Synthesiology
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5 巻, 4 号
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研究論文
  • - マンモグラフィ用X線の線量標準の確立と標準供給体制の構築 -
    田中 隆宏, 黒澤 忠弘, 齋藤 則生
    2012 年5 巻4 号 p. 222-233
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    乳がんの早期発見のため、乳房X線検査(マンモグラフィ)が2000年より乳がん検診に導入され、受診者数は増加の一途をたどっている。診断の高い信頼性と人体への十分な安全性を両立させるためには、X線照射を適切な線量に抑えた上で、高品質なX線診断画像を得ることが必要となる。マンモグラフィでは、乳房撮影に特化した通常とは異なる特殊なエネルギースペクトル(線質)のX線が用いられる。しかし、その線質は、これまでの線量計の校正に用いられているX線とは大きく異なるため、線量計の校正の信頼性が十分であるか心配する声が、学会や産業界から挙げられた。そこで、産総研ではマンモグラフィ用のX線の線質に基づいた線量の国家標準を開発し、それを産業界へ供給した。既存の研究設備や技術を最大限活用したり、現行の精度管理体制の中にこの標準を組み込むことにより、この標準の迅速な開発を可能にした。また、国内・国外の両方を意識した研究開発のシナリオをあらかじめ策定したことが、国際的な同等性の確認された標準の迅速かつ広範な供給へ結びついた。
  • - 古地震研究の重要性と研究成果の社会への周知の課題 -
    岡村 行信
    2012 年5 巻4 号 p. 234-242
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    歴史文書に記録されている西暦869年貞観地震を解明するため、地層に残された津波堆積物を詳細に調査し、津波の数値計算を組み合わせて津波規模を推定した。2011年東北地方太平洋沖地震は、その推定よりかなり大きかったが、津波堆積物が過去の巨大津波の証拠であり、巨大津波の警告であることを証明した。この貞観地震に関する研究成果は地震調査研究推進本部に提出され、2011年3月にはおよそ評価が終わっていたが、社会に周知する直前に地震が発生してしまった。このようなことを繰り返さないためにも、巨大地震に関する研究成果はできるだけ早く社会へ伝える必要がある。同時に、信頼できる研究を進めることも重要である。
  • - SOFCの普及に向けた試験方法の規格化と測定結果の信頼性担保 -
    門馬 昭彦, 高野 清南, 田中 洋平, 嘉藤 徹
    2012 年5 巻4 号 p. 243-252
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    さまざまな地球観測データが世界各国で個別に取得・加工・利用されている中で、それらの情報の統合的な利用を容易にするための全球地球観測システムが必要とされている。そのため国際的な合意のもとに組織された地球観測に関する政府間会合が全球地球観測システムのための共通基盤を構築した。複数の機関から共通基盤を構成する要素の提供の申し出があったが、政府間会合は構成要素のそれぞれについて公正な評価を行い、最適な構成要素を組み合わせた共通基盤を推奨した。特定の構成要素を選定して共通基盤を推奨することは、全球地球観測システムに関連するいくつかのデジュール標準を策定することに相当した。日本は独自の構成要素の提供を申し出なかった関係で、構成要素を評価するにあたって中立的立場をとり、デジュール標準の策定においてイニシアティブをとることができた。その結果、日本で広く利用されている方法のいくつかをデジュール標準に採用することができた。今回の経験は、一つの事例として、日本にとって今後の国際標準化活動のあり方を示唆している。
  • - 実用化のための研究戦略 -
    吉村 和記, 田嶌 一樹, 山田 保誠
    2012 年5 巻4 号 p. 253-260
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    「調光ミラー」は透明な状態と鏡の状態がスイッチングできる新しい薄膜材料で、これを窓ガラスに用いると、太陽光を効果的に遮ることで、特に夏の冷房負荷を大きく低減できる省エネルギーガラスを実現することができる。この調光ミラーガラスを実用化するために、これまでどのような研究戦略を立て取り組んできたかを紹介する。単に材料自体の研究開発にとどまらず、実際にそれを建物に用いた場合の省エネルギー性能の計測も行い、その結果を材料研究にフィードバックすることで、より省エネルギー性能の大きな窓の開発を行っている。
  • - 最先端の分析技術を用いた国際的化学物質管理への貢献 -
    谷保 佐知, 羽成 修康, 堀井 勇一, 山下 信義
    2012 年5 巻4 号 p. 261-276
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    有害化学物質の環境負荷量の把握、安全性評価、国際条約有効性の評価および政策立案を行ううえで、質の高い分析データの蓄積が重要であるが、そのためには信頼性の高い分析法と標準物質の開発・普及が必要である。我々は、特定の国や業界団体に限定したニーズが顕在化する前に、化学物質の有害性、使用量、環境残留性等に関する最新データを基に、必要とされる環境分析技術を予想することで国際的有害化学物質規制条約に先んじて国際規格を提供した。この論文では有害化学物質の環境挙動解明から分析法開発、そして2件のISO規格と2件のJIS規格の標準化に至るまでの研究過程とその意義について述べる。
編集委員会
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