中,上記3要件を満足する可能性の
    ある病院―施設間の連絡方法として電子メールの利用が浮
    上し,緊急時における電話連絡を除き,電話・FAX に代
    えて電子メールによる患者情報伝達の病院・施設二者共同
    による試験的運用が開始された。今回,患者情報の共有,
    病状変化への対応などについて本手法の有用性が確認され
    たので報告する。
    〈方法〉病院・老人ホームそれぞれで連絡専用のメールア
    ドレスを取得し,関係者以外のメールの閲覧を禁止した。
    メール内容から入所者個人が特定されることを防ぐため,
    個人識別子として(イニシャル+カルテ番号)を用い,実
    名をメール内で用いることを厳禁した。メールの件名は個
    人識別子(用件)とし,用件は発熱,腹痛,下痢,嘔吐な
    ど原則漢字2文字として件名からメール内容が類推できる
    ようにした。また,メールの自動振り分け機能を利用し,
    入所者別に自動的に受信メールが整理されるようにした。
    受信メールをそのまま返信に引用し一連の用件が終了する
    までこれを反復することにより問題の提起とその解決を履
    歴として残すことができる。こうしたメールソフトの機能
    は,病院―施設間をネットで結ぶ電子化された診療録とし
    ての要件をメールソフトは既に備えており,今回の試験的
    運用用経験から十分実用に耐え得るものであるこことが示
    唆された。
    〈結語〉既存の電子メールソフトの利用によっても,工夫
    次第で療養における病院―施設間での情報の授受の確実
    性・記録性を実現するこができる。メールチェックの間隔
    を密にすれば,迅速性の要件も同時に満たすことができ,
    本試験から電子メールによる一種のバーチャル・ホスピタ
    ル実現の可能性も示唆された。
  • 鈴木 和広, 田渕 昭彦, 水野 光規
    セッションID: 26-22
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉昨今,いわゆる「たらい回し」など救急搬送 の停滞が取り上げられ,社会問題とされている。最近の調 査によれば,愛知県では不応需率は低いと報告されている が,医師不足の影響は確実に及んでおり,今後,問題の顕 在化が危惧される。
    〈目的〉地域の救急医療機能を維持し,向上させるため, 2007年8月から「西三河南部救急医療ネットワーク協議 会」(以下,協議会)を創設した。これは本医療圏で救急 医療に携わっている二次および三次病院6施設に加え,関 連する6救急隊が参加した年6回の会議である。この協議 会で発案された,情報共有システム(以下,システム)の 効果を検証する。
    〈方法〉本システムでは,ID およびパスワードで管理さ れたインターネット上の掲示板を利用し,各病院の空床状 況,受け入れ可能な疾患さらに施行可能な手術(臓器別表 示)を明示する。内容は各病院が毎日更新し,これを参考 にして各救急隊が搬送先を選定,あるいは病院間での患者 転送を行う。システムは2008年5月から稼働しており,シ ステム開始前の2008年1月から4月までの4か月間と,開 始後の同年5月から12月までの7か月間の各病院の救急搬 送不応需数を比較した。
    〈結果〉上記6救急隊が搬送した総患者数は,開始前 12,878名,開始後24,580名であり,不応需数はそれぞれ 1,061名と1,611名,不応需率はそれぞれ8.24%と6.55%で あった。システム参加病院と不参加病院とで不応需率を比 較すると,前者は開始前が4.51%,開始後が2.28%である のに対し,後者はそれぞれ24.62%と23.53%であった。
    〈考察〉愛知県西三河南部医療圏全体では,システム開始 後に不応需率の改善がみられ,それは参加施設で顕著で あった。今後のさらなる不応需率の追跡,また救急現場で の滞留時間の検証などを要すると思われるが,本システム の導入により救急搬送の効率化が得られたと考えられる。 さらに,協議会において地域の救急を担う施設あるいは組 織の責任者が一堂に会し,情報の交換や議論をする機会を 得たことは,各医療施設がもてる機能を十分に生かしてお 互いに補完し合い,いわば「顔が見える」確固とした救急 連携を構築し,地域全体で救急医療を支えることに貢献す ると考えられる。
  • 杉浦 真, 神谷 あさ子, 西川 美幸, 前田 美都里, 小野 芳孝
    セッションID: 26-23
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉当院は病床数692床,平均在院日数約13日の 急性期病院である。安城市の市民病院的役割を担い,西三 河南部医療圏の地域中核病院である。当院は常に満床状態 で救急患者の受け入れに苦慮することが多い。原因とし て,疾患は改善したとしても多くの高齢者は障害を残し退 院困難となる。さらに病院が死を看取る場となっている。 この状況の解決策として在宅医療を充実させ,在宅での看 取りを増やすことで院内の退院調整がスムーズになると考 え,在宅医療への取り組みを開始した。急性期病院におけ る在宅医療の意義について報告する。
    〈活動内容〉2008年6月より主に内科の患者を中心に訪問 診療を開始。訪問診療を専門に行い,2009年4月までに58 例に介入。基礎疾患は悪性腫瘍:35%,神経難病:17%, 脳血管障害:17%,以下認知症,心不全,老衰。転帰は死 亡:45%(在宅死33%,病院死12%),施設入所,入院中: 9%,継続中:46%。死亡例の平均介入期間は約30日。当 院の緩和ケア病棟,地域の開業医とも連携を図っている。 医師,コメディカルに対し在宅医療,福祉制度の勉強会を 行っている。
