ケモインフォマティクス討論会予稿集
第40回ケモインフォマティクス討論会 山口
選択された号の論文の37件中1~37を表示しています
プログラム
特別講演
口頭発表
  • 田部井 靖生
    p. O1-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    大規模化合物データベースの類似度検索技術に関する技術全般について紹介する。
  • 山田 一作, 木下 聖子
    p. O2-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    セマンティックウェブ技術を活用し様々なライフサイエンスデータとリンクすることで糖鎖機能の解明につなげることができる。糖鎖科学のポータルサイトとしてGlyCosmos Portal を開発し、ライフサイエンスデータの統合を目指す。我々はこれまで国内外の研究者と協力し糖鎖情報のオントロジーであるGlycoRDF、糖鎖構造表記 法であるWURCS、国際糖鎖構造リポジトリであるGlyTouCan を開発してきた。本ポータルは、これらの成果を活用したリポジトリとデータベースで構成される。リポジトリはGlyTouCan と複合糖質のリポジトリを開発している。また、データベースとしては、糖鎖関連の生合成経路や糖鎖の分子構造のデータを収録するGlyCosmosDB を開発している。
  • 山﨑 広之, 西端 芳彦, 市村 博信, 山乙 教之, 広野 修一
    p. O3-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    Fragment-Based Drug Design (FBDD) では、従来実験手法により活性フラグメントを同定し、それらのフラグメントを組み合わせて化合物設計を行う。計算機的手法でフラグメントを同定する場合、数多くの候補フラグメントの数が同定され、その組み合わせは爆発的な数となる可能性がある。以前、我々は多数の候補フラグメントから絞り込むknowledge-based な手法を提案した。これにより候補フラグメントに優先順位をつけることができるが、本手法は用いる化合物ライブラリの化合物数が多いと計算コストが大きくなってしまう。今回はさらにデータベースに含まれる化合物数を絞り込んだ代表化合物ライブラリの開発を検討する。これにより高速に最適な組み合わせを選択したり他のFBDD 手法に適用したりすることが期待できる。
  • 林 亮子
    p. O4-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では,決定木とランダムフォレストを用いる.決定木では,発火点に影響の大きい記述子とその記述子を用いた発火点の分岐ルールの自動抽出を試みた。ランダムフォレストでは、より正確な発火点予測を目指す。
  • 寺島 千絵子, 黒木 菜保子, 森 寛敏
    p. O5-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では超臨界CO2 中に溶解したp-nitroaniline(PNA)が示すソルバトクロミズムを、フラグメント化の手法を基とした量子化学および第一原理分子動力学計算により、理論的に調査した。従来、PNA に対する CO2の効果は、PNA の π-π* 遷移を長波長シフトさせるのみであると考えられてきた。だが、CO2 の配向によっては、短波長シフトさせる効果もあり、各 CO2 が PNA に与える効果は加算的であることが分かった。また、MD の結果からトラジェクトリーを詳細に調査したところ、CO2 分子が四極子を持ちながら、分子が小さいため容易に回転することができ、時々刻々とPNA に対しCO2 が様々な配向をとる様子がうかがえた。
  • p. O6-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
  • 寺前 裕之, 加藤 洋介, 高山 淳, 坂本 武士
    p. O7-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    フェルラ酸(FA)は比較的強い抗酸化作用を示すことが明らかになっている。本 研究では坂本らの研究によりDPPH フリーラジカル消去能の測定で得られた50%のDPPH フリーラジカル消去濃度(IC50)を元に、FA とその誘導体のフェノール性水酸基から水素を取ったラジカルの電子状態とIC50 との関連性を検討した。
  • ⼭⼝ 徹, 眞⽥ 昭平, 隅本 倫徳, 堀 憲次
    p. O8-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    薬剤の安定性試験に際し、分解反応に対する理論的な予測データを得られれば有⽤である。本研究では、アスピリンの加⽔分解反応に対し理論的解析と⾃由エネルギーを⽤いた反応速度論シミュレーションを⾏った。B3LYP/6-311+G(d,p)//B3LYP/6-31G(d)レベルの反応解析の結果、アスピリンは⽔2 分⼦によるプロトン移動を介してΔG‡=27.2 kcal/mol で分解されると計算された。これを⽤いた反応速度論シミュレーションの結果、温度37℃、湿度42%条件下での6 ヶ⽉⽬の分解率の実測値0.083%に対し、計算値0.091%と⾮常に良い⼀致を得た。また、湿度30〜100%での広い範囲のシミュレーションを実施し、温度60℃、湿度30%条件下でも実測値と⾮常に良い⼀致を得た。
  • 成島 和男, 池永 祐乙, 光井 和輝
    p. O9-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    近年、計算化学は目まぐるしい進歩を遂げており、現在では、新しい素子の開発には計算機を用いることが定着している。我々の研究室では、有機半導体を用いた太陽電池を作製しており、その材料としてp型にフタロシアニン類、n 型にフラーレンを用いている。しかし、この構造の物性は複雑であり、現在のところ詳しく解明されていない。そこで我々は、密度汎関数法やHartree-Fock 法を用いて、フタロシアニン類-フラーレンC60 系における基底状態、励起状態、それぞれの電子物性の評価を行った。
  • 今井 拓也, 赤瀬 大, 相田 美砂子
