日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
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  • 馬島 美奈子, 菊池 啓恵, 鈴木 章子, 土田 絵里, 田島 麻奈美, 依田 康宏, 佐藤 美智子
    セッションID: 2J-B-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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     シーティングとは車いす上のポジショニングにより安楽かつ安定した車いす座位をセッティングすることである。当院では主に作業療法で対応しており、車いす座位での食事等のADL訓練につなげている。今回当院作業療法士への聞き取りを実施し2010年度シーティング実施状況の調査を行った。その結果2010年度シーティング実施件数は87件で作業療法処方件数の11.4%であった。実施した対象者を疾患別にみると脳血管疾患37%、骨関節疾患30%であった。実施理由別にみると車椅子姿勢保持困難、殿部痛、殿部発赤、褥瘡の順に多く、実施内容ではおよそ7割がクッション使用による対応であり、その他は車いす変更・車いす調整となっていた。
     シーティングを実施した87名のうちシーティング目的での作業療法処方であったのは36%で、それらの処方は殿部発赤や褥瘡等の理由での車いすクッションの必要性による理由が多かった。当院では、褥瘡対策チームのメンバーとして医師・看護師・栄養士等と共にリハスタッフも介入している。褥瘡回診の中でリハ介入が必要な場合、リハ処方を出してもらいシーティングを実施し病棟への指導を行っている。
     シーティングは今まで担当作業療法士が一人で対応していることが多かったが、クッションや車いすの変更だけでは難しい場合もある。そのため今年度より他スタッフと一緒に評価し改善を図っていく目的でシーティングクリニックを導入し、定期的な実施に向け取り組んでいる状況である。当院でのシーティングクリニックの実用的な運用への取り組みについても検討し報告する。
  • 小早川 仁美, 間中 淳子, 山田 彰, 五艘 香, 飯尾 宏
    セッションID: 2J-B-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    〈はじめに〉当院では、乳癌患者の作業療法(以下OT)を術後翌日から開始しているが、手術手技の向上により入院期間が短く、外来OTも短期で終了することが多い。今回、乳癌患者のQOLを調査・検討し、短期介入での援助が十分であるのかを考察する。 〈対象〉2011年2月~5月に当院で乳癌の手術を施行、OTを実施し自宅退院に至った患者6名。 〈方法〉WHO「QOL-26」、日本乳癌学会「QOL評価研究ガイドラインの調査票」(以下QOL-ACD-B)、自由記載項目を設けた調査票3種を術前、術後5日、術後2週に個別配布し、検討した。 〈結果〉QOL26では、QOL平均値は術前3.42、術後5日3.27、術後2週3.33であった。身体的領域別平均値は3.66、3.19、3.3で、心理的領域別平均値は3.36、3.22、3.16であった。QOL-ACD-Bの身体症状は、81.67、66.93、75.65であった。 〈考察〉QOL26のQOL平均値と身体領域別平均値が術後5日~2週にかけて上昇、術前の点数に戻りつつある。QOL-ACD-Bも同様な結果であった。これは、従来の身体機能向上を目的とした訓練効果もあるのではないかと思われる。心理的領域別平均値においては、術前、術後5日、2週後と徐々に下降、術前の点数まで回復していなかった。この結果から、OTは心理面が下降している時期に終了している可能性が高く、身体面だけではなく、心理面のQOL向上に繋がるような援助がより必要であると考えられる。作業療法士は身体・精神の両方の知識を兼ね備えており、心理状態に応じて患者の退院後の生活環境や社会的役割にあわせた日常生活動作の指導、環境設定が可能である。このようなOTの特性を活かし、乳癌患者のQOL全体の向上を目指すことにより、心理面のQOL向上に繋がると考えられる。
  • 太附 広明, 和田 朋子, 野間 靖弘, 相澤 達, 井関 治和, 干場 泰成, 杉原 達矢, 藤崎 浩行, 岡元 崇, 乗松 東吾
    セッションID: 2J-B-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    【目的】  当院では心大血管リハビリテーション(以下、心大血管リハ)を2007年度に開設した。今回は心大血管リハの現状把握を目的に調査を行ったので報告する。 【調査対象と方法】  2010年1月~12月末までに心大血管リハを実施した入院患者430例と外来患者110例中、心肺運動負荷試験(CPX)のみの4例を除く106例を対象とし、患者属性(診断内訳・術式、年齢、性別)、月間延べ件数、CPX実施数、外来移行率を調査した。 【結果】 1.入院患者について  診断内訳は循環器内科301例(虚血性心疾患146例、心不全120例、ペースメーカー植込術11例、ASO 9例、その他15例)、心臓血管外科患者130例(CABG及びCABG+弁形成術29例、CABG+弁置換術3例、弁置換術30例、大動脈瘤39例[保存15例、術後24例]、大動脈解離23例[保存15例、術後8例]、その他6例)であった。年齢は71.3±13.1歳、性別は男性278例、女性152例であった。月間延べ件数は平均367.6(277~459)件、CPX実施数は122件であった。 2.外来患者について  診断内訳は内科患者81例(虚血性心疾患63例、心不全10例、ASO 7例、不整脈1例)、開心術後患者25例(CABG 10例、CABG+弁形成術4例、CABG+弁置換術1例、人工血管置換術2例、弁置換術3例、弁置換術+弁形成術4例、ASD閉鎖術1例)であった。年齢は64.3±10.9歳、性別は男性77例、女性29例であった。月間延べ件数は1月~3月は平均79.7例(70~94)、4月~12月は平均106.7例(96~118)、CPX実施数は80例、外来移行率は虚血性心疾患26.0% (38/146)、開心術後患者13.8%(13/94)であった。 【結語】  調査によって心大血管リハの現状が把握できた。これらから今後の課題を検討する必要がある。
  • 篠田 佳子
    セッションID: 2J-B-7
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    研究目的  心臓リハビリテーション導入前と心臓リハビリテーション導入後の患者において、退院後の日常生活への影響を明らかにする。 研究対象・方法 H18~H20.1月の心臓リハビリテーション導入前患者の18件、H20.2月~H22の心臓リハビリテーション導入後患者の26件とし、対象の年齢は40歳~80歳台。 対象者の退院後の生活について、病状理解・内服薬の項目、運動量への不安・継続の項目、食生活・日常生活の注意事項の計15項目について、パンフレットに沿った独自の質問紙を作成。対象者に質問紙調査を実施。また他医院通院患者には、質問紙調査を郵送にて実施。 考察  運動量への不安についてのみに有意差があった。一人一人の心機能に合わせた活動量をパンフレットに表記したことが効果的だったと考えられる。また、理学療法士・看護師・医者そして患者と他部門との連携の中で行うリハビリも良かったと考えられる。病状理解や内服薬や食生活については、主治医や栄養士から個別性のある指導を受けたが、有意差は見られなかった。このことから、患者のみでなく家族を含めた教育指導が必要であると考える。日常生活習慣での注意事項については、実行出来ている患者が多かったが、有意差は無かった。これはQOLに合った指導内容ではない内容だった為、個別性に欠けていた事が原因ではないかと考えられる。運動の継続について有意差は無かった。B病棟では対象者が高齢化しているため全員に運動継続を求めるのは困難である。また、対象年齢も幅広く全ての対象者にとって、心臓リハビリテーションが有効とは言えなかった。今後も対象者の高齢化は変わらないのが現状である。その為、対象者の年齢・生活レベル・環境に合わせた指導が必要であり、他部門と情報を共有したチーム医療が必要であると考える。
  • 野中 聡, 高宗 直樹, 高野 智王, 青木 健, 鈴木 美香, 木本 雅子, 守屋 大輔, 伊藤 祐輝, 樋口 佳子, 渡辺 慎太郎
    セッションID: 2J-B-8
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    <目的>
     当院の心筋梗塞患者を対象とした回復期心臓リハビリテーションにおけるレジスタンストレーニング導入の効果を検証すること。
    <対象>
     2008年7月~2011年5月までに、当院リハビリテーション科において入院期の急性期心リハを実施した急性心筋梗塞患者86名のうち、外来通院による回復期心リハを少なくとも発症後3ヶ月以上継続できた27名(63.9±10.9歳;男性24名、女性3名)を対象とした。
    <方法>
     回復期心リハにおいて通常の運動療法プログラムのみを実施した対照群13名と、通常の運動療法プログラムに加えてレジスタンストレーニング(RT)を実施したRT群14名の運動機能や運動耐容能等の経時変化について、診療記録(カルテ)に基づき後方視的検討をおこなった。RTについては、個々の整形外科疾患や神経疾患等の有無を確認し、能力的に可能であるか否かを心リハスタッフが判断した上で患者本人へ説明をおこない、同意の得られた者に対して導入した。主な評価項目は発症後1、3、5ヶ月の時点における目標心拍数(THR)と運動療法中の自転車エルゴメータ負荷量(watt)とした。負荷量については内服状況や運動時の自他覚症状の変化に基づき、Karvonen式で概ねk=0.3~0.6の範囲で設定し、適宜見直しをおこなった。
    <結果と考察>
     発症時の年齢やPeak CK値、在院日数、外来通院期間および回数等については2群間に有意差は認められなかった。両群ともに外来フォロー期間中のTHRには有意な変化はみられず、RT群のみ発症後1ヶ月と5ヶ月時点での比較においてk値ならびに負荷量の有意な増加が認められた。また2群間の負荷量の比較では3、5カ月時点においてRT群が有意な高値を示した。以上のことから、当院におけるRTプログラムは心筋梗塞患者の回復期における運動耐容能の改善に有用であると思われた。
  • 高宗 直樹, 野中 聡, 高野 智王, 青木 健, 鈴木 美香, 木本 雅子, 守屋 大輔, 伊藤 祐輝, 樋口 佳子, 渡辺 慎太郎
    セッションID: 2J-B-9
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    <目的>
     当院の急性期心臓リハビリテーション(心リハ)を完了した心筋梗塞患者を対象に、退院後の外来通院による回復期心リハへの参加継続に関わる因子を検討すること。
    <方法>
     2008年4月~2011年4月までに、当院リハビリテーション科において入院期の急性期心リハプログラムを完了した急性心筋梗塞患者67名(年齢64.3±11.1歳:男性59名、女性8名)を対象に、外来通院による回復期心リハを発症後3ヶ月以上継続できた継続群28名と、継続できなかった脱落群39名に分類し、各群の背景因子について診療記録に基づき後方視的に検討した。さらに、脱落群を入院期のみ心リハを施行した外来不参加者32名とそれ以外の7名に分類し、背景因子および脱落理由についても同様に検討した。
    <結果>
     継続群と脱落群で性別、年齢ともに差は認められなかった。Peak CK値や入院期間、就労の有無についても差は認められなかったが、継続群に比べて脱落群で、心リハ開始病日が早く(p<.05)、左室駆出率が高値であり(p<.05)、居住地が当院所在地と異なることが多かった(p<.05)。脱落群において、外来不参加者とそれ以外での背景因子については有意差は認められず、脱落理由については自己都合が最も多く、その他では遠方による通院困難、復職、心筋梗塞再発等であった。
    <考察>
     本研究の結果では、心リハ開始病日や左室駆出率は外来通院による心リハを継続するための阻害因子とはならず、居住地が遠方という物理的要因が阻害因子となることが示唆された。一方、脱落群の脱落理由については自己都合が多数であり、その詳細については今後さらなる検討が必要である。
  • 守屋 大輔, 野中 聡, 高宗 直樹, 樋口 佳子, 里見 良輔
    セッションID: 2J-B-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    <症例紹介・60歳>
     [診断名]肺炎,急性呼吸窮迫症候群,間質性肺炎[現病歴]咳が出現.自宅の医院にて胸部XP撮影し陰影あり.抗生剤内服するも呼吸苦により近医受診しCT上両側全肺野に肺炎像確認.第4病日に当院紹介受診後即入院となる.[既往歴]糖尿病,脳梗塞(右軽度片麻痺)[入院前生活]ADL全自立,開業医[倫理的配慮]本人に文章・口頭で説明し自筆署名で同意を得た.
