熱傷
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原著
  • 白井 邦博, 小林 智行, 石川 倫子, 佐藤 聖子, 長谷川 佳奈, 平田 淳一
    2024 年 50 巻 3 号 p. 80-87
    発行日: 2024/09/15
    公開日: 2024/09/15
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     【目的】熱傷は感染性合併症が高率であり, 予後に影響する. 今回, 当施設の感染性合併症の特徴や, 重症度のうち感染に関連する危険因子について検討した.
     【方法】7日以上入院した症例のうち, 入院48時間以降に発症した感染性合併症について後方視的に検討した.
     【結果】入院136例中, 対象は感染群35例と非感染群28例で, 患者背景に差はなかった. Total body surface area (以下TBSA) , burn index (以下BI) , prognostic BI, APACHEⅡスコアは感染群が非感染群に比して有意に高く, 熱傷の重症度を示すスコア (TBSA, BI) のうち最も感染と関連する因子はTBSA (OR=1.242; 95%CI, 1.019 - 1.589; p=0.0482) であった. 入院48時間以内の経腸栄養/経口摂取施行率は感染群で低率であり, 昇圧薬使用率, 腎代替療法施行率, 人工呼吸器装着率は感染群で有意に高率であった. また, 手術施行率も感染群で高率であり, 中心静脈カテーテル (central venous catheter : 以下CVC) 総留置期間は感染群で有意に長かった. 院内死亡率は, 感染群 (17.1%) が非感染群 (0%) に比して有意に高率であった. 入院から1週目, 2~3週目, 4週目以降の各病期の感染部位は創部が最多であったが4週目以降に減少し, 2週目以降はCVCや他部位の感染が増加する傾向であった. 起炎菌は1週目まではmethicillin-susceptible staphylococcus aureusなどグラム陽性菌が多く, 2~3週目からPseudomonas aeruginosaなどグラム陰性桿菌がおもな起炎菌であり, 4週目以降でCandida sp. が増加した.
     【結語】熱傷の感染性合併症は集中治療が早期に行われる重症例が多く, 熱傷の重症度を示すスコア (TBSA, BI) のうち, TBSAが最も関連する因子であった. 感染管理として, 感染部位や起炎菌は病期で変化することを考慮する.

  • 羽石 豊, 森 隆裕, 渡邉 亮典, 加藤 敬
    2024 年 50 巻 3 号 p. 88-95
    発行日: 2024/09/15
    公開日: 2024/09/15
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     【はじめに】深達性Ⅱ度熱傷の治療において, 保存的治療と外科的治療の選択は治療担当医師の裁量に任される面が大きく, 受傷後早期に方針決定を行うことは困難である. 今回, 臨床所見より熱傷創部における壊死表層の中に点状に存在する紅斑を測定し評価することで, 治療方針の一助になりうる徴候を確認したので報告する. われわれは, この熱傷創部における壊死表層の中に点状に存在する紅斑をレッドポイントと定義した.
     【方法】創部内のレッドポイント数を測定し,1cm2あたりの平均値を算出する. 創面の経過を観察し, レッドポイントの個数による初診時から上皮化までの日数および手術の有無を評価, 考察する.
     【対象】対象は, 2022年7月から2023年6月までの1年間にJCHO中京病院形成外科の外来に来院した熱傷の患者61名で, 追跡期間は上皮化までとした.
      【結果】レッドポイント数と上皮化までの日数の相関を調査した結果, 相関係数はr=-0.47となり, 負の相関が認められた (回帰係数=-1.98) (小数第3位で四捨五入). また, レッドポイント数と手術の有無の関係性を調査した結果, レッドポイント数の平均値は手術あり群で2.06個, 手術なし群で6.37個となった. P値は0.0023となり, 有意差を認めた. 標準誤差は手術あり群で0.82, 手術なし群で0.52となった (P値は小数第5位, それ以外は小数第3位で四捨五入).
     【考察】レッドポイント数が多いほど上皮化までの日数が早い傾向が認められた. また, 手術あり群と手術なし群の間でレッドポイント数に有意差を認めた. ROC解析により, AUCは0.87 (95%信頼区間 0.77 - 0.97) (少数第3位を四捨五入) となり, カットオフ値は3.40となった. レッドポイント数が3個以下であれば手術にいたる可能性が高く, レッドポイント数が4個以上であれば保存的に治癒可能である可能性が高いことが示唆された. 今後, 症例数を増やし, 測定者や年齢, 受傷機転などによる影響や病理学的評価などを進めていく必要がある.

