東アジアへの視点
Online ISSN : 1348-091X
33 巻, 1 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 亀山 嘉大, 田村 一軌, 矢野 佳秀
    2022 年 33 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/07/26
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本稿では,2022 年1~3 月を調査期間に実施した九州の企業・団体のアンケート調査を活 用して,回答企業・団体の基本情報,テレワーク(在宅勤務)の実施状況,オンライン会議 ツールの導入状況,さらには,それらの課題を確認した。回答企業・団体のテレワークの実 施状況は,以下の5 つのカテゴリーに分類できる。1)テレワークが導入できる業務がない, 2)テレワークの導入に必要な通信環境が整っていない,3)テレワークの導入に必要な通信 環境は整っているが,電子媒体のセキュリティが整っていない,4)テレワークの導入に必要 な通信環境も電子媒体のセキュリティも整っているが,労務管理など組織内の規則が整って いない,5)テレワークの導入に必要な通信環境,電子媒体のセキュリティ,労務管理など組 織内の規則も整っているが,取引先の関係(意向)で実施できない。この内,現場での作業 をはじめface to face communication(F2F Coms)が不可欠でテレワークが馴染まない領域 を除き,テレワークの実施によって業務効率を高めることができている。  テレワークが生産性を向上させえない領域もあり,その理由は,F2F Coms の役割に根差 したものと法・規則や慣習に根差したものに大別できるであろう。F2F Coms の役割に根差 したものは,集積の経済の働きで決まるため,市場メカニズムに任せることで改善できる余 地が大きい。しかし,法・規則や慣習に根差したものは,電子媒体のセキュリティや労務管 理など組織内の規則を整えるといった企業努力で改善できるところもあるが,本質的には, 政府や地方自治体が積極的に取り組まない限り改善できないであろう。
  • 田村 一軌
    2022 年 33 巻 1 号 p. 17-26
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/07/26
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    日本の子育て世代の女性就業率は上昇傾向にあるが,2020 年においてOECD の38ヵ国中 12 番目の水準であり,一方で男性の就業率が2 番目に高いことを考えると,さらに改善の余 地がある。また日本においては,子育て世代の女性就業率がその前後の年齢と比べて低下す ることが知られており,女性の活躍を実現するためには,子育て世代の女性就業率を引き上 げる必要がある。  本稿では,統計データを用いて,政令指定都市の子育て世代女性就業率の特徴とその影響 要因について分析した。その結果,都市ごとの子育て世代女性就業率の絶対的な差は,年を 経るごと縮小しているものの,相対的な順位にはそれほど大きな変化が見られないことがわ かった。さらに最新のデータを用いて統計分析を行ったところ,特に35~49 歳の女性就業 率に,3 世代世帯比率や保育所等定員率といった子育て環境の充実度が強く影響しているこ とが確認された。
  • 野口 英佑
    2022 年 33 巻 1 号 p. 27-43
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/07/26
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    2015 年,台東県鹿野郷龍田村で,日本統治時代に日本人移民村で建てられ,戦後まもなく 取り壊された神社が,中央政府の地方機関の主導により,「鹿野神社」として再建された。本 稿では,宗教施設としてではなく,各集団を象徴し,政治的な意味をも含有する「遺産」と して復元された鹿野神社に対して,地域社会における各アクターが有する多面的な捉え方を 明らかにしようと試みた。その結果,龍田村に流入してきた時期によって構成される3 つの コミュニティが,各コミュニティの由来や背景の違いによって,既有の政治的権力を視覚化 するものとして位置付けたり,村内政治における台頭の機会として位置付ける場合もあれば, 特別な意味を持たない場合もあることが明らかになった。それは,日本統治時代の神社の再 建が「親日台湾言説」で説明できないことを示すと同時に,台湾社会において地元住民が遺 産に対して意味を見出だすメカニズムを明らかにするものである。
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