    <開始時状況・第6病日>
     人工呼吸器管理(CPAP).ROM:両足関節背屈0度.拘縮予防目的にリハビリテーション(RH)開始し,weaningは第10病日完了.
    <経過>
     第17病日肺炎増悪にて一時中止.第36病日RH再開,背臥位はSpO2≧90%(room air)だが,ギャッチ座位にてSpO2<90% (リザーバーカヌラ4~7L/分).第61病日ギャッチ座位にてSpO2≧90%(カヌラ2~6L/分)だが,端座位でSpO2<90%.第71病日車椅子乗車時はSpO2≧90%(鼻カヌラ3 L/分).座位での運動療法を行うがSpO2<90%となり背臥位中心に施行(SpO2≧90%).第75病日活動量増大目的に背臥位でのエルゴメータ駆動開始.下肢筋力体重比:右7.4%・左8.2%.第84病日に端座位の運動もSpO2≧90%(room air).第88病日歩行器歩行が15m中介助(カヌラ7L/分),起居動作も軽介助となる.しかし本人希望により下肢筋力体重比:右8.1%・左9.9%,歩行器歩行は80m見守り(カヌラ7L/分)にて第122病日自宅退院となった.
    <考察>
     換気血流比不均等によるSpO2低下と臥床による廃用を呈し,背臥位はSpO2≧90%だが,座位にて著明な低下が確認された.このため座位や立位ではなく背臥位中心に運動療法を施行することでSpO2の著明な低下を惹起することなく筋持久力の向上が図れ,座位獲得や介助量軽減に至ったと考える.
  • 權田 敏彰, 仲川 賢, 中村 訓之, 鈴木 康友
    セッションID: 2J-B-11
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    <はじめに>近年、医療現場では呼吸リハビリテーション(以下、呼吸リハ)に対する関心は著しく高まっている。呼吸リハは呼吸機能の維持向上のみならず、対象者のADLやQOL向上を目標しており、早期介入の必要性は高い。今回、当院における呼吸リハの現状を調査したので報告する。
    <対象と方法>2010年4月~2011年4月に当院入院し、呼吸リハを施行した40例(男性34例、女性6例、平均年齢77.4±9.8歳)とした。カルテより後方視的に、疾患名、入院時CRP、人工呼吸器使用患者数、在院日数、入院日より呼吸リハ開始までの期間、呼吸リハ実施期間(退院日まで;以下、実施期間)、転帰を調査した。(在院日数、実施期間においては死亡例を除く)
    さらに死亡10例を除いた30例を、入院日より呼吸リハ開始までが7日以内(15例;A群)と8日以上(15例;B群)に分け、実施期間、歩行能力を比較した。
    <結果>疾患名は慢性呼吸不全急性増悪が最も多く25例、次いで(誤嚥性)肺炎が9例であった。入院時CRPは1.2mg/dl(中央値)、人工呼吸器使用患者数は9例であった。在院日数は47.4±46.1日、呼吸リハ開始までの期間は16.4±17.3日、実施期間は31.3±32.7日であった。転帰は自宅退院28例、転院1例、施設1例であった。
    実施期間はA群20.8±13.6日に対し、B群49.5±42.1日と有意な差があった(p<0.05)。入院前歩行能力は両群とも維持されていた。
    <考察>今回の調査においても、呼吸リハの早期介入の必要性が示唆された。当院での呼吸リハ開始までの期間は個人差が大きく、1ヶ月以上超えている例もあり、B群ではCRP高値や人工呼吸器使用患者などの重症例が多くを占めていた。重症例でも呼吸リハの早期介入が可能であり、今後医師を中心とした他職種に対して働きかけていく必要がある。
  • 沖田 英人, 村元 雅之, 藤田 恭明, 上原 恵子, 榊原 香代子, 金原 真紀, 佐藤 由美子
    セッションID: 2J-B-12
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    アルブミンとCRPの関係について<BR>知多厚生病院NST<BR>沖田英人・村元雅之・藤田恭明・上原恵子・榊原香代子・金原真紀・佐藤由美子<BR>褥瘡治療の大きな壁は誤嚥性肺炎である。感染症でCRPが増加する際にはアルブミン(以下Alb)も低値を示しやすく、一般には感染により増加したストレス係数の分だけ投与エネルギーを増量する。逆に近年は、AlbとCRPは負の相関にあり、CRPの増加する感染時には宿命的に内因性エネルギーが産生されているため、overfeedingにならないよう外因性エネルギー投与量は控えるべき、との意見がある。そこで我々は、スキンケア委員会(褥瘡委員会)とNSTで半年以上観察した重度褥瘡患者11名を対象にAlb、CRP、投与エネルギー量を検討し相関性を調査した。AlbとCRPの相関関係数はほぼ全例で負となり、うち負の相関が得られたのは1例で、その相関係数は-0.86であった。また投与エネルギー量との相関は、ほぼ全例でAlbよりも希薄であった。<BR>今回の調査では、予想していたほどはAlbとCRPの逆相関は得られなかったが、感染や浸襲時には骨格筋が崩壊して肝はCRPを作るためAlb合成がおろそかとなり、この時外因性にエネルギーを投与しても蛋白異化抑制できず、従って感染の消退までエネルギー量を控える、とする考え方は妥当であると思われた。
  • 原信田 努, 富永 勉, 倉益 直子, 佐藤 梨香, 中嶋 文江, 勝沼 紀子, 川下 祐喜子, 杉村 沙都江
    セッションID: 2J-B-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    【目的】
    NST Assistantを使用した,栄養サポートチーム(以下NST)加算の当院の現状について報告する.
    【方法】
    電子カルテシステムMega-Oak HR上で栄養サポート部門システムNST Assistant(いずれもNEC社製)を使用する.当院の8病棟中,過去において対象患者の少なかった,産婦人科と小児科を以外の6病棟で,各病棟週に1日5件,1日当たり病院全体で概ね30件について加算とし.同一または別の症例について毎週同じ手続きを実行する.病棟看護師が対象患者を絞り込み,システムに入力する.NST回診時に,システムに入力された症例について内容を確認し,プランを追加入力した上で,NST加算として実施入力する.
    【結果】
    2010年6月より対応を開始いて,月平均100件のNST加算算定となった.システムへの入力作業は1件当たり概ね10分を要したが,看護師の通常業務の枠組みで対応が可能であった.NST回診は1件当たり概ね10分を要し,1回診日30件全体で5時間を要した.患者家族への説明は可能な限り回診時に実行したが,一部は病棟看護師に委任した.
    【考察】
    NST Assistantは,大部分が自動で入力され,複数のパソコンで操作できるため,データの共有と入力作業に関して,NST加算への対応には,強力なツールとなりえました.専従者がいることで,事前に対象患者の把握ができ,回診の効率が上がりました.今後件数拡大を企図していますが,マンパワーが必須であり,栄養評価の実質的な充実を図るには,スタッフのリテラシー向上が必要と考えます.現状の専従専任の体制では,診療報酬との費用対効果の面で困難であると考えます.
    【まとめ】
    NST Assistantを使用して,NST加算に対応した.導入後,NST介入数が増加した.栄養評価の実質的な充実を図るには,スタッフのリテラシー向上が必要である.
  • 高橋 直子, 小俣 利幸, 吉田 昌浩, 新美 文子, 須田 春香, 斎藤 由紀子, 鈴木 俊郎, 柴原 宏, 高野 靖悟
    セッションID: 2J-B-14
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    近年、血液浄化を導入する患者は高齢化しており、糖尿病等の高度な血管変性を伴う慢性腎不全が増加している。維持透析患者においても長期透析患者が増加し、多様な合併症によりアクセス困難症になる場合もある。当院は急性期地域医療支援病院のため緊急導入やバスキュラーアクセストラブル搬入が多い。そのためバスキュラーアクセスが無く、AVF、AVG等が使用可能になるまでのBridge use使用が多いが、症例によっては患者QOLを考えPermanent useでもバスキュラーカテーテル(以下VC)を使用している。
    VC使用時の管理不備は透析不足や感染症等、生命に直接危険がおよぶトラブルにつながる。VCを安全に使用するためには医療従事者側、患者側が協力してVC管理を行うことが重要である。技士のVC業務は再循環率測定及び管理である。運用方法も改良を加え6年が経過した。
    我々は安全なVC管理のために、カテーテルに関連する感染症対策や血栓形成対策などと同様、アクセス再循環率の測定は透析効率の低下を未然に防ぐ重要な管理方法であると考え、今回、当院のVC再循環率測定・管理方法について紹介するとともに、定期的なアクセス再循環率の測定を推奨する。
  • 岡田 拓也, 小廻 哲也, 山根 明, 永井 智彦, 榎 美穂
    セッションID: 2J-B-15
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】現在、 当院での臨床工学技士業務は、各種血液浄化業務、ME機器管理業務、 眼科手術業務( 硝子体手術 )、 外科手術業務( ラジオ波焼灼術 :RFA)を行っている。厚生労働省からの通知として平成20年4月1日より“医療機関等における医療機器の立会いに関する基準」が施行された。そのため、当院では平成20年2月から眼科手術業務が開始され、硝子体手術 における機器操作を行ってきたので報告する。 【結果】症例数:平成20年2月~平成23年5月 126件 【考察】硝子体手術において、臨床工学技士が積極的に業務を行うことで、医師・看護師との信頼関係が向上した。 硝子体手術では特有の機器のため知識と経験が重要であり、 医師の求めるレベルに達していない部分もあったが、実際に一年間専門業者に立ち会ってもらい技術等を習得した。今後も積極的に勉強会や自己学習を行なっていきたいと考えている。
  • 伊藤 麻紀, 宮田 香, 高谷 浩英, 齊藤 厚, 高橋 茂
    セッションID: 2J-B-16
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉昨今の化学療法の多様化に伴い外来での抗がん剤治療が増え、病院での点滴後に調剤薬局で薬を受け取る流れが出来ている。しかし調剤薬局では、告知の有無も含めて抗がん剤化学療法に関する知識が乏しく、また患者の治療計画、治療段階、状態等を知る手だてがなかった。休薬期間を要するなど服用方法の複雑化によるコンプライアンス低下も懸念される。そこで患者により有益な服薬指導が出来るよう、病院薬局との情報の共有化を含め薬薬連携の在り方の模索を始めたので、その経過と今後の展望について報告する。
    〈事例の概要〉まず処方箋発行元の仙北組合総合病院薬剤科との話し合いから始め、お互いに必要とする情報の交換、治療スケジュールに関してのレジメンの提供、指導ツールの共有化を行った。その後病院薬剤師による外来での化学療法開始時の患者説明への立ち会い、病院薬剤師や医師による抗がん剤化学療法・服薬指導についての勉強会を開催した。また薬剤を限定したうえで服薬スケジュール表の提供を受け、調剤薬局での患者服薬指導の実施へと繋げた。更に告知の有無等を確認する窓口を病院薬局とし、入院時から継続した指導を行えるようなシステムの構築を図った。
    〈結果及び考察〉化学療法開始時の説明に立ち会った患者には、現在は毎回同じ担当薬剤師が対応している。病院薬局との連携により情報が共有され、問い合わせのルートが確立された。告知の有無がわかることで窓口対応での戸惑いも軽減された。今後は薬剤の種類を広げ対象患者を増やしていく事と、薬剤師全員が関わる様な体制作りが必要となる。抗がん剤治療に対する患者の不安を和らげ服薬コンプライアンスが遵守されるように、また副作用の早期発見により治療効果ひいてはQOLに反映されるよう努力していきたい。
  • 大谷 俊裕, 色川 正憲, 近藤  幸, 猪瀬 成史, 比氣 明子, 高橋 朝樹, 堀越 建一, 常盤 英文
    セッションID: 2J-B-17
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】シスプラチン(CDDP)は白金錯体であり、多くのがん種のkey drugとして使用されている。副作用として腎障害があり、予防として水負荷(ハイドレーション)が行われているが、有効なハイドレーション方法のエビデンスは得られていない。そこで、臨床検査値やハイドレーション量よりCDDP投与時の腎機能に影響を与える因子について後ろ向き調査を行った。
    【方法】対象は、2009年4月1日~2011年3月31日にティーエスワン®+CDDPを施行した患者入院55名、外来27名の総217コースについて検討を行った。
