Tropics
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9 巻, 1 号
Nature and People in Borneo
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • Hideo TAGAWA, Takashi KOHYAMA
    原稿種別: はじめに
    1999 年 9 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/02/28
    ジャーナル フリー
  • Hideo TAGAWA
    原稿種別: はじめに
    1999 年 9 巻 1 号 p. 3-4
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/02/28
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 英治
    1999 年 9 巻 1 号 p. 5-16
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/02/28
    ジャーナル フリー
    カリマンタンとジャワ島に作った50 個(合計17.8 ha) の調査区の植生データから,樹木の多様性について議論した。熱帯低地林で最も多様性が高く,山地林や二次林で多様性が減少した。西カリマンタンのほうが束力リマンタンよりも多様性の高い調査区があった。同じ植生地域ですぐ近くに作った1 ha の調査地問でも共通種は5ー7 割しかなく,別の州の調査地問でも数%は共通種が出現するが,その理由を種数面積曲線から推測した。
    生態的な機能面での多様性を,風散布果実と材の比重から考えた。フタバガキ科は尊片が発達する風散布と,発達しない重力散布の果実を作るが,それぞれ著しい大きさの違いがあった。また,日本のカエデ属と比較してSJz orea の羽根は変異の幅が広かった。材も特にShorea では種による比重の差が著しく,このような生態的性質が異なる種を多数もつことがアジア熱帯林においてShorea 属の優占の一因と考えられた。他の種も材の比重において温帯林より変異の幅が広かった。このように,熱帯林では分類学的に多様であるだけでなく,生態的機能も面でもさまざまな種が存在するように思われた。
  • 高橋 英紀
    1999 年 9 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/02/28
    ジャーナル フリー
    森林火災と火入れ開墾に起因する煙霧が, 1997 年の8 月から11 月にかけて東南アジアを広く覆った。その煙霧は人々の健康や社会活動のみならず,それら地域の生態系にも少なからず影響をあたえた。中央カリマンタン州の州都パランカラヤ市近郊の内陸泥炭湿地林において地下水位,その周辺のオープン地域において日射量の観測を1993年の9 月から1997年12月まで連続観測した。乾期における平年の地下水位は地表近くを推移したが1997年には7月から9月にかけてほとんど、降雨がなかったために地表下98 cmにまで低下した。晴天時の日射量も煙霧によって1997年9月には平年値の40 %にまで低下していた。地下水位の毎時観測データにもとづく日変化から推定された森林の蒸発散量と日射量との聞には正の直線回帰関係が認められた。この関係式を使って森林の蒸発散量を推定すると,煙霧の影響により9 月下旬には蒸発散量は平年の約50 %に減少していた。
  • 櫻井 克年
    1999 年 9 巻 1 号 p. 27-40
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/02/28
    ジャーナル フリー
    ボルネオ島は世界で3 番目に大きな島である。ボルネオ島は熱帯雨林機構下にあり,その大部分は低地フタバガキ林で覆われている。土境の性質は主に母材(第3 紀の砂岩・頁岩)と地形で、決まっている。丘陵地の土壊はその大部分がマレーシアの土壊分類では赤黄色ポドソル性土である(FAO/UNESCO の分類ではAcrisols ,アメリカ農務省の分類ではUltisols に相当)。一方,低地には泥炭土壌や沖積土壌が分布する。丘陵地と低地の境界には,石英に富む粗砂を主体としたケランガス(ヒース林しか成立しない)が分布する。熱帯土壌の特徴としてしばしば取り上げられる,表層での養分の遍在は,ボルネオ島の森林土壌には必ずしも当てはまらない。地表から5cm までと70cm までに存在する交換性陽イオンの比は,温帯である日本の森林土壊の比と変わらない。土地利用可能性指標は,主に傾斜によって分級され,土壌酸性の強さによって細分化されている。焼畑は,ボルネオ島の伝統的な農業形態である。油ヤシ園やコショウ畑と比較すると,傾斜地において無耕起で行う陸稲栽培は,土壌侵食が小さく持続的な農法といえる。しかし地域住民にとっては換金作物の栽培も重要な側面であることから,土壌侵食対策を十分に考慮に入れたアグロフォレストリーシステムの構築が不可欠であろう。
