道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
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  • 森下 清文
    2023 年 6 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    私が心臓血管外科医となった40年前は心臓の手術と言えば冠動脈バイパス術。マスコミも「神の手」ともて囃すのは冠動脈バイパス術の専門家ばかり。当然、私もその影響を受け、繋いだバイパスの本数の多さや何分で縫ったのか、という方面にばかり気を取られていました。しかし市立小樽病院時代のあるエピソードが私を大動脈瘤へ向き合わせるきっかけとなりました。卒業して9年目。外科医として変な自信がつきかけていた頃のことです。私は腹部大動脈瘤破裂で運び込まれてきた積丹町の高名な僧侶を当然、“自分の手”により救えると考えていました。しかし術後、血圧も落ち着き、時間尿量も確保される様になったのに、その数時間後から全身状態はみるみる悪化してゆき、最終的にはお亡くなりになりました。当時、未熟だった私には何が起きたのか全く理解できず、最終的には80歳を超えていたその年齢が原因だろうと自分に納得させていました。そして翌年、大学に戻った私は、その正体がコンパートメント・シンドロームだった事に気づきます。当時の大学は日本でも有数の症例数を誇っていましたが、それでも年間70例程度。私がいた市立病院に至っては一桁です。皆の経験が乏しく大動脈瘤外科はまさに黎明期でありました。しかしその環境の中で母校は大動脈瘤治療の成績向上に向けて世界的な仕事をしていました。小樽時代の自分があまりにも井の中の蛙であったことを恥じた私は世界的仕事をしているこのグループに加わり、自分を成長させたいと強く願う様になりました。幸運にも人気の高いこのグループの一員になれ、さらに1999年からは前任リーダーの教授転出に伴い私がこのチームを引っ張る事になりました。8年間で900例を超える症例を経験できた我がチームは自家製ステントグラフトの作成、胸腔鏡による世界初の胸部大動脈瘤手術の成功、最も忌むべき術後合併症である対麻痺の機序解明などさまざまな分野に挑戦し、米国や欧州の一流と言われる国際学会で11回の発表、英語の原著論文32編、英語の症例報告35編を産み出しました。その時の仲間は現在、大学教授1名、総合病院の副院長2名とそれぞれの分野で活躍しており、誇りとしています。2007年、母校の教授選に敗れた私は市立函館病院に移る事になりましたが、流石に大学と同じ様な仕事は無理と考えステントグラフト一本に研究テーマを絞る事にしました。幸いな事にステントグラフトはメーカー品が出てきたのでその作成に取られていた労力や時間を臨床研究に集中することができました。その結果、2007年の大動脈瘤治療78例中ステントグラフト治療は15例(19%)でしたが、2021年には168例中133例(78%)をステントグラフトで治療できるまでになったのです。この間に為してきた様々な工夫は米国や欧州の一流と言われる国際学会で3回発表することができました。さらに英語の原著論文も5編報告し、1冊の教科書を編纂する事に繋がりました。しかも当施設での大動脈治療の臨床に加わりたいと全国から6名の仲間がやってきてくれたことも私にとっては大きな喜びとなりました。現在、ステントグラフト治療はその早期成績はかなり満足できるところまでたどり着けましたが、遠隔成績はまだまだです。5年目までは良いのですが、10年は持たない。ここが今後の解決すべき大きな問題でしょう。小樽時代から始まった私の大動脈瘤治療の経験は3,000例を超えました。昔の手術数を考えると信じられません。また本邦における大動脈瘤治療数も年間3万7,000例と冠動脈バイパス手術の1万例を僅かに超える程になりました。偶然にも私が歩んできた34年間は大動脈瘤治療発展の道のりとも重なっています。今回の特別報告ではその道のりを私の経験を交えながらお話しさせて頂きたいと考えております。
  • 遠藤 明
    2023 年 6 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    【序】新型コロナウィルス感染症流行時に運動量低下による緊張型頭痛を発症した小児に対して家庭でできる簡便なエクササイズの有効性を検討した。【対象】頭痛を主訴に当院を受診した男児10例、女児2例。平均年齢10.42歳。【方法】1)踵重心を矯正、2)骨盤後傾、頸椎前湾を矯正、3)抗重力筋の筋力向上の3点すべてを満たすエクササイズとして11歳以上に自重のバーバルスクワット、10歳未満に踵付け母趾球重心スクワットを1セット10~12回、毎日2セット以上を行うように指示した。エクササイズ開始2週後に頭痛、姿勢、僧帽筋筋硬度の変化を測定し比較検討した。筋硬度は井元製作所筋硬度計PEK-1を用いて僧帽筋部4点の筋硬度を測定し、平均値を求めた。【結果】1)実際に行ったセット数は平均1.17セット/日。2)頭痛消失10例/12例、頭痛軽減2例/12例。3)全例、骨盤後傾、頸椎前湾の姿勢が改善した。4)僧帽筋の筋硬度は有意に低下した。【考察】少ないセット数でも正しいフォームの筋トレにより姿勢が改善され緊張型頭痛は軽減~消失することが判明した。日本人に多い踵重心による骨盤後傾と頸椎前湾は肩関節可動域減少、腹腔内臓器機能低下、歩幅減少をもたらす。若年期のうちに抗重力筋エクササイズの正確な方法を習得させると正しい姿勢の保持強化となり、フレイル、認知症の予防につながるためもっと奨励されてよいと考えられる。【結語】運動量減少による緊張型頭痛の根治治療として自重スクワットは有効である。