    〈考察及び結論〉今後超高齢化社会となることで,障害を 持った高齢者,がん患者,認知症などはさらに増加する。 急性期病院への負担は増大し,病院機能が破綻することも 危惧される。急性期病院に在宅医がいることで院内から在 宅へシームレスに移行し,退院がスムーズに行われる。病 院と在宅医療を結ぶ架け橋になることで,地域の開業医が より積極的に在宅医療に関わり,地域全体としての在宅医 療が充実するものと考える。また今後は医療と福祉・介護 は切り離せない関係となる。在宅医療を通して,医師,看 護師を含めたすべての医療者が福祉制度を理解し,退院後 の生活を見据えた対応ができることは患者中心の医療を行 う上でとても重要なことであると思われる。
  • 姫川病院閉院が糸魚川総合病院に与えた影響
    樋口 清博, 谷 昌尚, 高桑 一彦, 月城 孝志, 山岸 文範, 新保 雅宏, 北澤 慎次, 野々目 和信, 斉藤 琢磨, 池田 成子
    セッションID: 26-24
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉糸魚川市は人口5万弱,高齢化率も32.1%と 高く,他地域と交通の便の悪い地域である。急性期病院 は,当院(一般病床269床,うち特殊疾患療養病棟2が49 床,常勤医は姫川病院閉院時24人,外来受診者は1日約800 人)の他に姫川病院(一般病床114床,常勤医はピーク時 15人,閉院時6人,外来受診者は1日約200人)と整形外 科病院(62床)があった。しかし,姫川病院は医師の減少 と経営難から24億円の負債を抱え平成19年6月末に閉院し た。
    〈方法〉糸魚川地域が受けた影響を知るため,当院の救 急・入院・外来の患者数の変動を追った。なお,救急に関 してはこの危機を乗り切るためシステムの変更が行われ た。
    〈結果〉
    救急医療:18年度は地域の救急搬送の71%(1,215人/ 1,721人),19年度83%(1,570/1,884),20年度86%(1,514 /1,751)を当院で診た。これに当って,富山大学救急災 害医学講座からの応援と糸魚川市医師会が当院で1次救急 を行うシステムが構築された。
    入院医療:姫川病院閉院時の全入院患者20人は当院に転 院した。19年度の当院の入院患者の延べ数は89,298人であ り,18年度の85,167人に比し人数で約4,000人,率で約5 %の増加となった(20年度は90,815人)。
    外来医療:姫川病院の外来患者は可能な限り開業の先生 方に診てもらった。内科では姫川病院からの紹介患者専門 の振り分け外来を開いて対応した。病院全体の外来新規患 者数は18年度前半の12,409人に比し19年度前半で12,728人 と2.6%増であり,内科では各々2,203人と2,899人であり 31.6%増を示し脳外科においても各々444人と368人と20.7 %増となった。しかし外来延べ患者数では全体で0.2% 増,内科で10.1%増,脳外科では3.2%減と増加を抑える ことができた。20年度前半はいずれも19年度に比し減少し ていた。
    〈結語〉入院患者は5~7%程増えたが,救急と外来にお いては地域全体と大学の協力で当院の負担増を軽減でき, これにより医療崩壊を食止め得た。
  • -飲水の有用性-
    東 弘志, 加賀 保尋, 岡崎 真悟, 中村 俊一, 野瀬 弘之, 大野 竜一, 内田 多久寛, 藤永 明
    セッションID: 27-01
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉検診における胃バリウム検査は消化器がん検診学
    会の提唱する新・胃X 線撮影法ガイドラインが定着し,
    その有用性は周知のとおりである。しかし,長時間の絶飲
    食後の胃の状態は食物残が無いものの,多量に胃液が残
    るなど検査には決して良い状態とは言えないのが現状であ
    る。これは前夜からの絶飲食がひとつの要因と考えられ,
    従来の前処置を検討する意義は高いと思われる。
    今回,我々は新たな前処置として人間ドック胃バリウム
    検査の約1時間前に水を飲用してもらい,健診胃バリウム
    の画質向上に寄与するか検討した。
    〈対象〉当院人間ドック経年受診者,男性100名。
    〈方法〉人間ドック胃バリウム検査前に200ml の水を飲用
    し約50分後から検査を実施した。
    画像評価は基準フィルムを作成し,バリウム付着,辺
    縁,胃小区描出を区域ごとに前年度の画像と対照評価した。
    ただし,検者間によるバイアスを避けるため前年度と同
    一検者とした。
    〈使用装置〉X 線TV 装置:東芝メディカルシステム(株)
    Winscope6000。造影剤:ネオバルギンUHD220w/l%。
    〈結果〉詳細については当日報告致します。
  • ~読影支援ツール改良への試み~
    安藤 裕介, 中村 俊一, 福田 晋久, 菅原 司, 岡崎 真悟, 野瀬 弘之, 大野 竜一, 東 弘志, 内田 多久實, 藤永 明
    セッションID: 27-02
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈背景〉これまで我々は検診胃バリウム検査におけるカテ
    ゴリー分類の検討を行い,読影支援ツールを作成し,第33
    回日本消化器がん検診学会北海道支部放射線技師部会研修
    会に報告してきた。(第1報,第2報)。しかし,作成した
