日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本地質学会第118年学術大会・日本鉱物科学会2011年年会合同学術大会
選択された号の論文の265件中51~100を表示しています
T5:地殻流体のダイナミズム:変形および変成作用に及ぼす流体の影響
  • 宮崎 一博
    セッションID: T5-01
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    物性値に制約される固体熱伝導に比べ,流体による熱移流は流速に比例し,遥かに高速に熱を運搬することが可能である.熱を輸送する流体が水に富む流体かメルトかは,地殻の温度圧力条件にも依存するが,地殻が高温であれば,水はメルトの生成を容易にし,その粘性を下げ移動を促進する.さらに,メルトの場合,固化する際に大量の潜熱を放出する.従って,高温地殻のメルト移流と潜熱の放出は,熱の運搬機構として非常に優れている.加えて,メルト移流と固化により地殻の組成改変が進行する.このような可能性があるにもかかわらず,メルト移流による地殻の温度構造や構成岩石の改変について,野外地質から評価した研究はあまり行われていない.以下では,西南日本内帯に分布する白亜紀高温型変成帯の野外地質を基礎に,岩石学的解析と数値シミュレーションを組み合わせ,地殻の構成及び進化におけるメルト熱移流の役割について検討した結果を報告する.
  • 苗村 康輔, 楊 建軍, 下林 典正
    セッションID: T5-02
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    北Qaidam超高圧変成帯は、石英長石質の片麻岩中に少量のマントル由来ざくろ石橄欖岩が産する。勝利口橄欖岩はその中でも最大の岩体であり、主にざくろ石レールゾライトとざくろ石輝石岩で構成される。先行研究から、勝利口橄欖岩では超高圧時以前の累進変成時に高塩濃度流体が活動したと提案されてきた。この説を検証するために、本研究では累進変成時に形成された含水鉱物の塩素濃度を徹底的に分析することで、累進時に活動した流体の塩素濃度を試みた。 勝利口橄欖岩のざくろ石レールゾライトとざくろ石輝石岩中には数mm径のざくろ石斑状変晶が存在し、累進変成時の角閃石が包有されている。さらにざくろ石斑状変晶周囲は、後退変成時の角閃石で置換されている。分析の結果、累進時の角閃石は後退変成時の角閃石に比べて系統的に高い塩素濃度を示すことが明らかとなった。この結果は、累進変成作用時の流体が塩素に富んでいたことを強く支持する。
  • 森 康, 重野 未来, 西山 忠男
    セッションID: T5-03
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    本研究は、西彼杵変成岩類の超塩基性メランジにおける流体–岩石間反応と変形の相互作用についてアイソコン法を用いて考察する。泥質片岩の構造岩塊の周縁部には厚さ数cmの曹長岩化帯が見られる。アイソコン解析の結果は、曹長岩化に伴うH2OとCの溶脱、LILEとHFSEおよびREEの分別、約20 vol.%の固相体積の減少を示した。この体積減少量は曹長岩化で生成される流体相(H2O、CH4)では補えず、間隙水圧力が減少して流体の移動や岩石の延性変形が促進された可能性がある。一方、ヒスイ輝石岩の構造岩塊も曹長岩の反応帯を伴う。アイソコン解析の結果は、反応帯形成に伴うK2O、H2O、Sr、Baなどの付加、SiO2、Na2O、Fe2O3などの溶脱、約10 vol.%の固相体積の増加を示した。反応帯は、透水率を低下させてヒスイ輝石岩の後退変成作用を抑制したかもしれない。
  • 神崎 正美, 薛 献宇, Amalberti Julien, Zhang Qian
    セッションID: T5-04
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    超高圧変成岩中のK-cymrite (KAlSi3O8*H2O)とその無水相(kokchetavite)の顕微ラマンによる同定を助けるために、各合成相のラマン測定を行った。K-cymriteは5 GPa, 800 Cで合成、kokchetaviteはK-cymriteを加熱脱水して得た。K-cymriteとkokchetaviteのメインピークのラマンシフトはそれぞれ380と390 cm-1であった。この結果からは、最近報告された天然のK-cymrite (Zhang et al., AM, 2009) が実際にはkokchetaviteである可能性が高いと推定された。さらにダイヤモンドアンビルセルを使って高圧下のラマンスペクトルを測定した。K-cymriteとkokchetaviteのメインピークの圧力依存性は4.9と5.6 cm-1/GPaであった。
  • 平島 崇男, Compagnoni Roberto
    セッションID: T5-05
