Tropics
Online ISSN : 1882-5729
Print ISSN : 0917-415X
ISSN-L : 0917-415X
6 巻, 1+2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
原著論文
  • 山倉 拓夫, 神崎 護, 伊東 明, 大久保 達弘, 荻野 和彦, Ernest CHAI O. K., Hua Seng LEE, Pet ...
    1996 年 6 巻 1+2 号 p. 1-18
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/05/31
    ジャーナル フリー
    東マレーシア・サラワク州・ランビル国立公園の混合フタパガキ林に設定した52 ヘクタール大面積森林調査区のデータを用いて,熱帯雨林の森林構造を解析し,その地形依存性を論じた。
    胸高直径~樹高関係に逆数式型の樹高曲線を当てはめ,林分上限樹高を求めると,63m の推定値を得た。この値は,既に大面積森林調査区が設定されている半島部マレーシアのパソー(61m) 及びパナマのパロ·コロラド島(42.8 m) の熱帯雨林で得られた値よりも大きかった。3 調査区の樹高の違いは,降雨パターンにおける乾燥期間の長さと良く対応し,ランビルの森の巨大な構造が好適な水条件にあることを示唆した。樹高発達と対応して,地上部現存量は大きく,520 t/ha の推定値が得られた。
    調査区全体を1300 個の20m × 20m のスタンドに分け,各スタンド毎に立木密度,最大胸高直径,胸高断面積合計,地上部現存量,部分集団の数を求めた。これらの諸量はいずれも森林の相観と関わる変量である。部分集団の数の推定には,胸高直径が指数分布することを仮定し,指数確率紙を用いた。立木密度以外の5変量の地形依存性を分散分析の手法によって検定すると,5変量が地形と対応して変化し,地形方向での予測性の高いことが明らかとなった。森林構造の地形依存性の解析は,断片的なものを除いて,これまでの熱帯雨林研究で試みられたことはなかった。その理由として,解析に十分な量の地形データを得るためには,困難の多い大面積調査区が必要であったことがあげられる。森林構造は森林の発達サイクルに依存して変化するが,構造の地形依存性は,地形とは独立であると従来考えられてきた発達サイクルという構造形成過程でさえも,地形に強く依存することを意味した。このような構造の地形依存性は,構造が環境に適応的であり,環境の持つ場の力が構造形成過程における確率的浮動を減少させることを示唆した。
    指数確率紙を用いて行ったスタンドの部分集団推定資料を用いて,部分集団の立木密度と平均樹高を求め,両者の関係を調べた。部分集団の平均樹高は立木密度のべき乗に反比例して減少し,明らかな密度依存性が認められた。
    これまで明らかとなった湿潤な環境と対応した巨大な構造,構造楠成変量の予測性の高い地形依存性,部分集団で認められる平均個体サイズの密度依存性の現象は,群集多様性維持機構の説明仮説としてのこツチ説に有利な結果となった。但し,森林構造は種組成とは理論的には独立にあり得るので,ニッチ説と非ニッチ説の検証には近々整備が完了する種組成データの解析が必要である。
  • Gerhard BREULMANN, 二宮 生夫, 荻野 和彦
    1996 年 6 巻 1+2 号 p. 19-28
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/05/31
    ジャーナル フリー
    マレーシア連邦サラワク州にあるランビル国立公園の,混交フタパガキ林に生育する樹木の異なった部位における無機元素濃度分布を調べた。25 科62 種101 個体の葉,梢端付近の小枝,幹,根から514 個のサンプルを採集した。構成元素の分析はN,K, Ca, Mg, Mn, Na, Al, Br, Fe, B, Sr, Ba, Zn, Rb, Cu, Ni, Co, Ti,Sc, Cr, Pb, Ce, Li, As, Cs, V, MoおよびThの28 種についておこなった。このうち必須元素であるN,K,Mg,Mn,Fe,BおよびNiはとくに葉に高濃度の蓄積がみとめられた。Ca,Znおよび、Cuについては梢端付近の小枝で有意に高い濃度を示した。