生物多様性条約第13 回締約国会議でアフリカ地域がデジタル配列情報の利用と遺伝資源の利用は同等であると決定をするべきと提案した。交渉の結果、引き続き、専門家グループにおいて議論することが決まった。本報告は,その決定を巡り,①各国の主張,論点の整理,②決定事項とその分析を通じて,今後議論が見込まれる法的な論点を明らかにすることである。各国の主張と論点の整理,及び分析の結果,今後の法的な論点としてデジタル配列情報が生物多様性条約や名古屋議定書の適用範囲に含まれるかどうかということを指摘した。その議論にあたり、①遺伝資源の取得時におけるデジタル配列情報の取り扱い、 ②デジタル配列情報の取得という2 つの論点に分けて検討することが必要と考えられる。
本研究は長崎県対馬市のシイタケ原木林を対象に,シカ食害よるブナ科落葉樹株への影響を評価したものである。対馬市のシイタケ生産は萌芽更新によるコナラ・アベマキの再生産に依存してきたが,近年シカの増加によって伐採株の萌芽に対して顕著な食害がみられ,伐採株が枯死する例もみられる。本研究では伐採からの経過年数の異なる原木林における萌芽枝数や食害痕と活力度との関係を,二項ロジスティック回帰分析を用いて分析し,防獣ネット設置の時期を決める指標として,萌芽枝幹部への食害痕が有効であることを見出した。
同一樹種で同程度の規格であるケヤキの試験体を2 体設け,一方を周囲が空地の場所に孤立個体として,もう一方を樹林の周縁部に林縁個体として設置した。それぞれをライシメーター法で蒸散量測定することで,同一条件下における単位葉面積あたりの蒸散量の差異を比較した。その結果,夏季の猛暑日において孤立個体は林縁個体より,単位葉面積あたりの蒸散量は約1.7 倍となった。
シラスを固化した緑化基盤を用いた緑化資材を屋上部に約160 ㎡試験施工し,緑化資材の有無による建物屋上面と直下スラブ下の天井面での表面温度の比較により,屋上緑化資材による暑熱緩和効果について評価を試みた。また緑化基盤の保水性について人工軽量土壌と比較を行った。 表面温度については,緑化資材施工区では非施工区と比較して夏期のピーク時に約10℃低くなり,緑化基盤下では13~16℃低くなった。緑化の基盤の保水性について,3 日後の容積当たりの含水率と保持力は人工軽量土壌をわずかに上回る結果が得られ,緑化基盤の保水力の持続性が確認できた。
本研究の目的は,生活環境圏におけるCO2 濃度の分布パターンを検証し,地域環境評価の基礎となるCO2 濃度の動態を明らかにすることである。このため,東海3 県に開設されたCO2 濃度測定局の5 年間の常時測定データを活用し,生活環境圏のCO2 濃度を評価する尺度として「CO2 基準濃度」を定義し,その検証を行った。また,1 年間にわたってCO2 濃度の定時調査を実施し,CO2 基準濃度の分布パターン図を作成した。その結果,①CO2 基準濃度は発生率の高い風向時の14 時前後の間に濃度が最小値を示し,一定の濃度を示すようになる,②14 時前後のCO2 基準濃度は,地域の代表的な吸収源等の安定的な影響が反映された分布パターンを示すようになることがわかった。
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