Journal of the Japanese Society for Horticultural Science
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80 巻, 4 号
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原著
  • 山根 崇嘉, 浜名 洋司, 中野 幹夫
    2011 年 80 巻 4 号 p. 383-389
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    モモにおいて樹液流速の日変化パターンからの水ストレスの検出を試みるとともに,水ストレス検出時の気象要因の補正方法を明らかにするため,8 年生モモ‘白鳳’(雨よけ・一文字整枝・1500 L ボックス根域制限栽培)を用いて実験を行った.軽度な水ストレス下では,午前中の樹液流速値は変化せず,午後の樹液流速値のみが低下した.そこで,水ストレスを検出するための樹液流速の日変化パターンを検出するための 2 つの指標を算出した.すなわち,(1)日中における時刻と樹液流速値との回帰直線の傾き(Index C),(2)午前の樹液流速値に対する午後の樹液流速値の低下程度(Index D)を求めた.これらの指標は樹液流速値の日合計量(Index A)および各時間帯の樹液流速値(Index B)に比べて,夜明け前の葉の水ポテンシャル(r2 = 0.41)および幹周の日最大収縮量(r2 = 0.58**)との相関が高かった.気象要因と樹液流速との関係を見た場合,樹液流速は温度,相対湿度,飽差よりも光合成有効光量子束密度と高い相関を示した(r2 = 0.84**).光合成有効光量子束密度が 800 μmol・m−,2・s−1 以下の時の樹液流速値を切り捨てることにより指標を補正したところ,幹周の日最大収縮量および夜明け前の葉の水ポテンシャルとの相関係数(r2)がそれぞれ 0.77** および 0.92** に向上した.水ストレスを最もよく検出できた指標は,光合成有効光量子束密度により補正した場合の,午前(7~11 時)から午後の各時間帯(12~15 時)にかけての樹液流速の低下程度であった.
  • 岩崎 光徳, 深町 浩, 佐藤 景子, 根角 博久, 吉岡 照高
    2011 年 80 巻 4 号 p. 390-395
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    カンキツ台木の育成は樹体生育の判別に長期間を要し,多くの労働力と広大な圃場を必要とする.そこで,播種後 5 か月齢の実生と,台木として利用した 7 年生樹の樹体生育の比較を行い,早期に樹体生育を予測できるか検討した.供試材料は交雑した 11 系統と一般的に使用されている 3 つのカラタチ系統(common type, ‘Pomeroy’, ‘USDA’)および‘スイングルシトルメロ’の計 15 品種(系統)を用いた.これらの台木にウンシュウミカン(Citrus unshiu Marcow.)を接ぎ木した 7 年生の樹と,播種後 5 か月齢の実生の生育特性を比較した.7 年生までの樹体生育は幹周を用いて評価し,5 か月齢の実生は枝内水分通導性,幹径,樹高,地上部重および地下部重を用いて評価した.その結果,7 年生樹の幹周と実生の枝内水分通導性に比較的高い相関関係が認められ(r2 = 0.633),対照品種は,ほぼ回帰直線上にあった.このことから,5 か月齢の実生の枝内水分通導性を用いることで台木として利用した場合の樹体生育を短期間で判別することができ,省力的に選抜が行えると考えられる.
  • 初田 吉民, 西尾 聡悟, 小森 貞男, 西山 学, 金浜 耕基, 金山 喜則
    2011 年 80 巻 4 号 p. 396-403
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    果樹は発芽後,開花・結実に至るまでに長い幼若期をもつ.果樹の発育における幼若性の生理学的,分子生物学的機構については,その園芸学的な重要性にもかかわらず明らかとなっていない.そこでリンゴにおいて,AGAMOUS-LIKE6AGL6)ホモログの発現と幼若性との関連について調べた.配列の比較と系統樹,およびサザン解析の結果から,MdMADS11 がリンゴにおける AGL6 のオーソログであることが示唆された.開花を促進する MdMADS11 の mRNA の増加は,リンゴ実生における幼若相から成熟相への転移に伴う葉面積と鋸歯の変化に対応した.対照的に,開花を抑制すると考えられる MdJOINTLESS の mRNA は,相転移に伴って低下した.リンゴの成熟相における発現解析から,MdMADS11 は季節的な花成誘導や花器官形成に関与していることが示唆された.以上の結果は,果樹における幼若相から成熟相への転移の分子生物学的機構に,新たな知見を加えるものである.
