本稿では,2022 年1~3 月を調査期間に実施した九州の企業・団体のアンケート調査を活
用して,回答企業・団体の基本情報,テレワーク(在宅勤務)の実施状況,オンライン会議
ツールの導入状況,さらには,それらの課題を確認した。回答企業・団体のテレワークの実
施状況は,以下の5 つのカテゴリーに分類できる。1)テレワークが導入できる業務がない,
2)テレワークの導入に必要な通信環境が整っていない,3)テレワークの導入に必要な通信
環境は整っているが,電子媒体のセキュリティが整っていない,4)テレワークの導入に必要
な通信環境も電子媒体のセキュリティも整っているが,労務管理など組織内の規則が整って
いない,5)テレワークの導入に必要な通信環境,電子媒体のセキュリティ,労務管理など組
織内の規則も整っているが,取引先の関係(意向)で実施できない。この内,現場での作業
をはじめface to face communication(F2F Coms)が不可欠でテレワークが馴染まない領域
を除き,テレワークの実施によって業務効率を高めることができている。
テレワークが生産性を向上させえない領域もあり,その理由は,F2F Coms の役割に根差
したものと法・規則や慣習に根差したものに大別できるであろう。F2F Coms の役割に根差
したものは,集積の経済の働きで決まるため,市場メカニズムに任せることで改善できる余
地が大きい。しかし,法・規則や慣習に根差したものは,電子媒体のセキュリティや労務管
理など組織内の規則を整えるといった企業努力で改善できるところもあるが,本質的には,
政府や地方自治体が積極的に取り組まない限り改善できないであろう。
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