農家自家醸造
味噌
に含まれるチラミン量は, 当然その微生物のフロラにより顕著に変化することが考えられる。 そこで,
味噌
中に含まれる微生物群を培養してチラミン生成の有無を調べ, 続いてチロミン脱炭酸酵素をもつ細菌の分離を試みた。また, 液体培地に2種微生物が共存する場合のチラミン生成量の多寡を調べるため既知細菌および
味噌
から分離した微生物を組み合せて培養し, 培地中のチラミン量を測定した。 さらに培地食塩濃度とチラミン量についても調べた。その結果,
1)
味噌
に含まれる微生物のうち, 好気性細菌でチラミンを生成するものはなく, 分離酸生成細菌のうち15株にチラミンの生成をみた。 これら細菌のアセトン標品における酵素活性は, 既知
Sc. faecalisと比較して一般に低く, またチロシン脱炭酸酵素の生産の不安定な菌株が多かった。またドーパと反応するものはなく, チロシンからチラミン以外の物質を作る菌株が存在した。
2) これら15株菌は, いずれも乳酸を生成し, チロシン添加培地で培養しても, チラミン生成量の顕著に高いものはみられなかった。
3)
Sc. faecalisと既知細菌あるいは
味噌
から分離した細菌2種を組み合せ, 両菌株を同時に接種あるいは
Sc. faecalisをあとで接種した場合の培地中のチラミン生成量は, 一般に
Sc. faecalis単独の場合より低くなった。 培地のpHがアルカリ側に傾くような細菌と組み合せた場合のチラミン量は高くなり, 逆に酸性側に傾く場合はその量の低くなる傾向がみられた。 また,
Sc. faecalisを先に接種した場合, チラミン生成量の変動は低く, したがってこれら細菌類は
Sc. faecalisによって生成したチラミンを分解したり, 利用することはないと推定した。
4)
ASP. oryzaeおよび
味噌
麹より分離した麹黴は,
Sc. faecalisによるチラミンの生成を完全に抑制し, また生成したチラミンを完全に分解した。
5)
味噌
から分離したチラミン生成乳酸菌は, 食塩12.5%以上の培地では, 培地中にチラミンをまったく生成しなかった。
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