カリマンタンは,今まさに天然資源の採収(主には木材伐採)を中心とした地域経済から,大規模プランテーション開発を中心とした経済へと大きく転換しつつある。熱帯林破壊についての文献では,環境や社会へのインパクトを考える際に, 商業木材伐採と農業開発のような土地開発を区別しない傾向が見られるが,本論文では, 2 つのタイプのフロンティア形成という概念を使って,過去及び現在進行中の熱帯林地域の変容や森林環境,地域社会への影響の特徴を説明しようとした。2 つのタイプのフロンティアとは,一つには天然林からの木村伐採のフロンティアであり,もう一つはプランテーションのための土地開発のフロンティアである。
この2 つのタイフのフロシティアの特徴には,はっきりとした違いがある。それは森林へのインパクトとして見れば,カリマンタンの商業木材伐採は択伐方式によるもので伐採後には乱されながらも森林が残るのに対して,プランテーション開発は樹林の皆伐と抜根をすることで,全く森林が失われてしまうという点にある。それら2つのフロンティアは,生産や経済の面での特徴でも異なり,森林環境や地域社会への影響が明確に異なっている。また,道路開発と土地開発フロンティアの時代における森林破壊は,河川交通と森林伐採のフロンティア時代における森林破壊に比べて,格段に広範囲でかつ高スピードで進行する傾向がある。
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