これらの元素は,細胞の木化の誘導に影響を及ぼす植物ホルモンであるオーキシンの代謝に関係していることが知られている。これに対して,いずれの生理過程にも特徴的な影響をもたないような元素は受動的な取り込みというべき濃度分布を示した。植物にとって有毒もしくは生育に負の影響をもつ元素,例えばAl,Pb,As などは根の部分で吸収を遮断されたり,幹や樹皮などの組織に安全な形で貯蔵されるようにみえた。積物の生理過程に積極的に影響を及ぼす元素が植物の生きた組織に蓄積されているという事実から. Gluta oba にBaが, Koilodepas laevigatum, Trigonostemon capillipes, Allantospermum borneense にCoが. Koilodepas laevigatum にSr が高濃度に集積されるという事実はこれらの元素の植物体内での生理的活性の有無という点で注意すべきと考えられる。
  • Gerhard BREULMANN, 二宮 生夫, 荻野 和彦
    1996 年 6 巻 1+2 号 p. 29-38
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/05/31
    ジャーナル フリー
    マレーシア連邦,サラワク州にあるランビル国立公園で,混交フタパガキ林の林木の葉における無機元素の分布を調べた。25 科, 62 種の樹種のうち,103 本の林木から237 の葉のサンプルを採集した。構成元素の解析をおこなったのはN,K,Ca,Mg,Mn,Na,Fe,Al,B,Ba,Sr,Br,Zn,Rb,Cu,Ni,Ti,Cr,Sc,Pb,Co,Li,Cs,As,V,Ce,MおよびThの28 種である。このうちで,ある種の元素では特異的な集積と排除が見られた。ある植物で元素の平均濃度が,その元素の濃度分布の標準偏差の2 倍を越えるような高濃度の集積が見られた種をaccurnulatorと定義した。採集された葉のCaの濃度は概ね低く,平均値で0.38% であった。フタパガキ科の林木では特異的な集積や排除の傾向は見られなかった。対象樹種の中では,Gluta obaがBaの,Mallotus sp.がMnの,Allantospermum borneenseがCoの,Koilodepas lavigatumがCa, SrおよびCoの,そしてTrigonostemon capillipesがK,Mg,NiおよびCoのaccumulatorであった。Memecylon sp. (Melastomaceae) に見られたAlの集積はMasunaga の知見(Masunaga et al., 1995) と一致した。Markert (1993) は,Melastomataceae はAlのaccurnulatorとしている。分析された元素のうち, Coは特異的な分布を示した。元素の濃度が標準偏差の2 倍以下で強い排除が見られる種をexcluder と定義したが,この定義に従ったexcluder は見いだし得なかった。しかし,いくつかの種ではBr , Mo,LiおよびThの濃度が分析レベル以下であった。熱帯雨林の樹冠部におけるこのような元素分布の様態は、生育する樹種の持つ元素の吸収と排除の特性に高い多様性が存在する事を反映している。
  • Mai Sy TUAN, 二宮 生夫, 荻野 和彦
    1996 年 6 巻 1+2 号 p. 39-50
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/05/31
    ジャーナル フリー
    Avicennia marina の実生苗を0, 25, 50, 75, 100, 125,および150% の7 段階の異なった海水濃度で温室内で栽培し,生育の初期段階における発芽,生長,光合成におよぽす培地の塩分濃度の影響をしらべた。低い塩分濃度では高い塩分濃度にくらべて発芽時期がより早く,発芽率がより高くなった。最適の生長は25%の海水濃度で記録された。塩化ナトリウムを含まない0%の海水濃度の培地では生長が著しく抑制された。高い塩分濃度では落葉量が増加し,生長量が減少したが,すべての実生苗の生長がみられた。光合成は塩分濃度の影響をうけたが, 125 および150% の高い海水濃度においても正の光合成生産を維持することができた。塩分濃度は実生苗の定着と生長に影響をおよぽす重要な要因であるが, A. marina は有能な耐塩性植物であると結論された。