  • 井上 剣, 佐藤 攻, 中川 裕一朗, 冨山 陽平, 水島 衣美, 押切 勉, 小堺 豊, 寺本 篤史
    2023 年 6 巻 1 号 p. 14-16
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】急性骨髄炎は化膿性生物が血行性や隣接播種によって広がることで骨に起こる重篤な感染症である。今回、特に素因がなく、明らかな感染経路がない急性骨髄炎の一例を経験したので報告する。【症例】27歳男性。既往歴、家族歴に特記事項なし。特に誘因なく右大腿外側部に疼痛が出現した。徐々に疼痛が増強し歩行困難となり当科を受診した。身体所見では右大腿外側に圧痛および荷重時痛を認めた。血液検査では白血球6,300/μl,CRP3.97mg/dlと炎症反応の上昇を認めた。単純レントゲンでは明らかな骨性病変は認めなかった。MRIで右大腿骨骨幹部骨髄内にT1WIlow、STIRhighの信号変化を認め、DWIにて骨周囲の軟部に炎症波及を疑う所見を認め、急性大腿骨骨髄炎の診断となり入院となった。第1病日よりCEZにて抗生剤加療を開始した。第3病日血液培養でヘモフィルス属が検出され、炎症反応の増悪を認めMEPMへ変更した。その後、炎症反応、臨床症状ともに改善した。第19病日SBT/ABPCに変更後も経過は良好で、AMPC/CVA内服に変更し第25病日に退院とした。現在症状の再燃なく経過している。【考察】成人の骨髄炎は臨床症状が病因によって異なり、血液培養で菌が同定できることが少なく、診断に難渋する。血行感染で最も一般的な病原体は黄色ブドウ球菌であり、本症例ではCEZを開始したが血液培養でグラム陰性桿菌が検出されたためMEPMに変更した。骨髄炎の効果的な治療は抗生剤であるが、膿瘍や腐骨、壊死組織などへの浸透が不十分であり、デブリドマンが必要となる場合がある。また、炎症の波及により化膿性関節炎の合併や、慢性化し再燃する可能性もあるため、積極的に初期治療を行う必要がある。外傷歴や先行感染のない成人の筋骨格系の疼痛の鑑別として急性骨髄炎を考慮して診療を行うべきである。
  • 佐久間 智也, 井上 宏之, 髙井 駿, 大沼 法永, 髙田 夢実, 秋田 浩太朗, 須藤 豪太, 笠原 薫, 小林 寿久, 矢和田 敦
    2023 年 6 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    症例は60歳女性、20××年12月に膵頭部癌の診断で当院外科にて手術を施行された。術中所見で腫瘍の動脈浸潤強く、根治手術不可と判断され胆管空腸吻合術・胃空腸バイパスが施行された。術後経過で縫合不全があり2度追加手術施行された。その後化学療法施行され当院通院していた。20××+4年12月末より38度台の発熱あり、翌月受診時の採血で肝胆道系酵素上昇、黄疸を認めた。CTで胆管拡張認め膵癌による閉塞性黄疸・胆管炎の診断で緊急入院となった。入院後抗生剤投与を開始、EUS-HGSを施行しB3に金属ステントを留置した。減黄が十分でなかったため追加で中枢部へのガイドワイヤー挿入、ステント追加留置試みたが困難であった。最終的に残存十二指腸球部からEUS-CDSを追加施行し金属ステントを留置した。その後減黄が得られ発熱なく経過し退院可能となった。胆管空腸吻合術後症例に対してEUS-HGS,EUS-CDS併用で治療奏功した症例は極めて稀であり、貴重な症例と考え若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 橋本 拓幸, 伊藤 拓也, 奥 亮介, 高橋 政憲, 二木 克明, 深瀬 晃一
    2023 年 6 巻 1 号 p. 23-24
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    【背景】本邦では、近年の労働人口の減少により深刻な人員不足が問題である。Robotic Process Automation(以下RPA)はパソコン上で行う単純作業を人間の代わりに実行し、業務の効率化・自動化を図ることで人員不足解消、作業時間の短縮が期待される。【目的】RPAを用いて、Picture Archiving and Communication System(以下PACS)の画像移行作業を実施し、作業時間の短縮、移行費用の削減を行った。【対象】当院の旧PACSにある2011年から2021年までの22,035件の画像を対象として実施した。【方法】Microsoft社製RPAソフトウェア、Power Automate for Desktopで処理を作成した。画像移行のプロセスは「旧PACSの画面を開く」、「対象の画像検査を選択」「画像のエクスポートを選択」「送信先の選択」、「画像の送信」5プロセスに分けられ、そのうち繰り返すのは「旧PACSの画面を開く」以外の4プロセスである。この4プロセスの所要時間を手動送信とRPAで比較した。【結果】当院のスタッフ3名で10検査の画像を送信した場合1検査当たりに要した時間は平均12.8秒だった。RPAを用いた方法では1検査当たりに要した時間は平均9.0秒だった。しかし、RPAでは安定動作のために処理間に数秒程度の遅延を入れるため、連続したプロセスにした場合は同程度となった。開発期間を含めて、2週間で画像移行作業を完了した。【結論】RPAは安定した動作のために遅延時間が必要な場合があり、動作は人間と同程度の速度になる場合があるが、24時間の稼働が可能であり、疲労によるミスがないため、人間の繰り返しの作業を代替し、人員不足解消・業務効率化に寄与すると考えられる。