    調査項目は、年齢、体表面積、投与量(Dose)、投与量割合(%dose)、BUN、血清クレアチニン(sCre)、推定糸球体ろ過量(eGFR)、アルブミン(ALB)、ハイドレーション量(CDDP投与前日、当日の合計)である。統計解析は、SPSS 19.0を使用した。
    【結果】CDDPの投与方法は、60mg/_m2_×1回/コースが入院39名、外来8名であり、30mg/_m2_×2回/コースが入院16名、外来19名であった。%doseは、入院95%、外来78%であり、ハイドレーション量中央値が入院2,350mL、外来1,350mLであった。eGFRが10%以上の低下は入院28名、外来7名であり、eGFRのCTCAE ver.4.0評価において、Grade1から2へ低下が入院4名、外来1名、Grade3以下への低下はなかった。eGFRが10%以上の低下では、%dose、ハイドレーション量、BUNが高く、入院で多かった。
    【考察】外来施行時にeGFR低下症例が少なかったことは、外来では30mg/_m2_×2回/コースで施行されることが多かったことと、% doseが入院に比べて低いことが要因の1つとして考えられるが、外来のハイドレーション量でも腎機能を低下させずに投与できていると考える。
  • 三田 貴之
    セッションID: 2J-B-18
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉2009年3月にカルシウム非含有高リン血症治療薬である炭酸ランタン(ホスレノール®チュアブル錠:以下、ホスレノール)が発売された。それに伴い当院でも、これまでに服用していた高リン血症治療薬からホスレノールに切り替える血液透析患者が増えてきた。ホスレノールの開始量は750mgだが、そのままの量では血清リン濃度(IP値)が十分コントロールできず増量となる患者が多いように見受けられる。増量の指標としては換算率が必要となるが、わが国ではホスレノールと塩酸セベラマー(レナジェル®錠:以下、レナジェル)の換算については、1:2との報告が散見されるもいまだ症例が少ない。そこで今回、当院でも血液透析患者を対象にホスレノールに切り替えた後の換算率について検討したので報告する。 〈方法〉当院の血液透析患者で6月までレナジェルを服用しており、7月にホスレノールに切り替えた患者を対象とした。対象患者のIP値を切り替え後12週間追跡調査した。但し、期間中にホスレノールの服用を中止した患者、途中でレナジェルまたは沈降炭酸カルシウムを追加した患者は対象から除外した。換算率は、ホスレノールの一日平均服用量に対するレナジェルの一日平均服用量として算出した。 〈結果・考察〉切り替え後のIP値は有意に低下し、換算率は1.65となった。よって増量の指標としてホスレノール:レナジェル=1:1.5から2が望ましいと考えられる。この検討結果を踏まえ、今後新たに切り替えを行う患者に対して適切な投与量を提案できるよう関っていきたい。
  • 木村 清美, 成島  俊輔, 小島 和佳子, 辻 桃子, 小山田 聡, 津田 晃央, 鈴木 敬久, 井坂 彰一
    セッションID: 2J-B-19
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
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    <はじめに> 高血圧治療において ARB と利尿剤の併用は作用機序の異なる両剤の相乗的な降圧効果をもたらし、配合錠の使用により服薬アドヒアランスの向上という点においても有用であるとされている。今回当院でのエカード®配合錠 HD (以下、エカード®) 使用による有用性を検討するために診療録より後ろ向きに調査を行ったので報告する。
    <方法> 平成 22 年 5 月 11 日 ~ 10 月 31 日の期間中、エカード®が処方された外来患者を対象に診療録を調査した。年齢、性別、合併症の有無、エカード®服用開始前後の処方内容・血圧・主な検査値、処方継続状況を後ろ向きに調査し、有用性について統計処理を行い検討した。なお p < 0.05 を有意とした。
    <結果> 対象患者 136 例において、エカード®服用開始後の血圧は服用開始前に比べ有意に低下した。 ARB からの切り替えが全体の 87.5 % を占め、高用量 ARB からの切り替えにおいても血圧は有意に低下した。 JSH 2009 で示す降圧目標の達成率を切り替え前後で評価したところ、全症例において 12.5 % から 30.1 % へと有意な改善が認められ、降圧目標が最も厳しい糖尿病・慢性腎臓病・心筋梗塞後患者においても、達成率は 8.5 % から 29.8 % へと有意に改善した。切り替え前後の薬剤費を比較したところ、 182.4 円 / 日から 159.2 円 / 日へと有意な低下が認められた。
    <考察> 調査の結果エカード®使用により有意な降圧効果が得られ、血圧コントロールの改善が認められた。薬剤費及び服薬アドヒアランスにおいても、患者の利便性は高まり有用性が得られているものと考えられる。新規薬剤の投与開始に際しては、患者への安全性と有効性の両立を図りながら進めることが重要である。今後も積極的に臨床効果の調査に関与し、情報を収集・解析しフィードバックしていきたいと考える。
  • 川井 正光, 大石 えりか, 三宅 芳男, 羽田 清, 志水 辰法, 吉田 厚志
    セッションID: 2J-B-20
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 診断群分類包括評価(DPC:Diagnosis Procedure Combination)を用いた入院医療費の定額支払い制度においては患者が服用、使用している薬剤を入院時に持参し使用することが病院の収益の為にも必要である。 しかし複数の医療機関からの処方薬やジェネリック医薬品の増加で医師、看護師では薬剤の鑑別が困難なこともあり、入院する病院にとって持参薬の安全管理は大きな課題である。当院では2011年4月からのDPC対象病院への移行に伴い、入院決定時に患者との面談を行なう術前中止薬の確認への取組みと、入院時における「持参薬報告書」の作成を全科対象として薬剤科で行なっている。今回当院薬剤科における持参薬確認の取組みを医師、看護師の評価および経済的効果を踏まえて報告する。
    【アンケート結果】 看護師へのアンケート結果では「薬剤師の専門性が発揮される」、「持参薬の適正使用に繋がる」、「リスク回避に繋がる」、「情報の共有化が図れる」の回答がいずれも80%以上。「業務が軽減される」が70%以上、「医療費の削減に繋がる」は60%以上の回答を得た。
    【今後の課題、抱負】 現在全科を対象とした持参薬管理では人員的な都合もあり入院時に直接薬剤師が患者または患者家族に対し初回面談を行うことで情報を得られていない。将来的には持参薬管理センター化も視野に入れ、術前中止薬、検査前中止薬の確認など医師、病棟薬剤師、看護師との情報の共有化を図っていきたい。
    【まとめ】 患者持参薬を有効に活用することは、病院経営的な面からも重要性が高いと考える。薬の専門家である薬剤師が患者持参薬の確認に携わることで、医療安全面と経済面の両方に貢献することは、今後の病院薬剤師の大切な業務であると考える。
  • 伊藤 源基, 堀部 哲子, 熊田 克幸, 白川 舞, 桑原 清人, 水口 芳信, 近澤 豊
    セッションID: 2J-B-21
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】現在、当院で扱う医薬品は多種多様にわたり、これらの医薬品情報管理・提供については薬剤師がその責を負わなければならない。当院では、主に院内医薬品集やDIニュース等で情報提供を行っているが、日々我々に提供される情報も膨大であり、それらに網羅されないような情報については、薬剤師各々が個々に対応しているのが現状である。そこで今回我々は、これまでに収集した医薬品情報、情報提供の際に使用した書類、作成物を集積することにより、必要に応じて検索が可能な医薬品情報管理システムの構築を行ったので報告する。
    【方法】
    1.情報収集
    薬局内に有る10数台のPC端末内に保管された医薬品関連情報を集積した。また、電子媒体ではない書類は、スキャナーを利用しPDF文書として電子化した。
    2.分類
     集積された情報を分類し、各フォルダに入れサーバーに保管した。ファイル名は作成日、タイトル、キーワードとした。
    3.医薬品情報管理システム
     Microsoft Access2003を用い、分類の選択、キーワードを入力することで検索し、蓄積された情報の中からその内容を表示するシステムを構築した。
    【結果】システム構築とサーバーによる情報の一括管理の結果、各薬剤師間での情報の共有化、同じ質での情報提供が可能となった。また、情報の更新はフォルダ内のファイルを操作するだけでシステムに反映されるため、容易となった。
    【考察】当院の場合、DI室に専従の薬剤師を配置することは人員的に困難である。今回は、今まで集積された医薬品関連情報を管理、共有する目的でシステム構築を行った。これにより、蓄積された情報の中からその時々に応じ、必要な情報を素早く検索し提供、活用することが可能となった。今後は、登録情報数が増大していくことが予想されるため、システム改良に努めていきたい。
  • 岡村 武彦, 秋田 英俊, 小林 隆宏, 安藤  亮介, 中根  明宏
    セッションID: 2J-B-22
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 CDCが手術部位感染 (SSI) に関するガイドラインを勧告して以来、様々な病院でSSI対策が行われてきた。当院泌尿器科では以前抗生剤の長期間使用傾向があり、他科と同様にMRSAによるSSIが後をたたなかった。これを改善すべく2005年から、手術手洗いの徹底、抗生剤単剤の短期使用、術直後からのドレッシング材使用、速乾性アルコール剤使用の徹底による感染対策を行ってきたが、十分な手術部位感染 (SSI : Surgical Site Infection) の抑制には至らなかった。そこで、SSIを減少させるために、2010年より、全ての開放手術の創部閉鎖方法を変更して、2007年までのデータとの間で比較検討した。 【方法】皮下脂肪を吸収糸で結節縫合し、皮膚をナイロン糸で結節縫合する従来の閉創方法(2002年から2007年までの327例)と、以下の方法(2010年1月以降の41例)を対象とした。_丸1_皮下脂肪は縫合を行わず、10F J-VACブレイクシリコンドレーンを留置し、閉鎖式吸引バックを用いて持続吸引する。_丸2_皮膚を4-0吸収糸で真皮縫合後、カラヤヘッシブで密閉する。【結果】2002年から2007年までの当院のSSIの発生数は、開腹手術327例中、46例(14.5%)、腸管利用の尿路変更を伴う膀胱全摘術25例では、14例(56%)と非常に多かった。しかし、閉創方法を変更後は、腸管利用の尿路変更を伴う膀胱全摘術の6例を含む41例中、1例しかSSIは発生していない。 【考察】皮下ドレーンの持続吸引と真皮縫合による閉創方法は、皮下脂肪を密着させて死腔を減らし、浸出液を持続吸引することで、SSIの抑制に有効であると思われた。今後もこの創部閉鎖方法を続けると共に、院内の他の科にも採用してもらうよう啓発して行きたい。
  • 小出 明奈, 花ノ内 基夫, 鈴木 和人, 久保田 勝俊, 岩月 奈都, 久田 弘美
    セッションID: 2J-B-23
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 プロカルシトニン(以下PCT)は、ウイルス感染症や局所感染では血中濃度がほとんど上昇せず、細菌感染症で上昇する事が報告されており、敗血症の診断とその重症度を反映することからも近年注目を集めている。 我々は、外来棟新築に伴いcobas6000(ロシュ・ダイアグノスティックス)を導入し、緊急性の高い項目であるPCTを24時間体制で測定を行う事とした。導入以後、オーダー数も飛躍的に増え、臨床での必要性を強く求められる結果となっている。今回、敗血症を疑い、PCTと血液培養検査を実施した患者さんの検査結果について検討したので報告する。 【対象及び方法】 平成21年8月より平成23年3月の間に、PCTと血液培養検査をほぼ同時に採血した173例を対象とした。PCTの測定機器は、cobas6000を使用し、測定試薬はエクルーシス試薬ブラームスPCTを使用した。血液培養は、BATTEC9050(BD)により測定された結果を使用した。 【結果】  173例の症例中、PCT・血液培養ともに陰性を示した症例が69例、陽性を示した症例が33例で、一致率は58.9%であった。  血液培養の陽性率はPCT濃度が20.0ng/ml以上で34.6%であったが、20.0ng/ml未満では、10%前後であった。 またPCTが陰性にも関わらず、8例の症例が血液培養で陽性を示した。8例中、コンタミを疑う症例が4例、尿路感染・髄膜炎・ウィンドピリオド・創部からの感染を疑う症例がそれぞれ1例であった。 【考察】   今回の検証において、PCT濃度と血液培養の相関性は認められなかったが、PCT濃度が0.5ng/mlならば敗血症を疑う確率は低く、敗血症の迅速診断に有用である結果を得る事ができた。 当院では、細菌感染症に特異的であるPCTを24時間測定30分報告できる体制を整えており、医療現場のニーズに適した検査を提供することにより、患者のQOL向上に少しでも貢献できるよう努めたいと考える。
