日本ヒューマンケア科学会誌
Online ISSN : 2436-0309
Print ISSN : 1882-6962
16 巻, 2 号
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研究報告
  • ~被災当初と復興期における見地から~
    坪井ふみ子 , 宮野 公惠, 柏葉 英美, 齋藤 史彦, 藤井 博英
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 16 巻 2 号 p. 1-11
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー

    目的:東日本大震災による津波を経験した統合失調症患者を抱える被災家族にもたらされる困難について被災当初と復興期の観点から明らかにする。

    方法:研究対象者4名に半構造化面接を実施、Krippendorffの内容分析を行った。

    結果:被災当初は【困難な居場所探し】【周囲への後ろめたさ】【精神症状との対峙】【差別・偏見による不当な扱い】【重荷となる患者の世話】【苦しい家計状況】の6つ、復興期は【持続する症状悪化への懸念】【自立できない患者を抱える苦悩】【自らの老いや病・苦境がもたらす重苦】【周囲との疎隔】【苦しい家計状況】【活用可能な社会資源の不足】【落ち着かない仮住まい生活】の7つのカテゴリが導出された。

    結論:被災当初は居場所の確保など喫緊の生活問題、復興期は患者の自律など将来を苦慮していた。被災前の苦悩と被災後の環境変化を考慮し普段から顔の見える関係や個々に合わせた継続支援が必要である。

  • 谷川 涼子, 古川 照美, 日景 静香, 清水 亮
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 16 巻 2 号 p. 12-24
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/21
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は地域で活動している保健推進員(CHVs)と同じ地域に在住する住民のソーシャルキャピタル(Social Capital:以下SC)と近隣の地域環境の質の特徴を把握し、健康な地域づくりを増進するための示唆を得ることである。

    【方法】2020年A県B市に在住し地域で活動しているCHVsと中学1~3年生の保護者(以下、一般住民)に対して調査を実施した。調査内容は属性、社会的環境として健康関連ソーシャルキャピタル指標、地域環境の質を測定する尺度を参考にした。分析方法は、SCと地域環境の質についてSpearmanの順位相関係数を算出し検討した。

    【結果】SCの「市民参加」は有意にCHVsが高かった。地域環境の質はCHVsが「利便性と施設・サービスの充実」、「近隣の人間関係の結束」が有意に高かった。SCと地域環境の質では、一般住民はSCの「市民参加」と「近隣の人間関係の結束」、「社会的凝集性」と「利便性と施設・サービスの充実」、「近隣の人間関係の結束」、「憩いやスペースの場」、「自発的な地域活動」において弱い相関がみられた。CHVsはSCの「社会的凝集性」と「近隣の人間関係の結束」、「憩いやスペースの場」、「互酬性」と「美観と静謐さ」が中等度から弱い相関がみられた。

    【結論】健康的な地域づくりを増進するために、同じ地域で生活している一般住民とCHVsにおいてSCと地域環境の質について調査した。その結果、誰でも参加することができる場づくりなど地域の環境を整備することがSCの向上につながる可能性が示唆された。

資料
  • 橋本 こころ, 山田 千春, 末安 明美, 細見 明代
    原稿種別: 資料
    2023 年 16 巻 2 号 p. 25-33
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/16
    ジャーナル フリー

    目的:e-learningと学内実習を組み合わせたブレンド型の看護学実習を受けた学生の経験を明らかにし、効果的な実習を行う上での課題を検討する。

    方法:看護系大学4年生8名を対象に半構造化面接を行い、カテゴリ化した。

    結果:ブレンド型の実習に取り組んだ経験は、【学習ツールの組み合わせにより効果的な学びにつながる】【新しい学習方式の中で自分なりに工夫して学ぶ】【e-learningを用いた実習方法に戸惑う】【e-learningでは目の前に相手がいないので行動することが難しい】等の10カテゴリが示された。