    読影支援ツールを使用して検診胃バリウム検査の1次読影
    を行い,カテゴリー分類を行ったところ問題点が生じ,従
    来の読影支援ツールに従じて読影できないということを経
    験した。そこで今回,カテゴリー3(良性だが悪性を否定
    できない)に相当する部分を中心にカテゴリーツールを改
    良しその評価を行った。
    〈対象〉平成19年4月から平成20年9月までに当院検診胃
    バリウム検査を受け,要精検となり,胃カメラ検査を施行
    した受診者を無作為に50症例抽出した。(ただし,精検等
    により最終診断の確定している症例とした)
    〈方法と検討項目〉
    (1) 読影支援ツールの改良:従来のカテゴリーツールに
    はひだの集中像の形態情報が不足していたため,今回新た
    にひだの集中像が領域を持った面に集束するパターン,も
    しくは領域を持たない線状や点状に集束するパターンに分
    類し,追加した。また,再現性の有無の項目も追加し,カ
    テゴリーツールの詳細化を行った。
    (2) 新・読影支援ツールの評価:当院検診胃バリウム検
    査を受け,最終診断の確定している50症例について,技師
    数名によって新・旧読影支援ツールを用いて読影を行った。
    比較項目として,良性病変を良性又は悪性病変を悪性と
    読影したものを一致,良性病変を悪性と読影した物を
    over カテゴリー,悪性病変を良性と読影した物をunder
    カテゴリーとしてそれぞれ評価を行った。
    〈結果及び考察〉一致率が69.5%から81.5%に上昇し,
    over カテゴリーが30%から18%に減少した。今回カテゴ
    リー3(良性だが悪性も否定できない)の部分に相当する
    読影支援ツールの改良を行ったことで,1次読影の精度向
    上かつ偽陽性所見を減少させうる可能性が示唆された。
  • 恩田 久孝, 佐藤 尚美, 斎藤 信子, 中村 裕子, 嶺井 洋子, 石井 英一, 中安 邦夫
    セッションID: 27-03
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉人間ドックにおいて腹部超音波検査(以下 US)は大変重要な位置を占めている。 近年,健診業務は,多くの受診者をこなさなければなら ず,その時間的制約から粗雑な検査が行われる機関も少な くない。特に受診者数の多い機関においてその傾向が強く 感じられる。 そこで,今回我々は膵尾部とその近傍領域に着目して, 過去3年間のデータを比較検討した。
    〈対象および方法〉対象は06年4月から09年3月までの3 年間で当センターを受診し,腹部超音波を施行した51,479 例(男性31,918例,女性19,561例),平均年齢53.8歳を対 象とした。 方法は正中横断捜査を中心に行っていた06,07年と膵尾 部描出能および病変検出向上を目的として左肋間からの走 査を啓蒙した08年4月からの1年間とを比較検討した。 描出能は膵尾部を背部側まで描出し得たものを描出可 能,膵体尾部までしか描出し得なかったものを描出不良と した。
    〈結果〉膵尾部描出可能であった件数は06年度16,941例中 8,727例51.4%,07年度は17,064例中7,273例54.2%に対 し,啓蒙を行った08年度は17,474例中13,810例78.8%(P <0.01)と明らかに向上した。また,分散は06年度41.9, 07年度21.8,08年度11.1とばらつきが少なく安定した結果 を得られた。 この中で膵尾部腫瘍性病変の検出は06年度3例0.018%, 07年度5例0.029%に対し08年度15例0.086%(P<0.05) と明らかな検出率の向上をみた。 この他,左副腎腫瘍の検出は06,07年度合わせて1件に 対し08年度6件と近傍領域の病変検出にも差を見た。
    〈考察〉今回,左肋間走査の啓蒙を行い技師に画像診断の 基礎を強く意識させる事により膵尾部の描出率や腫瘍性病 変の検出,左副腎の検出などは大きく向上した。これらの 事から,左肋間走査は,膵尾部やその近傍領域の情報を得 るには重要であると考えられた。
  • 佐々木 泰輔
    セッションID: 27-04
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈背景〉肝エキノコックス症は,感染後数年~十数年の潜
    伏期を経て黄疸や発熱・腹水等の症状が現れ,やがて肝不
    全となり死に至る慢性寄生虫疾患である。そのため早期発
    見と治療が必要であり画像診断にかかる期待は大きい。
    しかし本症は様々な画像所見を呈し疾患特異性に欠けるとされ,
    他疾患との鑑別が困難なことで知られている。
    〈目的〉腹部超音波検査において本症を示唆する所見が存
    在するか否か検討すること。
    〈対象〉1999年1月~2009年1月にかけてエキノコックス
    症一次検診にて陽性・疑陽性であった者に対し腹部超音波
    検査を行い,最終診断が肝エキノコックス症とされた10例
    15病変とした。年齢は66.3±11.5歳,男女比3:7であった。
    〈方法〉15病変をサイズ別にclass1;φ20mm 未満,
    class2;φ20mm 以上50mm 未満,class3;φ50mm 以上に
    分類し,腫瘤の形状と内部エコーの性状について検討した。
    特に文献的な見地から腫瘤における小石灰化と小嚢胞の描
    出に着目した。
    〈結果〉全例に共通して,不整形状を呈し高エコー成分が