  • 浅川 ひとみ, 冨永 等, 内田 美寿子
    セッションID: 2J-B-24
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉菌血症・敗血症の診断において、血液培養は重要な検査の一つである。早期に診断することで、患者予後の改善や入院日数の短縮、抗菌薬の不適切な使用の防止にもつながる。しかし、血液培養は手技が不適切であると起炎菌の検出頻度は低くなり、起炎菌以外の菌が混入する原因となる。また、1セットのみの採血では2セット以上採血した場合と比べ起炎菌の検出率は低くなる。そのため、血液培養を有益なものとするためには正しい方法による検体採取が重要となってくる。
    〈当院の取り組み〉当院では血液培養の実施率向上と起炎菌の検出向上のため、2003年にガイドラインを作成した。ガイドラインには、血液培養の対象となる患者、検体採取法などを定めた。対象患者にはあらかじめ医師が血液培養の指示を出しておき、ガイドラインに定めた基準を超えた患者について看護師の判断で採血を行い、後で報告することとした。そして、必ず2セット以上提出とし、複数回採血を徹底した。当初は提出にばらつきがみられたが、看護師への勉強会を行うなどして周知徹底に努めた。
    血液培養の実施数は、2003年度では323件、2010年度では560件であった。そのうち2セット以上の提出率は2003年度では12.1%であったのに対し、2010年度には91.4%まで増加した。
    〈今後の課題〉現在、休日・夜間の血液培養陽性時には当直の検査技師が主治医・病棟看護師への陽性連絡と平板培地への培養を行い、グラム染色は行っていない。今後は、普段細菌検査に携わっていない技師にも陽性時にはグラム染色を行ってもらい、臨床側へより迅速な報告ができるようにしていきたいと考えている。
  • 三宅 範明, 宮本 忠幸
    セッションID: 2J-C-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    <症例提示> 症例:10代後半、男性。 既往歴: 生下時より水頭症を指摘され、1歳時にクルーゾン症候群と診断される。5歳までに2回の頭蓋形成術を受ける。10代後半に2回、顔面骨の形成術を受ける。 主 訴: 発熱 現病歴: 2010年1月7日、38度台の発熱のため近医受診。抗生物質投与にて解熱するも尿潜血、膿尿認めるため初診医より近隣の泌尿器科医へ紹介され1月15日に受診。腎部エコー検査、腹部CTにて「右多発性腎嚢胞、急性腎盂腎炎」と診断される。同泌尿器科医より精査目的にて1月18日当院紹介され受診。 現症: 顔貌 眼球突出なし、下顎骨の軽度発育不良あり。腰背部叩打痛なし。 検査所見: 検尿; 尿蛋白(±)、尿糖(-)、RBC 1-4/HF WBC 10-19/HF、 血液検査; WBC 5170, CRP (-) 1月21日、CT検査実施。腎盂腎杯の高度な拡張を認め、腎外腎盂は著明に拡大しており腸骨動脈交差部近傍で狭小化していた。腎回転異常も併存。 2月3日、発熱のため入院。抗生剤投与にて解熱。4月2日、逆行性腎盂尿管造影実施。高度に拡張した腎盂腎杯を確認。腎盂は腸骨交差部近傍で狭窄しており以下の尿管は正常であった。腎盂尿管移行部狭窄と判断、本人および家族と相談の上、7月29日手術実施。腎外腎盂の狭窄部近傍に異常血管は認めかった。狭窄部を含め余剰腎盂を切除。腎盂を縫縮後、尿管ステントを留置した状態で尿管断端と縫合。術後21日目に外来にて尿管ステント抜去 10月22日、KUB,DIP実施。水腎は残存するも改善傾向あり。術後の腎盂腎炎の再発なし。 <考察および結論>  本症候群に腎盂尿管以移行狭窄症の合併は単なる偶発的なのか、遺伝子異常に起因するものなのかは不明である。本症候群に腎盂尿管移行部狭窄症を併発した症例は調べ得た範囲では確認できず自験例が最初の報告例と思われる
  • 岡野 学, 近藤 啓美, 河田 幸道, 高田 淳
    セッションID: 2J-C-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    G-CSF産生腫瘍は肺癌に多く報告されているものの泌尿器科領域では稀であり、その泌尿器科領域の中においては膀胱癌の報告が最も多く腎盂癌の報告はさらに稀である。今回1例を経験したので報告する。
     <症例>77歳、男性。
     (主訴) 右下肢脱力
     (家族歴)特になし
     (既往歴)糖尿病、高血圧症、大腸癌手術、尿路結石
     (現病歴)平成22年5月より右下肢脱力にて当院内科に受診し精査されたところ、超音波検査、CT検査にて左腎に腫瘍を認めるとともに腰椎への転移も疑われ、平成22年5月11日当科へ紹介された。
     (現症)身長153cm、体重46kg、体温37.2℃、血圧192/78.下腹部正中に手術痕を認める。
    (検査所見)
    尿検査:SG1024, pH6.0、prot(4+)、sugar(3+)、urobil(±)、bil(-)、OB(3+)、RBC100↑/HPF、WBC100↑/HPF、Bact(+)、cytology class_II_ 血液検査: WBC28210/mm3、RBC443×104/mm3、Hb13.0g/dl、Ht38.7%、Plet60.9×104/mm3、ESR91/1h
    生化学検査:GOT13Iu/l、 GPT10Iu/l、 LDH233Iu/l、 Alp561Iu/l、 T.P7.7mg/dl、 Alb4.4mg/dl、α2-globulin12.3%、BUN34.7mg/dl、 Cr1.9mg/dl、 Na140mEq/l、 K5.0mEq/l、 Cl102mEq/l、 T.chol226mg/dl、 FBS233mg/dl、HbA1c9.4%、CRP1.64mg/dl、G-CSF56.2 pg/ml
    (画像所見)超音波検査では左腎上極全体を占める約8cmの大きさで辺縁不整内部不均一な腫瘤を認めた。CTでは左腎上極に内部不均一な腫瘤を認め、第5腰椎には溶骨性で転移と思われる部位が見られた。MRIで腫瘤はT1ではisointensity、T2ではiso~ややhigh intensityの不均一な強さで描出された。
    (臨床経過)画像所見から腎癌の診断にて平成22年5月25日左腎摘出術を施行した。病理結果は浸潤性尿路上皮癌であった。また、抗G-CSF抗体を用いた免疫組織化学染色でも陽性像が認められた。腰椎転移に対して化学療法を考慮していたところ腎機能の低下とともに全身状態が悪化し平成22年7月23日死亡した。
    (結語)G-CSF産生腎盂癌の1例を経験したので報告した。
  • 内山 耕作, 羽田 勝彦, 藤井 知郎, 冨田 敦和, 前田 正雄
    セッションID: 2J-C-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉 尿路上皮癌の全身化学療法は現在ゲムシタビン(GEM),シスプラチン(CDDP)併用療法(以下GC療法)が第1選択とされている。当院においてGC療法施行患者に対する服薬指導業務を行う中で,GC療法を予定通りに遂行できない患者が少なくないと感じた。GC療法の安全性に薬剤師として寄与するためには,GC療法における詳細な副作用の頻度や発現時期,治療完遂率などを把握することが必要である。今回第1報から引き続き集積した症例データを追加して評価を行ったので報告する。
    〈対象と方法〉 当院泌尿器科において2008年9月~2011年5月に,尿路上皮癌に対してGC療法を実施した患者27症例を解析対象とした。初回投与時の目標投与量に対する実投与量の割合,治療完遂率,血液毒性及び非血液毒性などの項目を診療録より後方視的に調査した。副作用カテゴリー・重症度分類はCTCAEv4.0日本語訳JCOG版に従った。
    〈結果〉 患者27例中20例(74%)が高齢者(65歳≦)であり,15例(56%)に腎機能低下(eGFR<60)を認めたため,初回投与量は低めに設定(目標投与量に対してGEMは平均74%,CDDPは平均66%)されていたが,1コース目を完遂できたのは11例(41%)であった。残り16例の内吃逆で中止した1例を除く15例が血液毒性で中止となっていた。Grade3以上の血液毒性は,好中球減少33%,血小板減少22%,ヘモグロビン減少7%であった。
    〈考察〉 GEM/CDDP両薬剤とも減量基準に合致した減量が施されていたが,年齢や肝・腎機能を考慮しての用量調節では減量が不十分な可能性がある。治療失敗に関連する因子(栄養状態等)の検討が必要である。患者に対してはday15-21の骨髄抑制の好発時期に特に注意を払い,感染予防策などの必要性や具体的方法を予め詳しく説明する必要がある。
  • 畑佐 匡紀, 渡辺 一弘, 中川 宗大, 水草 貴久, 右納 隆, 塚本 達夫
    セッションID: 2J-C-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    症例は66歳女性。2010年12月3日頃より左上腕から左前頚部の疼痛出現し、12月6日に胸痛を来したため、12月10日、近医受診した。頚部リンパ節炎疑われ、セファゾリン点滴、アモキシシン処方され帰宅するも、左前頚部腫脹と疼痛は増悪し嚥下障害も来したため、12月13日、当院紹介受診した。左前頚部に圧痛を伴う腫脹を認め、造影CT上、左内頸・鎖骨下静脈血栓及び肺動脈血栓塞栓症を認め入院となった。血液検査上、ループスアンチコアグラント10.1秒〔6.3以下〕と延長認めるものの、APTTは基準値内、その他、抗カルジオリピン・β2GP1抗体、プロテインC、プロテインSは基準値内、ANA 40倍(speckled 40、cytoplasmic 40)であった。血栓形成傾向の原因不明のまま、モンテプラーゼ40万単位、ウロナーゼ24万単位×2回/日、ヘパリン持続点滴(最高28000単位/日)にて治療開始した。左前頚部の腫脹及び疼痛改善し、ワーファリナイゼーショにてPT-INR 2.5となったため、ヘパリンを中止すると左腓腹部の疼痛及び腫脹が出現した。造影CT上、左下肢静脈に血栓を認めたためヘパリン再持続点滴を行い、左腓腹部の疼痛及び腫脹が改善後の2011年1月11日、退院となる。退院後、右前腕腫脹及び右肘関節屈曲側に右正中肘静脈血栓と思われる索状物触知されるようになり、黒色便も認めるようになった。1月24日、当院外来受診時、血液検査上、貧血の増悪を認め、GIF上、胃体下部から胃角部の小弯側にBorrmann 3型腫瘍認め、生検上、Group 5、低分化型腺癌であった。PET上、胃体下部から胃角小弯の腫瘍以外に、左鎖骨上から頚部リンパ節、噴門部周囲から両側内腸骨領域のリンパ節に集積亢進を認めた。再発を繰り返した一連の静脈血栓塞栓症は進行胃癌による血栓形成傾向によるものと考えられた。
  • TAEの適応に関して
    渡辺 庄治, 広瀬 由和, 渡邉 ゆか理, 高橋 一也, 外池 祐子, 佐藤 明人, 福原 康夫, 佐藤 知巳, 富所 隆, 吉川 明
    セッションID: 2J-C-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】鈍的腹部外傷における脾損傷は肝損傷、腎損傷とともに頻度の高い疾患である。従来外傷性脾損傷に対しては脾臓摘出術が第一選択とされてきたが、脾臓のリンパ組織としての重要性や脾摘後重症感染症の危険性が認識されるようになり、ここ10数年にわたり非手術治療や脾臓温存術式が選択されるようになってきた。 【方法】外傷性脾損傷とは交通事故やスポーツ外傷などの外力によって脾臓に裂傷や出血を生じた病態で、主症状は腹痛と腹腔内出血であるが、腹腔内で脾臓は一旦出血すると止血しにくい臓器であり、重篤化することがある。日本外傷学会で脾損傷分類があるが、損傷の程度に応じた治療法の選択という面では明確なガイドラインが存在しないのが現状である。CT画像より損傷形態を予測し、保存的療法、TAEなどの血管内療法、脾臓摘出術等の治療を行うこととなる。当院での症例と比較し治療の選択基準について検討した。 【結果】2000年から10年間で当院における外傷性脾損傷は15例、それぞれ損傷形態を分類し、治療内容を検討した。但し中越大震災以前の画像が存在しないため、2006年3月以降の7例を画像で分類した。保存的療法のみが3例、TAE2例、手術2例であった。保存的療法、TAEを施行した後で手術移行例はなかった。日本外傷学会分類_II_型で手術を選択した症例では、肝損傷・横行結腸穿孔を合併していた。 【考察】TAEの適応については高頻度の濃厚赤血球輸血を必要とする、日本外傷学会分類で_III_b型以上、脾動脈根部での出血症例に関してはTAE後の再手術率が高い。当院でのTAE施行2例は_II_~_III_a型であった。_III_bに対し保存的治療を施行した症例は、全身状態良好、CT上脾損傷の程度に比し腹腔内出血が少ないためであった。 【結語】過去10年間に15例の外傷性脾損傷を経験、そのうちTAE施行は2例だが、いずれも有効であった。
