Tropics
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4 巻, 2+3 号
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原著論文
  • Peter J. MATTHEWS
    1995 年 4 巻 2+3 号 p. 105-126
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    アジアと太平洋における主なサトイモ科栽培植物は,インドクワズイモAlocasia macrorrhizos, インドオオコンニャクAmorphophalls paeoniifolius, サトイモColocasia esculenta とキルトスペルマCrytosperma merkusii である。これらのサトイモ科植物は,オーストロネシア諸語の話者によってひろく栽培されてきた。この概説において,筆者はサトイモ科植物の馴化と伝播を理解するための理論的なわく組みを展開した。特に,それらの中で最も重要なサトイモについて熱帯の野生型と思われる系統(ミズイモ Colocasia esculenta var. aquatilis) について記述し,栽培サトイモと比較した。
  • 鈴木 英治, Thkirin PARTOMIHARDJO, Edhi TURMUDI
    1995 年 4 巻 2+3 号 p. 127-131
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    アナククラカタウ島の火山植生の一次選移を, 1982 年と1992 年に調査した。同島はスンダ海峡にあるクラカタウ諸島の一つで, 1930 年の噴火で洋上に出現して以来何回もの噴火を繰り返し成長してきた。1982 年に海岸部分で15.2本/m2 の高密度になっていたナンゴクワセオバナ群落は,十年後も同じ状態を維持していた。その密生群落より内陸側の平坦部では, 1982年にナンゴクワセオバナが0.6本/m2の密度で疎生し,胸高断面積合計がわずか0.041 m2/haのモクマオウ幼木が混生していた。それは1992年に最高樹高が20m を越し胸高断面積合計が6.8m2/ha のモクマオウ林になっていた。火口に登る斜面では, 1982 年にナンゴクワセオバナが上部ほど密度が低下しながら標高100 m まで分布していた。1992年には全体に密度が上昇し,標高136m のカルデラの縁を越してカルデラ内部まで分布を拡大していた。
  • 伊東 明, 山倉 拓夫, 荻野 和彦, Hua Seng LEE, Peter S. ASHTON
    1995 年 4 巻 2+3 号 p. 133-141
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    東マレーシア,サラワクナト州の熱帯雨林に設置した大面積調査区(面積52 ha) の毎木調査データを用いて2 種のリユウノウジュ(Dryobalanops aromatica とD. lanceolata) の個体群構造と林冠優占度を解析した。D. aromatica は52 ha あたりの胸高直径1 cm以上の個体数(N) が8702 で,調査区内で最も個体数の多い林冠樹種であった。D. lanceolata はN = 949 であった。プロット全体の平均で考えると, 2 種ともに優占樹種とはいえなかった。しかし, 2 種の空間分布が集中分布であったため,面積1ha程度の大きさで局所的に各々の種に林冠が擬優占されている場所があった。それぞれの種が擬優占する1haずつのサププロットでは, D. aromatica とD . lanceolata各々が胸高直径30 cm以上の林冠木に占める割合は,本数率で23% と15% ,胸高断面積で30%と27%であった。これらの林冠優占度は,これまでに他の地域のDryobalanops優占林で報告された優占度(断面積で25-30%) と同じであるが,その他の樹種による典型的な熱帯雨林の優占群落における優占度(本数率で50%以上)よりもずっと小さい。したがって, Dryobalanops優占林は典型的な単独種優占熱帯雨林(monodominant tropical rain forest) と典型的な混交熱帯雨林(mixed tropical rain forest) の中間的なものであると考えた。また2 種の擬優占するサブプロットでこれまでに同定された林冠樹種数は,熱帯アジア地域の典型的な混交多雨林のものと同等であった。これは, Dryobalanops の擬優占が他の林冠構成樹種の多様性に与える影響が小さいことを示唆するものである。
  • 宮川 修一, 小見山 章, Songsin PHOTCHANACHAI
    1995 年 4 巻 2+3 号 p. 143-149
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    東北タイにおいて近年植栽が拡大している外来樹種Eucalyptus camaldulensis および外来ではあるが古くから利用されているCeiba pentandra ならびに在来のDipterocarpus obtusifolius について,幹直径の成長量をデンドロメーターを用い, 1991年7 月から1992年7月まで1 週間間隔で測定した。調査地は東北タイの東部ヤソトン市の近郊で,明瞭な雨季と乾季が存在し,乾季の後半で最も高温となるようなモンスーン気候下にある。Eucalyptus camaldulensis は雨季の間旺盛な成長が見られ,また乾季にも成長が継続し,高温期にのみ成長が停止した。Ceiba pentandra は比較的旺盛な成長を雨季の開示すが,乾季にはいると成長はほとんど停滞した。Dipterocarpus obtusifolius は雨季の聞の成長量も少なく,乾季にはほとんど成長が見られず,年間の成長期間は最も短かった。これらのことからEucalyptus camaldulensis の示す大きな成長量は,年間の成長期間の長いことと,その期間における成長速度の大きいことに基づいていると考えられる。
  • 櫻井 克年, Bunyarit PURIYAKORN, Pornchai PREECHAPANYA, Virat TANPIBAL, Kan ...