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    白色片岩とは藍晶石+タルクの組み合わせを特徴とするMgO とAl2O3に富む高圧変成岩である。この岩石が超高圧変成作用を被ると藍晶石+パイロープの組み合わせが安定になる。ドラマイラ岩体の白色片岩中のパイロープからC. Chopin(1984)がコース石を見出し、それを契機に超高圧変成岩研究が開始された歴史的な岩石である。白色片岩の起源として蒸発岩起源説(Schreyer, 1977)と交代作用説(Bearth, 1952) が提案されていた。 申請者らは、ドラマイラ岩体の白色片岩からコアの組成がアルマンディン、リムの組成がパイロープとなるざくろ石を見出した。このざくろ石を含む白色片岩の産状を野外調査した結果、白色片岩は、花崗岩起源の母岩が高圧下で被った特異な交代作用により形成されたことを明示した。
  • 針金 由美子, 森下 知晃, Snow Jonathan, 田村 明弘, 道林 克禎, 小原 泰彦, 荒井 章司
    セッションID: T5-06
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    白鳳丸KH07-2航海において採取されたフィリピン海パレスベラ海盆のゴジラメガムリオン中央部(KH07-02-D18地点)から採取されたはんれい岩を用いて、はんれい岩に含まれる熱水変成作用で形成した角閃石の変形微細構造と微量元素組成から考察される流体の特徴について述べる。
  • 宇野 正起, 中村 仁美, 岩森 光
    セッションID: T5-07
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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     個々の広域変成岩は、プレート収束境界の温度-圧力,変形,化学反応履歴をラグランジュ的に記録する。一方,そのアンサンブルとしての変成帯は,テクトニクス,温度・流動場、流体の発生と移動メカニズムをオイラー的に記録し,全体場に関する知見をもたらすと考えられる.しかしながら,従来の研究では(1)ラグランジュ的視点で示強変数 (個々の岩石の温度-圧力経路)を提供する相平衡岩石学と,(2)オイラー的視点で示量変数 (積分値としての物質移動・収支量)を提供する地球化学が別々のスケールで独立に解析されてきたため,上記の全体場の統合的理解が得られてこなかった.本研究では沈み込み帯起源の高圧変成岩である三波川変成帯を例に,相平衡岩石学と物質移動の地球化学を鉱物累帯構造スケールで結びつけ,両者を同時に解くことで,温度-圧力,化学反応履歴のデータセットを構築する枠組みを示し.示強-示量変数のカップリング,微分的情報と積分値の関係性,およびラグランジュ的情報とオイラー的場の統合的理解を目指す.
  • 町 澄秋, 石渡 明, 森下 知晃, 早坂 康隆, Ledneva Galina V., Sokolov Sergey D., Paland ...
    セッションID: T5-08
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    前弧域のかんらん岩と中央海嶺のかんらん岩では,部分溶融度に違いがあることが良く知られており,前者では高く,後者では低い.ただし,ここで注意が必要なのは,前弧域のかんらん岩が得られる地域は限られており,大部分のデータが伊豆-小笠原-マリアナ(IBM)弧のものであるという点である.本研究ではロシア極東のUst’-Belayaオフィオライトのかんらん岩の起源について議論し,そこから上述のことについて言及したい.
  • Marie Python, Masako Yoshikawa, Tomoyuki Shibata, Georges Ceuleneer, S ...
    セッションID: T5-09
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    Diopsidites and anorthite diopsidites are dykes of hydrothermal origin present in the mantle section of the Oman ophiolite. Their textural, mineralogical and chemical characteristics are compatible with a genesis process by high Ca-metasomatism at high to very high temperature. They show variation in their mineralogical assemblages ranging from diopside with more or less tremolite and antigorite to anorthite+diopside and compatible with a crystallisation temperature varying from 650 to 850°C or more.
