東アジアへの視点
Online ISSN : 1348-091X
24 巻, 2 号
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  • 彭 雪
    2013 年 24 巻 2 号 p. 1-12
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/10/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    1950 年代から1970 年代末まで,当時の計画経済体制の下で中国都市部の住宅は全て政府により提供・配給され,住宅市場と住宅価格は存在していなかった。1978 年から開始された経済体制改革により,都市住宅制度の市場システムへの転換が始まり,市場価格での取引を行う住宅市場も徐々に形成された。1998 年7 月に住宅の現物支給に終止符が打たれたことに伴い,中国では住宅市場が正式に定着し,住宅価格がほぼ完全に市場メカニズムによって決定されるようになった。それ以来,住宅の建設・消費が拡大しつつあり,都市部住民の居住環境が大きく改善されたが,住宅価格は著しく上昇してきた。特に2003 年以降,価格上昇が一層加速し,住宅バブルへの懸念が高まり,その動向に国内外から高い関心が寄せられていた。しかし,住宅バブルが実際に起きているのかについて,コンセンサスはまだえられていない。その一方で,居住や投資を目的とする住宅購入の需要が増加しつづけている。中国政府は,こうした動向を警戒し,住宅市場への政策介入を試みようとしている。しかし,政策介入する前に答えなければならない根本的な疑問がある。それは「現状の住宅価格水準が合理的かどうか」である。中国の住宅価格の合理性に関する議論は数多く出されているが,論者の立場・使用データ・分析手法等がかなり異なるため,導かれた結論も多様である。そのため,各種論点の信頼性は,一般市民にとって非常に判断しにくい。本稿の前編では,住宅価格の合理性に関する論争に着目し,中国の住宅市場に関わる各方面(利益集団・市場参加者・市場観察者・市場運営者)の 代表的な人物の論点を整理してみる。そして彼らの異なる立場を探ることによって,論争における問題点を明らかにする。後編では中国の住宅市場を分析するための現段階の最適な方法を選定した上,関連統計データを用いて,住宅価格の合理性を分析し,バブルの有無を判断する。
  • 中村 大輔
    2013 年 24 巻 2 号 p. 13-20
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/10/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    都市・地域には空間的階層がある。例えば,大都市では様々な種類の財やサービスがえられるが,都市規模が小さくなるにつれてその選択の幅が限られてくる。こうした状況下において,ある地点から大都市へのアクセス性が確保されなければ,地方都市の経済主体には,空間的消費者排除といった問題が発生する。この空間的消費者排除をNakamura(2010)は次のように解説している。即ち,消費者排除とは,消費者が立地する地域によっては,特定の財・サービスに到達できない状況である。これまでに確立された中心地理論の枠組みでは,競争による企業の新規参入により,長期的には財・サービスがいたる地点に行き渡るものととらえられている。しかし,現実の問題として,買い物難民や交通弱者といった現象が各地で深刻化している。以上の点から、中心地理論を体系的に分析したLösch (1944)で仮定される,経済空間のいたる地点に財・サービスが行き渡る仮定は,本論から除外される。ここで,経済空間とは,例えば,中央駅から半径20 キロといった,経済活動が行われている空間の,分析対象範囲を示している。消費者排除については,Huff(1963)によってReilly(1929,1953)の“The raw of retail gravitation” を援用する形で経済立地分析がなされている。しかしながら,社会的厚生との関連づけは十分になされていない。社会的厚生に関しては,Stern(1972)による市場地域分析がなされ,これまでのレッシュ解との相違が示されており,Beckmann(1976)も同じく,差別価格を導入して私的,社会的水準の相違を論じている。ただし,そうした分析によって,経済空間をどのように再編すべきか,といった議論はなされていない。本稿ではこれらの背景に基づいて,地域市場分析と空間的消費者排除についての考察を行ったNakamura(2012)を解説する。本考察は,先進国における持続可能な経済成長のための1つの検討を行うものである。