    存在した。class1は6病変(40.0%)で,いずれも石灰
    化と思われる高エコー主体型であり,小嚢胞は検出できな
    かった。class2は5病変(33.3%)で,混合エコーの蜂
    巣状形態を呈する特徴があり,class3の4病変(26.7%)
    はいずれも複雑なエコー像を呈したが散在・集塊する小嚢
    胞を検出しやすい特徴があった。
    〈結論〉全例において不整形状を呈し高エコー成分が存在
    したことは,小病変を発見するための良い指標になり得る
    と考える。病変のサイズは本症のUS 診断にとって重要な
    手がかりであり,今回の検討によって示された特徴さえ押
    さえておけば,日常診療の中で遭遇しても疑診に至ること
    は十分可能であると考えられた。
  • 渡邉 敏成, 八木 秀視, 坪井 声示, 玉内 登志雄
    セッションID: 27-05
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉近年,関節リウマチ(以下RA)に対する生
    物学的製剤の早期導入により,関節破壊や身体機能障害が
    予防され,早発死亡が減少し予後の改善が認められること
    が,数多く報告がされている。RA 早期診断には,抗CCP
    抗体,MRI 検査や超音波検査(以下US)の使用が提唱さ
    れ,欧米ではRA のfollow up にUS がルーチン化されて
    いる。当院では,2008年8月より,US によるRA の早期
    診断,及び薬剤効果判定を開始したので,その実績と今後
    の課題について報告する。
    〈対象と方法〉対象は当院RA 患者58例(2009年3月現
    在)で,主に手指関節における血流信号のGrade の変化
    を観察した。第2指から4指のMPJ,PIPJ 及び手関節の
    関節腔の肥厚を計測し,同部位の血流をパワードプラー法
    により判定し,血流信号の強弱により5つのGrade に分類し,
    計測は関節最大volume とした。
    (Grade0:血流シグナルが全く見られない。Grade1:
    ごく小さな点状のシグナルが見られる。Grade2:少し長
    い枝状のシグナルが1~3本程度見られる。Grade3:枝
    状のシグナルがつながって多数見られる。Grade4:網目
    状に見えるもの,もしくは塗りつぶされたもの。)
    〈結果〉主に病勢把握を目的にUS を実施し,58例中37例
    に血流信号を認めた。薬剤効果判定を行った例では,infliximab(
    レミケード)開始前に右手関節尺側にGrade3
    の血流信号が見られたが,2ヶ月後の再検時には血流信号
    はGrade1と減少していた。
    〈考察〉上記の所見は諸家の報告と概ね一致していた。 特に,単関節型の診断未確定関節炎(UA)や血清学的陰性
    のRA の薬剤効果判定の際,炎症の有無を視覚的に判断可
    能で,診断・治療方針の決定に有用であった。また,患者
    へのUS 画像呈示により,患者の理解を深め,病状説明に
    役立った。
    尚,以下の問題点が明らかとなった。
    1.乏再現性,2.術者間差,3.所要時間。
    上記の課題の解決のためには,検査法の標準化の検討が
    必要と考えられた。
  • 大久保 久司, 藤本 正夫, 不破 武司, 市原 幸代, 松野 俊一
    セッションID: 27-06
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉今回我々は,TACE 後のRFA におけるソナゾイ ド造影超音波検査の,より有効な実施法について自験例を もとに検討した。
    〈対象および方法〉2007年1月から2009年3月までに当院 においてTACE 後にRFA を施行されたHCC20症例,22 結節を対象とした(平均年齢75.1歳,男女比は男性16:女 性4)。対象の症例では,初回のソナゾイド注入にて TACE 施行部位内の染影の有無を確認し,穿刺はKupffer image または再注入のvascular image で行った。ソナゾ イドの1回注入量は0.5ml でボーラス注入を複数回行っ た。使用装置は,LOGIQ7・LOGIQ9(GE 横河)を使 用し,RFA 針はセンチュリーメディカル社製cool tip 針 を使用した。
    〈結果〉症例20例中18例は,B モードではTACE の範囲 が同定困難であり,2例は境界不明瞭であった。16例は造 影下で穿刺が行われ,re-injection のvascular image での 穿刺が1例,vascular image をモニター画面で見ながら のKupffer image での穿刺が15例であった。他の4例は 造影モードで穿刺針が見にくいなどの理由で,B モード下 で穿刺が行われた。RFA においてソナゾイド造影超音波 を用いることにより,80%の症例でTECE 治療部が描出 され,さらにre-injection による造影により再発や腫瘍残 存の把握が可能となった。
    〈考察〉当院ではvascular image での穿刺は少なく,vascular image の画像を二画面表示で参考にしながらの Kupffer image での穿刺が多く行われた。これはvascular image は描出時間が短く,これに対してKupffer image では余裕のある穿刺が可能であることによると思われた。