  • 亀谷 仁, 根平 邦人, 中越 信和
    1996 年 6 巻 1+2 号 p. 51-64
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/05/31
    ジャーナル フリー
    マングローブ植物のメヒルギKandelia candel とヤエヤマヒルギRhizophora stylosa の耐塩性を調べる実験をおこなった。
    1. 初期成長に及ぼす塩分濃度の影響異なった塩分濃度(1. Knop 液, 2. 1+1.8% NaCl, 3. 1+3.6% NaCl) で上記2穫をポット育成した(以下ではメヒルギ区K1, K2, K3,ヤエヤマヒルギ区R1, R2, R3 とする)。各処理区で(1)開葉基準による成長経過, (2) 主軸長, (3) 葉厚, (4) クロロフィル量, (5) 成育状況, (6) 葉の成分を測定・記録した。(1) メヒルギでは処理後2ヶ月で第3節葉展開段階まで成長した個体数が, 処理区順に96.9%,68.6%, 53% であった。同じくヤエヤマヒルギでは20.7%,9.6%, 1.0% で、あった。(2) 主軸長は処理後2 ヶ月でK1: 4.5 cm, K2: 3.3 cm, K3: 2.5 cm となり,塩分濃度の違いによる成長差は大きかった。ヤエヤマヒルギ区では,処理後10 ヶ月で有意差が現れ, R1: 19.2 cm, R2: 11.3cm, R3: 9.5 cm になった。(3) 葉厚は,処理後6 ヶ月目に,K1とK3間はそれぞれ平均0.54 mm, 0.75mm となり,有意差があった。(4) クロロフィル量は,処理後6ヶ月目にK1とK3間は,それぞれ平均43.9, 75.4 (SPAD 値)で有意差があった。(5) 成育状況は健全,芽枯死,全枯死に区分した。処理後2ヶ月で, K1: 5%, K2: 23%, K3: 23%, R 区では10ヶ月後になって差が現れ,順に0%, 53.3%, 93.3% になった。(6) 溶液のNa+の濃度増加につれた葉の成分中のNa+は増加しK+は減少する傾向を示し, K+ のR1 の平均値はR2 の4.6 倍,R3 の12.1 倍になった。また,R2の平均値はR3 の2.6 倍であった。Mg2+,Ca2+ と含水率は,処理区の問で、有意差はなかった。
    2. 自生地でのメヒルギ(大浦)とヤエヤマヒルギ(慶佐次)苗の性質メヒルギは1~3 節の節間長が,それぞれ平均3.2,3.2, 2.5 cm で,これは栽培条件下のK1-K3 のいずれよりも大きな値である。葉厚は平均1.00 mm で, K1と有意差があるが, K3とは有意差がない。業の成分はヤエヤマヒルギで比較をおこない, Na+ 濃度はR2 と類似していた。Na+ 濃度以外の陽イオンも似た値を示しK+, Mg2+,Ca2+濃度は有意差がなかった。含水率は,自生地とRI-R3 区とは有意差がなかった。
    3. 急激な淡水区から塩分区(3.6% NaCl)への移行時の苗の反応移動後8 時間ごとにポットから苗木を取り上げ器官別に成分分析をおこなった。2 日後に塩分区の全体が萎れ,細根からは急激なNa+の侵入と,それに伴うK+の減少が見られた。
    4. 欠乏症の現れているメヒルギとヤエヤマヒルギの苗(栽培後約半年) wp 選別して, 4種類の溶液処理区と対照としてのd. w. 区を作成し,これら処理区に5 日毎に各溶液を散布し,回復状況を観察した。クロロフィル含有量は,未回復葉で平均17.3,回復葉で(尿素区)で平均5 .5 (SPAD 値)であった。このとき葉中の陽イオンや含水率には差が認められなかった。
    ヤエエヤマヒルギとメヒルギの苗は,共に1.8% NaCl区で成長障害を起こした。しかし境分区において耐塩性植物の特徴であるクロロフィル含有量の増加,葉の多肉化が見られた。このことから,適度なNa+量はその成長に有益である可能性が高い。このとき,自生でも栽培環境下でもNa+の葉中濃度差がないとK+, Mg2+,Ca2+ 濃度も良く似た値であったことから,これら以外の栄養塩類がその制限要因である可能性が高い。