  • 佐藤 桂, Ellis David, J., Christy Andrew, G.
    セッションID: T5-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    共存する不混和珪酸塩メルト間の元素分配は、上部マントルから地殻への元素の輸送に関係するはずであるので、月の地殻の進化や、岩石中の流体包有物のプロセスを理解する上で重要である。本研究では、ジルコンと共生する不混和メルト間の主要元素、微量元素、希土類元素の、一気圧、1300℃での分配関係が決定された。実験生成物の化学分析によって、Si、Al、K、Rb、Cs、Hfが、珪素に乏しいメルトよりも珪素に富むメルトにより多く分配する事が明らかにされた。
  • 鳥海 光弘, 福山 繭子
    セッションID: T5-11
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    プレート境界で形成された高圧変成岩には多数の縞状構造がある。この縞状構造はせん断すべり面として形成され、そのジョグへの水溶液の浸透により交代作用が起こり、周囲へ鉱物組成に関する縞構造が形成された。この時間的変化を求めるために、交代縞構造の境界に形成されている不安定構造を解析し、その波長と境界移動速度および拡散係数の関係を求めた。
  • 福田 惇一, 奥平 敬元
    セッションID: T5-12
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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     上中部地殻におけるレオロジーは,主として石英の転位クリープに支配されるほか,鉱物の溶液-沈殿クリープによっても影響受ける.長石は石英と並んで地殻の主要構成物質であり,溶液-沈殿クリープが卓越する系が近年注目されている. しかし,溶液-沈殿を伴う長石について,その格子定向配列や結晶成長様式などの微細構造に関する知見や,溶液-沈殿機構に関与する流体の分布と輸送機構(拡散性)など不明な点が多い.  これらの点に関して本研究では, (1) 微細構造観察と後方散乱電子回折法マッピング分析から,カリ長石の溶液-沈殿クリープの発達とその微細構造を明らかにし, (2) 赤外分光法マッピング分析から,(1) で測定した溶液-沈殿によって生成したカリ長石を含む領域を測定し,含水量分布を測定する.そして, (3) アナログ物質を用いた高温その場赤外分光法から,粒界中における拡散性について定量的に見積もる.
  • 岡本 和明, 飯島 千尋, 黒澤 正紀, Chan Yu Chang, 寺林 優
    セッションID: T5-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    最近われわれは、台湾衝突造山帯のリンクスラストに存在した流体がガス分離を引き起こし、断層破壊進展、さらに断層潤滑化を引き起こしたことを明らかした。流体の化学組成を特定するために、断層に存在している石英脈の流体包有物に関するPIXE分析を行った。結果は以下の通りである。1) Br/Cr比は海水より低い、2) Ti, Cr, Ni が相当量含まれており、マグマ起源の流体の関与を示唆する、3) 気相包有物にK, Br以外にも金属元素(Ti, Zn, Ge, Mn, Ca, Fe, Pb, Rb, Cu)が相当量含まれている。
  • 石川 正弘, 堤 大輔
    セッションID: T5-14
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    地殻流体は地殻内部でも最重要な研究対象の一つである。本研究では,島弧地殻深部条件下における弾性波速度への水の影響を検討した。具体的には,斑れい岩類の一つであるガブロノーライトの弾性波速度測定を島弧下部地殻に相当する高温高圧下で実施した。その結果,温度上昇に伴い,二段階の急激な速度低下をおこすことがわかった。
  • 遠藤 俊祐, 森 宏, 纐纈 佑衣, ウォリス サイモン
    セッションID: T5-P01
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    Jenner海岸に産するフランシスカン帯のエクロジャイト及び青色片岩のブロックは∼17 kbar,∼490度の条件で形成された.これらブロックは上昇時に,7-9 kbar, <280度の条件で加水を受け,高含水量であるが流体に不飽和な平衡鉱物組み合わせが形成された.