    p. O10-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    核磁気共鳴(NMR)の測定は、気相、固相、液相中において行われ、NMR遮蔽定数は周囲の環境の影響を受けることが知られている。気相中におけるNMR遮蔽定数は高いレベルで計算することにより精度高く予測できることがこれまでの研究により分かっている。しかし溶液中におけるNMR遮蔽定数の計算では高い計算レベルを用いるだけでは気相中のように精度の高い結果を得ることはできない。その理由として、周りの溶媒分子による溶質分子の構造変化や、溶媒分子自体がNMR遮蔽定数に影響することなどが考えられる。本研究では、溶液中の構造をQM/MM法により求め、その構造をもとに溶媒の影響によるNMR遮蔽定数の変化について考察した。その結果、周りに溶媒が存在することによる溶質分子の構造変化はNMR遮蔽定数に小さな影響だけしか与えておらず、周りの溶媒の取り入れ方によりNMR遮蔽定数に大きな影響が出ることが分かった。
  • 山田 和, 隅本 倫徳, 堀 憲次
    p. O11-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    シクロヘキサノンオキシムのベックマン転位は、ε-カプロラクタムの合成に広く活用されている。これまでの様々な触媒を用いたベックマン転位の研究により、塩化シアヌルも触媒として作用することが見いだされた。本研究では、Deng らにより報告された反応機構に基づき、塩化シアヌルを用いて同様の反応機構で進行するかについて検討し、塩化シアヌルを用いた最も適した反応機構の解明を行った。
  • 堀 憲次
    p. O12-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    我々は、これまで開発を行ってきた遷移状態データベース(TSDB)を活用して合成経路の評価を行う手法(in silico スクリーニング)を適用する研究で、東京大学船津教授を代表研究者とするCREST プロジェクトに参加している。我々のサブプロジェクトでは、遷移状態データベースに採録されている遷移状態構造をテンプレートとし、その構造中の3 つの原子を指定することにより置換基の異なる系における遷移状態候補構造を作成する。この方法により、短時間でのTS 構造計算が可能となり、その結果として多反応の可能性評価を可能としている。反応の類似性の検索には、OpenBabel 及びgWT プログラムを用いている。本研究では、CREST プロジェクトを実施するうえで新たに開発した関連プログラム、TSDB の現状とサブプロジェクト間の関連プロジェクトについて報告する。
  • 澤田 敏彦, 橋本 智裕, 和佐田 裕昭, 利部 伸三
    p. O13-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
  • 鈴木 天音, 田中 健一, 船津 公人
    p. O14-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    新規化合物の設計にあたり、溶解度は重要なパラメータのひとつである。しかし、候補化合物全てに対し実験で溶解度を求めるのは現実的に困難であるため、定量的構造物性相関(QSPR)を利用した推算が行われている。本研究では、QSPR に用いるモデルとして情報分野で広く使われ始めている深層学習を利用した。溶質・溶媒の構造記述子から溶解度予測に必要な情報を抽出する特徴抽出層、溶質・溶媒の相互作用を表現する関係表現層の2 階層のモデルを作成することで実際の化学的現象に沿ったモデル構築を行った。構築したモデルが既往の手法に比べて高い予測精度を示すことを確認したほか、モデルの中間出力をIsomapを用いて可視化した。可視化マップを用いることで、溶媒の特性の理解が可能であり、代替溶媒の探索や併用の可否判定などができる可能性を示した。
  • 陳 嘉修, 田中 健一, 船津 公人
    p. O15-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    Liquid crystals contain rigid mesogenic parts (mesogen) and flexible alkyl parts, which induce the liquid crystalline (LC) state. The aim of this study is to develop models for the prediction of LC behavior applied on a large dataset of rod-like aromatic organic compounds using a QSPR approach. The prediction models are performed using ensemble learning methods with a series of molecular descriptors and chemical fingerprints considering mesogenic parts and flexible alkyl parts of LC structures. This work demonstrates that the complex phenomena of LC phase formation by large variety of mesogens can be effectively modelled using ensemble learning. The best of these models showed high accuracy and F1 score. (90% and 93%) The best model allowing experimentalists to seek the synthesis of predicted molecule that would exhibit the desire LC properties to accelerate the progress in the discovery of new LC materials.