  • 金 貞希, 森 智代, 若菜 章, ノー スンビン, 酒井 かおり, 梶原 康平
    2011 年 80 巻 4 号 p. 404-413
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    無核カンキツ品種育種における重要形質の一つである配偶体型自家不和合性はブンタン,ブンタン雑種およびミカン類で知られているが,自家不和合性遺伝子(S)の対立遺伝子変異,S 対立遺伝子頻度および自家不和合品種や半自家和合品種の S 遺伝子型についてはほとんど分かっていない.本研究においては,まず‘晩白柚’自家交雑(S1)実生への‘晩白柚’の授粉と‘晩白柚’S1 実生間の授粉を行ってホモの S1 実生を決定した.つぎに,55 のブンタン品種・個体を含む 78 種類のカンキツにホモの S1 実生(S1S1 または S2S2)を交配した.S1 花粉授粉後に花柱基部で花粉管の伸長阻害がみられた 22 品種・個体は S1 対立遺伝子を持ち,S2 花粉授粉後に花柱基部で花粉管の伸長阻害がみられた 15 品種・個体は S2 対立遺伝子を持つことが明らかとなった.S1 対立遺伝子を持つ品種・個体の頻度は 29.9%(‘晩白柚’を含む 77 品種・個体中 23 品種・個体)で,S1 対立遺伝子頻度は 16.4%(Sf 対立遺伝子を除いた 140 対立遺伝子中 23 対立遺伝子)であった.S2 対立遺伝子を持つ品種・個体の頻度は 21.3%(‘晩白柚’を含む 75 品種・個体中 16 品種・個体)で,S2 対立遺伝子頻度は 11.6%(Sf 対立遺伝子を除いた 138 対立遺伝子中 16 対立遺伝子)であった.S1 対立遺伝子を持つ個体は鹿児島県で採種したブンタン個体群に特に高率(56.3%)で存在 していた.供試した 79 品種・個体のうち,6 品種・個体(‘晩白柚’,‘入来文旦’,長島文旦 No. 6,長島文旦 No. 7,‘カオパン’,‘早柚’)が S1S2 の遺伝子型を持っていた.本研究で S 遺伝子型を確定できたカンキツ品種は‘晩白柚’(S1S2),‘入来文旦’(S1S2),‘カオパン’(S1S2),‘早柚’(S1S2),‘キヌカワ’(SfS2)および‘川野なつだいだい’(SfS2)である.
  • 松本 雄一, 小河原 孝司, 宮城 慎, 渡部 信義, 久保山 勉
    2011 年 80 巻 4 号 p. 414-419
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    メロンにおけるメロンつる割病レース 1,2w および 1,2y に対する抵抗性は,部分抵抗性,量的抵抗性のみで,高度抵抗性のメロン遺伝資源は報告されていない.本研究では,メロンの病害に抵抗性を有する遺伝資源として報告されている Cucumis 属野生種について,メロンつる割病レース 1,2y 抵抗性の評価を行なった.11 種 76 系統の Cucumis 属野生種に対して菌株を人工的に接種し,0–3 の発病指数 (0:発病を認めない,1:葉の黄化始め,2:著しい病徴,3:枯死)で評価した.発病度(DI)はDI = Σ(発病指数 × 発病指数別株数) × 100/(3 × 調査株数)により算出した.6 種 34 系統(C. africanus, C. anguria, C. metuliferus, C. prophetarum, C. subsericeus, C. zeyheri)は高度抵抗性(DI = 0)を示した.一方,C. dipsaceus, C. meeusei, C. pustulatus, C. sagittatus ではほとんどの系統が激しく罹病し(DI = 80–100),高度抵抗性を示す系統はなかった.本研究から,メロンつる割病レース 1,2y に高度抵抗性を有する Cucumis 属野生種が初めて見いだされた.今後,これらの抵抗性をメロンに導入するため,メロンと Cucumis 属野生種間で見られる生殖隔離の克服方法に関する研究が求められる.