  • 鈴木 大介, 疋田 舞, 江口 善美, 橋本 浩之, 石井 茂
    セッションID: 2J-C-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】2011年3月11日に太平洋三陸沖で発生した巨大地震により多数の方々が被災し避難する中、相模原協同病院(以下、当院)では、福島県南会津郡桧枝岐村からの依頼により、同村に避難した被災者の診療のため、薬剤師を含む総勢7名の災害医療協力隊を編成し2011年3月24日から26日まで医療支援を行ったので報告する。
    【方法】災害医療協力隊は、医師2名、看護師2名、薬剤師1名、事務職2名の7名で構成した。当院からは、内服薬(小児科に関しては、体重ごとに約束処方とした散剤)、外用薬、注射薬を準備した。25日現地に仮設診療所を設置し、健康診断や医療相談等の診療を行った。この仮設診療所に受診できない患者には、予め往診が必要かを確認し、被災者が宿泊している宿へ往診した。その際当院から持参した薬剤の使用について集計、検討した。
    【結果】仮設診療所での診察51名(成人14名・未成年37名/内処方有26名)、往診6名(成人4名・未成年2名/内処方有3名)。処方した計29名に対して薬剤師より、お薬手帳を作成して服薬指導し投薬した。
    持参した薬剤52種類のうち使用した薬剤は18種類であった。その内訳は感冒症状薬を主に使用し、そのほか肩こり、腰痛、下痢、便秘、アレルギー薬等が使用された。
    【考察】災害の影響で、精神的に不安定となり、無気力、不眠に罹る患者や、避難することで生活環境が変わり、感冒様症状に罹る患者が多く存在することがわかった。またストレスによる胃痛、下痢、便秘を訴える患者や、花粉症、蕁麻疹等のアレルギー症状の患者へは対応が必要と考えられた。
    避難所を転々としている患者のなかに、その先々でお薬が処方され、先発品と後発品を同時に服用している患者もいた。重複投与や相互作用を確認するためにはお薬手帳が重要であると考えられた。
    今回の災害医療協力隊に参加したことによって、薬剤師は診察で医師が処方した薬だけでなく、お薬手帳を通じて避難者の持病に対しての薬のケアにも、直接関わることが大切だと考えられた。
  • 矢嶋 晃仁, 山田 勝身, 長谷川 伸, 倉持 元
    セッションID: 2J-C-7
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    目的:今年3月にわが国は未曾有の大規模地震災害(M9.0)とそれによる大津波災害と原子力発電所事故による放射能汚染である東日本大震災を経験した。我々も新潟県中越、中越沖地震(ともにM6.8)を被災し、柏崎市は原子力発電所を抱えており中越沖地震の際火災事故が発生しており、これらの経験から学んだ教訓を活かした新潟県上越地域の透析施設における大規模地震災害に備えた地域防災作りに着手する。 方法:当地域には8透析施設があり、そのうち6施設が上越市中心部および南部に集中し、2施設が約40km離れた柏崎市と糸魚川市にある。災害拠点病院として県立中央病院、新潟労災病院(ともに上越市)、厚生連刈羽郡総合病院(柏崎市)が担当し、この8施設間で効率良く災害に堅固な連絡網の整備と、そこからの情報を基に最適な支援施設の選定と円滑な患者移送を可能にする実働性のあるシステムを作る。さらに今回の大震災のような場合も想定して上越外環地域にある透析施設とも緊密な連携を目指した(輪状支援体制作り)。連絡システムとしては、最大公約数的視点にたった必要最低限の情報量を共有化した災害時専用ソフトの運用による円滑な支援透析を目指した。さらに大規模災害ほど患者の移送・受け容れには地元行政機関との緊密な連携も必要であり、その連携強化もすすめた。 結果:行政側との連携を取りながら災害拠点病院での緊密な地域防災連絡網による災害時の各施設の被害状況、電気、断水状況および移送患者数の正確な把握と実働性のあるフレームワークシステムによる最適な支援施設の選定と共有化した患者情報、透析条件により省力化した支援透析が可能となると思われる。 結論:災害に対して、各地域ごとに行政側との緊密に連携した実働性のある防災体制を作り、常に動的シミュレーションをして災害に備えておく必要がある。
  • 情報の伝達と共有
    多田 こはる, 谷山 元, 小川 友一, 葛原 泰弘, 早川 美恵子
    セッションID: 2J-C-8
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
     東海地震(発生確率87%)・東南海地震(同60%)やその連動型も含めて大地震が発生する確率は非常に高い。今回の東北大震災では当院からもDMATを中心に被災地へ出動した。帰院した隊員の報告から情報収集や情報伝達・共有の重要性を感じ、栄養科職員を対象に大地震発生時の非常時対応に関するアンケート調査を行った。 調査結果では、1.非常食・非常時用炊き出し備品については保管場所の認知度は高いが、炊き出し用器具等を実際に取扱える者が少ない事、2.非常時マニュアルがあることを知っていても保管場所・内容等は周知出来ていない事、3.緊急連絡網については周知されているが、大地震発生後、病院に出勤可能な人員が少ないなど再検討し解決すべき様々な問題点が浮上した。 非常食・非常用備品の認知度が高かった理由として、栄養科全職員に対し非常時備品の見学会を実施した事が要因と考えられ、新人教育では見学コースに非常時マニュアルの保管場所も追加することとした。炊き出し用器具取扱いに関しては、釜の搬出・設置・着火までの工程を全ての調理師が行えるように機器取扱い訓練を実施した。非常時マニュアルは、調理現場で必要となる内容を抜粋した現場用非常時マニュアルを作成して掲示し職員の全体会にて周知した。更に院外で被災した場合の対応・連絡が速やかに行えるように、非常時マニュアルを簡略化し携帯可能なポケットサイズの手引書を作成した。 アンケートでは職員53名中“非常時にも出勤できる”と答えたのは12名と少数であり、夜間の大震災発生を想定した計画の見直しが必要と思われた。また、情報の伝達方法や不足していた教育・訓練を行った後に実施した職員アンケート調査では改善傾向が認められており、非常事態に備えた問題点の検討と実践的教育・訓練を日常的に行うことは、職員の防災意識向上に重要であると思われる。
  • 塩屋 晶子
    セッションID: 2J-C-9
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】地震は突然に発生し多くの被害をもたらす。常日頃から緊急時を想定して対応を考え行動できるようにしておくことは、被害を最小限にするために重要である。今回2007年から実施している災害訓練の方法、業務手順の見直しを行った。【目的・方法】2007年から継続して訓練を実施している「災害訓練チェックリスト」を用いて患者に災害訓練を実施してきた。患者38名の2008年10月と2009年10月のチェックリストを単純集計し比較する。日常業務における災害対策の見直しを行う。当透析室業務手順書「透析中の災害対策手順」の改善を行う。チェックリストは1.回路を握る2.布団をかぶる3.柵をにぎる4.止血ができる5.看護師を呼ぶ6.静かに待つを、「できる」「助言で出来る」「できない」の6項目でチックした。【結果・考察】1.3.4.6.の項目では大きな差はなかった。2.の項目では「できる」が6名減少していた。回路を握ることに気を取られ、自分の身を守るという意識が薄れ易い。5.の項目では「できる」が4名減少していた。傷や打撲などの外傷をした際に、看護師を呼ぶ事になっているが訓練である為、意識がされにくいのではないかと考える。年数の経過と共に意識が薄らぐ為、継続して訓練する事が大切であることを再認識した。日常業務の見直しでは、導入患者の標準的看護計画に災害訓練を2回組み込んだ。入院患者一覧表に、担送・護送者名を明記し、スタッフへの統一を図った。ベットネームに担送(赤)護送(黄)独歩(白)の表示をした。透析業務手順書の改善では、日常の対策と震度状況での職員の集合基準と行動基準を明記した。【おわりに】災害を想定して実践をする事が大切であり、今後も継続して災害訓練対策を継続し非常災害時の安全確保に繋げていく。
  • 加藤 久美子
    セッションID: 2J-C-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 阪神淡路大震災の教訓をもとに、災害支援者に対する心のケアの必要性が叫ばれるようになってきた。この度、東日本大震災に際し、災害支援者に対する派遣前から終了までの心理・感情面を中心とした後方支援の取り組みを行ったので報告する。 <対象・方法・概要> 2011年3月~5月。災害支援派遣者の看護職4名に対し、「災害支援ナース派遣マニュアル」1) 「職場における災害時のこころのケアマニュアル」2)を参考に対応し、派遣者に与えた影響については、インタビューとIES―R出来事インパクト尺度調査により検討した。 派遣前の対応は、(1)派遣者の選出基準の公表(2)チームの組織化(3)役割の明確化と説明(4)健康管理科医師との面談(5)送り出すためのセレモニー。派遣中の対応は、(1)連絡相手を一本化せず複数設定(2)PCや携帯電話を使用した情報提供(3)活動の内容や体調確認し励ましメールを送る。派遣後の対応は、(1)体調確認と健康管理科医師との面談(2)報告会の開催(3)派遣後1ヶ月にIES―R出来事インパクト尺度による状況の把握、である。 <結果> 活動後のインタビューから、派遣前に情報が少なく活動が具体化できず不安が強かった。到着後は「自分達の役割を理解できた」ことで活動に繋げられた。活動後は「役に立ったのだろうか」「ホッとした」など、不全感・安堵感が複雑にあった。後方支援に関しては、連絡相手が複数あり、朝夕に業務連絡と励ましメールが入り、派遣者同士でも情報共有が出来たことで安心した。派遣後の報告会で話し、派遣者仲間と会うことで癒された。健康管理科医師と面識ができ安心感があったと回答していた。IES-Rの回答は、臨界点25点以下であった。 <結論> 派遣者は、自分の役割理解が出来る情報が十分得られないことで不安があったことから、後方支援では、様々な方法を駆使し情報提供することが必要である。派遣者は様々な感情を持ったが、後方支援者も含めた仲間意識が心の癒しにつながっていた。
  • Finkの危機モデルを用いて
    木下 早苗, 忽那 めぐみ, 杉村 夏子, 安居  円
    セッションID: 2J-C-11
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    <目的> 当院は2010年2月より緩和ケア病棟の認可を受けており、病棟目標に家族へのケアも焦点に置いているが、介入は個々の看護師の裁量に任されていた。今回、Finkの危機モデルを用いて統一した看護を提供することで看護師の意識と行動の変化や今後の課題が明らかとなったため報告する。 <方法> 2010年1月~10月。対象は当病棟勤務看護師13名。カンファレンス時にFinkの危機モデルを用いて家族の反応を客観的に評価し、チームで共有出来るようにした。研究前後に選択式一部記述式の質問紙調査を施行した。 <結果・考察> 意識調査で【悲嘆の段階の認識】は85%から100%へと変化し、【悲嘆の段階を意識して家族と関わっているか】は46%から100%の看護師が意識して関われ、【統一した看護を提供出来ているか】は23%から67%の看護師が行えるという結果が得られた。このことは、知識を得たことで家族と関わる時に悲嘆の段階を踏まえながら介入していきたいという意識の変化に繋がったと考えられる。そして、その変化が家族と積極的に関わろうとする各個人の行動の変化と、関わった情報をカンファレンスで共有しながら、統一した看護介入を行おうとするチーム全体の行動の変化へと繋がったと推察された。しかし「悲嘆の反応に個人差があることを実感した」「知識が備わったからこそ関わりに対して躊躇する」という回答から、意識調査でも【家族とのコミュニケーションが取りにくいと感じているか】は、85%から75%と変化しなかったと推察される。看護師が積極的に家族と関わっていこうとする意識と行動の変化が見られた一方で、未だ多くの看護師が家族とのコミュニケーションに困難感を抱いている現状が浮き彫りになった。そのため家族それぞれの悲嘆の段階を適切に評価・共有していくことに加え、各自が家族に対して抱いた感情や迷いを素直に表出出来るようなカンファレンスの持ち方やコミュニケーション技術の向上を目指していく必要がある。
