小ウメ (竜峡小梅甲州小梅) 果実の生育・成熟中の成分について検討した。
(1) 果実の生育は核果類で認められている二重S字型生育曲線を示し, その生育過程は急速生育期, 生育停滞期および急速肥大期に分けられた。
(2) 果実硬度は生育停滞期に1011±113g/φで最大となり, その後果実が肥大するとともに低下しその約3分の1となった。
(3) AIS含量は生育初期に4.65%から果実の生育・成熟に伴い減少し, その約2分の1となった。またAISに対する総ペクチン含量の比率は果実の生育・成熟に伴い16.9%から29.7%に増加した。
(4) 灰分, 全窒素および遊離アミノ態窒素は増加後, 果実肥大に伴い減少した。
(5) 滴定酸含量は3.1~5.5g/100gの範囲にあり, 生育停滞期の増加が著しく, 果実肥大期にほぼ一定となり, 可溶性固形分と似た変化を示した。
(6) 有機酸はリンゴ酸, クエン酸, シュウ酸およびコハク酸が存在し, 生育・成熟中の総含量は3478~6517mg/100gで滴定酸度と似た変化を示した。また生育・成熟に伴いクエン酸の組成比は8%から60%に増加, リンゴ酸は86%から39%に減少し, クエン酸に対するリンゴ酸の比率は10.59から0.65に低下した。
(7) 遊離アミノ酸含量は生育につれて増加し最大340mg/100gとなり, その後果実肥大期にはその約2分の1に減少し, 再び過熟期に増加した。全生育期間で含量の多いものはアスパラギンで全体の73~87%を, さらにγ-ABA, グルタミン酸, グルタミンおよびアスパラギン酸を加えると93~98%を占めた。
(8) 糖はスクロース, グルコース, フラクトースおよびソルビトールで構成され, 各生育期間での主要な糖の組成比は生育初期のグルコースが36~54%, 生育停滞期のグルコースとソルビトールがそれぞれ22~31%と33~34%, 果実肥大期のスクロースが49~78%であった。また生育・成熟に伴いグルコースは減少, フラクトースは増加後減少するため, フラクトースに対するグルコースの比率は4.94から0.55に低下した。
(9) 全無機成分含量は生育停滞期に3123ppmと最も多く, その後果実の肥大に伴ってその約78%に減少した。含量の多いものはKで全体の90~95%, 次いでCaとMgが多く, これを加えると99%を占めた。
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