  • 坂田 好輝, 堀江 秀樹, 吉岡 洋輔, 杉山 充啓
    2011 年 80 巻 4 号 p. 420-425
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    キュウリ果実のテクスチャーを理解し,今後のキュウリ育種に役立てるため,世界で栽培されている 5 タイプ(温室タイプ,スライスタイプ,日本タイプ,ベイトアルファタイプおよびピクルスタイプ)の物性値(果肉硬度,胎座部硬度,果皮硬度,Crispness Index,相対胎座硬度(胎座部硬度/果肉硬度)および相対果皮硬度(果皮硬度/果肉硬度))を比較した.また,経時的な変化についても比較した.標準の大きさの果実(品種やタイプにより異なる)の物性値はタイプにより明らかに異なり,以下のように要約された;1)日本タイプは,果肉と胎座部が比較的硬く,相対果皮硬度は低く,パリパリ感を表す Crispness Index が特徴的に高い,2)ベイトアルファタイプと温室タイプは,果肉,胎座部,そして果皮がそれぞれ軟らかく,Crispness Index は最も小さい,3)ピクルスタイプは,果肉,胎座部,そして果皮も硬い,4)スライスタイプは,果肉と胎座部が軟らかく,果皮が硬い.なお,乾物率は,果肉硬度と高い相関を示したが,Crispness Index とは相関関係は認められなかった.また,経時的に収穫した果実の物性値は大きく変化したことから,品種やタイプによる違いとともに,果実の大きさ(収穫タイミング)も,果実の物性に大きな影響を与えることが示された.同時に,経時的な物性変化の大小は,収穫適期の幅に影響すると想定された.キュウリ育種では,果実のテクスチャーにも注意を払うことが必要であり,日本型キュウリに関しては,果実の生育に伴って生じる胎座部硬度ならびに Crispness Index の急激な低下を小さくしていくことが重要であろう.
  • 松永 啓, 齊藤 猛雄, 斎藤 新
    2011 年 80 巻 4 号 p. 426-433
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    ミャンマーで収集した 41 系統のトウガラシ遺伝資源について青枯病および疫病抵抗性検定を行った.その結果,青枯病に対して,18 系統が強度抵抗性および 17 系統が中程度抵抗性であった.強度抵抗性系統は C. annuum が 11 系統,C. frutescens が 6 系統および 1 系統が C. chinense であった.また,強度抵抗性系統には多様な果形が見られた.一方,疫病に対して,強度抵抗性系統が 1 系統認められたが,その他の系統は全て罹病性であった.以上のことより,ミャンマーには,多様で多くのトウガラシ青枯病抵抗性素材系統が見られるが,疫病抵抗性素材はほとんどないと考えられた.また,疫病に対して強度抵抗性が認められた系統は,青枯病に対しても中程度抵抗性を示した.そのため,この系統は青枯病および疫病複合抵抗性素材としての利用が期待される.
  • 清水 圭一, 大西 奈々子, 森川 典幸, 石神 愛, 大竹 沙永子, ラバ イセルモ ウレド, 坂田 祐介, 橋本 文雄
    2011 年 80 巻 4 号 p. 434-442
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    トルコギキョウの白色花系統と有色花系統でアントシアニジン合成酵素(ANS)遺伝子のゲノム配列を比較したところ,白色花系統では 94 塩基の欠失が見いだされた.白色花系統と有色花系統を交配し,F2 世代を調査したところ,有色花個体と白色花個体が 24 : 8 と,3 : 1 に分離した.これは,白色花の形質は劣性の 1 遺伝子支配であることを示唆している.また,ANS 遺伝子の 94 塩基欠失のホモ型は白色花の表現型と共分離していた.白色花,黄色花,淡黄色花,淡緑色花の系統を含むトルコギキョウの 14 系統でゲノム PCR によって ANS 遺伝子を調べたところ,全ての系統が 94 塩基の欠失のホモ型だった.これらの結果は,アントシアニンの蓄積の減少による白色花の形質が,ANS 遺伝子の 94 塩基欠失と結びついていることを支持している.
