【目的】広範囲熱傷において, 効率的に採皮するための工夫 (以下, ガーゼ法) について報告する.
【方法】術前に1辺約15cmの正方形のガーゼを生理食塩水に浸漬して創部に貼付し, 使用した枚数から潰瘍面積 (S
raw), および1.5倍・3倍メッシュ加工した植皮を予定する部位の面積 (S
1.5・S
3) を算出した (S
raw=S
1.5+S
3). 得られた数値にメッシュ加工倍率の逆数 (1.5倍なら2/3, 3倍なら1/3) を掛け, 予定採皮面積 (eS
g) を計算した (eS
g=S
1.5×2/3+S
3×1/3). 手術に際し, 実際に採皮された分層植皮片の面積 (rS
g) を計測し, eS
gと比較した.
【結果】6患者 (平均年齢69.9歳, TBSA 23.8%) に対し, 合計8回の手術でガーゼ法を施行した. いずれの場合も腋窩や膝窩など, 関節面を含む立体的に複雑な部位に対して用いた. 各項目の平均値は, S
raw 1177.0 cm², eS
g 558.8cm², rS
g 571.3cm²であり, eS
gとrS
gの間に統計学的な有意差は認められなかった (
p=0.62, paired
t test). 平均手術時間は197.0分で, 全例でデブリードマンと採皮が並行して行われたが, 同一術中に追加採皮を要した症例はなかった.
【考察】ガーゼ法の利点として, ①特殊な器具は不要であり手技も容易であること, ②用いたガーゼの枚数により面積を数値化できること, ③腋窩など立体的に複雑な部位でも正確な計測が可能であること, があげられた. また, 追加の採皮を要しなかった結果, 採皮創のコンタミネーション予防や手術時間の短縮に繋がるなどの有益性も示唆された.
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