日本ヒューマンケア科学会誌
Online ISSN : 2436-0309
Print ISSN : 1882-6962
2 巻, 1 号
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総説
原著論文
  • 其田 貴美枝, 石鍋 圭子, 川村 佐和子
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 2 巻 1 号 p. 5-17
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     研究目的は、疲の吸引に関する問題事例の要因を分析し看護職が行う予防策を検討することである。対象事例は、訪問看護職22名の面接調査から15例、厚生労働省が収集・公開した「医療安全対策ネットワーク整備事業 (ヒヤリ・ハット事例収集事業)」29,589例より痰の吸引関連28例 (0.09%)、痰の吸引を行っている訪問介護職26名の面接調査から33例、全76例を抽出し、RCA並びにP-mSHELLを参考に要因分析を行い分類整理した。結果、気道閉塞のリスク (以下リスクを省略) (43例、56.6%)、低酸素症 (13例、17.1%)、気道粘膜損傷 (9例、11.8%)、感染 (5例、6.6%)、身体損傷 (4例、5.3%)、中毒 (2例、2.6%) のリスクが発生していた。主要因は、吸引器材管理不十分23例、不適切な吸引手技19例、気道管理不十分15例、状態アセスメント不足12例、人工呼吸器管理不十分7例であった。看護職の役割は、痰の吸引に関する健康問題発生を予防するために吸引器材管理、気道管理、状態アセスメント、人工呼吸器管理、及び訪問介護職の痰の吸引技術支援を行う重要性が示唆された。

  • 新居 富士美, リボウィッツ よし子, 川村 佐和子
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 2 巻 1 号 p. 18-30
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     過疎地域における在宅認知症高齢者に対する家族介護者の対処行動からその適切性を判断し、適切対処行動ならびに不適切対処行動に関連する要因を明らかにすることを目的とした。Troublesome Behavior Scale (TBS) の項目を用いて認知症高齢者を介護している家族で同意を得た10名に半構成的面接を行った。結果、言葉で対処、常に注意を払う、環境を工夫する、閉じ込める、言葉以外で対処する、自尊心へ配慮する、不適切に薬を用いる、の対処行動を抽出した。不適切対処行動の関連要因は副介護者がいない、経済的困難や転居、退職、職業や勉学の継続困難だった。過疎地域では介護は家計に影響を与えており、介護問題の背景に過疎地域が抱える課題が影響していると推察される。その家庭の経済的困難を解決できるための介護者の時間的保障や家庭内副介護者に代替する支援、転居や退職など生活条件の変化に対する支援の必要性が示唆された。

研究報告
  • ―指導・育成能力と報告・連絡・情報共有能力に焦点を当てて―
    鄭 佳紅
    原稿種別: 研究報告
    2009 年 2 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     本研究は,「看護師の技能は,先輩看護師に由来するOJTにより高められる」ことを前提に,看護師の技能とその伝承について一般病棟の看護師の事例を通じて明らかにした。

     まず,看護師の技能について,〔患者・家族に対する直接看護能力〕と〔看護を支える能力〕に分類し,それぞれの技能とその段階について検討した。そして,〔看護を支える能力〕のうち,《個人としての力を支える能力》として〈指導・育成〉の技能を,《チームとしての力を支える能力》として〈報告・連絡・情報共有〉の技能に着目した。