多くの先進国では,物価水準が高く,高賃金のもと,新興国との熾烈な国際市場競争を余儀なくされている。そのような国際競争に対応するためには,国内での経済活動を円滑にするための空間整備を行い,高付加価値財・サービス生産体制を強化することが必要になる。しかしながら,実際には,特定の都市・地域への過度な空間集中が円滑な経済活動を阻害しているのが現状である。こうした問題を解決するためには,地方都市における地域人口と経済活動の求心力について検討する必要がある。地方都市は,一般に十分な人口や経済活動の求心力をもたない。そこで,地方都市には,その魅力度を高めるための空間差別化が必要になるのだが,ここでは,経済面と社会面のバランスのとれた発展が求められる。即ち,国内総生産など経済指標の数値に直接現れる経済面と,生活の質など経済指標の数値に直接現れない社会面である。本分析は厚生経済学に関係をもつのだが,厚生経済学においては,都市・地域の魅力度について,生活の質を計量的にとらえることで,雇用機会と地価に主たる関心が寄せられる。都市・地域の生活の質はBlomquist et al.(1988)によって,都市移住と就業,快適性の関係についてはGreenwood and Hunt(1989)によって明らかにされ,中心都市と副中心都市との生活の質の相違が,Jensen and Leven(1997)により比較されている。そして,都市・地域の魅力度を高めるための諸要素については,Glaeser et al.(2001)が体系的に整理している。これらの考察に従えば,人口増加の背景には,財やサービスの選択性,即ち多様性が重要な役割をはたすことになる。都市・地域の魅力度について,実際の地域政策に活用されている指標がある。その1つが,OECD による The Better Life Index(注1 ) であり,この生活の質を可視化する指標は,住宅(一人 当たりの部屋数,住宅支出,基本設備の状態),所得(家計の可処分所得と家計の財政的豊かさ),就業(雇用率,長期失業率,個人収益,職の安定性),コミュニティ(支援ネットワーク量),教育(教育充足度,教育年数,学生の数学,読解,科学能力),環境(大気汚染,水質),市民活動(投票率,規制策定協議),健康(寿命,自己申告健康状態),安全(殺人率,傷害率),仕事・生活バランス(超過時間被雇用者,余暇・パーソナルケアへの時間)に分類されている。既述のように,空間的消費者排除は,市場地域と輸送費の存在によって,中心地から離れた地方都市において,より深刻になることが示されたが,以上の点も踏まえ,本考察においては,代替的な中心地体系の構成によって,そのような問題の緩和について,広域的な地域連携を考慮することで検討していく。次節以降では,既存の関連研究に基づき,一定の予算制約のもとでの,地方都市における経済空間の性質について,基本的な枠組みを与える。第3節においては,再構成される経済空間と,輸送費について検討可能なシナリオを仮説分析し,第4節では以上の分析に基づく,都市・地域の規模に応じた最適な空間の構成について検討していく。
  • 黄 堅
    2013 年 24 巻 2 号 p. 21-31
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/10/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
  • 陳 徳栄
    2013 年 24 巻 2 号 p. 32-40
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/10/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    2012年4月14日,筆者は広西師範大学外国語学院の日本語科・英語科・韓国語科の翻訳修士10人と1回,4月21日は筆者1人で1回と,あわせて2回,湿地中心部である毛家村を中心に,会仙鎮住民を対象にしたアンケート調査を行った。一部の住民は文字が読めないため,彼らに対してはインタビュー形式で調査した。若者が未来の代表であり,現地の学識者が現地の人々に大きな影響を与えているため,青少年と学識者の考えを知る必要があると思われる。しかし,調査を受けた住民の中で,青少年と学識者が非常に少ないことが判明したため,毛家村に住んでいる会仙鎮中学校の女子学生に協力を要請し,2012年4月16~20 日にかけて,彼女の学校の三年生と教師を対象にしてアンケート調査を行ってもらった。
  • 鳥丸 聡
    2013 年 24 巻 2 号 p. 41-47
