日本ヒューマンケア科学会誌
Online ISSN : 2436-0309
Print ISSN : 1882-6962
6 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 成田 博幸
    原稿種別: 原著
    2013 年 6 巻 2 号 p. 57-66
    発行日: 2013年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

     本研究は、思考過程混乱の看護診断に際して臨床内容妥当性検証の判断に影響を及ぼす看護師の要因を明らかにすることを目的とした。研究方法は、特定機能病院80施設に勤務する看護師960名を対象に郵送法による自記式質問紙調査を行い構造方程式モデリングで分析をした。回収されたのは226名であった。その結果、構成されたモデルの適合度はGFI=0.972、AGFI=0.947、CFI=0.996、RMSEA=0.027、AIC=85.928、P=0.242であった。本モデルにより臨床内容妥当性の判断に影響を及ぼす要因として、3つの要因が抽出された。第一の要因は、必要な情報の効率的な収集や解釈・識別するためのプロセスや診断上の可能性を高める、あるいは否定するための「知識」である。第二の要因は、過去の看護診断の手がかりについて絶えず反芻できるような日常的に看護診断の知識や技術を繰り返し使える「診断状況の背景」である。第三の要因は、看護診断に必要な認知能力や知覚能力、臨床事例に特異的な思考プロセスの発達に寄与できるような「経験」が抽出された。

研究報告
  • ~利用経験の浅い看護師の場合~
    村上 成明
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 6 巻 2 号 p. 67-76
    発行日: 2013年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

     クリテイカルパス(以下「パス」とする)の利用経験の浅い看護師にとってのパスの価値と機能を明らかにし,そこからパスの適切な理解を促進するための方策を考察した。7名の対象者への半構成的インタビューを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)で分析した結果,パスの利用経験の浅い看護師にとって,パスは医療の専門性が凝縮された結晶であり,弾力的で汎用性のある知識の集合体と理解されていた。ただし実際の経験の中で適切な理解が停滞するか進展するかは,①患者像の意識化,②専門性の表現,③揺らぎの理解,④多様な知識の融合,が関連していた。そして,その進展を促すためには,専門性志向から患者(家族)志向へ,職種構成志向から協働志向へシフトすることと,努めて会話し一緒にケアを行うこと,多様な知識の交錯と融合が起こるパスの作成・修正の場に参画することが有効との示唆を得た。

  • ~グループインタビューから導かれた施策化の課題~
    山田 典子, 山田 真司, 川内 規会
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 6 巻 2 号 p. 77-87
    発行日: 2013年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    〔目的〕:セーフコミュニティ(SC)認証に関わった市民ボランティアが,安全安心に暮らせるまちを目指し,行政との協働のもと外傷予防プログラムを展開してきた,その現状と施策化に向けての課題を明らかにする。

    〔方法〕:SC活動に関わった住民に,グループインタビューを実施した。逐語録から「SC活動の課題と必要な社会支援システム」に関する文脈を抽出しアイテムとした。これらのアイテムをプリシード・プロシードの因子にそって複合分析を行った。

    〔結果〕:対象者の年齢は49歳~72歳で,8名全員が女性であった。SC活動に参画した市民は,行政の外傷データに触れる機会が多く,外傷予防活動への動機づけがなされ,その活動を通して行政職員との繋がりが強化されていた。また,統計データに表れない外傷に関する地域の課題にも意識が向けられ外傷予防プログラムについてアイディアが提言された。

    〔考察〕:市民ボランティアを巻き込んだSC活動では,外傷データの背景にある原因に市民が興味を持ち,自分たちの問題として課題を共有し,行政とともに政策に取り組む意識や態度の形成が見られていた。SCの施策化の課題は,外傷データをわかりやすく市民に公開しSCに取り組む市民の意識の向上を図ること,および新しい市民ボランティアが参入しやすい環境整備であった。

  • 山田 典子
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 6 巻 2 号 p. 89-102
    発行日: 2013年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

     DV被害者支援を体験した看護職が直面した感情の分析を通じて,異和感の活用状況を明らかにすることが本研究の目的である。

     2005~2007年に看護職20名を対象に半構成的面接を実施し修正版グラウンデッド・セオリーを用い分析した。

     結果,DV被害者に対して看護職が抱く「なにかへんだなぁ」という感覚をもとに, DV被害が顕在化され,被害者の状態に見合った初期介入を図ろうとするが,自らの経験不足や医療スタッフの協力が得られず,看護ケアに対する理想と現実とのギャップが生じる。

     DV被害者が求める依存的,受動的な人間関係は,支援に携わる看護職のストレスとなる。こうした状況で,他の保健医療従事者からの批評や批判は看護職の異和感を刺激し内省を促していた。看護職の内省を活かすことで, DV被害者の発見や支援に役立ち,全医療スタッフがお互いの役割を尊重しチームが機能するよう,看護がなされることが示唆された。

feedback
Top