  • 森田 尚樹, 濱田 尚一郎, 中野 友継, 大田原 正幸
    2024 年 50 巻 3 号 p. 96-108
    発行日: 2024/09/15
    公開日: 2024/09/15
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     【目的】ネキソブリッド®は熱傷創面に対する化学的デブリードマン製剤として本邦では2023年8月1日に発売された. われわれは当院でネキソブリッド®を使用した症例の熱傷創面の変化からその後の治療経過を検討した.
      【方法】当院を2023年8月1日より2024年1月31日までの6ヵ月間に受診しdeep dermal burn (以下DDB) ~ deep burn (以下DB) と診断されネキソブリッド®を使用した症例の画像記録と治療経過をretrospectiveに検討した.
     【結果】計14症例のDDB~DB 計23部位が対象であった. 14部位は保存的に創閉鎖を認め, 9部位は外科的処置を要した. 画像記録より創面の色調を検討し, その変化から1. 赤色 (ピンク色) , 2. 白色,3. 暗赤色, 4. 脂肪露出の4つの大分類と, 3. 暗赤色はその後の変化で3つに小分類することでその後の治療経過をある程度予想できることが分かった. 具体的には, 1. 赤色症例は保存的治療により比較的早期の上皮化が期待できる. 2. 白色症例は時間を要するが, 保存的治療にて上皮化が期待できる. 3. 暗赤色症例はさらに①白色に変化, ②網目様の白色創面に毛穴様の赤色点を形成, ③壊死を認める症例に分かれ, 外科的治療の検討も必要であり, 4. 脂肪露出症例は植皮術を前提とする必要があった.
     【考察】本邦より先に発売された欧州ではEuropean consensus Guidelines (2017, 2020) (以下Guidelines) が発表され, 使用方法, 適応, 使用時の鎮静方法等が記載されておりネキソブリッド®施行後の創面の変化も大きく4つに分類され, その後の経過も示されている1, 2). 本報告ではGuidelinesと比較し大きく4つに分類される点と, 1. 赤色, 2. 白色, 4. 脂肪露出はGuidelinesと類似するが, 3. 暗赤色症例に該当すると思われる3. Large diameter red circle or oval patternsは明らかに異なった変化を示している. 本報告では3. 暗赤色症例の変化をさらに3つに小分類することで, より繊細な治療方針の策定が行えると考えている. しかし症例数が少なく, 今後複数施設でさらに症例数を重ね, 検証する必要があると考える.

症例
  • 三山 彩, 石井 暢明, 米盛 弘信, 有松 宏之, 石黑 昂, 秋元 正宇
    2024 年 50 巻 3 号 p. 109-115
    発行日: 2024/09/15
    公開日: 2024/09/15
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     【諸言】今回われわれは, IHクッキングヒーター (以下IH調理器) 使用時に受傷した顔面Ⅲ度熱傷の症例を経験した. IH調理器の残留熱変化の実験結果を交えて報告する.
     【症例】78歳, 女性. IH調理器を用いた調理中に意識を消失し, 顔面Ⅲ度熱傷と左手部深達性Ⅱ度熱傷を受傷した. 受傷後13日目にデブリードマンと皮弁・植皮術を施行した. 受傷後27日目と62日目に追加手術を施行した.
     【実験方法】室温25度の条件下で, フライパンに水を入れ, IH調理器で沸騰状態を5分間維持してからフライパンを移動させ, サーモグラフィを用いてトッププレートの温度を計測した. 計測は, トッププレートの最高温度が35℃以下に下がるまで2分おきに行った.
     【結果】トッププレートの残留熱の最高温度が35℃になるまでに44分を要した.
     【考察】IH調理器のトッププレートは温まったフライパンからの熱伝導で結果的に高温となっているため注意が必要である.