  • 山極 寿一, Kiswele KALEME, Mwanga MILINGANYO, Kanyunyi BASABOSE
    1996 年 6 巻 1+2 号 p. 65-77
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/05/31
    ジャーナル フリー
    ザイール国東部のカフジ・ビエガ国立公園は山地から低地へかけて連続的な植生が保存されており、ここに同所的に生息するゴリラとチンパンジーの生態学的調査が1987年以来続けられている。これまでに山地でも低地でも両種の類人猿がよく似た食性を示すにもかかわらず,山地ではチンパンジーの密度が非常に低いことが判明している。そこで1994年の乾季(6~9月)に人づけされた両種類人猿の集団を追跡して日々の遊動ルートを,直接観察,食痕,糞分析により食物メニューを調べた。また,8月にライン·トランセクト法によって樹木の構成と密度を調べ,20m × 5,000mのトランセクトに出現した胸高直径10 cm以上の木本種と果実や花のなり具合を記録した。一次林,二次林,湿地を含む植生帯に28科50種の樹木を記録したが,このうち20種のゴリラの食物樹と26種のチンパンジーの食物樹が含まれていた。二次林より一次林の方が食物樹種の多様性や密度が高く,食べられる果実をつけている樹種の合計密度も高かった。両種の類人猿とも密度の低い樹種の果実を好む傾向があり,これらの果樹が一次林と二次林に分かれて出現するため,彼らは毎日複数の植生帯を訪問しなければならないことが明らかになった。ゴリラはよくまとまった集団で,同じ場所を重複利用しないように,しかも毎日一次林を通るように広く遊動する。チンパンジーは小さなパーティで特定の一次林を重複利用し,ゴリラより狭い範囲を遊動する。おそらく,一次林が小さなパッチ状に広い二次林に散らばっているカフジの山地林の植生が,チンパンジーの低密度の主因となっており,両種類人猿の採食様式の違いが両種の採食競合を減らして同所的な共存を支えていると考えられる。
  • 松本 和馬, Sugeng SANTOSA, NAZMULAH, Ragil S. B. IRIANTO
    1996 年 6 巻 1+2 号 p. 79-89
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/05/31
    ジャーナル フリー
    スマトラ産アオスジカミキリXystrocera globosa Oliier の生活史を室内飼育によって調査した。幼虫に人工飼料(日本農産工業製インセクタLF; ソーセージタイプ)を与えて個体別飼育と20 個体の集団飼育を行ったところ,個体別飼育ではよく成長して多くの成虫が羽化したが,一部に食いつきに失敗して死亡する幼虫や成長途中で死亡する幼虫があった。一方集団飼育では全個体が順調に摂食を開始したが,2 齢以降に噛み合いや共食いがおこり,集団あたり1 個体のみが生き残って羽化した。卵期,幼虫期,踊期の平均所要日数はそれぞれ,14.2日,94.2日,9.9日だったが,とくに幼虫期は57日から135日と個体差が大きく,経過齢数も5齢~10齢と個体により差があった。人工飼料開育で羽化した室内飼育成虫と,被害材から脱出した野外発育成虫を飼育した結果,室内飼育成虫の平均羽化後寿命(未成熟期を含む)はオス7.5日,メス7.7日であった。野外発育成虫の脱出後寿命(活動期のみに相当)はオス7.5日,メス7.7日であった。野外発育メスは材脱出後直ちに交尾し卵塊による産卵を開始した。平均卵塊サイズは28.5,1 メスあたり平均産卵数は野外発育メスで178.2,室内飼育メスで145.0であった。
  • Arkady S. LELEJ
    1996 年 6 巻 1+2 号 p. 91-104
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/05/31
    ジャーナル フリー