  • 田中 佳恵, 櫻井 基子, 谷岡 節子, 千葉 文子, 今枝 加与, 野田 智子
    セッションID: 2J-C-12
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
     緩和ケア病棟では、医師・看護師・薬剤師などの医療従事者に加えて、患者や家族が家庭的で温かさを感じながら、入院生活を送ることができるようにするためにボランティアの存在も欠かせないと言われている。今回、2008年に新設された緩和ケア病棟におけるボランティア活動を定着させることができたので、その取り組みと今後の課題について報告する。
     2009年5月よりボランティア導入のプロジェクトチームを始動し、活動の基盤となるものを作成した。ボランティアに対する研修会を実施した。同年6月よりプロジェクトチームとボランティアの話し合いを月1回開催し、病棟内の環境整備から活動を開始させた。そして、同年12月よりティーサービスを実施。2010年5月からは月2回の定期的な活動となり2011年3月までに計17回実施した。
     ボランティアに対して行ったアンケートでは、導入時はどうコミュニケーションをとったらいいのかわからないという声があった。導入1年後にはごく自然に接すればいいことがわかり、楽しくなってきたという声が聞かれた。さらに1年後には不安が減った、なくなったというボランティアが6名中4名いた。普通に接することができるようになったボランティアは6名中2名という結果であった。
     ボランティアの活動により導入目的でもある入院生活に日常をもたらすことができた。また、患者の良い反応をフィードバックすることにより、ボランティアの楽しみ、喜びにつながった。
     今後の活動の充実に向けてボランティアと患者とのコミュニケーションの促進、ボランティアの自立度を高める関わりが必要である。
  • 緩和ケアチームが介入した1例
    中山 京子, 花岡 孝臣, 窪田 和弘, 山田 藤香, 原田 ますみ
    セッションID: 2J-C-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    [はじめに]終末期の患者を抱える家族には、患者の病状の変化に伴って家族が解決しなければならない問題が次々と生じる。その都度適切に対処していくには、医療者などの家族外部の資源の活用は欠かせない。
    [目的]終末期の患者とその家族に対して、緩和ケアチームの多職種が関わった過程を振り返る。
    [症例]80歳代、女性。胆嚢がん、肺・肝臓転移の疑いがあり入院した。家族には、予後は日単位か長くても月単位と説明された。患者の長女は、終末期ということを受け入れることができなかった。家族の希望で、患者には病名や予後は告知されなかった。
    [経過]患者の家族から病棟看護師に対して、病状についてなど多くの質問があった。入院前から関わっていたがん相談員に来て欲しいという依頼も多かった。家族のニーズは、情報が欲しいこと、話を聞いて欲しいことであり、多職種による関わりが必要だった。主治医の同意と依頼、患者家族からの了解が得られ緩和ケアチームが介入した。週1回緩和ケアチーム回診を行った。家族からの質問も多く、チームメンバーの医師や薬剤師、看護師が答えるなど多職種で関わった。回診時に不在の家族からも話がしたいと希望があった時には、対応可能なメンバーが個々に関わり、その後チームメンバーや病棟スタッフと情報を共有した。家族は患者の今後について考えられるようになった。
    [考察・結論]患者や家族に対して多職種で関わることで、専門家なら信頼できるという安心感を与えられる。また、専門家がそれぞれの観点で個々の患者や家族をアセスメントでき、得た情報をチーム内や病棟で共有し協働できる。互いに刺激し合って専門性を高めることにも繋がる。緩和ケアチームは、主治医や担当看護師をサポートするチームであり、患者や家族にとっても、また主治医や担当看護師にとっても、信頼されるチームであれば相談を受けるようになる。機能する緩和ケアチームを目指したい。
  • 村田理論で分析した一事例を通して
    今村 しのぶ, 野原 惠子, 栗田 祐子
    セッションID: 2J-C-14
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉私達が,村田理論で分析した一事例において,終末期患者が限られた命という苦しみの中で,3つの存在価値「時間存在」「関係存在」「自律存在」を再構築しながら,自己の存在価値を見出し「安定した人の存在」を獲得した事を検証した。村田は「関係存在」の概念を,「人(私)の存在は,他者(相手)から与えられる。」として いる。
    今回,この事例の中で各時期において必ず関わっている「関係存在」について,患者,家族,看護師の3次元的な側面から分析した。
    〈目的〉「関係存在」の構築に対する援助の重要性を明確にする。
    〈研究方法〉
    1.期間:平成20年7月~平成21年8月
    2.事例紹介:A 氏年齢30歳代男性消化器癌
    3.各時期の「関係存在」の構築に対する援助を分析した。
    〈結果・考察〉〈_I_期〉告知を受け言葉が少なかったA 氏に,コミュニケーションを通して看護師との信頼関係を得る事から始めた。子供の話題や雑談を多く取るよう心掛ける経過の中で,A 氏のスピリチュアルペインが表出された。A 氏はつらい状況の中で,家族との関係の重要性に気づき生きる支えとして,自覚する言葉が聞かれた。看護師は治療中も外出外泊できる事で,A 氏が家族との時間を過ごせるよう調整をした。
    〈_II_期〉麻薬の使用に不安を訴えるA 氏に対する,自己決定への援助は看護師との「関係存在」の構築が土台となり「自律存在」を支える事に繋げる事ができたと考える。
    〈_III_期〉A 氏は,死を迎える数日前に「少しでも看護師さんの勉強になればいい。」と語り,死をも超えた将来に他者との「関係存在」の確信を表出し,自己の存在価値を見出そうとした。
    〈結語〉私達はこの事例を振り返り,存在を失うスピリチュアルな苦しみを支えるケアの柱として,「関係存在」は中心となる概念である事を認識した。患者が大切な人との繋がりを死をも越えた将来に見出せるよう,援助的コミュニケーションを用いて支えていきたい。
  • 教材を用いた学習会の効果
    江川 悦子, 曽雌 あけみ, 菅家 若菜
    セッションID: 2J-C-15
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    エンゼルケアへの意識向上をめざして     ~教材を用いた学習会の効果~ 坂下厚生総合病院 2階病棟  江川悦子  曽雌あけみ  菅家若菜 キ-ワード;エンゼルケア、実演学習、DVD <はじめに> 近年、エンゼルケアに対しての議論が高まり多くの検討が重ねられている。私達はエンゼルケア研修会参加後マニュアルを作成したが殆ど活用されておらず、先輩からの伝承や看護学校で学んだ方法で死後の処置が実施されていた。<目的> 学習会により、エンゼルケアに対するスタッフの関心と意識向上を図り、マニュアルに沿った処置が行えるようにしたい。<方法>対象は病棟の看護師22名で、調査期間は平成22年5月~平成23年1月まで。まず、病棟スタッフを出演者としたエンゼルケアDVD教材を独自に作成した。このDVDを用いた学習会を複数回行い、学習会参加前後にそれぞれアンケート調査を行った。<結果>アンケート調査回収率は100%。学習会参加前の調査では、「どのような方法で処置を行っていたか?」の問いには、_丸1_学校で学んだ方法33% _丸2_先輩からの伝承61% _丸3_研修会など6%であった。「マニュアルを読んだことがあるか?」ではyesは35%のみ。「自分の知識は十分と思うか?」ではyesは僅か9%。一方学習会参加後、「新しいエンゼルケアができているか?」に対しyesは76%にのぼった。「学習会後貴方に変化はあったか?」では_丸1_心構え63% _丸2_技術100% _丸3_変わらない3%。また処置時間不足は83%から学習会後32%に減少した。また86%が今後も学習会は必要と答えた。<考察>当院ではエンゼルケアの研修会に参加した人が極めて少なく、自分の知識や技術不足・未熟さを感じながらも、65%の人がマニュアルを活用していなかった。今回、自主作成したDVD学習教材を用いた学習会を繰り返し実施したことにより、76%の人がマニュアルを利用するようになり、意識や技術が向上したという答えが多く得られた。シュミレーションビデオによる学習会は有効で今後推奨すべき方法と思われる。更に、家族からの感謝の声が予想以上に多く聞かれるようになったことも特筆すべきと思われる。
  • 直井 一仁, 桜井 秀生, 平井 正幸
    セッションID: 2J-C-16
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    [背景] 近年、3D-TSE法を基本としたシーケンスであるSPACE法が広く用いられている。当院では頭部検査(下垂体等)にT1WI -SPACEを使用し撮像する場合があるが、撮像時間の長さが問題となる場合が多い。そこでSPACEのパラメータであるslice resolution (SR)とslice partial fourier (SPF)に着目し、撮像時間の短縮を試みた。 [目的] SPACEのパラメータであるSR、SPFを検討し、下垂体領域の撮像時間短縮を試みる。 [使用機器] ・ SIEMENS社製 MAGNETOM Avant 1.5T ・ Head Coil ・ 自作スリットファントム (スリット厚:1~3mm) [方法] 当院で行われてきたSPACEの撮像条件(SR:100%、SPF:off、 FOV:200mm、Voxel size0.9×0.9×0.9mm)を基準とし、 1、SRは90、80、70、60、50%、SPFは7/8、6/8に可変し、自作ファントムを撮像し得られた画像から信号強度曲線(プロットプロファイル)を求め、分解能を評価、検討を行う。 2、本研究の同意のえられた健常ボランティアに対し、自作ファントム撮像において最適と 考えるSR、SPFで下垂体領域の撮像を行い、視覚評価、撮像時間短縮の検討を行う。 [結果・考察] 1、SPF:offで、SRは70%以上の設定であればプロットプロファイルに大きな変化は見られなかった。SR:100%で、SPFは6/8以下の設定でプロットプロファイルに変化が見られた。 2、SR:100%、SPF:offの当院で従来行われてきた下垂体画像と自作ファントムより求めた最適と考えるSR、SPFにて健常ボランティアを撮像し、視覚評価すると診断に支障のない画像が得られ、撮像時間の短縮も可能であった。
  • 荒川 裕子, 丹羽 政美, 高橋 尚宏, 西田 知弘, 小森 竜太, 近松 克修, 今村 裕司, 水草 貴久, 土屋 十次
    セッションID: 2J-C-17
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】高年齢に伴い乳腺が減少し、乳房の下垂がみられる場合が多い。当院では通常腹臥位で撮像を行うため、下垂した乳房では、へちま状になってしまうことが多い。MR検査では空気の部分が多いと磁場不均一となり、脂肪抑制不良などの画質低下につながるため、乳房の形状に合わせ、ポジショニングを工夫することで画質改善を検討したので報告する。
    【使用装置および撮像方法】東芝社製1.5T EXCELART Vantage Powered by Atlas(7ch Breast SPEEDER)。撮像方法は脂肪抑制併用(T2強調画像・T1強調画像)を使用した。
    【方法】インフォームドコンセントを十分に行った高齢者のボランティアにて、コイルと被写体との空間をなくすため、空気を含むと予測される箇所に、固定具を置いた場合と無い場合で、整位の状態および脂肪抑制画像にて画質比較を行なった。固定具には、パラフィン・米を使用した。
    【結果】_丸1_固定具無しの場合、シミング波形の半値端が大きくなり、脂肪抑制画像に抑制ムラが見られる部分があった。_丸2_パラフィンの場合、シミング波形の半値端が大きくなったが、脂肪抑制は良好であった。_丸3_米の場合、シミング波形の半値端が小さくなり、脂肪抑制が良好であった。また、乳房の形状を左右均等に整位することが出来た。
