日本ヒューマンケア科学会誌
Online ISSN : 2436-0309
Print ISSN : 1882-6962
16 巻, 1 号
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事例報告
  • ―ナラティヴ分析による試み―
    岡本 佳奈, 石田 賢哉
    原稿種別: 事例報告
    2023 年 16 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/12
    ジャーナル フリー

    本研究は、ナラティヴ分析の枠組みを用いて、仕事や趣味等の社会的活動を行っている膠原病患者を対象に、病気と共に歩んできた人生の振り返りを通じて、膠原病患者の人生における病気の意味付けの変化と、そのような変化を起こしたきっかけを明らかにし、膠原病患者がその人生において、自身の病気をより肯定的に捉え、よりよく生活できるようになるための一助にすることを期待するものである。調査の協力者は、全国膠原病友の会A県支部に友の会とかかわりのある膠原病患者の紹介を依頼することでつながりを得た膠原病患者5名であった。

    本研究から、「病気を通して得た人生に対する気づき」「誰かの役に立ちたいという思い」という膠原病患者の人生における意味付けの変化と、「大事な人々の支えによる病気の肯定」「当事者同士の寄り添いによる病気の肯定」「自分らしさを支えてくれる存在による病気の肯定」「職場の配慮による負担の軽減」という意味付けの変化を起こしたきっかけが明らかにされた。

  • ―化粧プログラムに参加した女性と見学者へのインタビューを中心に―
    福田 瑞穂, 中川原 三枝子, 石田 賢哉
    原稿種別: 事例報告
    2023 年 16 巻 1 号 p. 16-29
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/17
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、化粧プログラムに参加した中高年期の女性(以下、参加者)とその身近な人物(以下、見学者)を対象に、化粧プログラムが参加者及び見学者に与えた心理的な影響を明らかにし、化粧プログラムの有用性の有無を検証することである。7名の50代以上の参加者と7名の見学者を研究対象者として、参加者と見学者への半構造化インタビュー及び観察を中心にデータ収集した。分析した結果、【前向きな気持ちへの変化】【化粧の満足感】【他者の存在の意識】【コンプレックスの解消】【試したことのない化粧への挑戦】【プログラムが展開する中でのリラクゼーション】【周囲の好意的な反応】の7つのカテゴリ―が抽出された。化粧プログラムは、参加者の心理に対して、化粧への意欲を高め、自分自身への関心を高めるといった肯定的な影響を与えるとともに、そのような影響は見学者にも連鎖していた。これらの結果から化粧プログラムの有用性が示された。

研究報告
  • ―保護者からのインタビューを通して―
    成田 榛名, 谷川 涼子, 尾崎 麻理, 石田 賢哉
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 16 巻 1 号 p. 30-46
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/17
    ジャーナル フリー

    医療的ケア児の療育経験がある保護者を対象に、医療的ケア児及び保護者への福祉支援体制の強化に向けて、保護者が経験した療育に関連する生活上の困難を把握し、福祉ニーズを明らかにすることが本研究の目的である。3~15歳の医療的ケア児5名の保護者6名(うち1組は両親)を対象に、インタビュー調査を実施し、質的帰納的な分析をおこなった。生活上の困難として【保護者同士のつながりの欠如】、【相談窓口での対応】、【退院時の対応】、【活用できる医療・福祉施設の少なさ】、【きょうだい児へのサポートの不足】の5カテゴリが抽出された。この結果から、保護者の有する福祉ニーズとして、適切なサービス利用と精神面のケアの充実を求めていること、保護者は医療的ケア児の入院生活から在宅生活への移行、保育施設へのスムーズな入所、きょうだい児への支援など、医療的ケア児の成長に応じた切れ目ない支援があった。医療的ケア児の在宅生活を支えるためには、医療的ケア児及び保護者を適切な制度、サービスにつなぎ、家族全体を把握して総合的に支援する医療的ケア児等コーディネーターが大いに期待される。

大会長報告
  • ―よりよいエンド・オブ・ライフのために―
    川口 徹
    原稿種別: 大会長報告
    2023 年 16 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/24
    ジャーナル フリー