  • 佐藤 茂, 孟 娜, 原田 太郎, 野村 佳宏, 川原田 将也, 森田 重人
    2011 年 80 巻 4 号 p. 443-451
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    カーネーションの 2 つの 1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸合成酵素亜種遺伝子(DcACS1a/b)と 10 種 16 系統のダイアンサス属由来の ACS1 ホモログ遺伝子の構造を比較した.塩基配列が決定された 16 個の全ての ACS1 ホモログ遺伝子は,5 エキソン-4 イントロンの構造を有していた.エキソンの塩基配列はよく似ており,翻訳産物のアミノ酸配列の高い類似性が推定された.16 個のホモログ遺伝子間では,イントロン-1,-2,-3 の大きさは異なっていたが,イントロン-4 の大きさは 1 遺伝子を除いて同じであった.イントロンの変異は,塩基断片の挿入や欠失によって生じたと推定された.3'-UTR の塩基配列は DcACS1aDcACS1b で異なり,後者の配列は他の ACS1 ホモログ遺伝子の配列と類似性が高かった.また,DcACS1a と DcACS1b タンパク質の C 末端領域に存在するスレオニン(Thr)繰返し配列の Thr 残基数は 18 と 13 で,DcACS1b の Thr 残基数は他の ACS1 ホモログタンパク質の Thr 残基数(7~12)に近かった.これらの知見から,カーネーションにおける DcACS1aDcACS1b の 2 つ亜種遺伝子の存在は,Dianthus 属植物に広く見られる ACS1 亜種遺伝子の変異と同様な変異であること,カーネーション祖先種は DcACS1a をもっていたが育種の過程で他の Dianthus 属植物から DcAC1b が獲得されたことを推定した.
  • 斎藤 規夫, 立澤 文見, 星野 敦, 阿部 幸穎, 市村 美千代, 横井 政人, 土岐 健次郎, 森田 裕将, 飯田 滋, 本多 利雄
    2011 年 80 巻 4 号 p. 452-460
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    アサガオ(Ipomoea nil または,Pharbitis nil)の speckled 変異により淡黄色花を咲かせる 54Y 系統と c-1 変異により白花を持つ 78WWc-1 系統の F1 並びに F2 植物について,花弁に含まれるアントシアニンとその関連化合物を解析した.speckled 変異が優性の遺伝因子である speckled-activator と共存すると,花弁に吹掛絞が現れる.SpeckledC-1 遺伝子座は強く連鎖しており,78WWc-1 系統にのみ speckled-activator が存在する.このため,F1 植物は赤紫花を咲かせ,F2 では赤紫花,白花,吹掛絞(淡黄色地に赤紫の斑点模様)の花,淡黄色花の植物が 8 : 4 : 3 : 1 の割合で分離する.解析の結果,F1 と F2 の赤紫花,さらに吹掛絞の斑点部分には同じアントシアニンが含まれていた.いずれもウェディングベルアントシアニン(WBA)が主要な色素であり,その前駆体など 9 種のアントシアニン(ペラルゴニジン誘導体)も蓄積していた.一方,54Y と淡黄色花の F2,さらに吹掛絞の淡黄の地色部分では,カルコノナリンゲニン 2'-グルコシドが主要なフラボノイドとして検出されたほか,少量のカフェ酸とオーロシジン 4-グルコシドやクロロゲン酸もみいだされた.また,78WWc-1 と白花の F2 には,クロロゲン酸とカフェ酸が存在した.これらの結果から,speckled 変異と c-1 変異を持つアサガオでは,それぞれカルコン異性化酵素(CHI)とカルコン合成酵素(CHS)が触媒する反応過程でアントシアニン色素生合成が遮断されていることが強く示唆された.また,吹掛絞の斑点部分では,完全に色素生合成系が活性化していると思われた.さらに,F2 の赤紫花と吹掛絞の斑点部分に含まれるアントシアニン構成が個体毎に異なることから,これまで報告されていない未知の遺伝的背景が WBA の生合成を制御している可能性が高い.
