東アジアへの視点
Online ISSN : 1348-091X
34 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 亀山 嘉大
    2023 年 34 巻 1 号 p. 2-13
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
     現代の都市発展の源泉は,空間経済学にしたがうと,消費者,最終財の生産企業,中間財 の生産企業の3 者間の相互作用によって内生的に生じる集積効果=「集積の経済」の働きに 求められる。集積の経済は,集中力(財の多様性に基づく規模の経済)と分散力(輸送費) の均衡点で形成される。  本稿では,空間経済学の視点から,経済成長期には想定されていなかった“ 疫病による世 界分断(パンデミック)”,“ 国際紛争と安全保障”,“ 人口減少”,“ 繰り返される自然災害” の4 つのリスクがヒトやモノの移動にかかる輸送費を増加させる可能性があることを議論し た。その際,国際情勢に起因した「国際レベルの輸送費の増加と集積の関係」と国内情勢に 起因した「国内レベルの輸送費の増加と集積の関係」に議論をわけて,それぞれの展望を述 べた。
  • 松田 琢磨
    2023 年 34 巻 1 号 p. 14-26
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    日本と韓国の間を結ぶ日韓コンテナ航路(日韓航路)は,日韓貿易を支える重要な役割を 担っている。また,九州地方含む日本の地方港にとって,釡山港との航路は重要な国際航路 であり,釡山港は外国との貿易に際して通過するチェックポイントとなっている。  本稿では改めて日韓航路の基本的な動向と現状について確認する。主な内容としては,概 して,九州地方が日韓航路を通じてアジア地域との経済的結びつきを強めていることがあげ られる。ほかの地方より九州地方が韓国向け輸出貨物を集めている一方で,博多港以外で日 韓航路の便数が少なくなっていることも確認された。  また,日韓航路は10 社以上の中小韓国船社が大きなシェアを占めている。これらの会社は 再編の可能性もときおりささやかれており,日韓航路に参入する船社間で再編が見られれば, 日本の荷主にとってコスト上昇要因になる可能性がある。  さらに,本稿では日本発着貨物が釡山トランシップへの依存度を高めている傾向も指摘し ている。今後はサプライチェーンの強靭化に資する形でコンテナ港湾の利用を考えること, 九州におけるコンテナ輸送の在り方を考えることが重要になる。  貿易の主要な手段であるコンテナ輸送を,地方で活発化させる意義は大きい。九州地方を はじめ日本の多くの地方港について「実入りコンテナの輸出量を増やすこと」は共通した課 題である。地方の雇用を促進し,経済の活発化を促すためにも輸出促進の試みが期待される。
  • 廻 洋子
    2023 年 34 巻 1 号 p. 27-45
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
     本稿では,九州のインバウンド観光の現状とポストコロナ時代の在り方について考察する。 その基礎として,国土交通省,日本政府観光局,観光庁などの公的データを使用し,アジア 各国の訪日旅行市場と九州の訪日旅行市場,さらにこれを支える国際航空の現状と課題点を 分析した。訪九旅行市場の課題としては,1)東アジアからの観光客が全体の9 割以上を占 めていること,2)訪問者の滞在期間が短いこと,3)アジアのLCC が多数の国際航空便を 担当していること,4)国際航空便が福岡の空港に集中していることをあげることができる。  これらの課題に対応するため,1)市場の多様化と新規市場の開拓,2)評価指標の“ 人 数” から“ 人泊” への転換,3)リピーター対策の強化,4)福岡空港への航空アクセスの過 度な集中の解消,5)地域間の格差解消を提案している。
  • 内山 真由美, 亀山 嘉大
    2023 年 34 巻 1 号 p. 46-63
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本稿では,株式会社スターフライヤーが実施しているペット同伴搭乗サービスを題材に, ペットを含む動物に関する法の先行研究および海外の航空会社のペット同伴搭乗サービスの 現状を整理し,国際線におけるペット同伴搭乗サービスの導入の可能性を検討した。具体的 には,2023 年1~2 月に実施したスターフライヤー台湾チャーター便のインバウンド旅行者 に対するアンケート調査をもとに,仮想市場評価法(CVM:Contingent Valuation Method) に基づくペット同伴搭乗サービスの評価額を計測した。その結果,アンケート調査の回答者 は,韓国のフルサービスキャリアの航空会社が実施しているペット同伴搭乗サービスの料金 と同等の評価を付けることがわかった。  今後のインバウンド戦略では,量よりも質を追求していく必要がある。そのため,観光事 業における新しい付加価値の創出や提供は不可欠なものとなる。ペット同伴搭乗サービスは, その一助になる可能性がある。ただし,ペット同伴搭乗サービスを導入するにあたり,日本 と対象国の双方において人獣共通感染症対策が十分にとられていることが前提となる。その ためには,福岡県が推進する「ワンヘルス」のさらなる進展が求められる。
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