  • 山田 勇
    1999 年 9 巻 1 号 p. 41-54
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/02/28
    ジャーナル フリー
    ボルネオは東南アジア島峡部の中心に位置する,世界第三位の大きさをもつ島である。最高峰のキナバル山は4000 m を少し越えるが,ほとんどの中央山地群は3000 m 以下の中規模山地であり,ここから四方に向かつて,中規模河川が流れ,海域世界へとつながっていく。この地形的要素は,この島の生態資源利用を理解するために重要である。アフリカや南米アマゾンと異なり,古くからこの島の豊かな資源は川を通じて海域世界へ簡単に送られていった。もっとも大きな開発は混交フタパガキ林に始まり,今やマングローブや泥炭湿地林にまで及んでいる。これらの開発は常に大会社の巨大資本による大勢の人力と機械カによってなされてきた。一方,先住民の人々による沈香など、の小型林産物の交易は,大開発方式とは異なり,生態系全体を考えた上での持続的な取り扱いのもとでおこなわれてきた。本論では,「生態資源」概念を中心に,今後の資源管埋について言及したい。「生態資源J は単なる生物資源ではなく,生態系の中での様々な資源の混合態である。生態系の持続的管理なしには,資源は存続し得ない。森林伐採,森林火災,そして植林活動などのいくつかの諸例を通して,流動する人々と資源の動きが,地域の安定につながることを指摘したい。
  • 藤間 剛
    1999 年 9 巻 1 号 p. 55-72
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/02/28
    ジャーナル フリー
    ボルネオ島は湿潤熱帯気候下にあるが,その東部は年により強い乾燥におそわれることがある。1982-83年と1997-98 年の非常に強いエルニーニヨ南方振動の影響でおきた異常乾燥時には,ボルネオ島東部で大規模な火災がおこり,火の影響を受けた土地はともに500 万ヘクタールに達した。インドネシアでおきる森林火災の火もとは,火入れ地拵えからの延焼であることが多い。火入れは古くから行われてきたが,近年は火入れがおこなわれる範囲がひろがったこと,規模の大きい火入れが行われるようになったこと,そして火が燃え広がりやすい草原が増加したことなどにより異常乾燥時には広大な面積の土地が火の影響を受ける。森林の火災被宮は過去に受けた撹乱の強さと関係し, 1983 年の火災では天然林と比べて過去に択伐を受けた林の方が被害が大きかった。1983 年から1998 年の15 年間は,被災した森林が十分に回復するには短すぎたため, 1998 年の火災では過去に伐採および火災の影響を強く受けた林分の被害が大きかった。15 年間隔でおこった2回の森林火災によって,萌芽力がなく埋土種子も作らない樹種では開花·結実可能な個体は限られたものとなっている。火災の繰り返しにより,森林の再生は妨げられさらに困難になった。ボルネオ島東部のように, 異常乾燥時に火災がおきる地域で森林の保全や修復を行うには,火災の再発防止策がまず必要である。
  • 「森林伐採フロンティア」から「土地開発フロンティア」ヘ
    佐々木 英之
    1999 年 9 巻 1 号 p. 73-82
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/02/28
    ジャーナル フリー
    カリマンタンは,今まさに天然資源の採収(主には木材伐採)を中心とした地域経済から,大規模プランテーション開発を中心とした経済へと大きく転換しつつある。熱帯林破壊についての文献では,環境や社会へのインパクトを考える際に, 商業木材伐採と農業開発のような土地開発を区別しない傾向が見られるが,本論文では, 2 つのタイプのフロンティア形成という概念を使って,過去及び現在進行中の熱帯林地域の変容や森林環境,地域社会への影響の特徴を説明しようとした。2 つのタイプのフロンティアとは,一つには天然林からの木村伐採のフロンティアであり,もう一つはプランテーションのための土地開発のフロンティアである。
    この2 つのタイフのフロシティアの特徴には,はっきりとした違いがある。それは森林へのインパクトとして見れば,カリマンタンの商業木材伐採は択伐方式によるもので伐採後には乱されながらも森林が残るのに対して,プランテーション開発は樹林の皆伐と抜根をすることで,全く森林が失われてしまうという点にある。それら2つのフロンティアは,生産や経済の面での特徴でも異なり,森林環境や地域社会への影響が明確に異なっている。また,道路開発と土地開発フロンティアの時代における森林破壊は,河川交通と森林伐採のフロンティア時代における森林破壊に比べて,格段に広範囲でかつ高スピードで進行する傾向がある。
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