  • p. O16-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
  • 高橋 崇宏, 倉 陸人
    p. O17-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    化学気相堆積法の研究開発の自動化を目指して、反応装置内部において原料ガスが気相反応や表面反応を経て薄膜になる反応機構(反応モデル)を明らかにするための実験計画を自動的に立案するシステムを開発した。立案アルゴリズムは共分散行列適応進化戦略法を用いて実現した。そして、システムの提案結果の妥当性を化学気相堆積法の仮想的な実験結果を用いて検証した。
  • 弓削 伸宏, 田中 健一, 船津 公人
    p. O18-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    適応型モデルとは、データの時間変化への追随や予測性の高い統計モデルの構築を意図し、ソフトセンサーに組み込まれるモデル更新手法のことである。従来、ソフトセンサーの研究は、1 種の適応型モデルを単体で利用するものとして進められるが、単体の適応型モデルでは統計モデルの正確性をあらゆる局面で維持することが困難とされる。これを受け先行研究は、2 種の適応型モデルを併用する方法を開発した。しかしこの方法は、予測精度の高い適応型モデルを原理上選択できない点、適用可能な適応型モデルの組み合わせが限られている点が課題とされた。そこで本研究は、併用する適応型モデル全てに対し予測精度を評価することで先の課題を解消できる、適応型モデルの選択的使用法を提案する。提案手法について、数値シミュレーションデータを用いて有効性を評価した。
ポスター発表
  • 内丸 忠文, 都築 誠二, 陳 亮, 水門 潤治
    p. P1-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
  • 和泉 博
    p. P2-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    立体配座探索にはMerck 社からの報告に代表される分子力場(MM)計算が一般に使用されている。ところが、日本の製薬企業に協力して水素結合を有するキラル医薬候補分子の解析を進めたところ、三割以上予測赤外円二色性(VCD)スペクトルが実測のものを再現しない結果が得られた。そこで、最大共通部分構造(MCS)で表されるフラグメントをもち自由度が高い分子にむけて、フラグメント分子のデータベースの中から立体配座探索を行い、環構造に対応した密度汎関数法計算のための初期構造を自動作成するプログラム(RingFragGeneration)を構築した。プログラムを用いて、49 個の回転可能な単結合を有し、マクロライド環構造をもつラパマイシンの初期構造を自動作成し、VCD 立体配座解析を行った。
  • 山本 博之, 津川 裕司
    p. P3-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    メタボロミクスでは、化学構造が不明な未知ピークが疾患バイオマーカー候補となることがあり、未知ピークの構造推定を行うためのケモインフォマティクス手法が様々提案されている。本研究では、結合が切断するか否かを目的変数、インシリコフラグメンテーションによって得られた構造ペアのフィンガープリントから計算した特徴ベクトルを説明変数とし、正則化ロジスティック回帰を用いてフラグメンテーション予測を行った。
  • 松岡 聖二, 吉田 稔
    p. P4-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    従来の多くの類似性指標は化学構造の全体的な類似度を表しているため、特徴的な共通母核を持ち同様の生理活性を示す化合物同士が、残基のサイズによっては低い類似度を示すという問題点がある。そこで、局所的なグラフ同型性を基にした類似性指標を新たに開発した。当指標をChemical space network(CSN)として知られるネットワーク理論的手法を用いた構造活性相関分析へ応用した結果について報告する。
  • 田中 るみ子, 中山 伸一
    p. P5-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    特許公開公報に記載されている化学物質名は、多様であり、記載法も書き手に委ねられているため共有化を妨げている。化学物質名を自動抽出できれば、共有化に役立つ。現状を把握するために特許公開公報(化学分野)において、化学物質名の出現頻度、記載法を調査、分析した。化学物質を単一物質、混合物、高分子など種類別にタグ付けを行い、各文書における種類別の化学物質名の頻度を比較した。化学物質名を抽出する試みとして、まず形態素解析を用いた化学物質名の単離と、化学物質名に特有な文字に着目した化学物質名の選出結果を示した。