  • 三好 茜, 小木曽 哲
    セッションID: T5-P02
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    沈み込み帯において含水鉱物から放出された水は島弧火成活動や地震の発生など様々な地球科学的現象を引き起こすとされる. 特に, マントルウェッジのかんらん岩は水と反応して蛇紋岩化作用を被るが, 蛇紋岩化による岩石の物性変化及び化学組成変化は地球全体の水循環やマントルダイナミクスに大きな影響を及ぼす. 本研究では, 新鮮なかんらん岩から蛇紋岩化したものまで連続的に産するとされる北海道神居古潭帯の岩内岳超塩基性岩体を対象として, モード測定および組織観察, 鉱物の組成分析, 密度および初磁化率の測定を行い, かんらん岩の蛇紋岩化プロセスを検討した. その結果, 本研究地域のかんらん岩は2段階の蛇紋岩化を被っていることが示された.
  • 岡本 あゆみ, 竹下 徹
    セッションID: T5-P03
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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     本研究では,神居古潭峡谷地域西部と江丹別峠付近を対象にテクトニクスの解析を行った.神居古潭峡谷の苦鉄質片岩は緑色片岩相の鉱物組み合わせを示し,シュードセクションよりP = 3.4-4.7 kbar, T = 275-300℃と推定された.さらに石英脈中の流体包有物のアイソコアより,P = 2.5 kbar,T = 300℃の条件を通過したと推定される.また,藍閃石のアクチノ閃石による置換と大量の鉱物脈の存在より,緑色片岩相の変成作用は後退変成作用であり,流体からの熱が変成作用の熱源であったと解釈できる.一方,江丹別峠付近の試料はNa角閃石を多量に含み,粗粒であり組成累帯構造も認められる.角閃石やエピドートの組成累帯構造の分析を行った結果,少なくとも同地域には温度―圧力履歴が温度・圧力上昇,または温度・圧力低下を示す2種類の試料が存在することが明らかとなった.
  • 加藤 睦実, 廣井 美邦
    セッションID: T5-P04
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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     南極、昭和基地南方のスカレビークスハルセンには、コンダライト(ザクロ石‐珪線石片麻岩)とドロマイト質大理石、珪岩が互層して産出する。コンダライト層とドロマイト質大理石層の境界部には、単斜輝石と斜長石(あるいはスカポライト)に富む石灰珪質岩が発達していることがあるが(Yoshida et al., 1976; Matsueda et al., 1983)、第46次南極観測隊による現地調査によって、(_i_)石灰珪質岩が、コンダライト層中に貫入した岩脈状になっていること、(_ii_)コンダライト (GS)が、石灰珪質岩脈との境界部で、ザクロ石-スピネル‐黒雲母片麻岩 (GSB),ザクロ石‐斜方輝石片麻岩 (GO),チャルノッカイト (GH)へと移化することが確認された。  今回、GS-CHの全岩化学組成を測定して、アイソコン解析 (Grant, 1986) をおこなった結果、GSB-GOにおいてSiO2の溶脱が、GOではCaOの付加が顕著であることが確認され、次の可能性が推測された。  GSBは、石灰珪質岩脈(あるいはメルト)からの水に富む流体の流入と、それにともなう部分融解,メルトの分離・移動(SiO2の溶脱)によって形成された。さらに、GOでは、部分融解とメルトの分離・移動に加えて、石灰珪質岩脈(あるいはメルト)との混合(CaOの付加)が起きた。CHは、GSB, GOから分離・移動した部分融解メルトと石灰珪質岩脈の混合によって形成された。
  • 外囿 雄一, 石川 正弘
    セッションID: T5-P05
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    大陸地殻深部では流体が岩石と相互作用を及ぼし、地殻のmetasomatismがある程度生じていると思われる。マダガスカル共和国中央部Ihosy から北東約50km に位置するZazafotsy 付近ではグラニュライト相条件における2種類の岩石-流体間反応が観察される。1つはパッチ状のcharnockitizationとして認識され、それはCO₂流体による脱水反応によることが知られている。もう一つの岩石-CO2流体間反応はカルシウム、鉄に富んだCO2流体による交代作用である。本研究では岩石記載・鉱物化学組成から, Ca,Feに富んだCO2流体による交代作用を考察し、その岩石物性への影響を議論する。
  • Kenshi Maki, J. G. Shellnutt, T. W. Wu, Yasushi Mori, Kazuhiro Miyazak ...