    〈結論〉TACE 後のソナゾイド造影下RFA では,病変部 の同定はKupffer image にて行い,腫瘍残存あるいは再 発部をre-injection にて確認し,その画像をreference と して,Kupffer image で穿刺を行うことが効率がよいと考 えられた。
  • 保谷 友佳里, 柏原 雅人, 芝田 弘, 中村 裕一, 瀧澤 勉, 秋月 章
    セッションID: 27-07
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉磁化率強調画像(susceptibility-weighted imaging: 以下SWI)とT2*強調画像(T2*weighted image: 以下T2*)は,磁化率変化の生じた部分が低信号で 描出され,小出血などの検出に用いられる。SWI はT2* より磁化率変化を高感度に検出できると報告されている。 今回,SWI 画像とT2*画像における画像特性を比較し, 疾患などによる両者の使い分けについても検討した。
    〈対象,方法〉頭部MRI 検査を行った131人を対象とし, 平均年齢68.9歳。撮像条件は,当院の使用条件とし,撮像 時間はSWI が3分24秒,T2*は2分とした。今回は小さ な低信号(以下斑点)を評価対象とし,当院脳神経外科医 師2名,放射線技師2名により視覚的に有無を評価し,以 下の5項目について検討した。SWI 画像とT2*画像に 描出された斑点の個数,SWI 画像とT2*画像の同一部 位に描出された斑点のコントラスト,斑点の描出された 被験者の疾患,斑点が描出された部位,被験者の検査 時の血圧。
    〈結果〉斑点が認められた画像中,SWI 画像の方が描出 数の多いものは59.8%で,ST2*画像の方が描出個数の多 い画像はなかった。同一部位に描出された斑点中,SWI の方が高コントラストのものは81.6%で,SWI のコント ラストに対するT2*のコントラストは平均0.8±0.17で あった。SWI の方が有意に描出能が高い疾患はなく,小 脳と皮質下にSWI のみに描出される斑点が多かった。斑 点描出のあった被験者はなかった被験者に比べて血圧が高 かった。
    〈考察〉SWI はT2*より描出能力が高いことがわかり, 特に皮質下でSWI のみで描出されるものが多いことが分 かった。SWI はT2*に比べ,得られる情報も多いが,撮 像時間がやや長い。したがって,短時間撮影をしたい超急 性期脳梗塞や体動抑制不可の被験者の場合,大きな脳出血 に付随する小出血検索などにはT2*の利用ができると考え られた。
  • 野田 秀樹, 日比 英彰, 高木 理光, 安部 威彦, 橋本 英久, 藤野 明俊, 齋藤 公志郎
    セッションID: 27-08
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉EOB は,国内初の肝細胞特異性を有する MRI 用造影剤です。静脈内投与後,1回の投与で肝腫瘤 の血流評価と肝細胞機能の評価が可能な造影剤である。 一方ソナゾイドは,肝腫瘤性病変の超音波造影剤で,リ アルタイムに血流イメージを得ることができる点と,クッ パー細胞への取り込みが顕著におこり,安定したクッパー イメージが得られるのが特徴である。 今回我々は,EOB とソナゾイドの両方が施行された10 症例について描出能の検討を行い若干の知見を得たので報 告する。
    〈使用機器〉MR 装置:GE SIGNA1.5T 超音波装置:東芝Aplio
    〈撮像方法〉EOB:静脈注入後,30秒(動脈相),60秒(門 脈相),90秒,180秒(平衡相),300秒のダイナミック撮像 と,10分,20分の肝細胞造影相を撮像する。 ソナゾイド:静脈注入後,早期相(10~30秒),後期相 (30~80秒),MFI(80~120秒),クッパー細胞相(10分 後)の流れで撮像する。
    〈対象〉平成20年4月~H 平成1年3月で,10症例(56 結節)がEOB,ソナゾイドの両者が施行されている。 今回はその10症例(56結節)の描出能を検討した。
    〈評価方法〉 1:EOB の肝細胞造影相の画像と,ソナゾイドのクッ パー細胞相の画像で描出能を検討した。 2:EOB とソナゾイドの動脈相での造影効果を検討した。
    〈結果〉 1:EOB の描出能は54/56,ソナゾイドは43/56であ り,EOB の描出能が高かった。 2:EOB は5/10が濃染(+),ソナゾイドは8/10が濃 染(+)であり,ソナゾイドの方が有意に高かった。
    〈まとめ〉EOB の肝細胞造影相は描出能が優れていた。 しかし動脈相での濃染がはっきりしない症例が多かったた め,造影剤の注入法,撮像のタイミングなどを再検討して いく必要があると考えられる。 ソナゾイドの動脈相が良好な結果を得たのは,リアルタ イムに観察ができるからだと考えられる。 ソナゾイドでのクッパー細胞相で,若干描出能が低かっ た要因は,ブラインドエリアの描出不良,患者の個体差な どが考えられる。
  • 住田 知隆, 松田 盛功, 川合 信也, 越川 和博, 水谷 弘二, 酒井 慎一
    セッションID: 27-09
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉近年,MDCT の急速な進歩により,冠動脈
    の造影CT は冠動脈造影検査の1つとして位置づけられつ
    つある。これに対して心臓MRI は,シネMRI による左
    心室の機能や壁運動の診断,遅延造影による梗塞心筋の組
    織性状など,主として機能的診断に有用性が高い。
    今回,当院の心臓MRI(遅延造影)の取り組みについて報告する。
    〈当院の心臓撮影手順〉
    (1)位置決め画像:Survey
