本研究は,台湾の代表的スタートアップ・アクセラレータの1 つである「StarFab
Accelerator」の事例研究である。StarFab は,大企業を顧客としたコーポレート・アクセラ
レータ・プログラムの運営を請け負い実施することを主なビジネスとしており,コーポレー
ト・アクセラレータとしては台湾で最大,アジアでも有数のものである。StarFab は,政府系
研究機関の工業技術研究院(ITRI)からのスピンオフで,スタートアップ支援エコシステム
の構築による台湾の次世代産業推進を使命としている。「5 つの核心的技術(クラウドコン
ピューティング,AI,IoT,ビッグデータ,サイバーセキュリティ)から出たSaaS ソリュー
ション」および「ソフトとハードの統合」をフォーカス領域とする。コーポレート・アクセ
ラレータとして,顧客大企業と相補完できる有望スタートアップを招致し,両者がwin-win
の関係を構築できるよう「精確なマッチングとディープな指導」で支援する。ITRI との繋が
りを土台とし,各種協力パートナーとのネットワーク,すなわち,StarFab エコシステムを形
成しており,これが他のアクセラレータが容易に模倣できない競争優位となっている。本研
究の目的は,アクセラレータも企業と同様,戦略的な経営を行うことで独自の競争優位とユ
ニークな存在感を示すことが出来ることをStarFab の事例分析を通して示すことである。そ
して,StarFab の「戦略ストーリー」を描くことで,戦略としての全体像を検討する。
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