本稿では、言語音を聴覚刺激としてERP研究を行なう際に、言語音の音種による外因性がN100成分に与える影響を明らかにすることを目的としている。
実験1では、言語音と純音におけるN100成分への影響の違いを検証した。また、純音については、トリガ直後と直後から遅延させた音を聞かせることによって、遅延が影響を与えるかも検証した。実験2では、無声無気破裂音[p]、無声有気破裂音[pʰ]、有声破裂音[b]における有気/無気、VOTと-VOTによる影響を検証した。実験3では、無声破裂音[p] [t] [k]、無声破擦音[ts]、無声摩擦音[s]における粗擦性による影響を検証した。
結果は、以下の通りである。(1)言語音では母音のフォルマント周波数の開始時間がN100成分の惹起に関わる。(2)VOTによる無音区間によって、N100成分は遅延して惹起する。(3)-VOTによって、N100成分は遅延して惹起する。(4)摩擦音における[s]のノイズが、N100成分のピーク電圧を小さくする。
こういった影響が、MMN、P300、N400、P600などを用いた言語に関するERP研究における条件統制に対して更なる検証が必要であることを示唆した。
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