     調査はナーススティション内における看護師間の言葉のやりとりを中心とした参加観察とインタビューである。

     結果,看護師の〈指導・育成〉技能および〈報告・連絡・情報共有〉技能のレベルは,実例により検証された。

     さらに,看護師の技能の伝承は,看護師間のかかわりの中に存在し,看護師は看護師間のかかわりによりその技能を向上させていることが明らかになった。

     今後,看護師の技能形成促進の為には,看護師間のかかわりによる技能伝承を再認識することが重要である。

  • ―家族機能とソーシャルサポートに焦点をあてて―
    梅田 弘子, 中村 由美子, 杉本 晃子, 赤羽 衣里子, 内城 絵美, 澁谷 泰秀
    原稿種別: 研究報告
    2009 年 2 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     本研究は、入院している子どもをもつ両親と養育期にある両親の自己効力感、QOL、家族機能を比較すること、子どもの入院に付き添う母親のソーシャルサポートについて分析することから、入院している子どもをもつ家族の特徴を明らかにし看護への示唆を得ることを目的とした。調査対象は、東北地方のC市にあるD病院小児科病棟に入院する患児の家族 (父親・母親) と東北地方A町の6歳以下 (就学前) の子どもをもつ養育期にある家族 (父親・母親) である。結果、次のことが明らかとなった。1) 入院している子どもをもつ家族は、養育期にある家族と比較して、『家族機能』の「コミュニケーション」を高めることで対処していることが推測され、この傾向は父親と子どもにきょうだいがいる場合に顕著であった。2) 子どもの入院に母親が付き添っている家族の場合、父親は家族内役割の変化を求められそれに対処しながら、母親のサポートも求められる状況にあることため、子どもの入院に伴う父親へのサポートの実際を明らかにし、援助していく必要がある。3) 子どもの入院に付き添う母親は、友人から普段と比べて情緒的サポートを有意に多く得ており、付き添う母親にとって友人からの情緒的サポートが重要な意昧を持つことが明らかとなった。

  • 杉本 晃子, 中村 由美子, 梅田 弘子, 赤羽 衣里子, 内城 絵美, 澁谷 泰秀
    原稿種別: 研究報告
    2009 年 2 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     A県の障がいをもつ子どもの家族の家族機能を評価してその特徴を明らかにし、障がいをもつ子どもの家族への看護に示唆を得ることを目的として、障がいをもつ18歳未満の子どもの両親を対象に、「自己効力感」「QOL」「家族機能」の測定尺度を用いた調査とソーシャルサポートについて調査を行った。その結果、障がいをもつ子どもの家族機能においては両親ともに家族の情緒的機能である「絆」が最も高く、重要な機能であることが明らかとなったが、『家族機能』の「役割分担」において健康児の母親に比べて、障がい児の母親が有意に低かったことから、障がい児の母親は健康児の母親よりも「役割分担」が十分でなく、障がい児の母親が家族の中で多重役割を担い、疲労していることが推測された。『QOL』における「収入」が著しく低く、その理由としてはA県県民の所得の低さに加え、障がい者自立支援法の施行に伴うサービス費用負担が、経済的負担をさらに重くしていると考えられた。ソーシャルサポートについては、障がいをもつ子どもの家族は、近隣住民や職場の人などからはあまりサポートを得られていない可能性が示唆され、親の会などのサポートグループに関する情報提供の工夫や、同じ病気や障がいをもつ子どもの親同士の交流の機会をもつなどの支援の必要性が示唆された。

  • 山田 典子, 山本 春江, リボウィッツ よし子
    原稿種別: 研究報告
    2009 年 2 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 2009年
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     法看護学に関連する文献やWeb資料,および,内閣府や民間シェルター等の刊行物で被害事例報告等を扱ったものより法看護学教育カリキュラムの構築をめざした.

     法看護学は,人々の健康に関与する法的な分野に看護ケアが介入することで,それに必要な看護の社会的役割を法律,社会学,法医学,犯罪学,精神医学,公衆衛生学等の様々な見地より検討し,その結果を看護実践モデルに統合するものである.

     法看護学は,人間とその行動を主たる研究のドメインとするがゆえに,学問として立脚する社会や文化によって,その社会的要請内容は異なることになる. 疾病や外傷は看護職が日常業務の対象とし,ケアを提供するきっかけとなるものである. 法看護学的アプローチにより,疾病・外傷の直接ならびに間接的原因について,故意・過失を含むあらゆる可能性を念頭に置いた検討を加える. このことにより,患者の擁護と,権利を一層的確に護り,質の高い看護ケアを提供できる.

     本研究の結果,大学等の研究教育機関において,人々の健康に関与する法的な分野における看護ケアの質を高めるためには,法看護学教育カリキュラムの構築が急がれ,それに基づき専門性の高い教育を提供できることが示唆された.

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