    1995 年 4 巻 2+3 号 p. 151-172
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    タイ国では,この30年間にきびしい森林面積の減少が進んだため,劣化し放棄された土地での植生回復は緊急に解決すべき課題の一つである。この報告は,一連のこの仕事“Waste Land Project (WLP)” の一部であり,タイ国に設けられた4 つの異なるタイプの荒廃地のより良い管理策を土壌硬度の測定によって見つけようとするものである。
    特に,母材の不均質なラチャブリの場合,土壌硬度の季節変化は水分欠乏や植物根の土の硬さに対するストレスを見分けるのに適していた。ソムデットの砂質土壌の場合,乾期に生じた表層土壌の硬化を,雨水が容易に軟化させた。フエイトゥンジョウでは,土壌断面内の岩の存在が土壌硬度の測定から推定でき,雨季の排水性を良くし,酸素の供給をとおして,根の生育を健全にしていた。
    国外での研究には,野外で容易におこなえて,土壌の貴重な情報を手近に得られる手法が必要である。土壌硬度の測定は,それが可能であり,植物の生育に対する物理的障害を予測できることが判った。
  • K. SENTHILKUMAR, S. MANIAN, K. UDAIYAN, V. SUGAVANAM
    1995 年 4 巻 2+3 号 p. 173-186
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    南インドの熱帯草原のVA菌根を形成する菌類の種多様性と存在度に対する火入れの効果について, 1991 年7 月から翌年の6 月までの1 年間にわたって調査した。熱帯草原の火入れは土壌中のVA菌根菌胞子密度を増加させた。Glomus mosseae とG. geosporum は,調査地域に最も普通な菌類であった。VA菌根菌の種の多様性に関しては,火入れをした場所と火入れをしなかった対照区との間で,はっきりした違いは見られなかった。火入れは土壌中のリン(P)の増加をもたらしたが,しかし火入れに引き続いて灌漑をすると土壌中のリンの減少が見られたことは,灌漑によって植物へのリンの吸収が起きたためであろう。この推定は,火入れのあとに灌漑したプロットの植物において,リンの含有量がその後1 年間にわたって増加したことによっても支持される。しかし,いくつかの栽培植物, Kachi Grass コウスイガヤの一種(Cymbopogon caesius), Tangle/Spear Grass (Heteropogon contartus , 牧草にされる),タンキリマメの一種(Rhynchosiacanna), インドセンダン(Azadirachta indica) などにおけるVA菌根菌の感染濃度は目立った違いはなかった。これらの結果に基づいて火入れ後のVA菌根菌の動態に及ぼす生態的要因と気候環境について議論した。
  • 藤間 剛, 荻野 和彦
    1995 年 4 巻 2+3 号 p. 187-200
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    マングローブ林は沿岸域に成立する森林である。マングローブ林の土は,多かれ少なかれ海水の影響をうけるから,高い塩分濃度をとることがある。水が停滞すると極端な低酸素状態に陥り,嫌気条件下で海水起源の硫化物が集積される。嫌気的条件が好気的条件に変化すると,集積していた硫化物が酸化されてつよい酸性をしめすことがある。潮汐変化に対する土壌中で水の移動,土壌水位と土壌の酸化還元状態およびpH の関係について調べた。
    調査地は,東インドネシア,ハルマヘラ島カオのソソボック川河口部にあるよく発達したマングローブ林である。植生帯は樹則より順に,河口部のSonneratia alba 優占林(S ゾーン) ,海岸線を形成する幅の狭い砂丘上のHibiscus tiliaceus 優占林(H ゾーン) ,砂正後部の泥地上のRhizophora apiculata , Bruguiera gymnorrhiza 混交林(Ra-B ゾーン)およびRhizophora stylosa,Nypa fruticans , Xylocarpus granatum が優占する林分(Rs-N ゾーン)に区分できた。