    (2)体軸横断像:CINE
    (3)二腔長軸像:CINE
    (4)水平長軸像:CINE
    (5)左室短軸像:CINE
    (6)四腔長軸像:CINE
    〈造影剤注入(Gd-DTPA)〉
    (7)Look locker(1回の呼吸停止撮影で異なるTI 値の画像
    が撮影できる。TI 値を決定)
    (8)遅延造影:二腔長軸像
    (9)遅延造影:水平長軸像
    (10)遅延造影:左室短軸像
    (11)心機能解析(EF など)
    〈遅延造影MRI のポイント〉遅延造影MRI は負荷を必要
    としない簡単な検査法であるが撮影条件(TI)の設定が
    LGE(Late Gadolinium Enhancement)の有無と範囲を
    的確に診断できない事例が多く見受けられる。これは正常
    心筋を無信号となる最適なTI をすることがこの検査を成
    功させる上で重要なポイントになる。よって遅延造影
    MRI は技師の経験・技量により,画質や診断能に影響す
    る検査である。
    〈遅延造影の撮影条件を決めるポイント〉正常心筋を無信
    号にするタイミングNull Point で撮像するが,これは患
    者毎に心筋のT1回復時間が異なるため,あらかじめ
    Look Locker シーケンスにて正常心筋のNull Point を検
    索する。信号強度が最も小さいTime+40~50ms をTI と
    して,パラメーターに入力する。また,造影後の撮影タイ
    ミングについては患者毎にT1短縮効果が異なる。プラン
    中もNull Point も変化していくので考慮しなければならない。
    〈おわりに〉当院では,上記のようなポイントを考慮し,
    撮影の標準化に取り組んでいる。
  • 穴澤 明弘, 城戸 修, 小沼 牧子, 菊地 孝典, 高畑 進, 齋藤 律子, 星 寿郎, 渡部 朝之, 太田 幸雄
    セッションID: 27-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉平成18年にシーメンス社製SOMATOM Sensation40
    が導入され,下肢動脈CT が検査可能になった。
    撮影は当初シーメンスが設定したプロトコールで撮影し
    ていたが下腿部動脈描出不良の場合と造影の再現性が悪い
    場合があったので,その原因を追究し下肢動脈の描出能向
    上を試みる。
    〈方法〉(1)過去施行した検査からモニタリング位置,撮影
    開始時間,撮影時間を調べ下腿部動脈描出と造影再現性の
    不良の原因を探った。(2)上記の原因調査から,パラメー
    ターを変更した。(3)この変更したパラメータで画質が悪化
    しないかファントムを撮影して調べた。(4)新プロトコール
    で施行したCT 画像を調べ造影能と再現性の向上ができて
    いるか調べた。
    〈検討結果〉a 造影剤のモニタリング位置や撮影開始時
    間そして撮影時間が技師によってまちまちであったことが
    造影の再現性が悪い場合がある理由と推察される。b 過
    去検査のモニタリング位置を調べた結果,恥骨部が一番多
    い為この位置をモニタリング位置に決定した。c 動脈が
    造影剤により染まり始めてから均一になるまでの時間は4
    ~7秒とあまり差が無い為,動脈が均一に染まった直後を
    撮影の基準とした。d 下腿部動脈描出不良の原因は撮影
    開始時間や撮影時間が早く造影剤の流れを追い越す場合が
    ある為であることが判った。e ファントムをスキャンし
    た画像からピッチによる視覚上の違いは見出せなかった。
    コリメーションの違いは明らかに有意差があり0.6mm コ
    リメーションを使用した方がアーチファクトが少なく良好であった。
    〈プロトコール変更前後の結果〉検討前37症例中,下腿部
    動脈描出不良は2症例,2~3回検査施行した9症例中,
    3症例が再現性不良検討後30症例中,下腿部動脈描出不良
    は0症例,再現性も良好であった。
    〈結語〉このプロトコールの撮影タイミングは一般的には
    遅めであるといえる。しかし当院ではASO などで下肢動
    脈の狭窄,閉塞がかなり進んだ症例が多いためどんな症例
    でも失敗なく一定レベルの診断ができるということを最重
    要視しこの遅めのタイミングを選択した。事実,新プロト
    コールで撮影した画像は下腿部動脈の描出や再現性が向上
    していて今回の試みが有効であると思われる。
  • 大澤 映美, 陣野 いづみ, 石川 晃則, 加藤 なお子, 松永 紗代子, 岡本 奈美, 石川 陽子, 人見 理香
    セッションID: 27-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉当院では平成19年10月よりフジフィルム社製
    1ショットファントムを導入し,以前からのACR ファン
    トムを使用した精度管理と並行して日常管理を行っている。
    1ショットファントムとは,マンモQC ソフトウェアの
    自動計算機能により日常管理を簡便に行うことができ,総
    合的なマンモグラフィシステムの品質管理も行えるものである。
    今回,当院で1ショットファントムを導入して2年が経過した
    ことを機に,精度管理項目について検討を行ったので報告する。
    〈使用機器〉
    ・SIEMENS MAMMOMAT3000Nova