  • −放射線画像診断レポートを素材として−
    池田 健, 坂本 勝, 横山 峰要, 佐々木 愼, 橋浦 大希, 村越 翔太
    2023 年 6 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    【目的】電子カルテがもつ膨大な非構造化テキストデータを有効利用するためには自然言語処理技術が必須である。一方で、自然言語処理技術は英語圏で発達してきた歴史があり、日本語に最適化した技術とは言いがたい。近年、機械翻訳の精度が著しく向上している状況を踏まえ、機械翻訳を利用した自然言語処理の手法を考案したので報告する。【方法】当院では、放射線画像読影レポートの見逃し防止のため、事務スタッフが要チェックレポートを抽出・ラベリングし、それをもとに臨床医に注意を促している。今回、2021年3〜5月の放射線画像読影レポート4,714件を対象とした。スタッフによる要チェックか否かのラベリングを目的変数、放射線診断医の記載する「所見」で用いられた単語を説明変数とし、ランダムフォレスト法による予測モデル構築を行った。説明変数を得るにあたって、所見を機械翻訳ソフト「DeepL」で英語に翻訳後、それらにステミング(語幹抽出)、小文字化、「特殊文字,ピリオド,数字」の除去などの自然言語処理を施し、最終的に577単語を説明変数とした。全ての操作にはRパッケージを用いた。【結果】予測モデルの精度は、感度96%、特異度89%、正確度91%であった。変数重要度としては「figur」、「mass」、「increas」の順に重要であった。それぞれ、日本語の「図」、「腫瘤」、「増大」に相当する。【考察】感度96%はスクリーニング作業として許容できる精度であろう。英語に翻訳することで定型的な種々の自然言語技術を用いることができ、効率的で精度の高い予測モデルの構築が可能であった。医学用語の多い電子カルテは英語への翻訳になじみやすいので、今回のアイデアを他のテキストデータへと拡張することも視野に入れている。自然言語処理を含めたAI技術を医療現場でどのように活かしていくかについても論じたい。
  • 久保 公利, 早坂 秀平, 田中 一光
    2023 年 6 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    【背景】「ピュアスタット®」は消化器内視鏡治療における漏出性出血に対して使用される吸収性局所止血剤(自己組織化ペプチド技術を用いた透明なペプチド溶液)であり、血液と反応しハイドロゲルを形成することにより出血点を物理的に塞いで止血するのが特徴である。2021年12月に保険適用が開始され、安全性が高く簡便であることから当院では2022年2月に導入した。【目的】当院におけるピュアスタット®を用いた止血の現状について検証すること。【対象】2022年2月から2022年8月までに使用した34例を対象として、1)リスク因子、2)適用部位、3)適用疾患、4)出血の程度と止血方法、5) 止血率について検証した。【結果】34例のうち,男性は19例,女性は15例で,平均年齢は75.4歳であった。1)抗血栓薬の服用 18例、肝硬変 1例、透析 1例であった。2)胃 16例、大腸 9例、十二指腸乳頭 5例、十二指腸 3例、胃管 1例であった。3) 内視鏡治療中出血 16例(EMR 7例、ESD 5例、Precut 3例、Cold polypectomy 1例)、消化性潰瘍 8例(胃 3例、十二指腸 3例、直腸 2例)、内視鏡治療後出血 4例(Precut 2例、胃瘻造設術 1例、ESD 1例)、胃癌出血 3例、胃粘膜出血 2例、胃静脈瘤破裂 1例であった。4) 漏出性 27例(単独 12例、クリップ併用 12例、止血鉗子併用 3例)、噴出性 5例(クリップ併用 3例、止血鉗子併用 2例)、拍動性 2例(クリップ併用 2例)であった。5)97.1% (33/34)であった。【結語】ピュアスタット®は漏出性出血のみならず拍動性/噴出性出血に対する止血方法の選択肢として有用であり、他の止血方法(クリップ、止血鉗子)と組み合わせて使用すると有効である。
  • 清水 直政, 八ツ賀 秀一, 八ツ賀 千穂, 鈴木 雅彦, 櫻井 恭平, 立石 格