    【考察】今回使用したパラフィンは、0.5mm程度の粒状であり、理想とする形状を保つことが困難であったため、良好なシミング波形を得ることが出来なかったが、空気の部分を減らすことが出来たため、脂肪抑制画像は良好であった。米は衛生上の問題が懸念されるので、今後はパラフィンの固定具を改良していきたい。
    【結語】固定具を使用することで、画質改善がみられた。
  • 松村 正基, 西田 達史, 山口 武, 三毛 壯夫
    セッションID: 2J-C-18
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    〈背景・目的〉当院ではEOBプリモビストの導入当初、動脈相は30秒の固定時間法で撮影していたが、十分な造影効果が得られていない場合があり、撮像タイミングの改善を検討した。技師全員がMRI検査を担当するため、手技が煩雑にならないように注意した。 〈使用機器〉GE社製SignaHDxt1.5T Ver.15  8ch Body coil 〈方法〉従来の固定時間法からボーラストラッキング法に変更する。(当院では用手注入法で施行している為、再現性の乏しいテストインジェクション法は使用していない。)GE社製MRIのボーラストラッキング法には、Trackerを設定して造影剤を感知し、自動で撮像を開始させるSmart Prepと、リアルタイムで画像を確認しながら撮像を開始できるFluoro Triggerがあるが、使用するシーケンスのLAVA-XVはSmart Prepが使用できないため、 Fluoro Trigger を使用する。LAVA-XV はk-spaceの充填方法がsequential orderingであり、一般的に大動脈到達から多血性肝細胞癌の濃染ピークは約14秒とされているため、この部分が撮像の中心になるように設定する。固定時間法とボーラストラッキング法で撮像した動脈相を放射線科医と技師で視覚評価する。 〈結果〉ボーラストラッキング法に変更したことで、固定時間法では対応が難しかった患者の血流の個体差による動脈相の造影効果のバラつきを改善する事が出来た。またFluoro Triggerの造影剤確認画像はわかりやすく撮像タイミングが取りやすいため、技師全員に撮像方法を周知することができた。 〈考察〉他のGd造影剤より投与量の少ないEOB・プリモビストは、動脈相の撮像タイミング方法として、固定時間法よりボーラストラッキング法(Fluoro Trigger等)を使用したほうが良いと考える。
  • 日比 英彰, 岡田 浩幸, 高木 理光, 野田 秀樹, 安部 威彦, 橋本 英久
    セッションID: 2J-C-19
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    医療機器の発達した現在、脳内病変の有無を無侵襲に行なえる脳ドックが全国的に普及しており、頚部血管内病変の観察目的には異なった2種のモダリティにより行われています。脳ドックにおいて大脳白質病変がしばしばみられ、無症候性脳梗塞と共に脳卒中の危険因子であることが報告されています。そこで頚動脈MRAと頚動脈US描出能の比較及び内膜・中膜複合体肥厚であった症例においてMRI画像上、大脳白質性病変との関連性を検討したので報告します。
    【対象・方法】
    2008年1月~2011年3月の間に、当院脳ドックを受診した168名であった。
    当院脳ドックにおける頚動脈MRAおよび頚部USの所見の比較をする。
    頚動脈US上IMT肥厚のあった症例について大脳白質病変の程度を脳ドックガイドライン上におけるグレード分類を行なった。
    【結果】
    頚部MRAにおいて異常なし166名狭窄2名頚部USにおいて異常なし122名狭窄3名IMT肥厚43名であった。
    IMT肥厚のある症例において分類したところ、DSWMHグレード0 16名グレード1 12名グレード2 14名グレード3 1名グレード4 0名PVH グレード0 22名グレード1 20名グレード2 1名グレード3以上はみられなかった。
    【考察】
    MRA上狭窄を呈した2症例は頚部USの所見と一致した。頚部US上狭窄を呈した1症例、IMTの肥厚を呈した43症例において再度頚部MRAの見直しを行なったが明らかなプラークなどの存在を同定できるような所見は認めなかった。原因としてUSは血管壁を描出しているのに対し、MRAは血管内腔を描出している為かと思われた。MRAにて用いられるTOF法はin-flow効果を用いるため、プラークの形状、大きさなどにより著しく血流を妨げる大きなプラークや限局的な肥厚であれば血流に変化が生じMRAにて描出されるものと考える。
    頚部USにおいてIMTの肥厚を呈した43症例における大脳白質病変は、IMTの厚みが増すにつれグレードが高い傾向を示しIMT肥厚と大脳白質病変の関連が示唆された。
    今後脳ドックにおいてこれら無症候性の所見を発見していくことが重要であるとおもわれる。
  • 片岡 直也, 市川 敦子, 石川 晃則, 桐村 美里, 加藤 なお子, 宍戸 健, 井上 豪, 鈴木 昌弘, 石川 陽子, 長谷川 達也
    セッションID: 2J-C-20
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    当院にある全てのモダリティの被ばく線量を求め、検査による被ばくについて患者説明マニュアルを作成し、技師間の意識の統一を図る.
    【方法】
    患者様の話をよく聞くことを前提にし、それから放射線を利用した検査のメリットや検査の被ばく線量などについて説明することとした.当院には、一般撮影、X線TV、マンモグラフィ、CT、MRI、エコー、アンギオ、RI、放射線治療がある.被ばく線量は、一般撮影、X線TVやCTについてはモンテカルロシミュレーションソフトであるPCXMCとImPACTを用いて、主な臓器の被ばく線量を求めた.マンモグラフィは乳房の厚さに応じて測定した平均乳腺線量のデータを、RIはICRPが出している被ばく線量のデータを載せた.MRIとエコーについては、放射線被ばくがない安全な検査であることを記述した.アンギオ、放射線治療では、被ばく線量が大きいが、その有用性について記述をすることにした.マニュアルには文章だけではなく、患者様が理解しやすいように絵や表なども載せた.技師間でマニュアルの内容理解や被ばくの共通意識を高めるため、勉強会を開催した.
    【結語】
    患者様に説明できるマニュアルを作ることができた.また、マニュアルを作成したことにより被ばくに関する技師間の意識の統一も図ることが出来た.作成したマニュアルは各部署に置き、患者様の疑問や不安に迅速に対応出来るようにした.
  • 中村 有美, 米田 美穂, 近藤 めぐみ, 橋本 英久
    セッションID: 2J-C-21
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    マンモグラフィ検診施設認定取得への取り組み JA岐阜厚生連 西美濃厚生病院 放射線科   ○中村有美 米田美穂 近藤めぐみ 橋本英久  [はじめに] 当院は平成19年3月に検診センターにデジタルマンモグラフィ装置を導入し、平成22年3月に精度管理中央委員会が認定するマンモグラフィ検診施設画像認定を取得した。そこで、当院の認定所得までの取り組みを報告する。 [使用機器] GE社製 senographe DMR+ FUJI FILM PROFECT CS FUJI FILM DRYPIX7000 [方法]  臨床画像の提出においては検診患者と当院ボランティアにより乳腺の高濃度、不均一高濃度、散在の3種類の画像を集めた。  撮影条件は管電圧28KV、管電流はAuto、ターゲット/フィルターはMo/Moとした。 装置メーカーとフィルムメーカーに依頼し、画像の評価と装置の精度管理を行った。 [結果]  B判定で施設認定を取得したが、臨床画像評価においてポジショニングが高濃度と不均一高濃度は改善すべき点が挙げられた。 [考察]  施設認定を取得することはできたが、臨床画像評価では特に高濃度乳腺の減点された点が多くポジショニング技術の向上の必要性を感じた。  臨床画像評価では高濃度、不均一高濃度、散在の乳腺のバランスも重要であるため、画像選出時には注意すべきであると思われる。 画質においても改善の余地があると指摘されたが、ポジショニング技術の向上により、良い画質が得られるため、さらなる技術向上が望まれる。 今回特に高濃度乳腺の画像取得に苦労したため、日ごろから読影と画像管理を行うことが必要である。 また日常の精度管理の重要性を再認識した。 [まとめ]  3年後の認定更新に向けて、日常管理を継続し、機器管理と画質の維持をする。また撮影技術の向上につとめることが必要である。
  • 平井 良, 田代 理, 石黒 沙織, 菊池 昭夫, 本多 暁, 井上 昇, 石川 雅也, 小野 尚輝, 新井原 泰隆, 大川 伸一
    セッションID: 2J-C-22
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     乳幼児胸部撮影では患者の体動や非協力のため、正確な体位をとることに難儀することがある。二人の技師が患者の体を保持しているが、下顎がカセッテにあたることから背屈した状態になることが多く、再撮影も少なくないうえに再現性も低いのが現状である。今回、補助具を作成し体位の安定性と再現性の向上を図った。また、市販の乳幼児固定器具(日興ファインズ工業社製ファンティクサーFD-21:以下ファンティクサー)による撮影と比較、検討をした。
    【方法】
     乳幼児の胸部側面画像から背面に対する胸部前面の角度を測定した。対象は0歳から2歳までとした。測定した角度に合わせ、アクリル板と発泡ポリエチレンを用いて補助具を作成し、従来の撮影法で得られた画像と補助具を使用した撮影法の画像と比較し評価した。さらに、ファンティクサーを用いた撮影とも比較し評価した。
    【結果・考察】
     補助具を使用した撮影では背屈位になることが減り、再撮影の減少及び同一患者において再現性が向上した。また、安定性が向上したことで吸気のタイミングを計ることも容易になった。ファンティクサーとの比較ではポジショニングの容易さから検査時間を短縮できた。さらに、ファンティクサーを用いると撮影画像に固定具の網目状の陰影がでるが、作成した補助具では障害陰影は見られなかった。しかし、体型により補助具のサイズが合わないこと、体動が激しい場合は補助具を用いても安定させるのが困難なことがあったなどの問題点も見られたため、今後も改良を行い撮影精度の向上を図りたい。
  • 佐々木 泰輔, 山本 昌弘, 石本 博基, 島田 隆臣, 桑原 智, 永井 信, 森田 穣
    セッションID: 2J-C-23
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】深部静脈血栓症(DVT)は死亡率の高い肺血栓塞栓の主な原因であり,わが国においてもその予防と早期発見・治療に力が注がれている.DVTのスクリーニング法として下肢静脈エコー(US)が普及しているが,どのような患者にいつ行うかなど明確なエビデンスは存在していない.それに加えてハイリスク患者全てにUSを実施することは人的・時間的要素の制限もあり,我々に限らず各施設において試行錯誤しながら行っているのが現状である.そこで今回,USを契機に発見されたDVTを統計学的に分析し,これに2次線溶亢進の指標であるDダイマーを組み合わせることで,どの程度効率の良いDVTスクリーニングが可能になるか検討した.【対象】2007年1月~2009年5月にかけて当院にてDVTが疑われDダイマーの測定とUSを施行した患者86名である.内訳は男女比1:2.2,年齢32~92才,平均71.9才であった.【結果】USでDVTが確認されたのは19例で発見率22.1%であった. DVT群のDダイマー値は1.9~132μg/ml(平均26.4)であったのに対し,非DVT群は0~115μg/ml(平均7.2)であり,DVT群は有意に高値を示した(t test, p=0.013 due to F test, p<0.05, σ12≠σ22).また,Dダイマー基準値を超えた42例中,23例に非DVTが含まれ,Dダイマーが正常値であった44例の全てが非DVTであったことから,DVTに対するDダイマーの感度は100%,特異度は65.7%となった. 血栓の中枢端が存在した部位別にDダイマー値をみると,それぞれに有意差はなく(t test, p>0.05),相関も示さなかった(r=-0.056). 【考察】今回の結果から,Dダイマー測定を先行し基準値を超えた場合のみUSを施行すると,DVT発見率を22.1%から45.2%に改善することが可能である.DダイマーはDVTに対して非常に感度が高く除外診断に有用で,確定診断にはUSを用いるのが良いと思われた.ただ,Dダイマー値は高値群での分散が大きくカットオフ値の設定は困難で,またDVTの重症度の指標にもなりにくいため注意が必要である.
