Journal of Applied Glycoscience
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57 巻, 4 号
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Regular Papers
  • 佐分利 亘, 佐分利(上村) 由香里, 飯塚 貴久, 山本 健, 高田 正保
    2010 年 57 巻 4 号 p. 231-237
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/10
    ジャーナル フリー
    イソマルトオリゴ糖やニゲロオリゴ糖などのオリゴ糖は,α-amylaseやβ-amylaseによりmaltoseやmaltotrioseまで澱粉を加水分解し,α-glucosidaseによる糖転移反応を行うことにより製造される.このため,当該シラップは,2-4糖の比較的低分子糖を主成分とする.一方,高分子糖は低甘味であり飲食物のコク味やボディー感増強効果がある他,低浸透圧のため小腸への刺激が少なくエネルギー給源として優れる.本研究では,シクロデキストリン生成酵素(CGTase)とα-glucosidaseを枝切り酵素存在下で同時に澱粉へ作用させることにより,β-amylase耐性グルカンが得られることを見出した.β-amylaseによる作用をほとんど受けないことから本グルカンは非還元性末端あるいはその近傍にα-1,4結合以外の結合が導入されたと考えられた.本グルカンの重合度は,α-glucosidaseの鎖長特異性に依存し,高分子基質に高活性を示す Acremonium strictum 酵素(ASG)を使用した場合は長鎖(重合度6-10)の,低分子基質へ高い特異性を有する Aspergillus niger 酵素(ANG)を使用した場合は短鎖(重合度4-6)の糖が主成分であった(Fig. 2).得られたグルカンのβ-amylaseによる分解がα-amylaseにより促進されたことから還元性末端部は主にα-1,4-結合からなると考えられた.メチル化分析により,ASGおよびANGを用いて得られたグルカン(それぞれBRGIおよびBRGII)はそれぞれα-1,3結合およびα-1,6結合が非還元性末端あるいはその近傍に導入されたことが明らかとなった.BRGI含有シラップを調製し,澱粉加水分解物からなるコーンシラップと室温保存1カ月での外観を比較したところ,BRGI含有シラップはコーンシラップと異なり清澄性を保ち,高い耐老化性を示した(Fig. 8).
  • 小泉 英誉, 戸谷 一英, 北本 則行, 佐藤 将太, 大町 鉄雄, 吉田 孝
    2010 年 57 巻 4 号 p. 239-243
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/10
    ジャーナル フリー
    糸状菌 Aspergillus oryzae の生産するβ1-4エンドグルカナーゼ(AoCelB,GHF7)はラクトースとアルカノールの縮合活性を示した.ラクトースを供与体とした場合にメタノール,エタノール,1-ブタノール,1-ヘキサノール,1,6-ヘキサンジオール(HD)などが糖受容体となった.糖供与体として250 mMラクトース,糖受容体として1.5 M HDを用いた場合に最も高効率で縮合がみられた.Lacβ-pNP,セロビオースβ-pNPからHDに対する糖転移反応も観察された.LacNAcとHDの縮合はみられなかった.AoCelBと同じGHF7に属する Fusarium oxysporum Cel7B(FoCel7B)遺伝子を A. nidulans を宿主として発現させ,ラクトース縮合作用を調べたところ,FoCel7BもLac縮合活性を示した.これらの結果から,GHF7に属する菌類のセルラーゼはラクトースを糖供与体とした縮合反応が可能であると推定された.