    セッションID: T5-P06
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    Sr and Nd isotope compositions of migmatites and leucogranites in the highest grade zone of the Higo low-P /high-T (andalusite-sillimanite type) metamorphic terrane, central Kyushu, Japan, suggest that the nebulitic migmatites (diatexite) formed by melt infiltration into the pelitic gneisses, and the stromatic migmatites (metatexite) by in situ partial melting of the pelitic gneisses. The nebulitic migmatites preserve a record of large magnitude Sr and Nd isotope disequilibrium with the pelitic gneisses, which show the isotope equilibrium with the stromatic migmatites.
  • 森下  知晃, 鈴木 敬人, Zanetti Alberto, 田村 明弘, Mazzucchelli Maurizio, Tiepolo ...
    セッションID: T5-P07
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    イタリア・フィネロ苦鉄質―超苦鉄質岩体において,流体―岩石反応に関する観察を行い、そのスケールについて検討した。
  • 石丸 聡子, 荒井 章司, 田村 明弘, Khedr Mohomed Zaki, Python Marie
    セッションID: T5-P08
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    北部オマーンオフィオライトの底部かんらん岩の岩石学的・地球化学的性質を記載し,オフィオライト衝上時に形成される下位の変成岩(ざくろ石角閃岩)から底部かんらん岩へH2Oなどの流体が付加することによる元素移動について考察する. かんらん岩は,ざくろ石角閃岩-かんらん岩境界から離れるに従ってレールゾライトからハルツバーガイトへと変化し,全体として蛇紋岩化の程度は低い.ざくろ石角閃岩-かんらん岩境界から50 m程度までは,かんらん岩中には角閃石(ホルンブレンド)が普遍的に存在するが,その量は離れるに従って減少する。単斜輝石と角閃石の希土類元素パターンは,ざくろ石角閃岩-かんらん岩境界近傍では軽希土類元素にエンリッチしているが,境界から離れるに従ってその濃度は減少し,25 m程度離れた試料では検出限界以下となる.オフィオライト底部では,H2Oによっていくつかの不適合元素の付加が認められた.
  • 渡部 悠登, 竹下 徹, 重松 紀生, 藤本 光一郎, Python Marie
    セッションID: T5-P09
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    中央構造線松阪飯高コアを用い,蛍光X線分析によりカタクレーサイト中の元素移動の解析を行った。その結果,カタクレーサイト化の進展に伴い,最初質量増加が起こってSiO2が増加し,その後質量減少が生じてSiO2が減少するという2段階のカタクレーサイトの発展過程が明らかとなった。
  • 安東 淳一, 早坂 康隆, 西脇 隆文
    セッションID: T5-P10
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    チャート岩体中に発達する鏡肌の成因を明らかにする目的で微細組織観察を進めている。試料は山口県東部に分布する玖珂帯を構成するチャートである。チャート岩体の本体部分は淡青色~白色であるが、鏡肌面は黒色を呈している。実体顕微鏡下での観察では、透明なSiを主成分とする薄膜が鏡肌面を覆っている事が分かる。鏡肌面に発達する条線に平行に、かつ、鏡肌面に垂直な方向で作成した薄片の観察を行った。伸張した石英が鏡肌面に対して20度~30度で斜交して配列しており、石英粒子は流体包有物を多く含み、強い波動消光を呈している事が分かった。粒界はアメーバー状で、バルジ形成も認められる。TEM観察では、鏡肌面に沿って厚さ数十nmのアモルファスと考えられる層が確認できた。これらの観察結果は、鏡肌面がすべり面上の石英粒子の摩擦溶融によって形成された事を示唆している。
  • 富士田 祥之, 中村 仁美, 楠田 千穂, 岩森 光
    セッションID: T5-P11
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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     有馬温泉は、そのヘリウム同位体比および酸素-水素同位体比から、 地下深部を起源に持つと考えられている。 一方、有馬温泉の地下には、フィリピン海プレート(上面深度50~70km)、 太平洋プレート(上面深度450km)が存在している。 本研究では、有馬温泉のような、 海水の2~3倍塩濃度の高い温泉水中に溶解する 微量元素の濃度を決める手法を確立し、 温泉水が湧出するまでに接触すると考えられる 基盤岩との元素分配を考慮しながら、 スラブに由来する流体の寄与を温泉水中に検出することを目的としている。
