マングローブ植物のメヒルギKandelia candel とヤエヤマヒルギRhizophora stylosa の耐塩性を調べる実験をおこなった。
1. 初期成長に及ぼす塩分濃度の影響異なった塩分濃度(1. Knop 液, 2. 1+1.8% NaCl, 3. 1+3.6% NaCl) で上記2穫をポット育成した(以下ではメヒルギ区K1, K2, K3,ヤエヤマヒルギ区R1, R2, R3 とする)。各処理区で(1)開葉基準による成長経過, (2) 主軸長, (3) 葉厚, (4) クロロフィル量, (5) 成育状況, (6) 葉の成分を測定・記録した。(1) メヒルギでは処理後2ヶ月で第3節葉展開段階まで成長した個体数が, 処理区順に96.9%,68.6%, 53% であった。同じくヤエヤマヒルギでは20.7%,9.6%, 1.0% で、あった。(2) 主軸長は処理後2 ヶ月でK1: 4.5 cm, K2: 3.3 cm, K3: 2.5 cm となり,塩分濃度の違いによる成長差は大きかった。ヤエヤマヒルギ区では,処理後10 ヶ月で有意差が現れ, R1: 19.2 cm, R2: 11.3cm, R3: 9.5 cm になった。(3) 葉厚は,処理後6 ヶ月目に,K1とK3間はそれぞれ平均0.54 mm, 0.75mm となり,有意差があった。(4) クロロフィル量は,処理後6ヶ月目にK1とK3間は,それぞれ平均43.9, 75.4 (SPAD 値)で有意差があった。(5) 成育状況は健全,芽枯死,全枯死に区分した。処理後2ヶ月で, K1: 5%, K2: 23%, K3: 23%, R 区では10ヶ月後になって差が現れ,順に0%, 53.3%, 93.3% になった。(6) 溶液のNa
+の濃度増加につれた葉の成分中のNa
+は増加しK
+は減少する傾向を示し, K
+ のR1 の平均値はR2 の4.6 倍,R3 の12.1 倍になった。また,R2の平均値はR3 の2.6 倍であった。Mg
2+,Ca
2+ と含水率は,処理区の問で、有意差はなかった。
2. 自生地でのメヒルギ(大浦)とヤエヤマヒルギ(慶佐次)苗の性質メヒルギは1~3 節の節間長が,それぞれ平均3.2,3.2, 2.5 cm で,これは栽培条件下のK1-K3 のいずれよりも大きな値である。葉厚は平均1.00 mm で, K1と有意差があるが, K3とは有意差がない。業の成分はヤエヤマヒルギで比較をおこない, Na
+ 濃度はR2 と類似していた。Na
+ 濃度以外の陽イオンも似た値を示しK
+, Mg
2+,Ca
2+濃度は有意差がなかった。含水率は,自生地とRI-R3 区とは有意差がなかった。
3. 急激な淡水区から塩分区(3.6% NaCl)への移行時の苗の反応移動後8 時間ごとにポットから苗木を取り上げ器官別に成分分析をおこなった。2 日後に塩分区の全体が萎れ,細根からは急激なNa
+の侵入と,それに伴うK
+の減少が見られた。
4. 欠乏症の現れているメヒルギとヤエヤマヒルギの苗(栽培後約半年) wp 選別して, 4種類の溶液処理区と対照としてのd. w. 区を作成し,これら処理区に5 日毎に各溶液を散布し,回復状況を観察した。クロロフィル含有量は,未回復葉で平均17.3,回復葉で(尿素区)で平均5 .5 (SPAD 値)であった。このとき葉中の陽イオンや含水率には差が認められなかった。
ヤエエヤマヒルギとメヒルギの苗は,共に1.8% NaCl区で成長障害を起こした。しかし境分区において耐塩性植物の特徴であるクロロフィル含有量の増加,葉の多肉化が見られた。このことから,適度なNa
+量はその成長に有益である可能性が高い。このとき,自生でも栽培環境下でもNa
+の葉中濃度差がないとK
+, Mg
2+,Ca
2+ 濃度も良く似た値であったことから,これら以外の栄養塩類がその制限要因である可能性が高い。
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