    ・Fuji Computed Radiography PROFECT CS
    ・Fuji Computed Radiography CR Console Plus SL-IC300G
    ・フジフィルム社製1shot phantom M plus
    ・フジフィルム社製マンモグラフィQC ソフトウェア
    〈方法〉1ショットファントムを用いた日常管理において,
    判定基準値を狭めることができるか検討した。判定基
    準値とは各判定項目における許容範囲を定めるものであ
    り,これを狭めることにより日常管理がより精度を増すと
    考えられる。
    今回は,空間分解能(4lp/mm),コントラスト雑音比
    (以下CNR),システム感度の3項目について検討を行った。
    1.FCR のマンモQC 画面より,品質管理の履歴を表示した。
    2.履歴より基礎値*を作成した。
    *基礎値:検査の測定値について“Pass・Fail”で判定
    する時の基準となる値である。
    3.判定基準値[%]を変更し,経過観察を行った。
    〈結果およびまとめ〉空間分解能(4lp/mm)は,8%ま
    で絞ることができた。メーカー推奨値(20%)より十分に
    厳しい基準で装置を管理できることが示された。
    CNR とシステム感度は,経時的な値の低下がみられ
    た。基礎値を変更すると経時的な変化がとらえにくくなる
    と考えられるため,今回は変更はしないこととした。今後
    も精度管理の中で変化を観察し,さらに低下が続けば判定
    基準値を大きくする必要もあると考えられる。
    今後は,CNR とシステム感度の経時的な低下の原因の
    検索が課題と考えられる。
  • 土谷 豊, 園 光博, 栗本 純一, 内藤 秀一, 高野 恵
    セッションID: 27-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉平均寿命82歳以上の長寿高齢化社会に伴い, 認知症高齢者は今後さらなる増加が予想されている。当院 においても,物忘れの症状を主訴に外来受診され,多数の 患者が脳血流SPECT シンチを受けている。 アルツハイマー型認知症(Alzheimer’s disease:以下 AD とする)では側頭葉から頭頂葉と後部帯状回の特異的 な血流低下パターンを示す傾向があると言われている中, 当院ではeZIS 疾患特異領域解析(Specific VOI analysis: 以下SVA とする)ソフトを導入し,AD の早期発見 に取り組んでいる。 そこで今回我々は,eZIS SVA ソフトで算出したSeverity, Extent 及びRatio の解析結果をそれぞれ疾患別に分 類し,疾患判別能について検討したので報告する。
    〈方法〉平成20年1月から8月までの間に99mTc-ECD 脳血 流SPECT シンチを行った55名の患者を疾患別(AD・ MCI・混合型)に分類し,解析ごとにそれぞれの疾患判 別能をT 検定にて実施する。Bonferroni の補正から,有 意水準を両側1.6%と設定(5%/3回検定)し,P 値< 0.016のとき有意差ありと判定する。
    〈結果〉Severity はいずれの群も正規分布を呈するので, 生データでT 検定を実施 AD vs MCI で有意差あり(P<0.001) Extent はMCI が正規分布を呈さないので,対数変換し たデータでT 検定を実施 AD vs MCI で有意差あり(P=0.007) Ratio は,生データではMCI,対数変換ではAD が正 規分布を呈さないため,平方根したデータでT 検定を実 施 いずれの群でも有意差は認められなかった。
    〈考察〉AD,MCI 及び混合型の判断に対して,Severity がExtent 及びRatio に比べて判断能が高いことが示唆さ れた。 Severity でMCI と混合型は平均値や中央値に大きな違 いが無いにも関わらず,AD との比較において混合型では 有意差が認められなかったが,これは混合型の例数が少な いことが影響していると考えられるため,AD と混合型で は差が無いと本研究から主張することはできない。
  • MS法、ARG法と比較して
    寺岡 広純, 吉田 宣博, 平綱 克孝, 水谷 弘二
    セッションID: 27-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉現在,IMP を用いた脳血流定量シンチはmicrosphere 法(MS 法),autoradiography 法(ARG 法)が 一般的である。しかし,これらの方法は動脈採血が必要で あり侵襲性があることが問題点であった。最近,動脈採血 が不要なGraph Plot 法が開発されたが,血中から脳への 移行はマイクロスフェアモデルである。しかし,Graph Plot 法の平均脳血流量(mCBF)はARG 法を元に得られ る。そこで,MS 法を元にしたGraph Plot 法が臨床使用 に値するかARG 法を元にした場合と比較することにより 検討した。
    〈方法〉当院で行われた脳血流定量シンチ10例にてMS 法,Graph Plot 法,ARG 法を同時に行った。Graph Plot により肺動脈(PA)と脳のROI サイズからStandardized values of F by ROI(SFR)を算出し,当院のMS 法で算 出した平均脳血流量(mCBF)とSFR の相関式を作成し た。また同様に当院のARG-SFR の相関式を作成し,MSSFR の式と比較した。それぞれの方法で前大脳動脈領域 (ACA),中大脳動脈領域(MCA),後大脳動脈領域 (PCA),視床領域(Thalamus),小脳領域(Cbll)の脳 血流量(rCBF)を求め,MS 法で得られたrCBF とGraph Plot 法で得られたrCBF との相関式を作成した。同様に ARG 法とも比較した。定量は自動ROI 設定ソフトFlexer を用いた。