    冠水の頻度と継続時間は,潮位と地盤高との関係で定まっていた。小潮満潮で冠水するS ゾーンは,冠水頻度が高く1 回の冠水時聞が長かった。大潮満潮で冠水するRa-B ゾーンおよびRs-Nゾーンでは,冠水頻度が低く冠水時間も短かった。また小潮前後には数日間にわたって非冠水時聞が継続した。H ゾーンは大潮満潮よりも高いため冠水しなかった。地表が冠水すると土壌水位は地表面まで上昇した。H ゾーンと川岸のごく近くをのぞけば,冠水しないとき土壌水位は低下する一方であったが,低下速度が遅いため,冠水日には土壌水位は地表面近くに保たれていた。Ra-B ゾーンとRs-N ゾーンでは,小潮の前後には非冠水時間が数日におよび,冠水日よりも土壌水位の低下幅が大きくなった。しかし, Rs-N ゾーンの土壌水位が地表から70 cm の深さまで低下するのに対して, Ra-B ゾーンのそれは30 cm にとどまった。そのため土壌中の水の移動性は, Ra-B ゾーンで小さくRs-N ゾーンで大きいと考えることができた。
    土壌水位の低下幅の小さいS ゾーンとRa-B ゾーンの土壌水は,深さ20 cmから強い還元状態をしめした。それに対して土壌水位の低下幅が大きいRs-N ゾーンの土壌水は深さ70 cm でも,弱い還元状態をしめすのみであった。S ゾーンとRa-B ゾーンの土は,表層のものから風乾によるpH の低下が顕著で強い酸性を呈しするようになる。Rs-N ゾーンの土で風乾により強酸性となるのは下層のものに限られた。冠水頻度および非冠水時間の長さは土壌の塩分濃度に影響するものとされてきたが,酸化還元状態とpH にも影響をおよぼしており,土壌中での水の移動性の違いにより,そのあらわれかたが変化することが明らかになった。また潮位の季節的変化が大きい場合は,冠水頻度が季節により変化し,酸化還元状態およびpH も周期的に変化すると考察した。
  • 岡田 直紀, 佐々木 昭
    1995 年 4 巻 2+3 号 p. 201-210
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    西表島の10 種類のマングローブおよびマングローブ随伴種の葉、樹皮、材中の硫黄同位体比を測定し、硫黄の吸収特性について調べた。マングローブ随伴種、バックマングローブとされるPemphis acidula, Heritiera littoralis, Excoecaria agallochaおよびPremna corymbosa などは約15‰の同位体的に重いδ34値を示すのに対して、‘真正マングローブ’であるRhizophora stylosa, Bruguiera gymnorrhiza, Kandelia candel およびAvicennia marina などは-19 から10‰の軽いδ34S値を示した。土壌中の酸可溶性硫化物の硫黄同位体比は深さと共に小さくなり、最低で約-20‰に達した。軽いδ34S値を持つ種は土壌中の硫酸塩還元菌によって生成した同位体比の小さい硫化物硫黄を吸収していることは明らかだが、硫化物を直接吸収するのか否かは確認できなかった。嫌気的な場所を好み、それに適応した吸収、通気システムを備えた種はそうでない種に比べてより軽いδ34S値を示した。一つの種内では、より嫌気的で土壌有機物の豊富な場所に生育する個体がより軽いδ34S値を示した。したがって、マングロープの硫黄同位体比は体内に取り込む硫化物硫黄と硫酸塩硫黄の比によって主に決まるものと結論される。
  • 杉尾 幸司
    1995 年 4 巻 2+3 号 p. 211-222
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    Macrotermes carbonarius は,キノコを栽培するシロアリのなかで唯一地上歩行をして採餌を行う種である。本種の探餌活動を明らかにするため,採餌活動の時間的・空間的変化についてタイ国南東部で調査した。その結果,採餌に際して以下のような活動を行うことが確認できた。