  • 金原 由季, 大島 純弥, 井上 貴昭, 小貫 ひかり, 佐々木 薫, 関堂 充
    2024 年 50 巻 3 号 p. 116-122
    発行日: 2024/09/15
    公開日: 2024/09/15
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     深達性Ⅱ度, Ⅲ度の手背熱傷においては, 正常組織への侵襲や伸筋腱, 骨, 関節包の露出が懸念され, 外科的デブリードマンに難渋する. 近年, 蛋白分解酵素含有外用製剤であるネキソブリッド®が本邦で承認され, 壊死組織の選択的除去を可能にした. 今回われわれは, 異なる背景の3例6手の手背熱傷に対して非外科的デブリードマンとしてネキソブリッド®を用いた. その結果, 低侵襲かつ簡便なデブリードマンが可能となった. 加えて全身熱傷合併例でも受傷後42~90時間と過去の報告にくらべ大幅な早期治療介入が可能となった. また, 手術室を使用せず, ベッドサイドでのデブリードマンが可能なことも利点の一つと考える. ネキソブリッド®の使用効果を最大限にするためには, 使用方法において工夫と経験が必要とされる. ネキソブリッド®施行後の治療方針は個々の症例で背景を考慮しながら依然検討の余地があり, 今後も症例蓄積の必要性がある.

  • 吉田 大作, 天願 翔太, 石井 美里, 信國 里沙, 吉牟田 浩一郎
    2024 年 50 巻 3 号 p. 123-126
    発行日: 2024/09/15
    公開日: 2024/09/15
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     化学的壊死組織除去剤 (ネキソブリッド®) によるデブリードマン後に植皮を要する場合, 残存真皮の壊死進行の可能性があるため本剤使用後2日以上経過したのちに植皮することが推奨されているが, 同日に植皮して完全生着を得た1症例を経験したので報告する. 症例は88歳, 女性, 仏壇のロウソクによる着衣着火で受傷, 右下腿に2%TBSAを認めた. 受傷13日目にネキソブリッド®によるデブリードマン, その後Hydrosurgery system (VERSAJETTMⅡ) によるデブリードマンを追加したのちに植皮し完全生着を得た. 今回われわれが行った同日植皮で, 必ずしも2日以上経過したのちに植皮する必要はないことが示唆され, ネキソブリッド®による治療戦略の選択肢になると考える.

  • -6倍網状植皮との併用で生着率を上げるための工夫-
    森山 宇蘭, 箱崎 茉衣, 川嶋 邦裕, 松田 識郁, 舟山 恵美, 提嶋 久子, 堀内 勝己
    2024 年 50 巻 3 号 p. 127-133
    発行日: 2024/09/15
    公開日: 2024/09/15
    ジャーナル 認証あり

     RECELL® (コスモテック, 日本/AVITA Medical, USA) は表皮~真皮に含まれる非培養性の自家細胞を含む細胞スプレーキットであり, 2022年から臨床使用が可能となった. 従来の標準的な植皮術にくらべてより少ない採皮面積で同等の治療効果を得られる点, 自家培養表皮にくらべ待機時間がない点などにより, 熱傷の新たな治療として注目されつつある. 使用方法としてはRECELL®単独で使用する方法と自家植皮と併用する方法の2つがある.今回われわれは, RECELL®と6倍網状植皮を併用し治療した広範囲熱傷を2例経験した. 文献的に併用する自家皮膚の網状倍率に関しては詳細な報告はないが, 6倍網状植皮で良好な結果を得た. 症例1では背部の一部で過度な湿潤環境に起因する生着率の低下が観察された. それを改善するため症例2では, ドライサイドでの滲出液の管理, 網状植皮の固定の強化によるずれの予防などの工夫を行い十分な生着率が得られた.