  • アズワン アワング, ラフィア カリム, 三ツ井 敏明
    2010 年 57 巻 4 号 p. 245-264
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/10
    ジャーナル フリー
    カカオ(Theobroma cacao)は,多くの熱帯地域の国の重要な作物であり,チョコレートの原材料として栽培されている.カカオにおいても害虫耐性の付与など品種改良が望まれているが,その基礎となるカカオの生理・生化学,分子遺伝学についてはほとんどわかっていない.また,現時点ではカカオのゲノム情報も明らかにされていない.われわれは,カカオポッド果殻のプロテオームを明らかにするため2次元電気泳動(2-DE)/質量分析を行った.カカオポッドには大量のガムが含まれているため,ポッド果殻タンパク質をフェノール抽出/メタノール-酢酸アンモニア沈澱法により調製した.タンパク質試料を2-DEで分離し,コロイドCBBで染色したところ,2-DEゲル中において約700のタンパクスポットを検出することができた.244個のタンパクスポットについてトリプシン消化物のSPITC-誘導体を調製し,MALDI-TOF/TOF MSを用いた de novo シークエンシングを行った.この方法により144個のカカオポッド果殻タンパク質を同定することができた.同定されたタンパク質の大部分は代謝やエネルギー生産に関与するものであった.また,ポッドの成長・分化に関わるタンパク質も検出された.
Notes
  • 加藤 陽治, 太田 敬子, 肥田野 豊, 東 康夫, 大中 徹, 矢追 克郎, 三石 安
    2010 年 57 巻 4 号 p. 265-268
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/10
    ジャーナル フリー
    茄子キシログルカンを構成しているオリゴ糖単位を詳細に調べるために,前回報告したキシログルカナーゼ由来の主要キシログルカンオリゴ糖[六糖(XXGG),七糖(LXGG,XLGG,XSGG)および八糖(LLGG,XSGG)]以外のオリゴ糖について構造を解析した.その結果,新たに六糖としてXSG,七糖としてXX2GG,八糖としてLX2GG,九糖としてLSGGGの存在が確認された.[XXGG等はFryらによるキシログルカンオリゴ糖の表示法で,主鎖の各(1→4)-β結合のグルコース残基の分岐様式により一文字コードで示される.G=β-D-Glc,X=α-D-Xyl-(1→6)-β-D-Glc,L=β-D-Gal-(1→2)-α-D-Xyl-(1→6)-β-D-Glc,S=α-L-Ara-(1→2)-α-D-Xyl-(1→6)-β-D-Glc,X2=α-D-Xyl-(1→2)-α-D-Xyl-(1→6)-β-D-Glc].それぞれの単位オリゴ糖の各種クロマトのピーク面積から算出した割合は,XXGG:XSG:LXGG:XLGG:XX2GG:XSGG:LLGG:LX2GG:LSGG:LSGGG=23.4:4.9:7.3:8.5:2.9:23.0:10.0:2.9:14.2:2.8であった.
  • カン ヒゴン, キム ヨンミン, 中井 博之, カン ミンソン, 袴田 航, 奥山 正幸, 森 春英, 西尾 俊幸, 木村 淳夫
    2010 年 57 巻 4 号 p. 269-272
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/10
    ジャーナル フリー
    Streptococcus mutans ATCC 25175由来のエンド型デキストラナーゼ(SmDex)に対し,3種類のω-エポキシアルキルα-D-グルコピラノシド(3′,4′-エポキシブチルα-D-グルコピラノシド(E4G),4′,5′-エポキシペンチルα-D-グルコピラノシド(E5G)および5′,6′-エポキシヘキシルα-D-グルコピラノシド(E6G):アグリコンのアルキル鎖長が異なる)を作用させると,SmDexは擬一次的な活性低下を示した.アルキル鎖長に依存した失活が認められ,失活の度合いはE5G > E6G > E4Gであった.したがってω-エポキシアルキルα-D-グルコピラノシドのグルコース残基とエポキシ基の距離が,SmDexの失活に対し重要であることが判明した.E5Gは可逆的な中間体を形成する失活機構(自殺基質型の失活機構)を与え,不活性化の一次定数(k)と中間体の解離定数(KR)はそれぞれ0.44 min-1および1.45 mMと算出された.SmDexの加水分解反応の生成物であるイソマルトースの存在によりE5Gの失活が防御されたため,E5GはSmDexの触媒部位に結合すると示唆された.本論文は,ω-エポキシアルキルα-D-グルコピラノシドがエンド型デキストラナーゼの自殺基質になることを示す初めての報告である.
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