    ボルネオ島および近隣の島嶼から12属38種のアリパチを記録した。 Yamanetilla gen. nov. (模式種: Odontomutilla nipponica Tsuneki), Petersenidia dayak sp. nov. (サラワク). Smicromyrme borneo sp. nov. (サラワク). Smicromyrme borneo sp. nov. (サパ). Andreimyrme sarawakensis sp. nov. (サラワク). およこれまで記録のなかったTrogaspidia cydippe (Mickel))の雌を記載した。属Radoszkowskius Ashmead (模式種: Mutilla simplicijascia Sichel et Radoszkowski)を族Trogaspidiini に復活させた。
  • 長野 敏英, 石田 朋靖, 北宅 善昭, Pisoot VIJARNSORN, 鈴木 覚
    1996 年 6 巻 1+2 号 p. 105-115
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/05/31
    ジャーナル フリー
    最近,森林破壊の拡大による地球環境の悪化が大きな社会問題となっている。タイ園においても,年間2~4% の割合で森林破壊が進んでいるとの報告がある(FAO/UNEP, 1981) 。しかしながら,これら森林破壊が地球環境にどの様な影響を及ぼしているのかについての研究は少ない。そこでこれら森林破壊が環境に及ぼす影響についての基礎データを得るために,タイ国ナラチワの熱帯湿地林,および湿地林の開発によって造成された水田,また開発を試みたが,失敗し現在放置されている荒廃地(二次林)において,各種生態系における環境特性についての調査研究を行った。その結果,熱帯湿地林の破壊による影響は,特に乾期に顕著に現れ,二次林および水田(乾期では草地)では乾期において顕熱フラックスが増加し,また二酸化炭素の取り込みが減少することが明らかになった。また本研究で開発した渦累積法はメタン等の微量ガスフラックス測定において,非常に有効な測定方法であることが明らかになった。
  • 吉野 馨子
    1996 年 6 巻 1+2 号 p. 117-127
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/05/31
    ジャーナル フリー
    バングラデシュの首都ダッカから約100 km 北の旧プラマプトラ¥河支流の自然堤防上に位置する村において,屋敷地の利用に関する調査を実施した。村の平均的な屋敷地は,中庭(ウタン) .裏の薮(ジョンゴル) .および池(プクール)から構成されている。ウタンは調整作業,家事労働および家畜飼養の場であり, 日当たりがよく果樹,野菜,換金性の強い樹木や観賞用植物が植えられていた。ジョンゴルからはタケをはじめとした木材,自家消費用の燃料,食物,繊維,染料等が入手できる。池は水浴,洗濯,時には調理用にその水が利用されていた。近年では収益性の高い養魚が広く行われるようになってきた。また,池の周りは日当たりもよく,ヤシ類や野菜が多く栽培されていた。屋敷地は樹木の主要な生育地であり,雨季には野菜の栽窮地としても重要であった。果樹は積極的に植えられており,食用以外にも木材や用具材など,多目的に利用されていた。野菜はユウガオやフジマメなどツル性作物が多く,屋根や棚などに這わせて栽培されていた。野菜棚の下やジョンゴルの木々の聞にはクワズイモや果樹の苗などが重層的に植えられ,限られた土地の有効利用が図られていた。
    村人の聞には,より現金を得るために商品価値の高い植物や屋敷地内に園地を作って単一的な作物を栽培するような動きも見られる。村人の居住空間であるとともに日々の暮らしのための多様な植物資源を提供してきた屋敷地は,村人の生活にとって重要な役割を果たしていた。
  • S. N. WICKRAMARATNE, 林 進, Suvineetha HERATH
    1996 年 6 巻 1+2 号 p. 129-137
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/05/31
    ジャーナル フリー
    スリランカは,森林保全の長い歴史を有している。イギリス植民地権力は,国有林を対象に収穫活動を行ってきたが,他方1800年代後半期より,近代的な森林保全策が展開されてきた。現在では国土面積の約14% にあたる森林地域が,完全な保護体制下におかれている。近年においては,天然林が全森林面積の22% まで低下する一方で,人工植林地が保護区いい気と同様の水準まで糟加している。