  • 細川 宗孝, 鈴江 久尚, 札埜 高志, 土井 元章
    2011 年 80 巻 4 号 p. 461-468
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    キク(Chrysanthemum morifolium)の茎頂にパーティクルガンで金粒子を撃ち込み,培養すると成長の極めて旺盛なシュートが複数伸長する.‘神馬’の茎頂に撃ち込み処理を行った場合,1 つの茎頂あたり発生したシュートの平均生体重は非撃ち込み個体の 10 倍以上であり,茎頂あたりの平均展葉枚数も撃ち込み区で多かった.平均展葉枚数は金粒子の量を増やすにつれて多くなった.また,穴の大きさの異なるナイロンメッシュで茎頂部を覆い,メッシュの上から撃ち込みを行うことで茎頂分裂組織に大きさの異なる破壊を施したところ,破壊部が大きくなるにつれ茎頂あたりの平均展葉枚数が多くなった.成長旺盛なシュートが金粒子の撃ち込まれた茎頂分裂組織に由来するのか否かは,形質転換体を得る上で重要な情報となる.そこで,一部あるいは表面全体が破壊された茎頂分裂組織の破壊処理後の経時変化を観察した.全体が破壊された場合には破壊部は修復されず,側芽の発達が観察された.部分的に破壊された茎頂分裂組織は破壊部を修復したが,この場合にも側芽の発達が認められた.これらの結果から,金粒子を撃ち込んだ茎頂を培養すると,茎頂分裂組織の破壊程度にかかわらず,葉原基の基部から成長旺盛な側芽が発達することが分かった.そこで,撃ち込み処理を行った後に,葉原基を含まない茎頂分裂組織(超微小茎頂分裂組織)を摘出し培養したところ,側芽が発達することはなく,茎頂分裂組織の修復が認められ,修復された茎頂分裂組織から 1 本のシュートが発達した.以上より,撃ち込み後に発達する成長旺盛な複数のシュートは側芽由来であると結論した.最後に,形質転換体の作出に有効かつ汎用的な方法として,茎頂分裂組織への微小な傷つけ処理と超微小茎頂分裂組織培養を組み合わせた技術を開発した.
  • 増田 順一郎, ティエン ヌィエン クォック, ハイ ヌィエン ティ ラム, 比良松 道一, 竹下 稔, 金 鐘和, 中村 正幸, 岩井 久 ...
    2011 年 80 巻 4 号 p. 469-474
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    ハカタユリは,花の形,花と葯の色の取り合わせの良さに加え,他のユリにはない上品な香りおよび黄色から白色への花色変化に特徴がある.しかしながら,現在,国内に残存するハカタユリは非常に少なく,また,その多くは,花の奇形や葉にモザイク症状がみられることから,ウイルスに感染していると思われる.そこで,茎頂培養と抗ウイルス剤(DHT:2,4-ジオキソヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン)を組み合わせる方法で,ハカタユリのウイルスフリー球根を育成した.培養前の球根は,RT-PCR の結果から,CMV(Cucumber mosaic virus),LMoV(Lily mottle virus),LSV(Lily symptomless virus)の 3 種のウイルスに感染していた.鱗片から子球を増殖させ,茎頂培養を行った結果,2 種のウイルスを除去することができたが,依然として LMoV あるいは LSV に感染していた.続いて,抗ウイルス剤を添加した培地で LMoV あるいは LSV に感染している子球の茎頂を培養すると,LSV を除去することができ,ウイルスフリー球根を作出することができた.その後,ウイルスフリー球根をりん片培養で増殖し,20℃ のファイトトロン内で馴化した.馴化後のウイルス感染調査において,すべての植物がウイルスに感染していないことが確認された.以上の結果から,抗ウイルス剤を用いた茎頂培養によって,ハカタユリのウイルスフリー球根を生産できることが示された.