    〈結果〉当院で得られたMS-SFR の相関式は相関があっ た。またMS-SFR の式はARG-SFR の式と同様な相関が あった。また,MS 法で得られたrCBF とGraph Plot 法 で得られたrCBF にも相関があった。
    〈結語〉Graph Plot 法もMS 法と同様なrCBF を得るこ とができる。よって臨床使用に値するということが示され た。
  • 人見 理香, 石川 晃則, 椿原 隆寿, 鈴木 昌弘, 石川 陽子, 大澤 映美, 平松 拓也
    セッションID: 27-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉近年の放射線画像診断分野における機器の発
    展はめざましいものであり,実際に最新の装置を導入して
    業務を行っている施設も少なくない。当院においても,
    2009年3月に胸部撮影室の撮影装置がComputed Radiography(
    以下CR と示す)から,Flat Panel Detector(以
    下FPD と示す)に更新された。FPD は量子検出効率が
    CR に比べ高いという特性をもつことから,CR よりも被
    曝線量の低減が可能となる。そこで今回,私たちは当院に
    おいて用いられる新規導入されたFPD と,従来のCR の
    画質および被曝線量を評価し,FPD の特性について検討
    を行ったので報告する。
    〈使用機器〉
    ・PHILIPS Digital Diagnost
    ・PHILIPS bucky DIAGNOST
    ・Konika REGIUS MODEL150
    ・化成オプトニクス株式会社X 線アナライザPiranha
    ・バーガーファントム
    〈方法〉
    (1)画質評価として,バーガーファントムによる視覚評価を行った。
    (2)臨床画像評価では,胸部単純撮影画像における気管,
    縦郭,心臓裏の血管影,肝臓裏の血管影,肺野抹消の血
    管影を評価した。
    (3)被曝線量の評価として,臨床撮影条件における入射表
    面線量を求めた。
    〈結果〉画質評価において,FPD の方がCR よりも良い
    結果となった。また,臨床画像評価においてもFPD の方
    がCR よりも良い結果となった.さらに,被曝線量の評価
    においては,FPD の方がCR よりも入射表面線量が低い値を示した。
    〈考察〉FPD はCR に比べ量子検出効率が高く,従来の
    CR システムよりも高い画質の画像を得ることが可能であ
    り,被曝線量の低減を可能にする装置であることがわかっ
    た。今後は,今回検討を行った部位以外における画質も視
    野に入れながら,被曝低減に努めたいと考える。
  • 伊藤 光洋, 伊藤 良剛, 吉川 秋利, 大竹 正一郎
    セッションID: 27-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉整形外科の手術の際にC アーム型の外科用透視 装置が広く使用されているが,当院では2009年4月に本邦 初となる最新のO-arm を導入した。従来のC アームと同 様に透視が可能であるが,3D 画像を作成する際の収集 角度は,従来のC アームでは190°であるのに対し,O-arm では360°である。この収集角度の差によって,3D 画像 の精度,画質の向上が期待されている。今回はこの最新の 装置を使用した手術におけるスタッフの術中の被曝線量を 測定したので報告する。
    〈使用機器〉O-arm : BI―700―00020(メドトロニック 社),半導体式電子ポケット線量計:PDM―112(アロカ株 式会社),プロテクター:MSA―25/鉛当量:0.25mmPb (株式会社マエダ),X 線防護衝立:H―22HKF/鉛当 量:1.0mmPb(クラレトレーディング株式会社)
    〈方法〉整形外科の術中にO-arm を使用した3症例で, スタッフの被曝線量を測定した。半導体式電子ポケット線 量計を,整形外科医のプロテクターの内側と外側,放射線 技師のプロテクターの内側と外側,麻酔科医の前に立てた X 線防護衝立の内側と外側に装着して測定した。
    〈撮影条件〉3D 撮影:120kV,25~32mA,100~128mAs
    (初期設定値),透視:62~90kV,5.0~6.6mA(AEC), 撮影中心部位からの距離は整形外科医:1m,放射線技 師:2m,麻酔科医:2m とした。
    〈結果〉被曝線量が高かったのは,症例1では整形外科医 のプロテクターの外側で27マイクロシーベルト,症例2で は麻酔科医のX 線防護衝立の外側で26マイクロシーベル ト,症例3では整形外科医のプロテクターの外側で14マイ クロシーベルトであった。
    〈考察〉O-arm の使用頻度を月8回として計算すると, 年間の整形外科医の被曝線量は0.027×8×12=約2.6ミリ シーベルトとなる。許容される年間の職業被曝線量である 50ミリシーベルトの5.2%と低い値であった。
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