自然状態および餌を与えた場合のアシナガグモの捕食行動を観察した。自然状態では, この種はおもにユスリカなど体長3ミリ以下の双翅類昆虫を捕食していた。クモは通常, 網の引き(Plucking) によって餌の所在を確認し, 走り寄って上顎で餌をくわえ (Seizing), 網から引き離して(Pulling out), 餌をコシキに運び, 摂食した (Seize-Pull out 戦略)。与えられた大きな餌に対して, クモは Seize-Pull out 戦略を含む3つの戦略を使用した。鱗翅類は多くの場合 Bite-Wrap 戦略によって, ガガンボとトンボは Seize-Pull out, Bite-Wrap, Wrap-Bite の3つの戦略によって, それぞれ捕獲された。 Bite-Wrap 戦略においては, 餌はまず Bite によって固定 (immobilization) され, その後で糸を巻き付けられた (Wrapping)。これに対して Wrap-Bite 戦略においては, 餌はまず Wrapping によって攻撃され, その後で Biting が行われた。
餌のタイプを識別したこのような捕食戦略の違いのもつ意味や, 捕食行動の進化の過程において, この種が占める位置について考察した。
抄録全体を表示