    2023 年 6 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】2q37微小欠失症候群は、精神発達遅滞、第3-5指の中手骨短縮、筋緊張低下、自閉症スペクトラム障害などを呈する稀な染色体異常である。今回我々は、登校困難を主訴に受診し、短指症の指摘から診断に至った13歳女児を経験したので報告する。【病歴】38週、3,100gで出生。乳児健診で異常を指摘されたことはないが、母は筋力が弱めであると感じていた。小学6年生時に倦怠感や食思不振を認め、総合病院を受診した。肘関節が柔らかいことを指摘され、家族全員に対しEhlers-Danlos症候群の遺伝子検査をされたが診断には至らなかった。中学2年生時にめまい、動悸のため登校困難となり、近医クリニックを受診、起立性調節障害と診断をされ投薬により症状はやや改善したが、登校困難が依然持続したため、当院小児科児童精神専門外来受診となった。【現症・検査】身長:149.4cm(-1.08SD)、体重:39.9kg、顔貌異常あり(細く高い眉毛、突出した鼻尖、薄い上口唇)、両側第3-4指趾の短縮あり、二次性徴:年齢相当、血液検査:Hb 13.8g/dL、 Ca 9.4mg/dL、P 4.8mg/dL、ALP(IFCC) 259IU/L、TSH 1.110μIU/mL、free-T4 1.26ng/dL、単純X線写真:第3-4中手骨・中足骨短縮、知能検査(WISC-Ⅳ):FSIQ=73 【診断】第3-4指趾中節骨の短縮と軽度の知的障害を認め、Turner症候群、偽性副甲状腺機能低下症、2q37微小欠失症候群を念頭に置き、鑑別診断を進めた。G分染法を施行したところ、2q37欠失が確認された。【まとめ】家族が心因性の要因を疑い受診に至ったが、短指趾症の鑑別診断を同時に進めることで2q37微小欠失症候群と診断できた。心身症的主訴の受診でも、外表奇形を含め、全身の身体診察が重要である。特に骨の異常所見は比較的疾患特異的なものもあり、鑑別疾患を絞り込むうえで非常に有用なことがある。
  • 本田 進, 木村 中, 渡部 将伍, 山口 瞳
    2023 年 6 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性。4年前より背部に疼痛、腫脹、色素沈着があり、排膿することがあった。慢性膿皮症の診断にて他院で外用薬の塗布と抗菌薬の内服による治療を行っていた。改善がないため当院皮膚科を受診し、手術治療の適応と判断され当科に紹介となった。初診時、背部に大きさ11cm×9cmの範囲で点在する茶色の色素沈着と膨隆を認めた。全身麻酔下に病変部を切除し、皮膚欠損に対しては分層植皮術を施行した。病理結果はTufted angioma(房状血管腫)であった。術後8か月、再発はなく経過は良好である。Tufted angiomaは比較的稀な血管内皮細胞性腫瘍である。報告では大半が幼少期に発症するが、成人での発症例もみられる。今回われわれは成人のTufted angiomaの1 例を経験したため、文献的考察を踏まえ報告する。
  • 木村 優斗, 佐藤 嶺, 村上 正和, 三浦 一志
    2023 年 6 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】脊椎圧迫骨折(vertebra compression fracture:以下、VCF)は骨粗鬆症に起因する椎体の圧迫骨折であり、治療は外固定による保存療法が一般的である。コルセットが完成するまではベッド上安静が推奨されるためADLや歩行が制限される。また、コルセット完成後も疼痛が残存し動作が制限されることでADLの評価が行えず、予後予測に難渋し、転帰先を決める時期が遅れることがある。そこで本研究では、回復期リハビリテーション病棟(以下、回リハ病棟)に入院したVCF患者の転帰先を予測し得る時期及び自宅退院可能なカットオフ値について、FIMを用いて明らかにすることを目的とした。【方法】対象は当院回リハ病棟に入院したVCF患者のうち、在院日数が8週間以上であった71名(男性:16名、女性:55名、平均年齢:79.2歳)とした。調査項目は転帰先と、入院時から8週目までのFIM運動項目(以下、mFIM)を1週ごとに合計8回採点した。統計解析は、転帰先を従属変数、1週ごとのmFIMをそれぞれ独立変数とした単回帰分析を実施した。その後、有意な回帰式が作成された週のmFIMから、自宅退院の可否を判断するカットオフ値をROC曲線にて算出した。有意水準は5%とした。【結果】自宅群が40名、非自宅群が31名であった。単回帰分析では1週目〜8週目の8つ全てのmFIMで有意な回帰式が作成された。ROC曲線においても8つ全てのmFIMで有意なカットオフ値が算出された。入院1週~5週のmFIMのカットオフ値は43.5~47.5点であり、6週~8週のmFIMは55.5~58.5点であった。【考察】本研究の結果入院1週目~8週目の全ての時期において、mFIMを用いた転帰先の判別が可能であった。また、mFIMのカットオフは6週目以降に急激な上昇が起こるという特徴が明らかとなった。入院直後から一定のADLの自立度で経過し、かつ入院6週以降には多くのADLの自立度が向上することが自宅に退院するためには重要である可能性が示唆された。各ADL項目の詳細な経過について今後検討したい。
  • ~自己注射の指導を通じて~
    工藤 宏美, 三浦 由佳, 大羽 文博, 深田 翔太郎