  • 清原 慎, 溝口 照康
    p. P6-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    電子線によって内殻電子が非占有軌道に励起される際のエネルギーを測定する手法ELNESは,高い時空間分解能で原子及び電子状態を解析することができる強力な手法である。しかしELENSから実験スペクトルからそのような情報を得ることは容易ではなく,一般には理論計算によりスペクトルを再現・比較し,専門的な知識を持ってそれらを解釈する必要がある。1つ1つのスペクトルに対してこのような解析をする必要があり,装置の発展により膨大な数のスペクトルが現在では,このような”人駆動型”の解釈手法は限界を迎えつつある。そこで本研究では,理論計算や専門的な知識を必要せず,かつ膨大なスペクトルデータの解析を可能とする次世代のELNESスペクトルの再現及び解釈手法の開発を試みた。結果,階層型クラスタリングと決定木を組み合わせることで,構造の情報とスペクトルデータの相関性を結び付けることに成功した。
  • 山中 雅則
    p. P7-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    蛋白質とリガンドの相互作用を分子動力学の時系列データをランダム行列理論を用いて解析を行った。時系列のサンプリング間隔に依存する分散共分散行列の固有値解析を行い、蛋白質4YDP とそのリガンドのダイナミクスに関する特徴的な時間スケールと動的クラスターを考察した。
  • 吉田 智喜, 山乙 教之, 広野 修一
    p. P8-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    リガンドとタンパク質との間の相互作用を、アミノ酸残基フラグメントレベルで量子化学的に解析することが可能なフラグメント分子軌道(FMO)法は、阻害剤とタンパク質との間の相互作用を取り扱う創薬において非常に有用な手法である。本研究で我々は、FMO 法によって得られるフラグメント結合エネルギーを記述子としたPLS 回帰によるCDK2 阻害剤の三次元定量的構造活性相関を報告する。阻害活性既知リガンドと最も類似しているリガンドが結合しているCDK2 タンパク質X 線結晶構造に対してドッキング計算を行うことによって信頼できる複合体構造を作成してFMO 計算に使用した。幅広い活性の多様なリガンドについて阻害活性を予測することができるPLS 回帰モデルを作成することができた。
  • 渡邉 友里江, 早川 大地, 遠藤 智史, 合田 浩明
    p. P9-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    最近、家族性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者で同定されたAKR1C3 のC154Y 変異体は、体温近傍の温度で野生型の半分の活性しか示さないことが明らかとなった。そこで、本研究では、分子動力学計算を用いて野生型AKR1C3 及びそのC154Y 変異体の溶液構造解析を行い、C154Y 変異体における活性低下の原因を立体構造の観点から考察した。その結果、C154Y 変異体では、AKR1C3 のα3ヘリックスの一部の構造が崩れることが観察された。また、C154Y 変異体においては補酵素であるNADPと残基との間に形成される水路結合が野生型より弱まっていることが示唆された。このことがC154Y 変異体の活性低下を引き起こしている原因であると考えられた。
  • 蔵本 裕哉, 赤瀬 大, 相田 美砂子
    p. P10-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    トリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)はサメなどの海洋生物の体内に存在する浸透圧調節物質として知られているが、その浸透圧調節のメカニズムは未だ明らかになっていない。これまでの研究でTMAOは周囲の水分子と強く相互作用し、特異的な溶媒和構造をとることが分かっている。この特異性が他の溶媒分子においても見られるかどうか確かめるため、本研究では溶媒分子としてジクロロメタンと水を用いる。それぞれのクラスター構造を形成し、安定構造を見出した。TMAOの酸素原子とそれに配位する溶媒分子間には、水、ジクロロメタンともに大きな相互作用による安定化があった。このO…HにおけるBond Critical Pointの電子密度は、水、ジクロロメタンともに、水の二量体間の水素結合に匹敵する。
  • 川﨑 惇史, 山﨑 広之, 西端 芳彦