    採餌のために地表に空けた穴からMajor worker が次々と地表に現れ,土と肛門より出した物質で地表を舗装して道をつくった。この舗装された道は,地表の穴から採餌場をむすぶ幹蟻道として利用され,採餌のために地上歩行をする行列はこの道の上を通って採餌場に向かった。行列の中心には採餌活動を行う2-4 列のMajor worker が位置し,先頭と両側はSoldier によって守られていた。Major workerは舗装された道の終点に達すると採餌場の各所に分散して餌を捜し,地面に落ちている枯草などを咥えて再び舗装道上の行列に合流して餌を巣に運びこんだ。また,採餌場の外周もSoldierによってガードされており,採餌の範囲を広げる際にも常にSoldierが先頭であった。
    採餌を行うのは夜間だけで,これらの活動は乾期にのみ確認できた。一晩のうちに同時に数カ所の採餌場所で活動を行うことはなく,各々の採餌は1 ヵ所の探餌場を利用して行われた。また,採餌場所を頻繁に変えるため同じ幹蟻道や採餌場所を2 日以上連続して使用することはまれであった。
  • 中村 浩二, Liliek E. PUDJIASTUTI, 片倉 晴雄
    1995 年 4 巻 2+3 号 p. 223-231
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ボゴール周辺に分布する食葉性テントウムシ3 種, Epilachna vigintioctopunctata Fabricius (以下EV と略す), E. enneasticta Mulsant (EN), Epilachna sp. 3 (EM) を実験室内で飼育して,生存繁殖スケジュールを明らかにし,パダン産(スマトラ西部州)の近縁種3 種(EV をふくむ)の結果とも比較した.
    EV とENはナス科を食草とし,前者は日本産ニジュウヤホシテントウと同種である. EMはE. emarginata と類似の種で,キク科のツル草であるMikania sp. を食草とする. EV とEMは平地から海抜1400 メートルまで分布する普通種であり,成虫の分散力は強い. ENは海抜500 メートル以上にのみ分布しEV と共存するが,密度と成虫の分散力は, EV よりも低い.
    1.卵から羽化までの発育日数は, 22.1 (EV) , 27.7(EM), 29.5(EN) であった.
    2. 成虫の寿命(日)は,オス60 .4 (EV) , 66.7 (EM), 69.9 (EN) ,メス59 .3 (EV) , 73.6 (EN), 77.4 (EM)であった.
    3. 産卵前期間(日)は, 9.6(EV), 13.9 (EM), 15.9 (EN) ,産卵終了から死亡までの日数は, 4.1(EV) , 5.4 (EM), 5.6 (EN) であった.
    4. 1 メスあたり産卵数は, 322 (EN), 426 (EV), 650 (EM) であり,メスは,成熟してから死亡まで一定のペースで産卵し続けた.
    5. 世代期間T( 日)は, 45 (EV) , 58 (EM) , 63 (EN) ,内的自然増加率r は, 0.081 (EN), 0.100(EM), 0.118 (EN) であった.
短報
  • 湯本 貴和, 山極 寿一, 浅岡 一雄, 丸橋 珠樹, Ndunda MWANZA
    1995 年 4 巻 2+3 号 p. 233-238
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    ザイール国の熱帯山地林に産する2 種のアフリカのナス属(ナス科)植物, Solanum dasyphyllum とS. aculeastrum の果実は森林ゾウによってのみ食べられ,種子散布されていることがわかった.他の動物は果肉に含まれる有毒物質のために,この果実を食わないことが示唆された.物質の同定などの探求がさらに必要であるが,植物が化学的な手段によって種子散布者を選んでいる最初の報告である可能性がある.