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/10/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    「3.11 東日本大震災」は,今後の国土構造・産業構造の在るべき姿に対する考え方を激変させるだけのインパクトをもっていた。そして2 年が経過した現在,政権は替わり,TPP への交渉参加が決まり,日本銀行の新体制も発足した。これによって,我が国の金融政策を担う日本銀行のトップは福岡県大牟田市出身の黒田東彦総裁,一方,我が国の財政政策を担う財務省のトップは福岡県飯塚市出身の麻生太郎大臣ということで,世界第3 位の経済大国が長期にわたるデフレから脱却するための経済政策の舵を取る2 トップが,奇しくも,かつての日本の高度経済成長を牽引していた福岡県産炭地出身者という共通点があるのが興味深い。デフレからの脱却が達成されれば,九州・福岡から日本を元気にしたということになる。以下では,まず被災地に元気を与えた九州のボランティア力のケーススタディを振り返り,次に九州から日本を元気にする,つまり「攻める九州」を象徴する業種や主要輸出品目の動向を調査した。
  • 阿部 康久
    2013 年 24 巻 2 号 p. 48-50
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/10/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    評者は,かつて著者である戴二彪氏の論文を参照させて頂いたことがある(阿部,徐2011,p.176)。参照した文献は,本書の章立てでいえば,第6 章の基になった論文だと思われるが(戴2008),中国から出国した留学生数の時系列的なデータについて知りたかったからである。中国からの出国留学生数についての情報は『中国統計年鑑』にあるのだが,評者も数値が不自然ではないかと感じていた。日本におけるいくつかの先行研究では,この数値をあまり深く吟味せずに,そのまま使用しているものもあったのだが,本書とその基になった論文の説明によると,「1990 年代末までの出国留学生数に関するデータは,主に集計しやすい公費(政府派遣)留学生と一部の「職場派遣」型私費留学生の出国状況を反映するもので,私費留学生が主流となった1980 年代半ば以降の中国人留学生の出国規模を大幅に過小報告している」という(本書p.140)。このように,中国人留学生に関しては少ないながらもある程度の統計・資料は存在するのだが,本書では,それらの信憑性を十分に検討・吟味しながら解説・分析を行っており大変参考になる。このような丹念な分析を通じて,中国人新移民の存在と中国の経済発展の関係を「頭脳流出」から「頭脳循環」への変化という構図を用いて説明したのが本書の内容である。その構成は以下のようになっている。
  • 南 博
    2013 年 24 巻 2 号 p. 51-54
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/10/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
  • 坂本 博
    2013 年 24 巻 2 号 p. 55-66
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/10/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    地域経済を分析する上で,地域間(内)格差は理解の第一歩であると思われる。今回は,福岡県が推計した『県民経済計算・市町村民経済計算報告書』の福岡県計および県内各市町村における「市町村内総生産」「市町村民所得」「就業者1人当たり市町村内総生産」「人口1人当たり市町村民所得」のデータを用いて,県内市町村における県内格差の現状を所得と生産性および産業構造から分析した。なお,今回使用するデータは,1996年度(H8年度)から2009年度H21年度)までの14年分の時系列データ(名目値)で(注1) ,市町村数は60である。また,福岡県は15の地域ブロックに分かれており,ブロック間での格差も分析する。
  • 伊佐 勝秀
    2013 年 24 巻 2 号 p. 67-72
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/10/05
    研究報告書・技術報告書 フリー
    今回は「香港の中の日本」と題して,香港における在留邦人の動向,日本語情報,(意外な)日系企業,大衆文化などを取り上げたい。なお,以下の記述は決して網羅的なものではなく,話題の選択も筆者の独断と偏見に基づくものであることを,予めお断りしておきたい。
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