    2023 年 6 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    【目的】現在高齢化を迎える本邦において骨粗鬆症治療を普及するための骨粗鬆症リエゾンサービス(以下OLS)活動は必要不可欠となりつつある。しかしOLS活動の問題点の1つにOLSスタッフの孤立化や負担の増加が挙げられる。当院整形外科外来では現在2名の骨粗鬆症マネージャー(看護師)が中心となり骨粗鬆症患者の対応をしている。上記問題を解決するため、どの看護師でも自己注射指導を出来るようなプロトコールを作成したのでその結果を報告する。【方法】2020年1月~2021年8月にテリボンオートインジェクターを初回導入した45名の患者へ製薬会社のビデオ、骨粗鬆症マネージャーが作成した副作用や対処法の説明書、指導後看護記録用テンプレートを使用して看護師が自己注射指導を行い、1年後の継続率、骨粗鬆症マネージャーとその他の看護師での指導時間の差、骨粗鬆症マネージャー以外の看護師の意識向上につながったかを評価した。【結果】1年治療継続率は60%であった。説明時間の差はマネージャーが平均23分に対しそれ以外の看護師が平均20分であった。アンケートでは骨粗鬆症マネージャー以外の看護師全員が指導前より骨粗鬆症の治療や継続の必要性の理解が深まったと回答した。【考察】外来看護師全員が自己注射を指導できるようになり骨粗鬆症マネージャーの負担の軽減になった。指導時間の差は骨粗鬆症知識の差と思われる。【結語】プロトコールを作成したことは患者のみならずスタッフの骨粗鬆症の理解と治療の重要性を伝えるきっかけになった。今後も骨粗鬆症の治療は多様化し、さらなる知識の理解と向上が必要となる。今後も患者及びスタッフへの啓発活動を行い、医療の質の向上、さらには2次骨折予防へとつなげたい。
  • ~乳房に対する放射線治療におけるリスク分析~
    山下 耕平, 西川 貴博, 小山内 幸次, 小林 聖子, 米屋 麻美, 池本 晴哉, 藤井 收
    2023 年 6 巻 1 号 p. 51-53
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    【目的】当院において高精度放射線治療の件数がここ数年で格段に増加している。放射線治療の高精度化と共に照射方法も複雑化している状況であり、それとともにインシデント・アクシデント(I/A)報告も増加している。そこで当院の放射線治療科におけるリスクマネジメントの一環として日米医学物理学会(AAPM)で報告されているTask Group-100(TG-100)で提案されている放射線治療プロセス全体の品質マネジメントを参考にリスク分析を行った。【方法】放射線治療科配属の診療放射線技師(以下、放射線治療技師)5名を対象として、乳房に対する放射線治療プロセスの中で予測されるI/A事象を各々列挙し、それを基に故障モード影響解析法(FMEA)でスコアリングした。スコアリングの結果を集約し、当院の放射線治療技師の業務に絞って解析した。スコアは発生頻度:O、重大性:S、検出難易度:D、Risk Profile Number(RPN)で評価した。O、S、Dは5段階評価とし、RPNはO、S、Dの積で算出され1~125の値となる。O、S、D、RPNの値が高くなるにつれてリスクは高くなる。【結果】放射線治療プロセス全体で124個のI/A事象が列挙された。SとRPNの(最大値,最小値,中央値)はそれぞれ(48 , 2 , 9)(5 , 1 , 4)であった。これを基にスコアの高いI/A事象に絞って対策を立てることで効率的なリスクマネジメントが可能となった。【結語】AAPM TG-100で提案されているリスク分析法は、当院の放射線治療科における医療安全管理に効率的に取り組むことができると考えられる。
  • 松本 健太郎, 後藤 絵理, 佐藤 千代子, 阿部 千里, 福原 直美, 久保 公利
    2023 年 6 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    【背景】当院では、内視鏡検査前に患者に問診票を記載してもらい、看護師が確認している。しかし、問診票を正しく書けていないことが多く、看護師がほとんどの項目を聴取している。その原因の一つとして現行の問診票に問題があるのではないかと考え、問診票の見直しを行い、比較・検討した。【目的】効率的で正確に記入できる問診票を作成すること。【方法】自力で記入することができる外来患者を対象に、R3年8月2日~8月31日は現行の問診票(以下問診票A)、R3年9月1日~9月30日は新しい問診票(以下問診票B)を記入してもらい、各項目の正確に記入できていた人数を比較した。問診票Aは10項目、問診票Bは7項目とした。【結果】患者が正確に記入できていた割合は、問診票Aでは、アレルギーが84.8%、ピロリ菌が38.7%、内服薬が58.2%、抗血栓薬が78.1%、PPIが64.1%、降圧薬が70.6%、糖尿病薬が84.8%、既往歴が51.6%、手術歴が58.7%、その他が83.4%、平均が67.3%(問診Bと共通する7項目の平均は65.6%)であった。問診票Bでは、アレルギーが73.7%、ピロリ菌が55.5%、抗血栓薬が79.2%、PPIが80%、既往歴が54.9%、手術歴が54.1%、その他が73.7%、平均が67.3%であった。【考察】問診票Aと問診票Bの平均はいずれも67.3%であったが、共通7項目のみの平均は65.6%で1.7%上がった。さらに、共通7項目のうち、4項目で記入できている割合が上がったため、内容をほとんどチェック式にし、項目を減らしたことでわかりやすくなったと考える。しかし、字体や配置などが見にくかったため、今後レイアウトを改善することでさらに正しく記入できるようになると考えられる。【結語】問診票Bは、内容はわかりやすくなったが、レイアウトが見にくかったため、改善・実用化していく。
  • 田中 一光, 早坂 秀平, 久保 公利