    平成4年12月17日に青森県立保健大学で開催された、第15回日本ヒューマンケア科学学術集会において、「人生会議とヒューマンケア―よりよいエンド・オブ・ライフのために」という学術集会テーマで、学術集会とシンポジウムが開催された。青森県保健医療福祉研究発表会と合同開催となり、一般演題では口述発表者18名、ポスター発表者33名、一般参加者が129名であった。基調講演では、ACP研究における第一人者である佐久大学の島田千帆教授をお迎えして、「人生の最後を支えるためのアドバンスケアプランニング」という題で、アドバンスケアプランニング(advance care planning;以下ACP)の基本的な事柄をお教えいただいた。また、シンポジウムでは、ACPを実践している保健医療福祉関係者に加え、葬儀業者にもシンポジストに参加してもらい、さらに、基調講演をいただいた佐久大学の島田千帆教授を指定助言者としてお迎えし、議論を交わした。本シンポジウムにおいて、演壇においても、フロアにおいても、ACPの重要性をみんなで共有し、有意義な時間を得ることができた。筆者も、本大会長として、またシンポジウムの企画者として、ACPを考える良い機会を提供したと考えている。

    本稿は、今回の学術集会のテーマから、人生会議についての知見を増やして振り返り、整理してまとめ、若干の考察を行うものである。

シンポジウム報告
資料
  • ―国外文献レヴューを通して―
    福嶋 美貴
    原稿種別: 資料
    2023 年 16 巻 1 号 p. 55-64
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー

    目的:医療と福祉の実践における、ネガティブケイパビリティ(以降NC)に関する海外文献レヴューによりNCの概要を把握し、精神看護における適用可能性を明らかにする。

    方法:キーワードをnegative capabilityとし2022年7月時点の全期間の英文献をCINAHL completeとPubMedを用いて検索した。得られた論文10件とハンドサーチで2件の計12文献を採択した。

    結果:12文献の学問領域は、精神医学をはじめ7領域に及んだ。NCは個別性の極めて高い人生や生活に密着し、長期的過程が包含されていた。また、心の状態、姿勢、態度と様々な表現がなされるが、知的な理解を保留し、異なる見方、ありよう、状況への寛容性を中核にしている点は共通していた。

    考察:人生の過渡期における適応の危機に精神的問題が発生しやすく、NCを持ち、適切に発動する必要があることから、NCは精神看護に適用可能であることが示唆された。人を生涯発達し続ける存在として着目することで、さらなる知見の発見に至る可能性がある。

総説
  • ―Rodgersの概念分析法を用いて―
    久保 宣子, 角濱 春美
    原稿種別: 総説
    2023 年 16 巻 1 号 p. 65-74
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/07
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、看護学におけるcultural competenceの概念を明らかにし、文化背景が異なる人々に関わるために必要な能力を抽出することである。Rodgersの手法を用いて概念分析を行った。看護学におけるcultural competenceの概念は、【学習プロセス】を基盤に獲得できる能力であり、異文化の他者との【相互作用で異文化を認知する】なかで、【自他の文化を認知する】とし、【多様な背景に対して公正にふるまう】ことをし【違う文化を持つ人々に対する心のバリアの低さ】という態度を持ち、【ヘルスケアの実践を他の文化に提供できる】能力であると定義できた。先行要件は【個人の心理や経験が影響する】【変化する社会のニーズにこたえる】【民族的文化的背景の違い】【学ぶ機会を得る】が、帰結には【ヘルスケア提供者として成長する】【パートナーシップの構築できる】【医療の質が向上する】【共に存在する】【教育や研究が促進される】が抽出された。cultural competenceは固定された能力ではなく、学習により変動し、獲得できる能力であると示唆された。

研究報告
  • 山下 菜穂子, 中澤 明美
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 16 巻 1 号 p. 75-83
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/28
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は特別養護老人ホームに勤務する介護職員の排泄ケアの実態と排泄ケア時に抱く感情について明らかにすることである。関東圏にある特別養護老人ホーム3施設に勤務する介護職員13名を対象とした。対象者1名ごとに日勤帯と夜勤帯で関わった排泄ケアについて調査表への記載を依頼した。排泄ケアの実態については項目ごとに単純集計を行い、排泄ケア時に抱いた感情は質的帰納的に分析した。その結果、日勤帯(平均8時間)に排泄ケアを行った総人数は11人~30人、総ケア時間は平均110分であった。夜勤帯(平均10.8時間)に排泄ケアを行った総人数は34人~51人、総ケア時間は平均260分であった。排泄ケア時に抱いた感情は排泄ケアに関連した①嬉しい気持ち②気に掛ける、気遣う心③推測④再アセスメント⑤忌避感⑥介護技術を顧みる⑦勤務の願いの7項目が抽出された。

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