  • 太田 明宏, 山田  正, 橋本 英久, 細川 透浩
    セッションID: 2J-C-24
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 当院では2011年3月よりGE社製VividE9が導入され、スペックルトラッキングを利用したAFIが使用可能となった。AFIにより心筋壁運動の定量化とともにEFの算出が可能となった。このauto EF機能をM-モード法、Modified Simpson法と比較検討したので報告する。 【使用機器】 超音波装置 GE Healthcare 社製 VividE9  【方法】 Mモード、Modified Simpson法、Auto EFを用いて複数の技師にて同一の被験者複数を計測し、比較検討を行った。 【結果】 _丸1_ EFの値はどの術者においてもSimpson、Auto EF 、Mモード の順で値は高くなる傾向だった。 _丸2_ 術者間のばらつきは、Simpson法がもっとも大きかった。 【考察】 心機能評価においてEFの算出は重要であり、収縮能の指標として用いられている。今回の評価で、日常使っているMモードは簡便ではあるが術者によってかなりのばらつきが認められ、値としても他の2つの計測に比べ大きな値になることが分かった。Simpson法は他の手技に比べ手間ではあるが、壁運動異常の患者にも使用でき有用な手法と思われたが術者間でのばらつきが大きく、使用には熟練が必要であると思われた。Auto EFは簡便であり、画像の描出ができれば術者によらず一定であり、Simpson法に近い値が算出でき、有用な方法と思われた。 【まとめ】 Auto EFは画像の描出に左右されるが、簡便かつ一定した値が算出でき、壁運動異常患者にも使用でき有用な方法と思われた。
  • 高野 慎也, 平間 紀子, 長島 敏代, 須藤 礼子
    セッションID: 2J-D-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉ナースコール(以下NCと略す)が頻回に鳴り、業務が進まないことがある。また、忙しい業務のためNCに十分対応できていない現状がある。その結果、患者が看護師に対して不信感・不満感を抱くケースは少なくないと考えられる。看護師がNCについてどのような認識をもち、使用しているかを明らかにするために研究に取り組んだので報告する。
    〈研究方法〉期間:2010年7月~10月 
    対象:病棟看護師24名
    データ収集法:選択・一部記述式のアンケート調査 内容1.NCの果たす役割  2.NCの考え方について
    データ分析法:アンケートは単純集計、自由記載はカテゴリー化した
    倫理的側面の配慮:研究内容を説明、理解・同意を得た
    〈結果〉回収率は100%であった。NCの果たす役割は、23名(96%)が患者や家族が看護師を呼ぶ手段であると回答した。「NCはコミュニケーションパターンの一つであるか」は「はい」11名(46%)、「いいえ」9名(37%)、「どちらでもない」4名(17%)。「NCは看護業務を効率良くするか」は「はい」14名(58%)、「いいえ」5名(21%)、「どちらでもない」5名(21%)。「NCは患者のニードを満たすか」は「はい」20名(83%)、「いいえ」1名(4%)、「どちらでもない」3名(13%)。「NCが無くてもニードを満たす看護はできるか」は「はい」7名(29%)、「いいえ」8名(33%)、「どちらでもない」9名(38%)。「NCを使用せずに行動できるか」は「はい」7名(29%)、「いいえ」10名(42%)、「どちらでもない」7名(29%)であった。
    〈考察〉NC の役割について氏家は「コミュニケーションの一つ・患者と看護師の連絡手段・看護業務を効率良くするもの・患者のニードを満たすもの・用がある時に呼ぶもの」と述べている。
    今回の調査でNCは患者が用事のある時に必要であり患者と看護師との連絡手段とは考えていないことが明らかになった。また患者が使用することでニードを満たすことができると捉えている。しかし、コミュニケーションとしては十分ではなく、直接関わることに意味があると考えられる。さらにNCが業務に与える影響は、必ずしも効率を良くするものではないと思われる。
  • 小笠原 久美子, 佐藤 美千子, 金谷 美保子, 高橋 聖子, 津谷 浩子, 山城 洋子, 北嶋 洋子, 五代儀 明美, 畠山 淳子
    セッションID: 2J-D-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    身体拘束は患者の安全保持と治療・看護上の必要性から行われる行為である。当院では,安心・安全な治療を受けていただくために,使用基準に沿って医師の指示のもと家族からの同意を得て行っている。しかしうしろめたさやジレンマ,罪悪感を抱きながらも仕事の効率や治療の都合上やむをえず身体拘束を行っているのではないかと考えられた。そこで身体拘束について看護師の意識調査を行い今後の課題について検討した。
    身体拘束の必要性については95%が必要と答えている。その理由は「患者の安全確保」「治療を確実に行う」「常時観察ができないため」であった。環境の変化や身体状況の悪化に伴いせん妄状態になったり,認知力低下の既往があるなど人的,物的環境の要因が重なった場合,身体拘束が必要となっていると考えられる。
    身体拘束にともなう安心感は51%であり,罪悪感は63%であった。その理由として,身体拘束が100%確実ではないこと,患者の負担が重く,皮膚の損傷や筋力の低下,転落等の事故を発生させるリスク(要因)にもなることをこれまでの経験として,認識されているからであるとも考えられる。身体拘束が必要と考える一方,身体拘束の弊害を意識しながら,ジレンマを感じながら行っていることがわかった。
    身体拘束を行うために必要なのは,使用基準に従うことだけではなく,個々の患者に対してなぜ身体拘束を行なわなければならない状況に陥っているのかをアセスメントし,何のために身体拘束を行うのかを明確にすることであると考える。またそのプロセスや理由(根拠)を明確にすることができれば,罪悪感は軽減されるのではないか。更にいったん身体拘束したら,そのまま継続するのではなく,点滴などを取り外しにくい位置の工夫や身体拘束を最小限にする判断も必要だと思われる。
  • ~A病院の看護師を対象とした調査を通して~
    山田 雅子, 勝山 奈々美, 中川 映里, 花村 真梨子, 諸星 浩美, 玉内 登志雄
    セッションID: 2J-D-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    (緒言) 近年、身体拘束を廃止しようと医療機関では拘束廃止の取り組みが増加してきている。 抑制には紐で縛る抑制「フィジカルロック」、薬物による抑制「ドラッグロック」、言葉による抑制「スピーチロック」があることを知った。私たちは「動かないで!」等の言葉を、言葉による抑制であるという意識なく患者に使用していることに気付いた。そこで、医療現場で勤務する看護師を対象に言葉による抑制「スピーチロック」について意識調査を行った。 (方法) 看護師174名に独自で作成したアンケート用紙を用いて実施した。1)看護師の背景、2)スピーチロックの認知度、3)例題の言葉に対する認識の程度、等5項目に対し記入を求めた。 (結果)  スピーチロックを「知っている」と回答した者は26.6%であった。言い方の変化としてスピーチロックと認識されるのは「ちょっと待って!!」が43.2%であることに対し、「ちょっとお待ちください」が1.9%と、差がみられた。スピーチロックと捉える言葉を「毎日聞く」と回答した者は50%を占めた。 (考察) 言葉は目に見えないもので、抑制であるという定義づけが難しく、他の身体抑制よりも看護師の認識が薄い。そのため不必要な抑制は行わないように心がけていても、言葉で相手を抑制している現状があることを知った。 同じ意味でも言葉を変えるだけで抑制に対しての感じ方も変わってくることがわかり、接遇とスピーチロックは関係が深く、接遇の改善でスピーチロックを減らすことができると考える。 看護は人と人とのつながりであり、良い接遇は不必要な抑制を減らし、良い看護につながると、多くの看護師が感じていた。看護の現場ではスピーチロックという言葉に対する認識は薄いが、スピーチロックにならないための対策を考えていく必要がある。
  • 家族と看護師からのアンケートより   
    山下 律子, 太田 美穂子, 近藤 ひとみ
    セッションID: 2J-D-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当院ICUの面会時間は12~13時、18~19時の1日2回、1回の面会時間は10~15分間、1回の面会人数は2親等以内3人までである。現在の面会制限について現状分析を行った。 <倫理的配慮>アンケートはプライバシーに配慮する旨を説明し、同意のサインを得た。 <研究方法>当センターに勤務する看護師38名とICU入室患者の家族17名に対し、アンケート調査を実施し分析を行った。 <結果・考察>面会回数は、家族、看護師ともに「良い」が8割、面会時間帯は家族の約半数が時間帯を変更あるいは延長を希望していた。15分間の面会時間は家族、看護師ともに半数が「短い」と答えた。面会者の範囲は家族、看護師ともに約3割が変更を希望した。家族は会わせたい人に会わせられない不自由さを訴え、看護師は「会いたい人に会うことが患者に良い影響を与える」と考えていることがわかった。時間外の面会希望者へは多くの看護師がケースバイケースで対応しており、現状の時間帯は業務への影響が「ある」と半数以上が答えた。今回の研究では、家族と看護師が面会制限について同じような気持ちを抱いていることがわかった。これは看護師が家族に共感した看護をしている表れであると考える。看護師にとっては働きやすく、家族にとっては満足のいく面会時間であるように、今後検討していきたい。 <結論>今回の調査より、現行の面会制限に対して、1.生活サイクルを反映させた面会様式が必要である、2.機的状況に置かれている家族には1回15分間の面会は短い、3.親等以内の面会の範囲では家族が不自由さを感じている、4.間外の面会希望者へは多くの看護師がケースバイケースで対応している、5.現行の面会制限は看護師が家族への対応と業務との間で葛藤に陥っている。
  • 菅 郁子, 南方 英夫
    セッションID: 2J-D-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/13
    会議録・要旨集 フリー
     身体拘束は「切迫性」「非代替性」「一時性」のある場合に限り、医師の指示によって施行されることが許可されている。しかし、それらの条件が満たされない場合においても、安易に身体拘束が施行されることは少なくない。実際現場では、身体拘束を多く経験するのは看護師である。看護師は日常的に身体拘束中の患者のケアを行わなければならない。そのため、看護師は身体拘束施行に対し、より慎重でなければならない。私は日ごろの看護の中で、身体拘束を試行する際に様々な思いを抱えている。そのため、当院の看護師が身体拘束に対して、どのような思いを抱えているか興味を持ち、当院における身体拘束の実態と、看護師の意識調査を実施した。 その結果、身体拘束開始においては、医師と看護師や看護師のみの判断で施行されており、身体拘束の指針に準拠されていないことがわかった。看護師は医師の指示を仰ぐ姿勢を曲げず、身体拘束の指針に則って行っていかなければならない。また、転倒や自己抜去などの危険防止のために、予防的に身体拘束が行われていることが少なくない。しかし、本当に代替手段が無いのかをより十分に検討していかなければならない。身体拘束解除においては、看護師の介入により、身体拘束を解除できる手段を見つけていくことが、重要なケアである。それらの看護の結果、早期解除を可能とするのは、看護師の意識や技術に大きく依存するだろう。また、看護師は安全管理と患者の人権との狭間で、日々思い悩みながら、身体拘束を施行している。身体拘束について悩み、ジレンマから逃げずに向き合っていくことが、看護師としての倫理観を磨くことであると考える。今後も過剰な身体拘束が行われないよう配慮していかなければならない。今回の研究が、身体拘束に対する倫理観の向上につながれば良いと考える。
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