医薬品・医療機器製造販売業者は,GVP省令に基づき,安全管理情報の収集,検討及びその結果に基づく必要な措置を実施する必要がある。JAPICではGVP省令に対応し,国内で開催される医学・薬学関連の学会抄録集・プログラム・学会報告及び学術雑誌をもとに医薬品の適正使用に必要な品質,有効性及び安全性に関する情報を迅速に提供している。JAPICの設立と医薬品安全性情報提供に至る経緯,資料の収集業務を担うJAPIC図書館の活動と現状,情報提供について述べる。
電気通信大学附属図書館がAI(人工知能)研究との協働によって整備したAmbient Intelligence Agoraは,利用者のためのアクティブラーニングスペースであると同時にAI研究のための実験空間でもある。学修環境からビッグデータを取得し,AIでの解析結果を環境にフィードバックすることを通して,学修者の主体的な学びをAIが支援するアンビエント学修環境の実現を目指している。本稿では,Agoraの現況を紹介するとともに,人間と共存・共生する汎用AIの研究開発と図書館のインタラクションによって構築される次世代型図書館の可能性を示す。
インターネットでの情報検索が一般的となった現在,文献などのドキュメントを検索するユーザーは,次々と押し寄せる膨大な情報の中から検索漏れなく,また効率的に,適切な情報にたどり着く必要がある。米国のQuertle社が提供するQinsightTMは,バイオメディカル・ライフサイエンス分野に特化したAI(Artificial Intelligence)の技術をベースにした,新しいドキュメント発見の手段を提供する検索プラットフォームである。本稿では第20回図書館総合展フォーラム「図書館AIの最先端—AIの活用でリサーチが変わる—」で紹介したQinsightTMの内容をもとに,QinsightTMの概要について紹介する。
治験は,医薬品開発でのコアとなる業務だが,その高いコストと成功確率の低下が課題となっている。治験計画の質は,その治験の成功・失敗に大きな影響を与える。この治験計画の立案時には,大量な情報の収集・分析が必要となる。しかしながら,治験関連情報の多くが,構造化されていないテキストデータのため,その活用促進にはデータの構造化が不可欠である。そこで,現状の技術水準の説明を目的に,医療系テキストを対象とした情報抽出技術等を紹介する。また,治験計画立案支援を主眼とした情報収集AI技術を紹介するとともに,この情報収集AI技術のなかで,テキスト処理技術がどのように使われるかを紹介する。
6世紀と14~17世紀,ペストは,東ローマ帝国とヨーロッパにおいて,おびただしい人の命を奪った。そして1894年,正体が不明なこの病気はその流行地を香港に移した。このとき,北里柴三郎とアレクサンドル・エルサンは,患者から一種の細菌を見つけた。ペスト菌が発見されペストの正体は遂に人々の目に晒されたのである。ペスト菌は発見者の栄誉を記念してYersinia pestis(エルサンのペスト菌)と命名された。しかし,そこに北里柴三郎の名前はない。何故だろうか。この理由を解明するヒントは,北里大学白金図書館が所蔵するジェームズ・ラウソンによる報告書『1894年・腺ペストの流行』の中にあった。ペスト菌論争で誤りに気づき謝罪した北里柴三郎の姿勢を「学者の一分」として紹介する。
日本薬学図書館協議会研究集会では,毎年有益な情報交換や意見交換が行われている。しかし,職場に持ち帰り具体的なサービス改善につなげても,その成果を広く学内に発信する場がなく図書館での内部評価に留まっていた。そこで,明治薬科大学内で行われた「第21回MBI(Multimedia Based Instruction)研究発表会」で発表を行い,研究集会で得たことをベースに,図書館をあまり利用しない教員や学内関係者に向けて本学図書館の現状を紹介し,ラーニングコモンズ設置を含めた今後の展望について問題提起を行った。他大学の図書館関係者の参加も得て教員を交えた議論が実現したことで,本学図書館が抱える問題と,理想の図書館に近づくための改善点が明確になり,次のサービス展開の良い指針となった。