土木学会論文集F
Online ISSN : 1880-6074
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65 巻, 1 号
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技術展望
  • 坂口 央一, 萬來 雄一
    2009 年 65 巻 1 号 p. 59-72
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/19
    ジャーナル フリー
     東京ガスでは統合リスクマネジメント体制によりグループ企業全体のリスク管理に対するPDCAサイクルを構築している.非常事態の発生に備えて非常事態対策本部規則等を定め,所定の条件を満たした場合には全社で非常体制を敷いて対応を行う.非常事態として,都市ガス事業に最も甚大な影響を与えると想定されるのは大規模地震である.東京湾北部地震(M7.3)を想定すると,供給停止需要家は約120万軒に及ぶが,約900万軒には安定してガスの供給を続ける.予防対策,緊急対策,復旧対策の3本柱による地震防災対策を進めている.新型インフルエンザ対策については,社会機能維持のため,国内発生早期より非常体制を敷き,供給維持業務に限定することで都市ガス供給を続ける.今後もより一層の事業継続性の確保に取り組む.
和文報告
  • 池谷 公一, 石井 浩司, 関 博
    2009 年 65 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/20
    ジャーナル フリー
     コンクリート構造物の塩害対策の一工法である線状陽極方式電気防食工法に注目し,線状陽極の設置方法を,品質,耐久性および経済性の更なる向上を目的とした室内実験および実物大試験体実験による検討,実構造物への適用を通じて開発した.線状陽極の設置は電気防食工法における施工費の大半を占め,電気防食の正常な作動や工法の耐久性を左右する最も重要な作業工程である.本論文では,施工性や経済性を向上させるための切削する溝の形状・寸法,電気防食の正常な作動に影響を及ぼすような空隙を溝内部に生じさせないような溝内部への充てん材やその圧入方式による充てん方法について検討した.さらに,溝内部に生じた空隙を検知する非破壊検査方法についても言及した.
  • 西村 高明, 山本 努, 松川 俊介, 大石 敬司, 杜 世開, 新井 泰
    2009 年 65 巻 1 号 p. 38-49
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     昭和2年に開業した地下鉄銀座線末広町駅∼浅草駅間の躯体は,鉄構框構造を有しており,今後の合理的な維持管理方針を定めるためには,当該構造の特性を踏まえた現有耐力を確実に把握する必要があった.
     そこで本研究では,先ず躯体構成部材の発生応力を,ひび割れ発生に伴う応力再配分の結果として算定できる三次元非線形有限要素解析手法を構築した.次にその手法を静的荷重状態にある実際の躯体のひび割れ調査結果シミュレーションに適用し,解析的に算定されるひび割れ発生位置およびクラックひずみの大きさとひび割れ展開図との比較から当該手法の妥当性を確認したほか,その解析から得られた各種の部材応力等から,検討対象区間の躯体は安全性を十分確保できていることを確認した.
  • 秦 吉弥, 一井 康二, 加納 誠二, 土田 孝, 今村 孝志
    2009 年 65 巻 1 号 p. 50-58
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     近年発生した2004年新潟県中越地震では関越自動車道,2007年能登半島地震では能登有料道路においてそれぞれ斜面崩壊が発生し,高速道路が閉鎖され緊急対応や復旧の障害となった.つまり災害対策において高速道路盛土の耐震性を事前に把握し,対策を講じておくことは重要である.そこで本稿では,高速道路のインターチェンジ間における高速道路盛土の耐震性評価手法を提案し,国内に実在する高速道路に適用した事例を示す.本提案手法によれば,耐震性が相対的に低い箇所を合理的に抽出することが可能となる.また,インターチェンジ間における高速道路盛土の耐震性評価指標や耐震補強の優先順位に関する評価指標についても提案した.
  • 北原 雄一, 三好 哲典, 高橋 昌義, 高橋 和雄
    2009 年 65 巻 1 号 p. 84-93
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/19
    ジャーナル フリー
     長崎県の長崎港口に建設された女神大橋(鋼斜張橋,中央径間480m )の主桁架設は,バランシング架設が採用され斜ベントが設置された.斜ベント撤去において地形的要因から直下への吊り降ろしが困難で途中に横移動(スイング)の必要があった.
     本稿は,この斜ベントの撤去作業を対象として,ワイヤクランプジャッキを使用したスイング撤去工法の考察を行った.まず,撤去材の横移動で生じるワイヤ転向部でモノマーキャスト(MC)ナイロンを緩衝材として使用するため,材料試験にて耐久性を確認した.次に,この緩衝材を用いたワイヤ転向設備を桁内に配置し,実工事においてワイヤクランプジャッキによるスイング撤去を実証した.
  • 飯村 正一, 山口 宏樹
    2009 年 65 巻 1 号 p. 94-105
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/19
    ジャーナル フリー
     曲管に外力が作用すると曲管の断面は大きく扁平することから,曲管に接続されている袖管にも曲管断面扁平の影響が伝わることとなる.本研究では,磁気異方性センサを用いて袖管部に発生している沈下などの外力に対応する応力を,非破壊で精度良く診断することを目的として,袖管が曲管の断面扁平の影響を受ける範囲を特定する実験と,実験を補完する薄肉シェル要素を用いた弾性FEM解析を行った.