  • 片山 郁夫, 川野 誠也, 岡崎 啓史
    セッションID: T5-P12
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    沈み込むプレートから脱水反応により放出された流体は、一般的にその浮力のため直上に移動すると考えられているが、プレート境界に存在する蛇紋岩では剪断変形による面構造が著しく発達しているため透水率に異方性が生じ、流体移動が面構造(応力場)に制約される可能性がある。そこで、私たちのグループでは蛇紋岩の透水率異方性を検証する透水試験を行っている。その結果,蛇紋岩の片理に垂直な浸透率は,片理に平行なものに比べ系統的に低い値を示し、封圧50MPaでは2桁程度の差が見られた。この結果は蛇紋岩など面構造が強く発達した岩石では,透水率に著しい異方性の効果が存在し、水の移動は浮力のみならず岩石の剪断面(応力場)に制約される可能性を示唆している。蛇紋岩化がみられるプレート境界では、沈み込みによる剪断変形のためプレート境界に平行な面構造が発達していることが期待される。その場合、脱水反応によりマントルへ放出された流体は蛇紋岩の面構造に沿いプレート境界方向に選択的に移動することが予想される。
T6:火成作用と流体
  • 山本 順司, Kurz Mark, 荒井 章司, Prikhod'ko Vladimir
    セッションID: T6-01
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    Low P-wave velocity in the shallower part of the backarc mantle has been observed throughout eastern Asia. Elucidation of the origin of the local seismic anomaly offers a clue to clarification of the mantle dynamics in the backarc. The depth provenances of mantle xenoliths in far eastern Russia are correlated with equilibrium temperatures. Assuming that the correlation reflects the geotherm in this region, it corresponds to heat flow of ∼100 mW/m2. Such high heat flow in the backarc is consistent with the geothermal gradient supposed in the Big Mantle Wedge (BMW) model. We report noble gas isotopic compositions of BMW-derived xenoliths to reveal the occurrence of the subduction related fluid in BMW. The results can be interpreted as contribution of deep seawater with addition of radiogenic components. It is most likely that the atmospheric signature were originated from the subducting oceanic plate.
  • 川本 竜彦, 三部 賢治, 吉岡 貴浩, 黒岩 健一, 小木曽 哲
    セッションID: T6-02
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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     2002年以降、私達はSPring-8の放射光X線を高温高圧実験装置の内部に引き入れて、H2O流体とマグマの関係をその場観察してきた(Mibe et al., Proc Nat Acad Sci U.S.A.)。本講演では、高温高圧条件での流体とマグマとの間の元素分配に与える塩と圧力の影響を報告し、スラブ流体が塩水である可能性とその意義を報告する。
  • 中村 仁美, 岩森 光
    セッションID: T6-03
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    アダカイトは,アリューシャン弧Adak 島で特異な化学組成を持つ溶岩として発見されて以降,その成因はスラブ溶融に求められてきたが,実際には様々なテクトニクス場で確認されつつある(Kay, 1978; Defant & Kepenzhinskas, 2001).本発表では,二重のプレートの沈み込みのため,冷たい場になっている中部日本で生じた,両白山地アダカイト質溶岩の成因を論ずる.