    スリランカにおいては,森林計画における制度的欠如,いくつかの農業活動および不法伐採が,森林保全にとって脅威となる問題を提供しているものの,森林保全への対応は,概して満足すべき状態にあるといって良い。
Field Note
  • 佐藤 利幸, 伊藤 日出夫, 工藤 岳, Yap Son KHEONG, 古川 昭雄
    1996 年 6 巻 1+2 号 p. 139-148
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/05/31
    ジャーナル フリー
    熱帯多雨林では着生植物やつる積物が多いことが一つの特徴である。シダ植物やラン植物の胞子や種子は10-20 ミクロンメートルと小さく,直立する樹木の樹幹や枝分かれした部位のくぼみに定着する。クアラルンプールに到着すると,オイルヤシ植林地が目立ちその樹幹に着生するシダ植物が目にはいる。環境庁の国立環境研究所とマレーシア森林研究所の国際共同研究のひとつに,熱帯林生態系の環境及び構造解析に関する研究のプロジェクトがある。巨大な熱帯雨林の構造解析を開始する手始めの一端として,半自然環境のオイルヤシ樹幹の着生シダの種構成と群集の解析と若干の自然林における着生率を求めた。パソ保護林(標高100ー150 m ,北緯3 度,東経102 度)はマレーシア半島では比較的降水量が少なく,孤立した森林である。Asplenium nidus (シマタニワタリ)の着生率は全樹木の3% ,胸高直径10cm 以上の樹木の19% であった。オイルヤシ樹幹には16 種のシダ植物が確認された。いろんなサイズのオイルヤシ樹幹25 本に普通に見られる種は以下の6 種, Nephrolepis bisserrata(ホウビカンジュ),Vittaria ensiformis (ヒメシシラン), Davalia denticulata, Stenoclaena palustris, Asplenium glauccophyllum, A. nidus であった。小さな樹幹から侵入でき,樹幹上部に優占するシダはN. bisserrta とD. denticulata であり,もっとも遅く侵入し樹幹下部で頻度が高いシダはV. ensiformisである。A. nidus はオイルヤシ樹幹が4m を越えて侵入し,大型なロート型の葉群を発達させる。その根茎と根には必ずゴキブリとハサミムシの仲間が確認できた。着生シダは自然林·人工林において,昆虫にとってのミクロ生態系を提供し,狭い範囲(ミクロスケール)での植物多様性を高めている可能性がある。も少し広いメソスケールではシダ植物多様性は中高度(1500 m) の雲霧帯で最大となろう。
  • 神崎 護, 渡邊 幹男, 桑原 淳一, Joseph Jawa KENDAWANG, Hua Seng LEE, 芹沢 俊介, 山倉 拓夫
    1996 年 6 巻 1+2 号 p. 153-160
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/05/31
    ジャーナル フリー
    サラワク州のShorea. macrophylla de VrieseAshton の遺伝的構造を,アロザイムの変異によって調べた。サラワク西部と中部の15 ヶ所から,それぞれ単一母樹に由来する稚樹集団(family) を選んだ。各familyの30 個体から葉を採取し,アロザイム分析に供した。種全体の多型遺伝子座の割合は43% ,平均ヘテロ接合度(He)は0.209 であった。15 family についてUPGMA 法によるクラスター分析を行ったところ,3 つの遺伝的クラスターが認識でき,各クラスターは. Kuching, Sri Arnan, Bintulu の3 つの地理的領域に対応していた。3 集団聞の遺伝的分化の係数(GST) は0.208 と推定され,種全体の遺伝的多様性のうち20.8% が3 つの集団関の変異に由来することが判明した。以上のように. S. macrophylla の遺伝的構造は,中程度の種および集団内多様性と,非常に高い地域集団間の遺伝的変異によって特徴づけられていた。
Short communication
feedback
Top