    2023 年 6 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代、女性。完全左脚ブロックで当院循環器科に通院していた。X-1年9月に直腸癌、多発肺転移、肝転移の診断で、腹腔鏡下低位前方切除術が施行された。RAS変異陽性であり同年10月よりmFOLFOX6+BEV療法が開始された。同月の心エコーではEF63%であった。X年1月にmFOLFOX6+BEV7コース目が開始されたが、day3の5−FU投与中に息切れ、胸痛、胸苦が出現した。心電図では完全左脚ブロック以外に明らかな変化を認めなかったが、心エコーでEF23%の心機能低下を認めた。CPK、トロポニンT等の心筋逸脱酵素の上昇を認めず、急性冠動脈疾患は否定的であった。またBNP169.5pg/ml、胸部レントゲンで心拡大、肺門影の増強を認めたために急性心不全と考えられた。5-FUによる薬剤性心機能障害を疑い、化学療法を中止し循環器科にコンサルトした。ニコランジル等で狭心症および心不全に対する薬剤加療を開始したところ胸部症状の改善が得られ、発症5日目にはEF42%まで心機能は改善した。2ヶ月後の待機的な冠動脈造影では、Ach負荷試験で冠攣縮性狭心症の所見を認めたが、明らかな冠動脈の狭窄は認めなかった。発症31日目よりIRI+BEV療法にレジメンを変更して治療を再開し、以後は症状の再燃を認めていない。アントラサイクリン系薬剤やトラスツズマブでの心毒性はよく知られているが、5-FUによる心機能障害は稀であり、その頻度は1.6%程度と報告されている。今回、大腸癌に対する5−FU投与中に急性心不全を来した1例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 久保 公利, 早坂 秀平, 田中 一光, 大北 一郎
    2023 年 6 巻 1 号 p. 62-66
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    【症例】45歳、女性【主訴】黄疸【現病歴】2022年2月初旬、1週間前からの黄疸を主訴に近医を受診した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)「第6波」の渦中にあり、各病院でクラスター(感染者集団)が発生していた。入院加療を必要とする急性肝障害と考えられたが、受け入れ先が見つからずDr to Drによる依頼により当科を紹介受診した。【既往歴】なし【生活歴】飲酒:焼酎600ml/日、喫煙:20~42歳 5本/日、アレルギー(-)【新型コロナワクチン接種歴】2回【入院時血液検査所見】著明な白血球増加(WBC 12,000/μl)、PT延長(PT 24.8%、PT-INR 2.0)、(直接型優位のビリルビン増加(T-Bil 16.6mg/dl、D-Bil 10.9mg/dl)、AST優位な トランスアミナーゼの上昇(AST 167U/l、ALT 41U/l)を認めた。血清学的検査でHBs抗原、HCV抗体、抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体はすべて陰性であった。【画像所見】腹部造影CTで肝臓は著明に腫大し、実質は低吸収域を呈しており、周囲には腹水の貯留が認められた。【経過】全身性炎症反応症候群と播種性血管内凝固症候群を伴った重症型アルコール性肝炎と診断し、ステロイドパルス療法と抗凝固療法による集学的治療を開始した。入院第13病日に抗原定量検査によりCOVID-19陽性(軽症)と診断し、中和抗体薬(ソトロビマブ)による治療を行った。ステロイドは漸減中止し全身状態の安定と血液検査所見の改善(WBC 8,500/μl、T-Bil 3.8mg/dl、PT 41.6%)を認めたために第48病日に退院となった。全経過を通じて肝性脳症は認めず、腎機能障害や消化管出血も認めなかった。退院後は再飲酒することなく外来を通院している。【結語】重症型アルコール性肝炎にCOVID-19を併発した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
  • 早坂 秀平, 田中 一光, 久保 公利
    2023 年 6 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    【症例】81歳、女性【主訴】発熱、腰背部痛【現病歴】発熱および腰背部痛が出現したために夜間急病センターを受診し、抗生剤(LVFX 500 mg/日)が処方された。翌日も症状が改善しないために、当科外来を受診した。【既往歴】C型肝硬変、肝細胞癌(経皮的ラジオ波焼灼療法)、子宮筋腫(子宮全摘術)【生活歴】喫煙歴:なし、飲酒歴:なし、アレルギー:特記事項なし【画像所見】腹部造影CT検査:十二指腸下行脚に傍乳頭憩室を認め、憩室壁の造影効果の増強および周囲の脂肪織濃度の上昇が認められた。また腹腔内に遊離ガスは認めなかった。【経過】十二指腸傍乳頭憩室炎の診断で、絶食、LVFX 500 mg/日の継続内服、PPI静注による治療を開始した。第2病日の血液検査で炎症反応の上昇を認め、抗生剤をTAZ/PIPC 13.5g/日に変更した。発熱と腰背部痛は徐々に改善し、第6病日の腹部造影CT検査では十二指腸憩室周囲の脂肪織濃度上昇所見の改善が認められた。第12病日の上部消化管内視鏡検査では十二指腸下行脚に傍乳頭憩室を認め、憩室内部の食残貯留と粘膜発赤および潰瘍形成が認められた。第13病日の血液検査で炎症反応の改善を認め、抗生剤治療を終了しVPZ 20mg/日の内服および食事摂取を開始した。経過良好で第17病日に退院された。【結語】十二指腸憩室の多くは無症状で経過するが、稀に憩室炎や穿孔などの合併症を来す。十二指腸傍乳頭憩室炎の1例を経験したため、文献的考察を加えて報告する。