    結論:ブレンド型の実習により、学生は不慣れな状況下で難しさや戸惑いを感じながらもこれまでの経験を生かしながら学びを深化させていた。課題は、学生のレディネスに応じてe-learningや学内実習の組み合わせを工夫することや、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、教材の工夫や学生の心身への影響を配慮し、他学生や教員とつながりが感じられる学習環境の調整が重要となる。

  • 山本 春江, 一戸 とも子, 大串 靖子, 木村 紀美, 菊池 美智子, 太田 尚子
    原稿種別: 資料
    2023 年 16 巻 2 号 p. 34-53
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/22
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、1952年、青森県立青森高等看護学院がナイチンゲール方式による看護教育施設として誕生した経緯と教育内容を明らかにすることである。学院閉院時及び青森県庁舎移転に伴い処分対象となり筆者に届けられた学院創設に関する文書・資料、公刊あるいは発表された著書および学院創設に関する文献を分析考察した。

    戦後、花田ミキ(1914~2006)は、GHQのオルト大尉を通してナイチンゲール方式による看護教育を知った。日本看護協会青森県支部長であった花田は支部をあげて、「病院の付属ではなく、実習病院から金銭的な恵与は一切受けない、独立した看護教育施設」をめざして、陳情・請願運動をはじめた。それを願ったのには徒弟制度ともいえる教育や病院の人手不足を補うような実習を後輩に経験させたくないという思いがあった。また、「看護という職業が、技術、知識も低く、社会的にも低俗な職業として見られ、あまりに遅れていることは、多くの社会の人たちにとって不幸なことである」、つまり、看護教育は社会の問題であると捉えていたことにあった。花田の信念に基づく行動とそれに共感する人々の尽力によって、ナイチンゲール方式の学院誕生を成し得たことが示唆された。

原著
  • 新岡 大和, 対馬 栄輝
    原稿種別: 原著
    2023 年 16 巻 2 号 p. 54-60
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/21
    ジャーナル フリー

    通所リハビリテーション利用者を5年間追跡し、身体機能・心理状態・社会機能およびQuality of lifeの経年変化を明らかにすることを目的とした。追跡調査が可能であった者は58名(80.01±11.88歳、男性17名、女性41名)であった。下肢筋力、疼痛、移動能力、日常生活動作能力、抑うつ、生きがい感、ソーシャルネットワーク、健康関連QOL、主観的幸福感、基本情報を調査した。これらの変数のベースライン時とフォローアップ時の差を検討した。その結果、下肢筋力、ソーシャルネットワーク、認知機能(MMSE)、健康関連QOLの精神的健康が低下し、趣味を有するものが増えていた。一方、身体的・心理的・社会的要因およびQOLについて、フォローアップ時に向上したものはなかった。

資料
  • ―婦人科の受診と低用量経口避妊薬・低用量エストロゲン-プロゲスチン配合薬の内服継続までの変容ステージに着目して―
    玉熊 和子, 外 千夏, 葛西 敦子
    原稿種別: 資料
    2023 年 16 巻 2 号 p. 61-70
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    本研究は、月経異常の女性の支援についての示唆を得るために、OC・LEP内服歴のある女子大学生の受診・治療経緯について明らかにすることを目的とし、自記式質問紙にて調査した。分析対象者は14人であった。その結果、「前熟考期」「熟考期」「準備期」の各期間が長く婦人科受診まで時間を要しており、「熟考期・準備期」が5年未満・5年以上では受診経緯が異なっていた。OC・LEPの内服開始後(「実行期」)、3か月以内・3か月以降では内服中断要因が異なっていた。また、内服を長期継続できた理由として、「月経をセルフケアできていることへの満足」が挙げられていた。以上より、早期に婦人科を受診し、OC・LEP内服を長期に継続するためには、対象者の変容ステージを明確にし、次の変容ステージへ移行させるための支援が必要であることが示唆された。

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