熱傷
Online ISSN : 2435-1571
Print ISSN : 0285-113X
48 巻, 2 号
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症例
  • 石川 早紀, 加藤 敬
    2022 年48 巻2 号 p. 42-46
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー
     上下口唇の広範な瘢痕拘縮の再建は植皮が有用だが,移植片の固定に難渋し再建後も拘縮による機能障害が問題となる例がみられる.今回われわれは,上下口唇の瘢痕拘縮に対し,ワイヤーフレーム外固定法を用いて人工真皮移植と二期的に全層植皮を行った症例を経験したため報告する.
     症例は39歳,男性,顔面熱傷を受傷し上下口唇は保存的治療を行うも瘢痕が肥厚し外鼻孔の狭窄と醜状障害を認めたため瘢痕切除と人工真皮移植を行った.人工真皮移植はワイヤーフレーム外固定法を用いて完全生着し,真皮様組織の構築後に再度ワイヤーフレーム外固定法にて全層植皮を行い完全生着した.術後1年経過し皮膚の再拘縮を認めず,機能的・整容的に良好な結果が得られた.
     ワイヤーフレーム外固定法は自由縁での固定性がよいため移植片の生着率が高く,術後管理も比較的容易であり,人工真皮移植とその後の全層植皮に用いることで術後の皮膚収縮の予防に有用であると考えられた.
  • 木村 知己, 山本 康弘
    2022 年48 巻2 号 p. 47-51
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー
     石灰硫黄合剤は果樹の殺虫,殺菌に使用される強アルカリの農薬である.今回われわれは,石灰硫黄合剤による化学熱傷を3例経験した.いずれも農作業中に石灰硫黄合剤が四肢に付着し,数時間で乳白色痂皮が固着.除去困難となり早期の外科的デブリードマンを行った.深達性潰瘍となり,二期的に分層植皮術を要した.
     石灰硫黄合剤による化学熱傷では,受傷後2~3時間で特有の乳白色痂皮を形成し,外観上は深達度が判定しにくい.さらに薬液付着部に機械的刺激や摩擦が加わると,深達化しやすいという特徴をもつ.乳白色痂皮が残存する限り,組織を傷害し,潰瘍が深達化する可能性があるため,可及的早期にデブリードマンを行うことが重要である.そして石灰硫黄合剤の危険性,防護の徹底,受傷後の洗浄と早期の医療機関受診などを使用者に啓発するとともに,われわれ医療者側もこの化学熱傷に対する認識を高めるべきである.
  • 新美 雄大, 熊澤 憲一, 助川 裕和, 岩川 さおり, 柏木 慎也, 根本 充, 服部 潤, 丸橋 孝昭, 浅利 靖, 武田 啓
    2022 年48 巻2 号 p. 52-58
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー
     症例は89歳,女性.着衣着火で熱傷を受傷,当院に搬送された.顔面,頸部,胸腹部,両上肢に29%TBSA(total body surface area)のⅢ度熱傷と診断した.
     第2病日に右上腕コンパートメント症候群を疑い減張切開術を施行した.第3病日,胸部コンパートメント症候群と診断し減張切開術およびデブリードマンを行った.第11病日に血液検査で炎症所見の増悪を認め,腹部造影CT検査を施行,壊疽性胆嚢炎と診断し,熱傷創から開腹胆嚢摘出術を施行した.第15病日に腹部正中切開創を含めて分層植皮術を施行し全生着した.術後熱傷創の経過は良好であったが,第47病日に非閉塞性腸管虚血を合併し死亡した.
     熱傷治療中の合併症に対し手術が必要な症例がある.感染リスクの高い熱傷創を術野にすることは回避したいが,広範囲熱傷では避けられないこともある.自験例は術後も手術部位感染を認めず,治療を継続できた.適切に管理された熱傷症例では,熱傷創からの開腹手術も選択肢となりえる.
看護
  • 牧野 夏子, 村中 沙織
    2022 年48 巻2 号 p. 59-68
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は高度救命救急センターに勤務する看護師が捉えた重症熱傷患者の看護援助と困難を明らかにすることである.
     A病院高度救命救急センターの看護師6名を対象に,フォーカス・グループインタビュー(以下FGI)を行った.FGIは重症熱傷患者の看護援助とその困難で構成した.分析は重症熱傷患者の看護援助とその困難について抽出し要約後,テキストマイニング(KH Corder,2012)を用いて上位頻出語,階層的クラスター分析を行った.
     テキストマイニングの上位頻出語は,看護援助は「患者」47が最も多く,「家族」36,「処置」25と続き,困難は「患者」46が最も多く,「熱傷」36,「難しい」28と続いた.階層的クラスター分析の結果から,看護援助は【経験を活かした医師への被覆方法の提案】,【熱傷創の変化や痛みの範囲を基にした熱傷部の異常の予測】,【リハビリテーションと安静の程度の見定めとケアの必要性の判断】,【終末期における見た目を考慮した創処置の実施】,【熱傷部位や全身状態を考慮した家族への対応】,【観察と記録を基にした創管理の工夫】が,困難は【患者自身の姿と対面するタイミング】,【不十分なルート固定の管理】,【必要な鎮痛鎮静の調整】,【患者状態が変動しやすい急性期における家族アプローチ】,【便汚染によるガーゼ対応の大変さ】,【長期治療による患者のボディイメージへの精神的ケアに対する知識不足からくる陰性感情】,【熱傷患者の搬入準備や処置経験と重症熱傷の創や合併症へのケア経験蓄積の必要性】が生成された.
     以上より,重症熱傷患者の看護援助には熱傷診療ガイドラインをふまえた看護展開と看護援助の質の維持を目的とした熱傷創管理や患者と家族への直接ケアの充実を図るために,一連の熱傷患者の回復過程を含めた経験知の集積と研究の蓄積が必要であると示唆された.また,困難解決に向けたリソースの活用や医療者の連携等を含めた教育プログラムの構築が有用と考える.
地方会抄録
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