実験音声学・言語学研究
Online ISSN : 1883-6763
12 巻
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論文
  • 分節音によるN100 成分への影響
    福盛 貴弘
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 12 巻 p. 1-14
    発行日: 2020/03/24
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    本稿では、言語音を聴覚刺激としてERP研究を行なう際に、言語音の音種による外因性がN100成分に与える影響を明らかにすることを目的としている。

    実験1では、言語音と純音におけるN100成分への影響の違いを検証した。また、純音については、トリガ直後と直後から遅延させた音を聞かせることによって、遅延が影響を与えるかも検証した。実験2では、無声無気破裂音[p]、無声有気破裂音[pʰ]、有声破裂音[b]における有気/無気、VOTと-VOTによる影響を検証した。実験3では、無声破裂音[p] [t] [k]、無声破擦音[ts]、無声摩擦音[s]における粗擦性による影響を検証した。

    結果は、以下の通りである。(1)言語音では母音のフォルマント周波数の開始時間がN100成分の惹起に関わる。(2)VOTによる無音区間によって、N100成分は遅延して惹起する。(3)-VOTによって、N100成分は遅延して惹起する。(4)摩擦音における[s]のノイズが、N100成分のピーク電圧を小さくする。

    こういった影響が、MMN、P300、N400、P600などを用いた言語に関するERP研究における条件統制に対して更なる検証が必要であることを示唆した。

  • 日本語学習者にとって必要な音声指導を目指して
    高村 めぐみ
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 12 巻 p. 15-38
    発行日: 2020/03/24
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    本稿は、同一の機能であれば、語彙や表現に関わらず韻律的特徴に共通点があると主張したものである。資料は、まず、日本語初級学習者に「大学場面で必要と感じる機能に関するアンケート」を行った結果、必要性が高いと回答された 20 機能(依頼、呼びかけ、感謝等)を抽出した。次に、各機能3 パターンの発話を日本語母語話者7 名がロールプレイをしたものを録音した。最後に、各機能に相応しいと評価された上位3 名分の資料の韻律(1 音節当たりの持続時間長、Fo、音圧)を音響音声学的に解析した。その結果、13 機能で各機能に特有の韻律的特徴が見られたと述べている。

  • 平尾 麻衣子
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 12 巻 p. 39-55
    発行日: 2020/03/24
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    本研究は、老人福祉施設に通所する高齢者の音声を、実験音声学的方法によって分析することにより、高齢化に伴う様々な声の変化や特徴の一端を模索したものである。音圧、ピッチ、持続時間長、SPG (Sound Spectrogram) の評価を中核とする分析結果から、高齢者音声の特徴が示唆された。特に今回の観察の範囲では、高齢者音声が「弱々しく、不安定な音声」になる原因は (1) 音圧の低下、(2) ピッチの不安定さであることが明らかになった。またその改善策として、(1) 声門へ送る呼気流の量を増大させる、(2) 声帯振動を安定させる朗読指導現場でのトレーニングの有用性が示唆された。

研究ノート
  • 濱岡 佑帆
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 12 巻 p. 56-67
    発行日: 2020/03/24
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    本調査は群馬県方言「まーず」について音響音声学的な分析から音調の変化を記述することを目的とした。先行研究では、「まーず」タイプのフィラーの特徴として、「①ピッチは高平のもの、中高のもの、頭高のものがある、②持続時間長は500ms 前後がほとんどである。」というような点をあげている。本調査ではこれをもとに群馬県方言の副詞としての「まーず」の音調を検証する。

    群馬県伊勢崎市出身の被験者4名に調査を行った結果、「まーず」の音調は主に平調で、その他に低平調と高平調、そして句頭上昇が確認できた。そして宮川 (2007: 26)のデータを再分析したところ、中高型と頭高型は確認できなかった。

フォーラム
  • IPA ウルフという音声学遊戯
    福盛 貴弘
    原稿種別: その他
    2020 年 12 巻 p. 68-76
    発行日: 2020/03/24
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    本稿では、音声学の要素をふまえた知的ゲームとして、対人心理戦となる人狼をアレンジしたワードウルフを専門用語でやってみようという提案をする。ここでは、国際音声記号(IPA)をお題として進めるやり方を示した。ワードウルフは、多数派と少数派にお題として、それぞれ異なるワードが与えられ、少数派が誰であるのかを議論によってあぶりだすというゲームである。以下では、ワードウルフのゲーム流れ、ゲームのルールやコツ、今後の提案を示している。このことによって、音声学的基礎を、遊戯的要素をふまえて理解できることを期待する。

  • IPA インサイダーという音声学遊戯
    福盛 貴弘
    原稿種別: その他
    2020 年 12 巻 p. 77-82
    発行日: 2020/03/24
    公開日: 2023/06/15
    ジャーナル フリー

    本稿では、音声学の要素をふまえた知的ゲームとして、ワードウルフを援用したIPA ウルフについで、インサイダーゲームのお題をIPA でやってみたらどうなるかというシミュレート結果を報告する。インサイダーゲームの概要は、以下の通りである。まずは、お題を知らない多数派と、お題を知っている少数派が、ゲームマスターに「はい/いいえ」で答えられる質問を続けて、お題を当てる。ついで、参加者の中の少数派をあぶりだすというゲームである。IPA ウルフとは異なる展開で専門用語を理解できるという点を紹介したい。

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