看護
  • 牧野 夏子, 村中 沙織, 佐々木 洋哉, 阿部 晴日
    2024 年 50 巻 3 号 p. 134-144
    発行日: 2024/09/15
    公開日: 2024/09/15
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     【目的】本研究の目的は, 熱傷患者の受傷から退院後適応期における体験について明らかにすることである.
     【方法】熱傷患者10名を対象に基本属性および受傷から現在までの体験を中心としたインタビューガイドを用いて半構造化面接を行った. 分析は, 質的帰納的に個別分析と全体分析を行い生成されたカテゴリーは療養環境が変化する4つの時期に分類した.
     【結果】受傷から救命救急センター搬送までの時期は【受傷時の初期対応と状況からの危機の察知】【受傷時の衝撃とその後の記憶の曖昧さ】などの4カテゴリー, 救命救急センター入院中の時期は【熱傷創処置に伴う不快感と疼痛】【創傷治癒のための栄養補給の必要性と苦痛症状により経口摂取が進まない困難】などの9カテゴリー, 形成外科入院中の時期は【創傷治癒の実感と受傷した皮膚は元には戻らないという懸念】【痛みや瘢痕化に対応しながらの日常生活行動再獲得に向けたリハビリテーションへの取り組み】などの7カテゴリー, 退院後適応期の時期は【回復後に明確となった身体残存機能との共存】【熱傷受傷体験後の社会生活への影響】などの6カテゴリーが生成された.
     【考察】熱傷患者の体験は, 熱傷の受傷という衝撃的な出来事から治癒過程のなかで身体的, 精神的苦痛を実感し, 回復に必要な日常生活への援助にさまざまな思いを抱えつつ折り合いをつけながら過ごしていた. 療養環境によって熱傷患者の体験には特徴があり, 熱傷患者の看護は患者の体験を踏まえて発現する課題を考慮し, 熱傷の受傷によって生じた変化に対応した生活の再構築と適応への支援の継続が必要であると示唆された.
     【結論】熱傷患者の受傷から退院後適応期における体験は, 熱傷の受傷から治癒過程を経るなかで変化していることが明らかになった.

研究速報
  • 池田 弘人, 青木 大, 伊東  大, 織田 順, 片平 次郎, 久志本 成樹, 島田 賢一, 鳴海 篤志, 福島 英賢, 松村  一, 田 ...
    2024 年 50 巻 3 号 p. 145-149
    発行日: 2024/09/15
    公開日: 2024/09/15
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     【目的】広範囲重症熱傷に対する凍結同種皮膚移植術は患者の救命治療に有用である. 一般社団法人日本スキンバンクネットワークは凍結同種皮膚を保存・供給する本邦で唯一の組織バンクであり, 全国80の熱傷治療施設のネットワークを構築している. 本研究では, 全国のいかなる施設においても凍結同種皮膚を一定の超低温で搬送し, 移植にいたるまで安全かつviabilityの高い皮膚を供給できるか, 搬送用タンク (以下ドライシッパー) 内の温度をモニタリングし, 距離・搬送時間・季節等の影響について検討した.
     【方法】液体窒素を充填したドライシッパーに温度記録センサーを取り付け, サンプルを搬送し, タンクが返送されるまでの温度変化を記録した. 搬送地域は沖縄・九州・四国・東海・関東・東北・北海道の7ヵ所とし, 期間① (2019年12月~2020年3月) と期間② (2020年9月~11月) の2回のテスト搬送を実施した.
     【結果】庫外温度の変動幅は, 地域的, 季節性により最大14.2℃ (夏季:沖縄県), 25.0℃ (冬季:北海道) となっており, 搬送中の外気温や施設内気温などの差によるものと考えられるが, 庫内温度は, それらの地域的, 季節性の影響なく, 平均-194.8~-196.1℃に保持されていた.
     【結論】調査したどの地域においても季節地域差などの影響はほとんどなく, 質を保ったままの搬送が確認できた. 現状の搬送方法で問題なく凍結保存皮膚を届けられると判断できる.

地方会抄録
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