  • 牛久 由夏, 嶋田 典基, 齋藤 美沙, 山田 恵理, 日影 孝志, 中塚 貴司, 西原 昌宏
    2011 年 80 巻 4 号 p. 475-485
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    リンドウ(Gentiana triflora, G. scabra とその雑種)は,日本において主要な園芸花き品目の一つであり,国内だけでなく海外でも年々,利用が広がっている.本研究では,リンドウの倍加半数体系統を用いて SSR 濃縮ライブラリーを作成し,48 の SSR マーカーを単離した.5 つの SSR マーカーを用いて 12 品種を解析した結果,多くの多型を示し,1 遺伝子座あたり 5~8 アレルが検出された.ヘテロ接合度の期待値は 0.656 から 0.826 であった.これらの SSR マーカーは,形態を指標とした識別に代わり,栄養繁殖性リンドウ品種を識別する信頼性の高い分子ツールとして利用可能であることが示された.また,本マーカーを用いれば,品種間の遺伝的類似性の推定も可能であり,さらに 10 のリンドウ属近縁種に対しても開発した SSR マーカーが適用可能であることが確認された.本報告は,日本園芸リンドウにおける SSR マーカーの開発に関する最初の報告であり,今後,園芸及び薬用植物として経済的に重要な種を含むリンドウ属のゲノム解析を促進することが可能である.
  • 小野崎 隆, 八木 雅史, 棚瀬 幸司, 柴田 道夫
    2011 年 80 巻 4 号 p. 486-498
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    花持ち性は花きの重要な育種目標のひとつであり,著者らは交雑育種によるカーネーションの花持ち性の向上に関する研究を 1992 年より行ってきた.花持ち性向上を目指した 6 世代にわたる選抜と交配は効果的であった.6 品種の品種間交配に由来する親世代の平均花持ち日数は 7.4 日であったが,花持ち性による 6 世代にわたる選抜と交配後の第 6 世代の平均花持ち日数は 15.9 日と,8.5 日増加した.第 5 世代と第 6 世代の平均花持ち日数を比較すると 0.9 日の有意な増加が認められ,第 6 世代においても花持ち性の育種的な向上が認められた.第 5 世代の中から,エチレン低感受性を示す 2 系統(203-42S,204-41S)を選抜した.エチレン 10 μL・L−1 処理に対する花弁の萎凋が生じるまでの反応時間は,対照品種の‘ホワイトシム’が 7.6 時間であるのに対し,203-42S および 204-41S ではそれぞれ 23.0 時間,34.2 時間であった.全ての選抜系統は‘ホワイトシム’よりも有意に長い花持ち日数を示し,老化時のエチレン生成量が非常に少なかった.第 6 世代選抜系統 18 系統の平均花持ち日数は 15.5~32.7 日であり,対照品種‘ホワイトシム’の 2.6~5.4 倍の優れた花持ち性を示した.特に,系統 532-6 の花持ち日数は,品質保持剤を処理していない条件下において,2007 年の調査では 32.7 日,2008 年の調査では 27.8 日であり,対照品種‘ホワイトシム’の 4.6~5.4 倍の非常に優れた花持ち性(超長命性)を示した.系統 532-6 の老化時の花弁形態を観察すると,その他の選抜系統における老化症状である花弁外縁部からの褐変化が起こらないという特徴があった.