  • 清水 洋平, 荒井 章司
    セッションID: T6-04
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
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    筆者らは,沈み込み帯におけるマントルプロセスが記録されている南東スペイン,タヤンテ地域のかんらん岩捕獲岩からグラファイトを伴う斜方輝石脈を見出した。その斜方輝石脈の岩石学的特徴から,その起源が堆積物由来スラブメルトであることを明らかにし,またそのメルトは周囲のかんらん岩を還元的に変化させたことを示した。
  • 吉村 俊平, 中村 美千彦
    セッションID: T6-05
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
    会議録・要旨集 フリー
    マントルに貯蔵されているCO2は,主に活動的火山を通じて大気へ放出される.このとき,マグマ中でのCO2輸送は,CO2フラクシング,すなわち,既存のマグマに外部(深部)からCO2に富む流体が供給され,系全体をCO2に富む組成に変化させる現象がによって行われていると考えられるが,その詳細なメカニズムは知られていない.そこで著者らはCO2フラクシングの基本概念を反応輸送過程としてモデル化し,その特徴を明らかにするとともに,このモデルをCO2フラクシングを記録していると考えられる天然のメルト包有物のデータ(エトナ火山)に適用することで,輸送メカニズムを定量的に明らかにした.その結果,CO2フラクシングの起こり方のひとつとして,圧力440MPaの深度からXCO2=99mol%の流体が∼32g/m2sの流量で注入され,揮発性成分を交換しながら速度>∼10-4m/sで上昇するという解を得た.
  • 浜田 盛久, 潮田 雅司, 高橋 栄一
    セッションID: T6-06
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
    会議録・要旨集 フリー
    無水の造岩鉱物は、ppmオーダーの水を含むことが知られており、メルト中に溶けていた水の量や挙動の指標として有用であることが明らかにされつつある。斜長石もそのような無水鉱物の一例であるが、マントルを構成する苦鉄質鉱物と比較して、研究例は少ない。本研究の目的は、斜長石-メルト間の水素の分配係数を実験によって決定することである。内熱式ガス圧装置を用いて斜長石斑晶と含水玄武岩質メルトをリキダス付近の温度で共存させる融解実験を行った。その結果、斜長石中のOH含有量と、メルトの含水量の間には線形の関係があり、水素の分配係数は約0.006と見積もられた。分配係数が温度や酸素雰囲気、斜長石やメルトの組成にどのように依存しているかについて現在、研究を進めているので、これらについても講演で議論したい。
  • 栗谷 豪, 吉田 武義, 木村 純一, 平原 由香, 高橋 俊郎
    セッションID: T6-07
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、島弧フロント側火山の初生マグマ含水量を明らかにする目的で、東北本州弧の火山フロント上に位置する岩手山において最もMgO量が高い玄武岩を対象に、詳細な岩石学的解析を行った。溶岩は約5%のカンラン石と約15%の斜長石の斑晶を有する。斜長石斑晶のAn量は85~92であり、カンラン石斑晶のMg#は78~85である。共存する斜長石のAn量とカンラン石のMg#には線形の関係があり、そしてMg#が82を超えるカンラン石は斜長石とは共存しない。このような鉱物化学組成の多様性は、カンラン石のみをリキダス相にもつようなマグマが冷却する際に予想される変化の特徴と調和的である。そこで熱力学モデルを用い、観察される鉱物化学組成の特徴を再現するような、マグマの含水量条件を検討した。その結果、例えばマグマ溜まりの圧力が200 MPaであれば、マグマの含水量は約5 wt.%であることが分かった。このことから、初生マグマも水に富んでいたと考えられる。
  • 石井 輝秋
    セッションID: T6-08
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
    会議録・要旨集 フリー
    久野久先生は箱根火山の野外地質調査および岩石学的研究(輝石を主とする構成鉱物の研究及び全岩化学組成分析)により、その発達史を以下の三期に区分された。つまり第一期:古期外輪山溶岩(ソレアイト質)、第二期:新期外輪山溶岩(ソレアイト質)、第三期:中央火口丘溶岩(=CC:カルクアルカリ質)である。尚、第三期のCCは長井・高橋(2008)のステージ7の後期中央火口丘に相当する。此処では主にCCに就いて考察を行う。輝石地質温度計により各ステージでの輝石晶出温度、つまりマグマの温度を見積り以下の作業仮説を提案する。第一期及び第二期のソレアイト質溶岩および、第三期の中央火口丘溶岩は、いずれも、やや水に富む島弧ソレアイト質マグマが、前者は水に関して開いた系での、後者は閉じた系での、結晶分化作用により形成された。此れは他の島弧火山にもあてはまる。