    p. P11-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    タンパク質とリガンドの記述子を用いた様々な標的タンパク質およびリガンドにわたる化合物-標的相互作用のin silicoの網羅的な予測に関するいくつかの研究が報告されている。ここで我々は、タンパク質の3 次元形状と物理化学的な特性を考慮するために、タンパク質の周りの3次元格子点に基づく新しいタンパク質記述子を検討した。ただし、3 次元格子点は通常、タンパク質の重ね合わせを必要としており、配座変化に影響を受けやすいという問題点があるため、網羅的な相互作用予測に用いるのは困難である。そこで我々は、配向が異なる複数の立体構造から作成した3次元格子点セットに対して主成分分析を行い、その上位の主成分得点を記述子として用いること、さらに、配座変化による感受性が低くなるようにするために一般的なドッキングやCoMFA で用いられる格子点間隔よりも広く設定することにより、3次元格子点の問題点を解決できるのではないかと考えた。本研究では、これらを確認するための2種類の検証を行った。
  • 空閑 瞳, 杉本 学
    p. P12-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では香りを有する分子に関する電子状態計算を行い、様々な数値的指標(電子的記述子)に基づく分類と、香りの分類に関する相関を調べた。その結果、両者の間によい相関があることがわかった。この結果から、注目する分子がどのような香りを持つかに関する予測も試みた。その予測結果は文献にある言語表現と一致した。
  • 井上 貴文, 杉本 学
    p. P13-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    電子状態計算から得られる分子軌道、静電ポテンシャル(ESP)、電子密度などの、三次元的電子状態トポロジーは分子の性質を見る上で重要である。本研究では、静電ポテンシャルの三次元的形状の類似性を数値的に評価する手法を開発したので報告する。
  • 井手尾 俊宏, 杉本 学
    p. P14-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    Fatty Acid Synthase (FAS) 阻害剤である33 個の分子について電子状態計算を行い、電子的類似度を算出して、各分子の活性を示す数値(半数阻害濃度)との相関を調べた。また、分子の構造的類似度についても同様に半数阻害濃度の数値との相関を確認した。電子的類似度の相関係数は0.79、構造的類似度の相関係数は0.47 となった。従って、今回検討した分子群の薬理活性に対しては、電子的類似度がより優れた記述子であると言える。
  • 山之内 昭博, 杉本 学
    p. P15-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    我々は電子状態計算を利用して分子の類似性を評価する電子状態インフォマティクスを開発している。本研究では、その手法の応用として、有機分子の分類に関する検討と、異なる構造的特徴を有する機能性分子探索を目指しscaffold hopping の実例を用いた検討を実施したので報告する。
  • ⼩杉 侑誠, 杉本 学
    p. P16-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    機能性分⼦の探索のためには、物質に関する構造、電⼦状態に関する情報を集積したデータベースが有⽤であると思われるが、数値データだけでは物質開発の戦略を提⽰することはできない。我々は、物質探索において⾔語によって表現された知識情報の活⽤が本質的に重要であると考え、分⼦構造、電⼦状態、知識情報の三つを含む知識情報統合型電⼦状態データベースを開発しているので、その現状を報告する。
  • 森川 郁美, 杉本 学
    p. P17-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/19
    会議録・要旨集 フリー
    生体アミン受容体は昆虫の摂食行動を制御するため、新規農薬開発に向けた標的分子になりうることが明らかとなっている。本研究では、電子状態計算から得られる17 種の数値データを記述子とした。これらの記述子を用いて、生理活性を表す実験値を説明または予測する回帰モデルを作成し、予測値と実験値との相関を得ることとした。作成した回帰モデルの決定係数は0.737 と良好な相関が見られた。回帰モデルでは、溶媒和エネルギーに関する記述子と分子体積の記述子が大きな影響を与えることがわかった。
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