  • 早坂 秀平, 田中 一光, 久保 公利, 木村 伯子
    2023 年 6 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    【症例】72歳、男性【主訴】心窩部痛、食欲不振、嘔気【現病歴】4ヶ月前からの心窩部痛と2ヶ月前からの食思不振と嘔気を主訴に2022年4月に当科外来を受診した。【既往歴】HBV既感染【生活歴】喫煙歴:20歳から60歳まで20本/日、飲酒歴:焼酎4合/日を週4日、アレルギー歴:特記事項なし【画像所見】腹部造影CT検査で胃体上部後壁から漿膜側に突出する直径12cm大の内部不均一な造影効果を呈する腫瘍を認め、周囲臓器(肝尾状葉、膵尾部および左副腎)への浸潤が認められた。また腹部MRI検査で肝両葉に多発する転移性腫瘍が認められた。上部消化管内視鏡検査では胃体上部後壁から噴門部に、頂部に潰瘍形成を伴う粘膜下腫瘍様病変が認められた。腫瘍露出部からの生検結果は低分化型扁平上皮癌であった。【経過】胃原発扁平上皮癌、転移性肝腫瘍の診断で同年4月からSOX + Nivolumab療法を開始した。5月に腫瘍による噴門部の通過障害により経口摂取が困難となったために中心静脈栄養を導入し、FOLFOX + Nivolumab療法に治療レジメンを変更した。同レジメンを3サイクル施行し、7月に施行したCT検査において原発巣は9cmまで縮小したものの、通過障害の改善は得られず経口摂取も困難な状況であった。8月から緩和的放射線療法(総線量40Gy/16Fr)の併用を開始し、現在まで治療を継続中である。【結語】胃原発扁平上皮癌は発生頻度の稀な疾患であり、その特徴について文献的考察を加えて報告する。
  • 和田 秀之, 大塚 慎也, 丹羽 弘貴, 水沼 謙一, 高橋 亮, 小室 一輝, 鈴置 真人, 平岡 圭, 岩代 望, 大原 正範, 木村 ...
    2023 年 6 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    症例は78歳、女性。2019年に腹部単純CTで偶発的に約3cmの右副腎腫瘍を指摘され、以後経過観察されていた。腫瘍は次第に増大し、2022年4月のfollow CTで約5cmとなったため、手術目的に当科紹介となった。自覚症状なく血圧は正常範囲内であり、副腎内分泌検査にて異常所見を認めなかった。腹部超音波検査にて右副腎に54x46mmの類縁形、境界明瞭平滑で内部エコー不均一、一部嚢胞成分を伴う腫瘤を認めた。腹部dynamic CTにて57x46mmの、動脈相で辺縁に強い造影効果を認め、後期相で内部に向かって造影される腫瘤性病変を認めた。非機能性副腎腫瘍と診断したが、概ね6cmと大きくまた増大傾向を示しているため悪性腫瘍を否定できず、腹腔鏡下右副腎摘除術を行う方針とした。手術は左側臥位、4ポートで施行した。術中、肝右葉背側、後腹膜下に表面平滑な右副腎腫瘍を認め、表面の一部は暗紫色で血腫様に見えた。肝右葉を十分に授動した後、右副腎内側を剥離して副腎中心静脈を切離し、その後右副腎の全周を剥離して摘除を完了した。手術時間は1時間49分、出血量は少量であった。経過良好で術後第7病日に退院した。病理組織学的検査において、腫瘤は主にフィブリンを混在する凝血塊であったが、一部に薄い内皮細胞で裏打ちされた大小血管の増生が見られた。また血管内皮細胞マーカーであるCD31, CD34, Factor VIIIを用いた免疫染色で内皮細胞が陽性であったため、海綿状血管腫と診断された。副腎海綿状血管腫は比較的稀な、副腎間質を発生母地とする内分泌非活性腫瘍である。比較的特徴的な画像所見を示すものの、副腎癌との鑑別が困難な場合も多いため、可能な限り積極的に切除し診断を得るべきであり、低侵襲な腹腔鏡手術はその一助となると考えられる。
  • 水沼 謙一, 大塚 慎也, 丹羽 弘貴, 和田 秀之, 高橋 亮, 鈴置 真人, 平岡 圭, 小室 一輝, 岩代 望, 大原 正範
    2023 年 6 巻 1 号 p. 82-85
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    高安動脈炎は原因不明の非特異的大型血管炎であり、動脈壁の肥厚や硬化をきたす。病変の生じた血管領域により臨床症状が異なるため多彩な臨床症状を呈する。今回、高安動脈炎で加療中に小腸壊死を発症し、複数回の手術治療で救命した後に、肺胞出血をきたした症例を経験したので報告する。症例は60代女性。30年前に高安動脈炎を発症し一旦、寛解状態となっていた。体重減少と食思不振で入院加療中に腹痛が出現し、腹部CT検査でfree airを指摘され当科紹介となった。腸管穿孔を伴う汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行したところ、小腸が広範囲に虚血、壊死に陥っており、小腸切除、ドレナージのみを行った。