  • 石井 弘明, Kalan ICKES
    1995 年 4 巻 2+3 号 p. 239-245
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    Ocotea 属は中米コスタリカの低地熱帯雨林の林床に分布する低木である。同属の一部の種においては枝の髄部分を利用したアリMyrmelachista 属の共生現象が認められている。本研究では,Ocotea属のアリ共生種と非共生種の聞の形態的差異を樹形の特徴から明らかにした。アリ共生種と非共生種の聞には枝の基部直径における差異は認められず,アリに提供され得る住み場所資源としては両者の聞で差がないことが確認された。一方で,共生アリを持つ種は非共生種よりも葉面積の大きな葉を持ち,枝の基部直径に対する枝長は非共生種のうちの2 種よりも短かった。共生種のうち2 種は非共生種よりも枝の平均節間長が短かく,その結果,隣合う葉の自己庇陰をさけるため,葉は非共生種に比べて細長い形をしていた。このような結果から, Ocotea 属のアリ共生種においては,同化部分への資源配分率が非共生種よりも高くなっており,それが樹形に及ぼす影響も明らかになった。Ocotea 属のアリ共生種と非共生種との樹形の差異は,アリ共生種と共生アリの共進化の可能性を示唆している。
  • 松本 和馬, ERNIWATI, Rosichon UBAIDILLAH, 中村 浩二
    1995 年 4 巻 2+3 号 p. 247-252
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    (1)ボゴール周辺で採集したバナナセセリ幼虫(1 ~ 5 齢)の頭幅サイズを計測した。頭幅サイズは,齢がすすむにつれて約1.4 倍ずつ増加した(Dyar の法則に従う)。
    (2 )卵,幼虫,蛹の発育日数を実験室内および野外網室で飼育して調べたところ,卵から羽化までに40.9 日(実験室内), 40.7 日(野外網室)を要した。
    (3 )野外網室での各齢期の生存率は, 82.8% (卵), 91.5% (1 齢), 97.7% (2 , 3 齢), 67.7%(4 齢), 46.0% (5 齢), 100% (前蛹と蛹)であった。4 , 5 齢に死亡率が高まったのは,餌不足が原因であった。
  • 杉本 敦子, 井上 徹志, 陀安 一郎, 和田 英太郎, 安部 琢哉
    1995 年 4 巻 2+3 号 p. 253-257
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    タイ国,ナラチワにおいて4 種のシロアリ個体からのメタン放出量を測定し,カース卜ごとの放出量の違いも比較した。材を食う下等シロアリ, Cryptotermes thailandicus ではメタン放出速度は検出限界以下であったのに対し,キノコを栽培する高等シロアリ(Macrotermes gilvus, Macrotermes carbonarius) , および土を食う高等シロアリ(Dicuspiditermes makhamensis) はメタンの放出量が多かった。カースト間の比較から,女王,王,兵蟻,幼虫のように自ら餌をとることができないカーストは,職蟻に比べてメタン放出量が少なかった。また, D. makhamensis では職蟻と兵蟻のメタン放出量の差が大きいが,摂食に関するカースト間相互作用の複雑なキノコシロアリではその差が比較的小さかった。さらに, M. carbonariusの大型兵蟻は大きなメタン放出速度を示し,キノコシロアリのカースト間の複雑な相互作用を反映していると考えられた。これらのことは餌の質の違いがメタン放出量に差をもたらすことを示唆している。
  • 市野 隆雄, 山根 正気
    1995 年 4 巻 2+3 号 p. 277-281
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
    マレーシア国サラワク州ランビル国立公園にある混交フタバガキ林において, 11 本の林冠木上におけるアリ種構成の垂直分布を,日中ショ糖ベイトトラップを用いて調べた.亜林冠部(地上高25-35m) ,下層部(1-2m) ,および林床部ではそれぞれ, 15, 6 および4 種のアリが採集されたが,林冠の最上層部(45-48 m) ではアリはまったく誘引されなかった.林床部では捕食性のハリアリ亜科および肉食性あるいは雑食性のオオズアリ属のアリが採集されたのにたいし,樹上(亜林冠部および下層部)ではオオアリ属,シリアゲアリ属およびトゲアリ属などの,植物の花外蜜や同翅目昆虫のだす甘露などを主な餌源としている可能性のあるアリが多く採集された. 林冠木ごとのアリの種構成の重なりは比較的小さかった.
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