  • 廣野 久子, 森光 康次郎, 加藤 藍, 東尾 久雄
    2011 年 80 巻 4 号 p. 499-505
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,日本で栽培されているキャベツ 31 品種の可食部について,そのグルコシノレートレベルのプロファイル化を行い,またそれらの持つ第二相解毒酵素,キノンレダクターゼ(QR)の誘導活性能を比較した.キャベツは 2005 年 3 月初旬(夏どり)と 2005 年 8 月初旬(冬どり)に播種し,同一の慣行条件下で栽培した.全グルコシノレートの含量は夏どりで乾物重 g 当たり 1.07–12.14(平均 5.73)μmol,冬どりで乾物重 g 当たり 3.42–10.26(平均 6.16)μmol であった.最も主要なグルコシノレートは,品種によって 3-indolylmethyl glucosinolate または 2-propenyl glucosinolate または 2-hydroxy-3-butenyl glucosinolate であった.QR の比活性値は 4-methylsulfinylbutyl glucosinolate(glucoraphanin, GR)含量とのみ有意な正の相関を示した(相関係数は夏どりで 0.51,冬どりで 0.77).GR 含量は夏どりで乾物重 g 当たり 0.04–1.70(平均 0.43)μmol,冬どりで乾物重 g 当たり 0.11–1.39(平均 0.44)μmol であった.GR 含量と全グルコシノレート含量との間には有意な相関がなかった(相関係数は夏どりで 0.31,冬どりで 0.24).GR 含量には同一品種間で夏どりと冬どりとの間に有意な正の相関があった(相関係数 0.63).これらの結果より,QR 誘導活性は,全グルコシノレート含量に依らず GR 含量と正の相関があり,その活性強度はキャベツの品種間である程度固有の差のあることが明らかとなった.
  • 堀井 幸江, 橋口 知一, 伊豆 英恵, 須藤 茂俊
    2011 年 80 巻 4 号 p. 506-511
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    99 試料の日本産,外国産のワインの産地を判別する方法について検討を行った.21 パラメータ(Al, B, Ba, Ca, Cd, Cr, Cs, Cu, Fe, K, Li, Mg, Mn, Mo, Na, Ni, P, Pb, Sr, V,および Zn)の濃度を誘導結合プラズマ発光分析装置により測定した.線形判別分析により,1 点の外国産ワインが日本産と誤判別されたが,日本産と外国産の判別において 99%のワインを正しく分類することができた.さらに,後進ステップワイズ法により選択した 5 元素(B, Ca, Cr, K,および Mg)の濃度を用い,線形判別関数を構築したところ,日本産で 91%の的中率を示した.このことから,無機元素分析は日本産と外国産ワインの判別において有効であることが明らかとなった.
  • 馬 剛, 張 嵐翠, 加藤 雅也, 山脇 和樹, 浅井 辰夫, 西川 芙美恵, 生駒 吉識, 松本 光
    2011 年 80 巻 4 号 p. 512-520
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/22
    ジャーナル オープンアクセス
    ‘バイオレットクイン’と‘スノークラウン’のカリフラワー(Brassica oleracea, L. var. botrytis)2 品種を用いて,1-メチルシクロプロペン(1-MCP)のアスコルビン酸代謝への影響を調査し,その分子メカニズムについて考察した.エチレン生成量は,1-MCP 処理により,‘バイオレットクイン’では抑制されたが,‘スノークラウン’では増大した.収穫後のアスコルビン酸代謝の変動パターンは,カリフラワー 2 品種間で異なっていた.‘バイオレットクイン’では,収穫後,アスコルビン酸含量は減少し,この減少は 1-MCP 処理により遅延した.‘スノークラウン’では,アスコルビン酸含量はほぼ一定のままであり,1-MCP 処理による影響は認められなかった.‘バイオレットクイン’では,無処理と比較して 1-MCP 処理では,BO-APX1BO-APX2 および BO-sAPX の遺伝子発現がダウンレギュレートされ,BO-DHAR および BO-GLDH の遺伝子発現がアップレギュレートされた.1-MCP 処理をした‘バイオレットクイン’では,これらの遺伝子の調節が,アスコルビン酸の減少を抑制したと考えられた.‘スノークラウン’では,アスコルビン酸の分解に関わる BO-APX1BO-APX2 および BO-sAPX,再生と合成に関わる BO-MDAR1BO-MDAR2BO-DHAR および BO-GLDH の遺伝子発現が,同時にダウンレギュレートされることにより,アスコルビン酸含量が一定に保持されたと考えられた.
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