シイタケ子実体の収穫後の生理・化学的特性の基礎資料を得るべく, 有機酸の6貯蔵温度区 (-20, 0, 5, 10, 20, 30℃) における経時的変化ならびに真空凍結乾燥工程に伴う変化を菌傘部, 菌柄部について検討した。
(1) 菌傘部, 菌柄部より11種類の有機酸 (ギ酸, 酢酸, 乳酸, シュウ酸, コハク酸, フマル酸, リンゴ酸, α-ケトグルタル酸, 酒石酸, ピログルタミン酸, クエン酸) が同定され, 菌傘部の主要有機酸はリンゴ酸, クエン酸, ピログルタミン酸, 酒石酸, フマル酸の5成分, 菌柄部は酒石酸を除いた4成分であり, その組成パターンは菌傘部と菌柄部で異なっていた。
(2) 20℃温度区の15日間貯蔵における総有機酸含量は, 乾物重量1009当たり, 菌傘部で1.4~3.29, 菌柄部で1.1~2.09であり, 両部位ともに貯蔵初日から3日目にかけて増加し, 以後, 15日目まで減少した。各貯蔵温度区における総有機酸含量も20℃貯蔵温度区と同様の変動パターンを示したが, 貯蔵温度の低下に伴いその変化は緩慢となった。
(3) フマル酸, ピログルタミン酸およびクエン酸の3成分は商品性限界時まで増加し, 以後は減少する変動パターンをとり, 貯蔵初日より減少する他の8種類の有機酸類とその挙動を異にした。
(4) 熱風乾燥工程および真空凍結乾燥工程に伴う有機酸含量は生鮮物と比べ顕著な差異はなく, これら乾燥法はシイタケの有効な品質保持法であることが知られた。
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