     また,現場において曲管部の応力を磁気異方性センサにより測定する場合に,障害物などのために曲管中央断面における測定ができない場合を想定し,中央断面からずれた測定値から中央断面における応力を評価する方法についても検討した.
  • 杉浦 江, 小林 朗, 稲葉 尚文, 本間 淳史, 大垣 賀津雄, 長井 正嗣
    2009 年 65 巻 1 号 p. 106-118
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/19
    ジャーナル フリー
     鋼構造物はさまざまなメカニズムにより劣化し,構造物としての性能が低下する.この劣化の主な原因の1つは鋼材の腐食である.腐食が進行しており応力的に問題となる場合の補修方法としては,鋼板をボルトや溶接により添接する当て板補修が用いられる.しかしながら,これらの方法は,大がかりな足場や重機を必要とするため,供用中の制約条件の下でより効果的な工法が求められている.このような中,筆者らは,腐食により損傷した鋼部材を合理的に補修することを目的として,炭素繊維シートを用いた補修工法を開発した.本稿は,炭素繊維シートによる鋼部材の補修工法の設計・施工法を示し,既設の実橋梁を対象とした補修効果確認試験の結果について報告するものである.
和文論文
  • 澤田 昌孝, 新 孝一, 山下 裕司, 江藤 芳武, 蒋 宇静, 吉田 秀典, 堀井 秀之
    2009 年 65 巻 1 号 p. 17-31
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/20
    ジャーナル フリー
     大規模地下空洞掘削時の周辺岩盤の変形挙動と安定性には,断層,節理などの不連続面の挙動が大きな影響を与えていると考えられる.本論文では,小丸川発電所の地下発電所空洞掘削でのBTVによる不連続面観察結果を分析するとともに,不連続面の挙動を考慮できる解析モデルであるMBCモデルによる解析を実施した.解析と実測との比較により,解析の有効性を検証した.その結果,空洞掘削時にBTVにより観測された不連続面の挙動をモデル化することで,空洞の変形挙動を精度良く表現することができた.不連続性岩盤中での大規模空洞掘削において,掘削中の不連続面挙動の観察結果から,その挙動を考慮した解析を実施することが有効であることを示し,両者を組み合わせた情報化施工評価フローを提案した.
  • 北川 隆, 後藤 光理, 田村 武, 木村 亮, 岸田 潔, 崔 瑛, 野城 一栄
    2009 年 65 巻 1 号 p. 73-83
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/19
    ジャーナル フリー
     小土被り未固結地山に施工されるトンネルにおいては,地山の剛性が小さいこと,また,グラウンドアーチが十分に形成されないなどの要因から,一般に地表面沈下が大きくなる傾向にある.沈下対策工としては,先受工や,脚部補強工,地盤注入工等が一般に用いられているが,安価な沈下対策工として坑内から鋼管を打設することによるサイドパイル工があり,地山条件によっては十分な効果が確認されたとの報告もされている.今回,サイドパイル工の沈下抑制効果を明らかにするため,模型実験による研究を実施した.その結果,サイドパイルの設置により地表面沈下やトンネルの変位を抑制できること,また,サイドパイルについて,一定の長さ以上を確保すること,トンネル支保工に十分に固定すること,剛性を高めることによりその効果が高まることが確認された.
和文ノート
  • 山田 隆昭, 佐野 信夫, 馬場 弘二, 重田 佳幸, 吉武 勇, 西村 和夫
    2009 年 65 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/20
    ジャーナル フリー
     著者らは,トンネル覆工コンクリートの健全度評価にあたり,できるだけ点検技術者の主観によらず客観的な評価を与える健全度評価基準をこれまで提案してきた.しかしながら,この健全度評価基準の一部には,技術者判断に依存するものも未だ残されており,さらなる定量的な評価手法が求められていた.そこで本研究では,いっそうの点検作業の効率化・客観的評価を可能にするため,ひび割れの定量的評価手法として提案されているTCIの導入について検討し,これを活用した評価法を考案した.本研究では,ここで提案する評価法を従来の健全度評価基準による評価と比較しながら,その適用性について考察した.その結果,TCIによる評価法は従来法と概ね同等の健全度評価を定量的,客観的に与えることが分かった.
  • 宮原 宏史, 坂口 武, 松生 隆司, 小笠原 光雅, 河野 興, 中川 浩二
    2009 年 65 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
     発破工法のトンネル掘削における削孔精度の重要性は,過去の研究において明らかにされている.近年,削岩機に各種の削孔誘導装置を装備する事例が増加しているが,誘導装置の経年劣化という課題があった.筆者らはロボット工学の見地から,内界センサ方式が主流であった削孔誘導装置に,自動追尾トータルステーションを外界センサとして活用したハイブリッド方式を開発した.実機試験の結果,1200時間稼動後の削孔精度の標準偏差は,高さ方向で約17mm,横方向で約37mmであった.また平均余掘長は従来技術と比較して約44mmの低減が認められ,土木分野におけるロボット工学の応用例を示した.
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