全身状態が安定した後に小腸虚血部位の追加切除と、回盲部切除、腸管吻合を施行したが、2回目の手術から8日後に、残存小腸の壊死と縫合不全をきたし、緊急的に3回目の手術を行った。小腸切除、空腸人工肛門造設、ドレナージを施行し、救命した。術後、短腸症候群に対して中心静脈栄養法による栄養管理を導入し、退院に向けてリハビリをすすめていたが、3回目の手術から約140日後、発熱、多量の喀血を認め、呼吸状態が急速に増悪した。肺胞出血による呼吸不全の診断で人工呼吸管理下にステロイドパルス療法を行い、時間を要したが最終的に酸素投与が不要な状態までの改善が得られた。高安動脈炎は大血管や冠動脈に病変を有することが多いが、本症例のように上腸間膜動脈領域や肺動静脈への障害は稀であり文献的考察と共に報告する。高安動脈炎の長期的な経過から致死的な病態をきたすこともあり迅速な対応が必要である。
  • 本田 一浩, 米澤 一也
    2023 年 6 巻 1 号 p. 86-87
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】院内暴力とは、医療機関において患者や家族等が職員に対して行う身体的暴力や嫌がらせ行為(精神的・性的暴力など)と定義されており、全日本病院協会の院内暴力等の実態調査では過去1年間における職員に対する院内暴力・暴言等の件数は、6,882件と報告されている。当院においても、令和3年度は患者から職員への暴力行為や診療中の医師等への暴言が1件ずつ報告されていた。また当院職員に対しての院内暴力等のアンケート結果では、約18%の職員が過去に患者・家族等から身体的・精神的暴力を受けたり、遭遇した経験があるとの回答であった。このことから院内の組織的な取り組みとして、院内暴力・暴言対応シミュレーション研修会を実施し、職員の対応力向上に努めることができたので経過について報告する。【方法】 多職種で構成された医療安全推進部会メンバー、事務職員が中心となり対面式の研修会を企画した。当院の院内暴力対策マニュアル、取り組みについて医療安全管理室より資料にて説明後、院内暴力・暴言発生場面のシナリオに沿って、医療安全推進部会メンバーが実演を行い、対応方法について解説を行った。研修後はアンケートにより理解度の確認を行った。【結果】COVID-19感染対策として各部署からの参加人数を制限して行い、研修参加者は計42名であった。研修後アンケートより、参加者からは「患者からの暴行・暴言発生時の対応」、「凶器を所持する不審者への対応」、「脅迫電話等への対応」のすべての項目において「よく理解できた」「理解できた」との回答が得られた。【考察】今後、院内暴力・暴言等に対して、職員自らが現場で適切な対応がとれるよう普段から発生時の対応や危険回避する方法等についてイメージトレーニングしておく必要がある。また、院内暴力・暴言発生時の場面を想定したシミュレーション研修会は、今後も定期的に開催し、職員の対応力向上に努めていく必要がある。
  • 佐藤 賢一郎, 福島 安義, 荻野 次郎
    2023 年 6 巻 1 号 p. 88-93
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    治療拒否により緩和ケアのみで経過観察し、約6ヵ月後に原病死された103歳超高齢者の子宮内膜漿液性癌の1例を経験した。原発巣は3〜4ヵ月で体積は約5.9倍となり、多発リンパ節転移も出現した。悪性腫瘍の進行スピードは余命との関係で手術適応を含めた治療方針に影響を及ぼすと思われ、今後、より適切な高齢者の子宮内膜癌治療の選択のためにも、本例のような自然経過についての知見の積み重ねも重要ではないかと考える。
  • 佐藤 賢一郎, 福島 安義
    2023 年 6 巻 1 号 p. 94-99
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
    今回、創部長8cmの開腹子宮全摘術(以下8cm全摘)の臨床的意義について検討する目的で、6cmの小切開子宮全摘術(以下、6cm全摘)との臨床成績の比較を行った。整容面の問題を除けば6cm全摘と8cm全摘の手術成績に大きな違いは認められなかった。また、小切開手術と小切開を利用する腹腔鏡補助下手術の臨床的意義を明確にするため、8cm開腹子宮全摘術のように切開創をcm単位で呼称することを提案したい。
  • 2023 年 6 巻 1 号 p. 0-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
  • 2023 年 6 巻 1 号 p. 100-101
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
  • 2023 年 6 巻 1 号 p. 102-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
  • 中田 智明, 森下 清文, 久保田 達也, 遠藤 力, 大原 正範, 渋谷 好孝, 棟方 哲, 上原 浩文, 久保 公利, 髙金 明典, 矢 ...
    2023 年 6 巻 1 号 p. 103-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
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