日本ヒューマンケア科学会誌
Online ISSN : 2436-0309
Print ISSN : 1882-6962
13 巻, 2 号
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事例報告
  • 成松 玉委, 柏葉 英美, 大山 一志, 宮野 公惠, 岸田 るみ, 齋藤 史彦, 藤井 博英
    原稿種別: 事例報告
    2020 年 13 巻 2 号 p. 1-7
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/11/22
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、運転免許の返納を強いられた高齢ドライバーの心理的動揺を明確にするものである。調査協力の受諾が得られた、75歳以上の運転免許の返納を強いられた男性3名にインタビュー調査をした結果、心理的動揺は、【外部の暗黙のプレッシャーによる怒り】、【生きがい喪失への危機感】、【運の悪さと些細なアクシデントに伴う傷】、【身体諸機能の低下に伴う危機感】、【過信を引きずる運転免許再取得への期待とあがき】の5つのカテゴリが導出された。

  • -学生ボランティア団体への働きかけを通して-
    植田 晴菜, 石田 賢哉
    原稿種別: 事例報告
    2020 年 13 巻 2 号 p. 8-19
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/11/22
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、参加型アクションリサーチによる働きかけが、Bサークルと加入者にどのような変化をもたらすのかを検証し、参加型アクションリサーチがボランティア活動の活性化への有効な手法となるか検証することである。対象者は、Bサークルに加入する学生44名とボランティア先の担当者3名であった。約8ヶ月間働きかけを実施し、Bサークルと加入者の変化をアクションリサーチの視点から分析した。

     本研究結果は、サークル加入者自身がより良い活動にしていこうと積極的に取り組む姿から、加入者自身の変化が検証され、活動の活性化がみられた。また、加入者自身の問題解決への意識が明確化し、加入者の意見が反映された働きかけを実践したことで、参加率の上昇と加入者数の増加という変化もみられた。このことから、参加型アクションリサーチの手法を用いた働きかけは、ボランティア活動の活性化に適した有効な手法であることが示唆された。

  • -ナラティヴ分析による試み-
    三澤 瑚子, 岩渕 勝之, 石田 賢哉
    原稿種別: 事例報告
    2020 年 13 巻 2 号 p. 20-31
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/11/22
    ジャーナル フリー

     本研究は、ナラティヴ分析の枠組みを用いて、現在断酒を継続しながらリーダーシップをとっている当事者を対象に、断酒会に出会うまでの人生、断酒会に出会ってからの人生への振り返りを通じて、過去の酒害体験や断酒会への思い、今後の人生の意味付けがどのように変化したか検証するものである。対象者は断酒歴10年以上のアルコール依存症当事者であり、現在は断酒会会長や全日本断酒連盟の県の代表をつとめている。

     「アルコール依存症の経験」では、依存症になったきっかけやスリップ体験、飲酒を継続する意思や依存症に対する否認が当時の思いを振り返る形で語られていた。「断酒会につながった結果」では、断酒会の入会当初は断酒会に対して否定的だったり必要性が分からなかったりしていたが、参加していく中で個々人が様々な気づきを得ることで、否認が解消され印象が前向きなものへと変化していた。「今後の人生の意味付け」では、依存症の経験の中で見られていた希死念慮や自殺企図、生きることに対する虚しさ等が、それらを乗り越えたことで変化し、それぞれのやり方で断酒会に関わっていくことや、個人的な人生の目標について語られていた。

     断酒会との出会いが即行動や意識の変化につながるのではなく、葛藤や不信感など揺れ動く気持ちがある中で継続してつながり続けることで、考えや行動に変化が生まれるといえる。

資料
  • 手塚 祐美子, 伊藤 治幸, 清水 健史
    原稿種別: 資料
    2020 年 13 巻 2 号 p. 32-41
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/11/22
    ジャーナル フリー

    目的:一般就労からの離職を経験した精神障害者は、現在は就労することをどのように捉えているか、当事者の就労観を明らかにすることである。

    方法:福祉的就労をしている精神障害者のうち、過去に一般就労を経験したことがある者10名に半構造化面接を実施し、質的記述的分析を行った。

    結果:対象者は、就労することを【就労することで得られる自己の存在価値を実感したい】と捉えていた。これは、【一般就労で体験した困難と苦悶】を抱えながらも、【精神障害への理解とサポートが得られれば一般就労をしたい】と目標を持っているため、【福祉施設の心地よさの中で社会に出る基礎を作っている】ことから見出した。

    結論:対象者は、就労することで得られる自己の存在価値を実感したいという就労観を抱いていた。仕事という社会的な役割を得ることで存在価値を実感し、社会へ精神障害の理解を求めつつ、一般就労に向けての準備を行っていたことが示唆された。

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