  • 澁江 靖弘
    セッションID: T6-09
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
    会議録・要旨集 フリー
     地熱熱水系や堆積盆内での水溶液の移動を考察したり温度変化を考察したりする場合に,その熱的性質に関する知見が必要になる。多くの場合は純水の性質で近似できるが,塩分濃度が高くなると近似できなくなる。塩化ナトリウム水溶液の熱的性質に関する報告は多く,多くの計算式が提案されている。しかしながら,水溶液中に溶解している塩化カルシウムの熱的性質への影響に関しては知見が不十分であり,計算式の提案も多くはない。  演者はHolmes達が与えた式(Holmes et al., 1994, 1997)を修正して,250℃,40MPa,4 mol/kgまでの温度・圧力・濃度条件における塩化カルシウム水溶液の定圧熱容量を計算する式をもとめた。
  • 奥村 聡, 中村 美千彦, 上杉 健太朗, 中野 司
    セッションID: T6-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
    会議録・要旨集 フリー
    火山の噴火様式や爆発性を制御するメカニズムの一つは,マグマからのガス分離(脱ガス)である.脱ガスのメカニズムとしては,流動に伴うマグマの脆性破壊で形成された亀裂を利用した浸透流的なガス移動や,気泡同士が連結して形成された気泡ネットワークを利用したガス移動が考えられている.脆性破壊に伴うガス移動は,効率的な脱ガスを引き起こすと考えられているが,破壊条件やそれに伴うガス移動の効率は詳しく制約されていない.本研究は独自に構築したマグマの流動を直接観察できるシステムを利用して,マグマの脆性破壊とそれに伴うガス移動を直接観察することを目的とした. 実験はSPring-8(BL20B2)に設置された高温高圧変形その場観察実験装置を用いて行い,マグマの流動をX線ラジオグラフィーとX線CTを用いて観察した.実験は,流紋岩メルトと数十vol%の気泡を含む流紋岩マグマを出発物質として用いて,850℃程度の温度,0.5rpmの回転速度で行った.気泡を含まないマグマは回転直後に脆性破壊し,発泡したマグマでは1回転以内に明らかな脆性破壊が発生した.破壊に伴って変形は破壊領域に集中し,脱ガスが進行した.本実験の条件は火道浅部を再現しており,珪長質なマグマは浅部で脆性破壊を起こし,その結果効率的な脱ガスを起こす可能性が示唆される.
  • 大場 武
    セッションID: T6-11
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
    会議録・要旨集 フリー
    一般的にマグマ性ガスはマグマから放出された後に,地下水と混合し,熱水と蒸気を発生する.その蒸気が地表に現れたものが噴気であると考えられる.このモデルでは,噴気のCO2/H2O比とH2OのD/H比,18O/16O比を相関させ,マグマ性ガスの最適なCO2/H2O比を推定することが可能である.CO2/H2O比の高い火山としては,最近のエトナ山,1986年噴火後の伊豆大島が挙げられ,値は0.03を越えている.草津白根山,アトサヌプリ,箱根山など静穏な火山でCO2/H2O比は0.006程度と低い.1994年の新燃岳噴気データを再解析したところ,CO2/H2O比は0.03と高く,2011年噴火の準備段階にあったと推定される.
  • 佐藤 桂, Ellis David, J., Christy Andrew, G.
    セッションID: T6-P01
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/03/28
    会議録・要旨集 フリー
    Mount Dromedaryプルトンの閃長岩とモンゾニ岩が、新たに行なったLA-ICP-MS分析と公表されている全岩組成のデータを用いて研究された。本研究の目的は、放射性鉱物と珪酸塩鉱物における微量元素と希土類元素の分配関係、および結晶分化作用を明らかにする事である。オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の東海岸のDromedary火成岩体は、ラクラン褶曲帯の東の縁辺部に位置する。このプルトンは、組成・構造的に区別された同心円状のゾーン(外側のリングの苦鉄質モンゾニ岩、中間領域、中心部の珪長質閃長岩)によって特徴付けられる。スフェーンや燐灰石は一般的な副成分鉱物である。本研究の結果、モナズ石、アラナイト、ジルコンと同様に、スフェーンや燐灰石も全岩におけるトリウムやウランの分配関係を制御し得ることが示された。
T7:モンゴルおよび北東アジアの岩石鉱物資源
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